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第2話

 そんな風に庖丁道の流派はあるのですが。

 史実で細川藤孝が学び、究めていた庖丁道の流派については、正確なところが不明のようです。

 中には小笠原流の庖丁道を細川藤孝は究めていて、一時、宗家から預かっていて、その後に宗家の後継ぎに返還したという話もあるそうですが。

 小笠原流の庖丁道の詳細な話が出てくるのは、私の調査する限りは、主に細川藤孝絡みの事が多く、小笠原礼法の話とかなり混じっているのでは、という疑念を私はどうにも覚えてなりません。

(庖丁道として、小笠原流が全く無いとは申しませんが、庖丁道の中では少し特殊で礼法に近い流派ではないか、ということです。

 尚、礼法云々というのは後述します)


 そして、細川藤孝が学んだ庖丁道については、大草流や進士流の可能性もあるとのことで、むしろ、この方が細川藤孝が学び、究めるのには相応しい気が私にはします。

 何しろ、室町時代、大草流は足利将軍家の庖丁人を務める家柄であり、進士流は細川、畠山家という管領家の庖丁人を務めています。

 こうしたことからすれば、細川藤孝が学んだ庖丁道は、こちらの方が相応な気がするのです。

 勿論、3つの庖丁道を細川藤孝が学んでいる可能性もありますが、幾ら何でも多すぎる気が。


 さて、庖丁道ですが。

 安土・桃山時代に日本を訪れた宣教師ロドリゲスは、

「日本の支配階層において、必要な能(実践的な教養)とされているのは、弓術、蹴鞠、庖丁」

 と述べています。


 えっ、織田信長や近衛前久とかの武家や公家は、庖丁を振るって、料理をする教養が必要だったの?

 と誤解を招きそうな一文ですが。

 弓術や蹴鞠と共に上がっているように、そういうことではなく、基本的に庖丁道は本膳料理を饗される場合等に作法として最低限は知っておくべきものとされてたようです。

(お茶の席に招かれた際、それなりの茶道の作法を知らないと恥をかくようなものと考えてください。

 弓術や蹴鞠についても、それなりの決まり事が当時はあり、参加する際にはそういった決まり事を知っておく必要がありました。)


 勿論、そういう趣旨の庖丁道ですから、料理とはかなり異なります。

 庖丁道は、御成の際等に饗される本膳料理の調え方、更に本膳料理を鑑賞して、そして、その料理を食べる際の礼儀作法について、主に学ぶものとなります。

 小笠原流の庖丁道というのは、小笠原流が礼儀作法についての流派であることから、主に本膳料理を鑑賞して食べる際の礼儀作法が中心だったのでは、と私としては愚考する次第です。


 その一方で、細川藤孝は庖丁を実際に振るって、達者と称えられた逸話が複数伝わっています。

 そうしたことからすえば、大草流や進士流の方を、細川藤孝は主に学んだとするのが相応しい、と私は考えざるを得ないのです。


 更に言えば、室町時代の庖丁道は本膳料理を主眼とするものであり、その本膳料理は極めて儀式的な代物であったということです。

 それこそ七の膳まで饗され、1日、2日では済まない本膳料理というのもありました。

 そして、見る料理が多く、実際に食べられる料理が少なかったため、安土・桃山時代になって、実際に食べる膳として引替膳という代物まで登場することになります。

(私から見れば、料理を主眼とする筈が、完全に本末転倒の事態になっている気がしますが)


 そして、現在の庖丁道を披露する動画を見ていると、それこそ見せる物が多く、あれで本当に美味な料理ができるのだろうか、という疑問が私の心の中で湧くことさえあります。


 こういったことが分かってくる程、庖丁道というのは、一般的に料理に関する物として想像される物よりもかなり異質な代物である、と私としては考えざるを得ないのです。

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