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最終話


 解呪部屋の中は薄暗く、明かりを取り入れる為の窓は、真正面にひとつ、あるだけでした。



 お姫様が身を震わせながら王子様に抱きつきます。




「な、なんか出て来そうな部屋ですね……」


「姫様。怖いのは分かりますが、あまりそういうことを言ってはいけません」




 ふたりがそんな事を話していると、部屋の外から、解呪研究者の女性の声が聞こえて来ます。




「あのー! 聞こえますかー!」


「はい、聞こえます!!」




 返事をしたのは王子様でした。王子様の声を聞いた解呪研究者の女性は、ふたりに解呪の方法を伝えます。




「あのー! 入って右手の壁にー! ベッドがあると思うんですけどー! 判りますかー!?」


「ベッド……?」




 王子様は、お姫様の手を引きながら、解呪研究者の女性に言われた通りに右手側に移動します。


 すると……




「あ、あった」


「何でベッドがあるのかしら?」




 ベッドを見つけた王子様は、声を張り、部屋の外にいる解呪研究者の女性に伝えます。




「ベッドー! ありましたー!」


「見つけましたー!? では、次にー! そのベッドにお姫様を寝せて下さーい!!」


「寝せる……?」

「やん♪」




 王子様は、解呪研究者の女性の指示を少し不振に思いながらも、お姫様をだっこし、言われた通りにベッドへ運ぼうとしますが……




「あ、あの……王子様も一緒に……」


「姫様……今はそれどころでは……」




 添い寝を求めるお姫様の耳に、解呪研究者の女性の声が飛んで来ます。




「あ、ベッドに寝せるのはー! 絶っ対!! お姫様ひとりだけにして下さいねー!」




 その時、お姫様の舌打ちが聞こえましたが、王子様の耳には届きませんでした。


 王子様が次の指示を乞います。




「あ、あのー! 次はどうすれば良いんですかー!?」


「お姫様を寝せたら、解呪の準備は完了です!!」


「……あ、もう良いんだ……」




 手順の少なさに、少し拍子抜けする王子様。そこに、解呪研究者の女性の声が飛んで来ます。




「では、これからお姫様の呪いを解きますので、お姫様は絶対動かずに! 王子様は絶対お姫様に触らないで下さいねー!!」


「え、やだ」


「姫! やだ、ではありません! このまま呪いが解けなくても良いのですか!?」


「では行きまーす!!」




 王子様がお姫様を宥めているうちに、解呪作業は始まりました。部屋が少しずつ揺れ始めます。



「あ……あれ?」



 王子様が辺りを見渡し始めます。部屋の中が少しずつ、暗くなってきたのです。


 ちょっとづつ、揺れが大きくなり……少しずつ、部屋が暗くなっていく中で……お姫様はこんなことを口にします。




「あ……何か……眠たくなってきた……」


「大丈夫ですか!? 姫様!?」




 少しずつ眠気眼になっていくお姫様。それでも揺れは強くなり、部屋の中はもう真っ暗闇になっていました。




「姫様ー! 姫様ーー!?」




 強く揺れる、真っ暗闇な部屋でひとり叫ぶ王子様。ですが、お姫様の声は返って来ません。その内に、揺れは少しずつおさまり、部屋もちょっとづつ明るくなって来ました。




「……姫……様?」




 そして、部屋の中が完全に元に戻ると、そこには……心地良さそうに寝息をたて、生まれたままの姿でベッドに横たわるお姫様がありました。




「ビキニアーマーが……消えてる……!」




 お姫さまの身体をまじまじと見つめ、驚いた様に声を上げる王子様。


 念のため、部屋の中も見渡してみますが、ビキニアーマーは何処にも見当たりません。



 お姫様は、ビキニアーマーの呪いから解放されたのです。




「……良かった……! 姫様……! 本当に良かった……!」




 力が抜けた様に、ベッドの前に跪く王子様。ですが、直ぐ様立ち上がると、生まれたままの姿で眠っているお姫様に、そっとシーツをかけてあげます。



 と、同時に……扉の向こうから、何かが倒れる様な、大きな物音が聞こえてきます。



 王子様は急いで部屋の入り口に移動すると、扉を開け、部屋の外を確認します。


 するとそこには、解呪研究者の女性が、寝そべるように床に倒れていました。





 驚いた王子様は、急いで解呪研究者の女性を抱き起こします。




「……う……うう……」


「だ、大丈夫ですか!?」


「……ああ……すみません……ちょっと……身体が……ふらついて……」




 王子様は、少し前の解呪研究者の女性の言葉を思い出します。




「……そう言えば、部屋の外からの解呪は、体力を使うとか言ってましたね……」


「……ええ、まあ。所で……お姫様の呪いは上手く解けましたか……?」


「はい。あなたのおかげで。あなたは姫様の恩人です。感謝しても仕切れません」


「……そんな……私は、当然の事をしたまでですよ……あ、もう大丈夫です……」




 解呪研究者の女性は、王子様に背中を支えられながら地面に両足をつくと、ちょっとふらつきながら立ち上がります。




「まだ無理しない方が良いんじゃ……」


「いえ、私の方はもう大丈夫ですよ。それよりも……」




 解呪部屋の方を振り向く、解呪研究者の女性。一息つき、話を続けます。




「今日は、お姫様と一緒にいてあげて下さい。私と一緒で、解呪に体力を使ってしまって、明日の朝まで起きないと思うので」


「……わ、分かりました……では、今晩お世話になってしまいますが……」


「気にしないで下さい。元々、そのつもりでしたので……」




 王子様は、解呪研究者の女性に深々と頭を下げると、解呪部屋の扉を開けて、部屋の中に入って行きました。


 それを見届けた解呪研究者の女性は、肩の荷が降りたのか、深く溜め息をつくと、大きく背伸びをしながら階段に向かいます。





 そして、一階に降りると、テーブルの置いてある家の中央に移動し、椅子を床を擦るように引いて、身を預けるように腰かけます。




「……き、今日は……疲れた……」




 解呪研究者の女性は、テーブルに俯きながらそう漏らすと、全てから解放されたように、そのまま寝入ってしまいました……











 ………………翌朝。











 テーブルの上で目覚めた解呪研究者の女性は、疲れの残った身体を重たく起こすと、炊事場に向かい朝食の準備を始めます。



 王子様と、お姫様と、自分の分三人分……



 朝食を作り終えた解呪研究者の女性は、テーブルに配膳を始めます。



 そこに、王子様が一階に降りて来ました。

 その王子様の手に引かれる様に、お姫様も二階から降りて来ました。




 シーツを、ドレスの様に身体に纏って……






「……今朝は、お楽しみだったようですね」




 ……おしまい。


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― 新着の感想 ―
[一言] コメディーを読もうと思っていたら、甘いイチャイチャを読まされていた……。 面白かったですけど、詐欺罪で訴えたい気分……。
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