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迎撃せよ、異世界防衛戦線  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
序章
6/49

第三話:祓魔の一刀

緋本原旅団司令部はにわかに慌ただしくなった。

「報告、緋本原に向け移動中の装甲列車が攻撃を受けました。線路が破壊されたため移動不能、戦闘に入ります」

「そ、そうか、s、想定通りだな。t,待機中のアルバトロス輸送機は直ちに発進し救援に向かってくれ」

旅団司令、駒野中佐の指示は的確であり、事前の打ち合わせどおりではあったのだがどもりがちな喋り方に不安を覚える隊員は少なくない。

「敵さん、うまいこと網にかかりましたな」

隊員によぎった不安は東城少佐の太い声音によって一時収束する。

「ま、まさか輸送列車を囮に使うとは・・・」

「敵さんも予想してないでしょうな。小職の予想の倍は釣れています」

今回の輸送物資は旅団の生死に関わる最重要物資だ。

それゆえ、旅団に嫌な顔をさせたい者たちにとっては是が非でも奪取したい物資ということでもあった。

従来通りであれば装甲列車で輸送する予定だが、今回の襲撃の規模は従来のそれを遥かに超えていた。

―今まで通りのやり方では守りきれなかっただろうな。

東城少佐の意見具申を取り入れたのはどうやら吉と出たようだ。

この少佐はどういうわけかやけに鼻が利くところがあり、駒野中佐含め旅団の構成員も彼の鼻をアテにするようになって久しい。

「本隊より報告、現在中継地点を通過、敵影なし」

「順調ですね」

装甲列車が囮として機能しているようで、物資を積んだ本隊は順調に緋本原を目指しているようだ。

想定よりペースが早い。いいことだ。

「s、少佐、本隊の護衛についてだが・・・」

「ええ、外人部隊(レジオン・エトランジェール)から選りすぐりを当ててもらっています二つ名持ちが4名、うち1名はベテランです。低く見積もっても1個大隊規模の戦力はあると見ていただいて構いません」

「s、そうではなくてだな・・・」

駒野中佐の言いたいことは分かる。

国防隊の命運に関わる物資の護衛、これを正規の隊員ではなく余所者の渡来人に頼むことに抵抗があるのだろう。

「正規の部隊を動かしたら陽動の効果は得られません。不満はあるでしょうがご了承いただきたい」

実際、多くの隊員、今回であれば一個大隊規模を動かすとなると大きな兆候となって現れる。

棺桶の売れ行きだったり、慰安所の来客数だったりで大きな作戦があるかどうかが判別できるのだ。

そのため、正規の戦力は「従来どおり」に動いてもらわなければ陽動を感づかれて作戦は破綻する。

「k、機導兵は使えないのか?」

中佐はそれでも歯にトウモロコシのカケラが挟まったように少佐に聴く。

渡来人と同等以上の戦力は国防隊にもある。

1名いれば一個大隊に相当する強力な戦力が。

なぜそれを使わないのかということだ。

「申し訳ありません・・・それについては我々の技術的な問題です」

東城少佐は重く口を開く。彼は本来は研究者であり、機導兵の運用のために特例で生え抜きの士官を飛び越えて少佐の階級を特例でもらっている身分だ。

自分の畑の至らない部分をつつかれるのは面白くないのだろう。

「機導兵は機導兵装を使用している間は渡来人と同等の奇跡(スキル)祝福(バフ)を得ることができます」

しかし、と少佐は続ける。

「しかし兵装は無限に起動できるわけではありません。理力を流し続ければ機導兵自身にも負担がかかり、兵装も消耗していきます。連続で起動できる時間は1-2時間で、再始動のためにはクールタイムが必要になります。その間に攻撃を受ければ喪失もありえます。

現状では断続的、継続的に戦闘が発生する護衛任務には不向きなのです」

「そうか・・・」

駒野中佐はこのことで少佐を責めるつもりはない。機導兵に関して彼より優れたものは緋本原には居ないし、いたとしてももっと羽振りがいい旅団に引き抜かれて緋本原には来ないことはわかりきっている。

つまり、彼が無理といえば無理なのだ。

「報告、本隊が攻撃を受けました。敵勢力は撃破、移動を継続中」

「報告、装甲列車を攻撃していた敵勢力が後退を開始しています」

どうやら、順風満帆はここまでのようだ。

「報告、アルバトロス輸送機が戦域に到達、後退中の敵勢力の追撃を開始します」

「y、よし、逃さず掃討せよ」

装甲列車に引き付けた敵はこれで本隊に向かうことはできないだろう。

後は本隊の戦力が持ちこたえてくれたら万歳三唱だ。




僕達が転生した「緋ノ本」という国はぱっと見元いた日本とよく似た印象を受けるけど、今目の前に広がる光景を見ると日本ではないことがはっきりと分かる。乾いた空気と背の低い草がまばらに生えるだだっ広い平面は日本というよりはアメリカの田舎といった風情がある。

轍を重ねてできた道路とも呼べないものが後ろに流れていく光景はなんだろう、昔の映画だか漫画だかを思い出すけどタイトルなんだっけ?

たしか、えっと。


パッシブスキル:自己防衛


「思い出した。マッドマックスだ!」

道なき道を突っ切って僕らの乗る改造ジープに突っ込んできたタイヤの太いオートバイ、それにまたがった上半身裸のモヒカン肩パッドが投げた瓶を全自動で躱し、叫ぶ。

「こんにゃろ!失せやがれ!」

同乗しているチビでガリのDQNがジープに備え付けた機関銃をひっつかんで叫ぶ。

「言う間があったら撃てよ!」

「使い方がわかんねえんだよ!」

こいつ使えねえ。

火炎弾(ファイアボルト)!」

次の資源ごみを不法投棄しようとしていたモヒカン肩パッドに火球を当てると資源ごみから炎が吹き上がり、モヒカン肩パッドに燃え移った。

あぶねえな、火炎瓶かよ。


アクティブスキル:タカの目


不法投棄野郎が火だるまになって動かなくなったのを確認して索敵用の奇跡(スキル)を使うと砂塵舞う平野に敷き詰められた赤い絨毯。

鉄板を張り付けたトラックに棘のついたサイドカーにサンドバギー、操るのはモヒカン、スキンヘッド、鉄仮面、タカの目がなくても分かる明らかな悪人面が四方から迫って来る。

「・・・戦闘開始、物資を守って・・・」

僕らの今の上司、転生者:白銀姫(シルベリーホワイト)の小声の指示がハイテクなスロートマイクによってクリアに聞こえてきた。

外人部隊(レジオン・エトランジェール)に半強制的に連行されて一週間、僕と愉快な仲間たちは輸送トラックの護衛の依頼を強制的に受けさせられ、時まさに世紀末の状態に陥っていた。

「ああもう、どうやってつかうんだよ!」

DQNはいまだマシンガンの使い方がわからないようだ。

「説明書読めよ」

ビキニのおねーちゃんが手ほどきしてくれるイラストいっぱいの説明書があっただろ。

いや、そういやこいつ顔真っ赤にして鼻血出してたな。

子供には刺激が強すぎたのか。

これじゃ読んだところで脳にまわる血が足りずに理解することはできないだろう。

「真ん中のボタンを押せば弾が出る!」

「え?え?あ、これか?」


パッシブスキル:自己防衛


あぶねえ!?

僕の言ったとおりにしたら言ったとおりに弾が飛び出した。

荷台にいた僕に向かって。自己防衛がなかったらミンチになってたところだ。

「このやろう!」

ドカッ!ボコッ!

「説明書の一番初めに書いてあっただろ!?敵に向かって撃てよ!」

「ごめんなさいごめんなさい!」

アゴとこめかみを殴った後弾を吐き出して加熱したマシンガンにDQNの額を押し付け教育的指導を行う。

クソ野郎が、次やったらジープから放り出してやる。

そうこうしているうちに前方からモヒカンの一団が接近してきた。

「「陰陽」、「アクエリアス」・・・応戦して・・・・」

現在、縦三列で移動している輸送トラックを6台の改造ジープで六角形に取り囲むように護衛している。僕らの乗る改造ジープは一番うしろだ。

あとの5台はシルベリーさんが「生命付与(ライクライフ)」で自律行動できるようにした全自動ジープになる。全部名前が付いてるらしい。

僕の「犬の糞一号(ドッグシットワン)」より良さげなやつが。

ていうか、そんな芸当できるんだったらあの人ひとりで良さそうな気がするんだけど。

ブオオオオオオオオオオ

前方からジープの隙間をすり抜けてトラックを狙おうと突っ込んだモヒカンの一団に前方の2台のジープがマシンガンの猛射を浴びせた。

ほぼ縦一列で突っ込んできたモヒカンは突っ込んだ順に弾のカーテンによってグロいミンチに変わる。

「護衛を排除しろ!」

的なことを叫んだ最後のモヒカンがミンチになると後続のモヒカンおよびスキンヘッドおよび肩パッドは作戦を変更した。

まずどれかのジープをやっつけて攻めやすくしようということだ。

「「トレジャーキーパー」、『グリモルディ』・・・近接防御・・・」

しかしシルベリーさんのジープはそれにもきっちり対応する。

「ぎゃあああああ!」

マシンガンと一緒に取り付けられた火炎放射器が火を吹き、攻撃を試みた世紀末を消し炭に変えていく。火炎放射器は全自動でグルグル旋回して全周もれなく隙がない。

「うわあああ!来るな、来るなぁ!」

そうなると残る世紀末は隙がある僕らのジープを狙うようになる。誰だってそうする。

DQNがやっと使い方を覚えたマシンガンを振り回すけど全然当たらない。

世紀末たちは横に広がってこっちに狙いをつけさせないようにしながら後ろからジリジリと間合いを詰めてくる。

火炎弾(ファイアボルト)

火球でバギー1台を燃やしたけどバギーだけでもまだたくさんいる。焼け石に水だなこれは。

火球で全員やっつけるより僕がバテる方が先になりそうだ。

「二人共、もう少し引き付けてください」

僕らのジープを運転しているこないだ大先生(ティーチャー)のあだ名つけられたおっさんから通信が入ってきた。

「ちくしょう、ちくしょ・・・ぶべ!?」

おっさんの通信も耳に入らずわめき散らすDQNの顔面をぶん殴って黙らせる。

ていうかとっくに弾切れてんじゃん。

「一網打尽にできる武器があります!合図したら火を出してください!」

「了解!」

何をする気か知らないけどこのまま無駄弾撃ってもしょうがないし、マシンガンの弾の補給はDQNがノビてるから僕がやるしかない。

合図があるまでに次の弾を入れておこう。

「往生せいやオラァ!」

と思ったけどモヒカンの到着が早い。

先頭のモヒカンがジープを制圧しようとフレームに手をかけたところで改造ジープに這わせてあったパイプから霧が吹き出した。

「今です!」

火炎弾(ファイアボルト)!」

放った火球が霧に触れると同時、霧は一瞬で巨大な火炎となって後方に追いすがっていたモヒカンを一瞬で消し炭に変えた。

「こんな仕掛けがあったなんて・・・」

「今の仕掛けは可燃性の液体を霧状にして広範囲に火を広げる装備ですね、生前の記憶から着想を得たんですがうまく行ってよかった。他には『撒菱』と『煙幕』が使えます」

そういやこのおっさん生前『燃える水(多分ガソリンかそれっぽいなにか)』撒いて焼身自殺したとか言ってたな。

「ていうかそれ、引火してたら僕らが消し炭になってたんじゃ・・・」

「それでしたら大丈夫ですよ。私は転生した際に炎耐性の祝福(バフ)を入手しているので」

おい。

「・・・敵勢力後退・・・一時停車して補給する」

シルベリーさんから通信が入ってきた。どうやら一息つけるということらしい。

やれやれ、とんだ一日だ。

止まったらジープに積んでる水を飲んであんまおいしくないエナジーバーをかじって一休みしよう。



さて、僕は先ほどシルベリーさんと全自動ジープがあれば僕らはいらないんじゃないかという話をしたけど、奇しくもシルベリーさんが僕らを釣れてきた理由を知る機会が訪れた。

「・・・弾薬、燃料の補充、1時間」

それを僕らでやれと?

燃料の補給と言ってもガソリンスタンドにあるようなガンはなくてなんかプラスチックのポコポコやるやつとポリタンクしかないんだけど。

あと弾薬って言ってもほとんど使ったの全自動ジープじゃないですか?

ていうかこの弾薬ベルトめっちゃ重い。

おっさんは僕らが乗るジープに燃料を入れたらバテてしまって日陰でへばってる。

「くっそ・・・めんどくせー」

「ああああああああああああーーーーーーーーっ!!!」


パッシブスキル:自己防衛。


給油中にタバコに火をつけようとしたDQNを組み敷いてタコ殴りにする。

こいつには危なくて任せられん。

なんてこった、早くも動ける人員が僕一人になったぞ。

ていうか一時間で終わるのかこれ?

「あんちゃん大丈夫か?」

手伝(てご)したらー」

幸いにもトラックに乗ってた迷彩服のおっさんあんちゃん(国防隊が派遣した輸送要因らしい)が助勢してくれたから補給作業はどうにか終わりそうだ。

「あんちゃんも向こうで休んできいや」

迷彩のおっちゃんの言葉に甘えて僕も休もう。

水の入ったペットボトルを持って日陰に行く。

「・・・ん、ありがと」

持ってた水は一瞬でシルベリーさんに奪い取られ、次の一瞬で完全にシルベリーさんの体内に消えた。

今わかった。

いや、薄々思っててことが確信に変わったといったほうが正確だろう。

この人ダメな人だ。

なめらかな銀髪に若干眠そうな目、紫外線に炙られた肌は若干浅黒いけどそれでも肌理の細かさが分かる優れたビジュアル。

黙ってれば美人だし黙ってる時間のほうが圧倒的に多いにもかかわらず圧倒的に少ない黙ってない時間がそれを補って余りあるほどダメだ。

美人の体はダミーでガワに着てるダサい小豆色の芋ジャージが本体と思えるくらいダメだ。

それに比べたらハーピーさんは中身も素晴らしかった。

あれが、あれこそが女性のあるべき姿だと思うね僕は。

決して酒焼けした声で電気飛ばしながら変なあだ名を付けるオバハンや眼の前にいる芋ジャージのアバターは違うなにかだ。

きっとそうだ、そうに違いない。

「・・・犬の糞一号(ドッグシットワン)

その芋ジャージの化身は僕の高尚な思考を厚かましく中断すると地図を見るよう促した。

「・・・いま、ここにいる。緋本原(目的地)まで約90分で着く。じゃ、よろしく」

よろしくってなんだよ。

こうしてあまりにも短い休憩時間は終わり、原住民消毒ドライブは再開された。



「やった!当たった!見たかよおい!」

ようやくマシンガンがまともに使えるようになったDQNが自分の弾で倒したらしいモヒカンを指差して僕に見せようとしてくる。

「これも使っときましょう」

おっさんが改造ジープに仕込んでた撒菱を広報にばらまいた。

位置はちょうど橋の上、思いの他広く散らばった撒菱は橋のほぼ横幅に行き渡り後ろからの追跡を完全に止めた。

なんか釈然としないけどこのジープに乗ってる中で一番仕事できるのは運転席のうだつの上がらなそうなおっさんらしい。

予想に反して経過は順調だ。

後ろのモヒカンが立ち往生しているのが『タカの目』ではっきり見える。

「たぶん次で最後かな?」

右前方に赤く光る敵勢力が接近してくる。

「『アクエリアス』、『トレジャーキーパー』、迎撃して」

芋ジャージの号令とともに前方2台の全自動ジープがマシンガンを動かして威嚇を始める。

あのジープたちは優秀だし、弾薬も燃料もたっぷりあるからこれはもう勝ち確っぽいな。

世紀末が僕らを狙ってたのも僕らが一番弱かったからだし、その僕らは位置的に狙えない。

「・・・・ミサイル!?」

僕の予想は芋ジャージの驚愕に打ち消されてしまった。

前方のサイドカーのバイクじゃない方に乗ってたスキンヘッドが持ってた筒から飛び出したミサイルによって前方のジープについてたマシンガンが吹っ飛んだ。

「っ『トレジャーキーパー』・・・」

なんてこった、貴重な休み時間を消費させられて水も取られながら必死で詰め直した弾薬を一発も使うことなく1台がやられてしまったぞ。

「陣形を組み直す」

防御に穴が空いたところにモヒカンたちが殺到しようとする。

突っ込んで来るのはサンドバギーでもサイドカーでもなくて、

「トラックだ!」

全周を鉄板で覆った6輪トラックが脇目も振らずこっちの車列に突っ込んでくる。

生き残ったジープがマシンガンを撃ち込むけどびくともしない。

「回避!」

「無理だ!間に合わん!」

芋ジャージの命令はトラックに断られてしまう。

ジープならまだしも重いトラックで避けるのは無理だ。

「『トレジャーキーパー』!」

万事休すと思ったところで先ほどマシンガンを破壊されたジープがトラックの横から突っ込んだ。

決死の突撃といえば聞こえはいいけど車格が違いすぎる。わずかに進路が変わったけどまだ直撃コースだ。

「『陰陽』!『アクエリアス』!」

さらに追加で2台のジープもトラックに突っ込んだ。

それでもトラックは前進を止めず僕らのトラックを目指す。

「・・・ごめんね・・・」

芋ジャージの苦渋が聞こえた直後、トラックにぶつかったジープ3台が盛大に自爆した。

車内に仕込んでいたらしい爆薬は僕が苦労して補充した弾薬と燃料を巻き込んで巨大な炎の奔流となってトラックを押し留めた。

「ダメだ・・・また動き始めるぞ」

「防弾板はありません!運転手が狙えます!」

火炎弾(ファイアボルト)!」

トラックを再び前進させようとした運転手を火球で始末するとようやく世紀末トラックは停止した。

危なかった。

ここに来てジープを3台喪うなんて。

「どうやら、これで終わりではなさそうですよ?」

おっさんに促されて前方を見ると前にはさっき突っ込んできたトラックと同じものがあと2台。

全自動ジープ3台がかりでようやくなんとかなった世紀末トラックがもう1台かよ・・・。

「・・・命令、あのトラックに接近して」

「うわあ!」

さっきまで別のジープに乗ってた芋ジャージが僕らのジープにいつの間にか乗り込んでいた。

「局地転移、便利な奇跡(スキル)

ああ、なんか瞬間移動的なことができるのか。

「厄介なのは、トラックだけ・・・私達で撃破する」

「具体的に、どうやって」

「・・・いいから行く」

芋ジャージに蹴飛ばされるままにおっさんがアクセルを踏み込んで、僕らのジープは世紀末の群れに突っ込んでいった。

「『プルチネルラ』、『グリモルディ』、あとお願い」

僕らの心配はなしか。



僕らがトラックの前に出るとトラックを守るべくサイドカーやサンドバギーが立ちはだかる。

「煙幕を使います」

ジープに取り付けていた筒からスポンと音を立てて円柱が前に飛んでいき、サンドバギーの群れの真上で炸裂した。

『タカの目』で見ると煙の中で群れが混乱しているのが見えると同時、

「全速!」

芋ジャージの号令とともに僕らが乗るジープが加速する。

混乱している間に煙の中に突っ込んで引っ掻き回してやろうというわけだ。

しかし、要領よく煙を躱したサンドバギーとサイドカーがそれを阻む。

火炎弾(ファイアボルト)

芋ジャージが奇跡(スキル)を発動した。

見慣れた聞き慣れた使い慣れつつあるその名前とともに、パーに広げた指の先っちょからそれぞれに火の玉が出現した。

「はっ!」

放たれた10個の火球はグネグネカクカク曲がりながら全部狙った目標に命中。

なにそれずるい。同じ奇跡(スキル)なのになにその不平等。

「突っ込むぞ掴まれ!」

おっさんが珍しく大声を張り上げると衝撃でジープが揺れる。煙の中で立ち往生していたモヒカンを撥ねたらしい。

「風起こし(ゲイル)」

芋ジャージが起こした突風によって進路上の煙が晴れた。

「正面にトラック!」

「うおおおおお!」

火炎弾(ファイアボルト)

火炎弾(ファイアボルト)!」

DQNがマシンガンを、僕と芋ジャージが火球をぶつけるけど全身に張り付けた鉄板のせいでトラックの勢いは止まらない。

「ダメだ効いてない!」

「接近するまで撃ち続けてください!」

おっさんはなおもアクセルを踏んでトラックを目指す。

「ミサイルだ!」

目標となるトラック、その荷台から一瞬顔を出したモヒカンがさっき使ったものと同じミサイルを撃ってきた。

まずいぞ、あれは避けられない。

「デコイ」

「なんですそれ!?」

「熱源!」

火炎弾(ファイアボルト)!」

芋ジャージに促されるままに火を生み出す。

「がっ!?」

そして撃ち出す直前襟首を掴まれて地面に引き倒された。

火球は真上、何も居ない方へ。


ドォン!


僕らのジープを目指していたミサイルは直前で進路を変え、火球に当たって爆発した。

「伏せろ!みんな伏せろ!」

タカの目で見たトラックのコンテナ、びっしり貼られた鉄板の中に見つけた小さい隙間から銃口が覗いた。

「ちくしょー!」

「さっさと伏せろこのバカ!」

無謀な戦いを挑もうとするDQNを引き倒し床に押し付けた直後大量の銃弾が僕らのすぐ上を横断する。

これじゃ頭も上げられない。

「もう少し!」

ジープはなおも加速する。

運転しているおっさんを狙おうと銃弾が襲いかかり、フロントの防弾ガラスが蜘蛛の巣になってしまった。

これ、前が見えないんじゃ・・・。


アクティブスキル:制地


おっさんが奇跡(スキル)を発動した。

これは一瞬で周辺の地形を把握すると言った代物、だったはず。

前が見えなくなってもこれで位置関係は把握できるというわけだ。

そして横合いからジープがトラックの前に躍り出る。

躍り出ると同時、ジープの後ろから金属片がばらまかれた。

おっさんがジープにつけていた残りの撒菱をばらまいたんだ。

撒菱に突っ込んだトラックは盛大な破裂音とともにガクンと体勢を崩し、横転した。

どうやら、タイヤは防弾ではなかったらしい。

これであとはバギーとバイクだけ、全自動ジープでなんとかなりそうだ。

「・・・離脱する」

「了解」

「はー疲れた」

気が緩んだのは一瞬だったように思う。

しかしその一瞬で気の緩みは文字通り吹き飛んだ。

ジープの後輪が爆発して爆風で僕らはジープごと空中に浮き上がった。

タカの目でかろうじて見えたのは横倒しになったトラックから這い出したモヒカンがミサイルを飛ばした筒を持ってたところだ。

そして僕らは重力に捕まって地面に、


パッシブスキル:自己防衛。




痛い、生きてるのが嫌になる一歩手前の痛さだ。

でも死なずに済んだ。

自己防衛の奇跡(スキル)のおかげでなんかよくわからない受け身をとってなんとかなったらしい。

良かったかは知らないけど。

他の人達はどうなっただろう。

燃料に引火したのかジープは黒煙を巻き上げて燃えている。

おっさんはこれじゃ助からないか・・・。

「生きてますよ―」

燃え上がる運転席から短い手が出てきた。そういや炎耐性があるとか言ってたな。

「しかし体が挟まって動けないようです」

「火が消えたら引っ張り出します」

「イワンくんとシルベリーさんはどこでしょう?」

「探してみます」

程なくDQNは見つかった。

少し離れたところで気を失ってたが悪運の強いことにいまだ五体満足だ。

とりあえず人工呼吸なり心臓マッサージなりしたほうがいいのかな?

「・・・っ、んん」

そう思ったけど人工呼吸も心臓マッサージも必要なくDQNは目を開けた。

運のいいやつだ。自己防衛なしでこの程度の軽症なんて。

DQNはぼやけた目で僕を見て、胸元に手を当てると上着のボタンがいくつか外れてることに気づいた。

「な!?な、な?」

「ああ、それは僕が外したんだ」

心臓マッサージしようとしてのことだけど不要になってよかった。

「っ!」

パッシブスキル:自己防衛

DQNが振り上げた手を全自動で避ける。

DQNは何やら青ざめた顔で胸元を隠して僕から後ずさる。

なんなんだこいつ?

僕の疑問に答えるものは居なかった。

代わりにモヒカンたちが僕らを取り囲んだ。


ああ、これはまずい。

僕らは丸腰、取り囲んでるモヒカンたちは短いマシンガンで武装してる。

火炎弾(ファイアボルト)で一人は倒せると思うけどそれをした後残りのモヒカンに蜂の巣にされるのが関の山だ。

「おい立てこのチビ!」

「放せ!放せよ!」

DQNが暴れるがチビでガリのこいつが筋肉見せびらかしてるモヒカンは振り解ける道理はなく、立たされたて大の字に広げられてしまう。

「や、やんのかおまえら・・・」

懸命に虚勢をはってモヒカンを威嚇するDQNだったけど震えて歯がぶつかる音と内向きになってガクガクしてる膝はモヒカンには逆効果だったようだ。

「ぎゃっ!?」

短いマシンガンの柄でこめかみを小突かれるとあっさり膝から力が抜けてへたり込みそうになった。

「がっ、ぎっ、あがっ!?」

しかしモヒカン共はへたり込むことを許さず再度DQNを大の字にすると全身くまなくタコ殴りにしていく。

「ウルア!」

「ゴブゥ!?」

モヒカンが無防備で腹筋皆無のDQNの腹に拳を撃ち込むとDQNは悶絶、

「う、うげええ・・・・」

体を広げられてるからうずくまることも腹を抑えることもできず胃液を吐き出すことしかできない。

「げほ、ごほっ・・・」

「おいチビ、次はどこを殴ってほしいんだ?言ってみろよ?ん?」

「ひっ!?ひいい」

なけなしの虚勢が消し飛んだDQNはもう怯えることしかできない。股から漏れ出したものがズボンを濡らし、それがモヒカンの嘲笑を誘う。

「おいお前はおとなしいじゃねえか」

ヘラヘラしたモヒカンの一人が今度は僕に話を振ってきた。

「いやまあ、逆らっても無駄かと思って」

僕が最も嫌いなものは無駄な努力なんだ。

「そっちのチビと違って物分りがいいじゃねえか」

「僕は大人だからね。成人式も済ませてるんだ」

「そうかい!」

パッシブスキル:自己防衛

僕の模範解答の答えとして放ったパンチがアゴに命中した。

痛い。自己防衛のおかげで舌かまずに済んだけどメッチャ痛い。

「おいおい、もうダウンか?さっきのチビのほうがまだガッツがあるぞ?」

「そっちのバカと違って僕は繊細なんだ、ごはっ!」

死んだふりしてた僕の腹に蹴りが入れられる。

ひどい話だ。暴力反対。

「やめろ!やめろよ!」

やめときゃいいのにDQNが耳につく高い悲鳴を上げてるな。

「なんだこのチビ、じゃてめえが代わりに殴られてくれるってか?」

いいねそれ、僕は賛成。

「ひっ!?」

「けっ、情けねえ」

全くだよ、繊細な僕に代わって被害担当になってくれると期待したのに。

「さて、お前ら異人共は俺らの仲間を、殺したんだ。俺らの前にガソリンをばらまいた。そのお前らが俺らを、世紀末と呼ぶぅ!」

「いやそのとおりじゃ、いてっ!」

「そういうわけでお前らには俺らと同じ目にあってもらうぜ」

そう言うとモヒカンの短いマシンガンから飛び出した銃弾が僕の左脚を撃ち抜いた。

「うがああああっ!」

バシャッ。

地面に転がった僕とDQNに臭い水がかけられた。

モヒカン共は臭い水が入った缶から地面に臭い水を撒きながら僕らから離れる。

わかった、これはガソリンだ。

答え合わせと言わんばかりにモヒカンが火を付けると地面に撒いた臭い水が燃え上がった。

まずい、このままだとダイハード2みたいなことになってしまう。

なんとか逃げたいけど脚撃たれてて身動きができない。

「おい、何してんだ?」

見ればDQNが走り寄って来て僕を引っ張ろうとしてる。

「何って、逃げるんだよ!」

「一人で逃げろよ」

火が追ってくるスピードはそこまで早くない、走ればなんとかなるだろう。僕は無理だけど。

「見りゃ分かるだろ?一人だけなら助かるんだって」

「嫌だ!」

DQNは涙と鼻水を流しながら僕を引っ張ろうとするけどその進みは悲しいほどに遅い。

このままだとふたりとも死ぬな。

このDQNを助けたいわけじゃないけど一人助かる状態で二人死ぬのは好きじゃない。

好きじゃないことを黙って受け入れるのも面白くない。

脚が満足に動かない以上動くところを使おう。

アクティブスキル:タカの目

ああ、面白くない、逃げ回る僕らを見てゲラゲラ笑うモヒカンの一団が真っ先に見えてしまった。

火が近づいてくる。

これはほんとにまずい。

「なあ、もういいって、そろそろ逃げろよ」

「嫌だあああ!」

聞き分けのないチビだな。

こいつがもたもたしてるからもう逃げても間に合いそうにないじゃないか。


突風(ゲイル)


「え?」

「わああ!?」

突然吹いた強風で僕とDQNの体は10メートル以上吹き飛ばされた。

ゴロゴロ回る視界に映ったのは全自動ジープとその上に乗った、銀髪の芋ジャージ。

「・・・もう大丈夫」

形勢逆転だ。

モヒカン共は蜘蛛の子を散らすように、

火炎弾(ファイアボルト)

芋ジャージ、否、白銀姫:シルベリーホワイトが放った10連火球によって残らず焼き払われた。

「物資の輸送は成功・・・これより緋本原に向かう・・・」

芋ジャージ、否、白銀姫:シルベリーホワイトは小柄な体に似合わない力で僕とDQNを改造ジープの荷台に投げ落とす。

どうやら僕らは助かったらしい。

荷台では先に救助されたらしいおっさんが船を漕いでいた。

そういやこのおっさんなにげに運転しっぱなしだったもんな。

「あー死ぬかと思った」

DQNはさっきまで泣きそうだったのも忘れて大きく息をつくとポケットに手をのばすそこから取り出したものを口に近づけ、


パッシブスキル:自己防衛

僕の両腕が全自動でDQNの首に巻き付き、そのままDQNを絞め落とした。

「ガソリンかかってんのにタバコ吸うなこのバカ!」




ジープが吹っ飛んだ時、芋ジャージは局地転移で別行動中の全自動ジープに移ったらしい。

その後すぐ救援に向かおうとしたけど、トラックにもモヒカンが殺到していたためそいつらを追い払ってて来るのが遅れたということだった。

後数秒戻ってくるのが遅かったらこんがり肉になっていたことに対して言いたいことはあったけど全自動ジープがマシンガンを向けてたから広い心で許すことにする。

ジープの荷台から周りを見れば迷彩服のおっさんあんちゃんたちが輸送トラックに群がって積荷を降ろそうとしてる。

タカの目で迷彩服のおっさんあんちゃんを見るとこないだ赤く光ってたのが今度は青だ、今回は国防隊は味方ということだろう。

「あんちゃんご苦労さん!」

「いや―助かったわ」

トラックに乗っていた迷彩服はトラックから降りるや舗装された道路に気色悪い頬ずりをした後、軽いノリで例を言って去っていった。

「よぉ小僧まだくたばっとらんかったか」

そして現れるドワーフ顔、東城少佐。

その両脇3歩後ろには迷彩ばかりの中にひときわ映える女の子二人。

向かって右は紫髪のスラッとした美人、ハーピーさんだ。

スーツ姿にスラックスがスレンダーな体のラインを引き立てて実にファイン。

美人は何着ても美人だけどこれは特に相性がいいなうん。

向かって左は偉そうな軍服を来たタレ目でぽっちゃりした女の子だ。確か朝陽とか呼ばれてた。

こっちはよく知らないけど年齢的には15-6くらいじゃないかな。

可愛いとは思うけど手に持ってるでかい槍みたいな武器の威圧感の前では霞んでしまうな。

それにしてもこの蛮族みたいなおっさんが両手に花みたいな光景を見せつけてくるのは非常に面白くない。

「さっき銀さんと報奨金の交渉が終わったとこじゃけえ明細を渡しとこう思うてな。まあ見てみい」

そう言ってA4サイズのコピー用紙を僕ら3人に渡してきた。


報奨金:300,000,000縁


なんか数字が大きいけどこれはどのくらいの値打ちなんだろう。

日本円と同じ値打ちなら大卒の生涯年収くらいの大金には思えるけど、そう思わせておいて実はジンバブエドルみたいなオチは嫌だぞ。

ていうか、税金とかで金取られたりするだろうから実際に必要なのは手取りだ。

少し下に目を動かすと天引きの金額が出てきた。


差し引きとしては

高機動車4輌喪失:45,000,000×4=180,000,000縁

弾薬費:6,000,000縁

燃料費:3,000,000縁

高機動車改造工賃:10,000,000×6=60,000,000縁

訓練用ドローン修理費:10,000,000×5=50,000,000縁


総支給:1000000縁


一気に減ったなおい。

ていうかジープ高ッ!あと1台やられてたら大赤字じゃないか。

ていうか訓練用ドローン修理費ってなんだよそれ!?

「報奨金は4人で分けてくれ」

てことは一人あたり25万縁ってことか。

「えっと、ちなみに25万ってどのくらいの相場なんでしょう?」

僕が気になっていたことをおっさんが訊いた。

「我々の旅団の相場ですと上等兵の一ヶ月分相当になります」

このドワーフ顔、年長者には敬語なのか。

僕にしゃべるときの汚い方言はどこ行ったんだ。

まあでも、人並みにの収入はあるみたいで良かった。

「・・・報奨金を振り分ける」

そして芋ジャージが混ざってきた。自分に配られたA4の裏に芋ジャージがボールペンを滑らせる。


シルベリーホワイト:700,000縁

大先生:100,000縁

犬の糞一号:100,000縁

チビ野良犬:100,000縁


なんだコレ。報奨金が0.4上等兵まで下がってるぞ。

「私が一番敵を倒した」

「ちょっと待てよ横暴だぞ!」

「私達もトラックを倒したり燃料や弾薬補給みたいな雑役もやってるんですよ!?」

「大体一番損害出してるのシルベリーさんじゃないですか」

「『プルチネルラ』」

「「「ひいいいいいいい!?」」」

くそう、もっと文句を言ってやりたいけど全自動ジープのマシンガンがこっち見てるから広い心で許すしかない。

「シルベリーさん、ケチで有名ですから」

ハーピーさんがおかしそうにくすりと笑った。

そりゃ、ハーピーさんには面白いのかもしれないけど僕は今0.4上等兵になったんですけど。

「あとこれは俺からのチップじゃ」

そう言ってドワーフ顔は僕らにB5くらいの本を渡す。

コマで区切られたページに絵と吹き出しを組み合わせた構成は漫画のそれだ。

「何だこれ」

「これは週刊少年リープで連載中の『祓魔の一刀』ちゅう漫画でな、大翔時代の緋ノ本を舞台に主人公の灰司が人を喰う魔人と戦う物語なんじゃ魔人は魔法っちゅう能力を使う上に首を斬るか紫外線を当てる以外の方法では倒せんでな灰司は魔人に殺された家族の仇を取るため討魔隊に入隊して魔人を倒すために仲間と旅をするんじゃ


うわ出たよオタク特有の早口誰か止めろよ。

このおっさんを止めるべき迷彩服の連中はトラックから降ろされた漫画の山に殺到してて誰も見ちゃいない。

ていうかトラックに積んでたの全部漫画かよ。


今日運んでもらった最新刊ではこれまでの功績を認められた灰司が討魔隊の精鋭『要』の一人である千石さんとバディを組んで6人いる最古の魔人の一人『天城』に挑む展開で旅団の再重要案件だったんじゃ」

いや待てよ漫画が最重要って大丈夫なのか国防隊。

「この千石さんって人、なんだか懐かしい感じがします」

理知的なハーピーさんはこの暴走ドワーフを止めてくれると期待したけど彼女も愛読者だった。

「なんだか、恭史郎さんを見てるみたいで・・・」

誰だよ恭史郎って。

その時僕は気づいた。ハーピーさんの左手薬指に銀色に輝く指輪がついてることに。

精神的苦痛を受けた。

「そうなんですよ、千石さんは熱血に見えてすごく冷静で合理的な人なんです。彼は熱い魂をクールな頭脳で制御できる男なんですよ。それに彼はお世辞を言わない。だから自身の才能の限界に悩む灰司を励ますシーンは同情などではなく本当に彼の実力と才能を高く評価し認めている証なのです。これが同じ『要』の富永さんだと情に流されがちになるのでこれほどの名シーンにはならないんです」

共通の話題を見つけたドワーフ顔が下心を隠そうともせずオタク特有の早口を浴びせかける。このおっさんには指輪が見えてないんだろうな・・・。

見えた時にどんな顔するかのほうが漫画の展開より気になる。

と思ったら同じこと考えてる人園が他にも居た。

ドワーフ顔のそばに居たタレ目の女の子がハーピーさんにアタックをかけるドワーフ顔を面白くなさそうに見てるぞ。

わかった、あの子はハーピーさんが来てドワーフ顔がかまってくれないから面白くないんだな?

「君も話に入れないクチ?」

タレ目の女の子は声をかけた僕を一瞬見るとすぐそっぽを向いてしまった。

「ところで、我々が道中で遭遇したモヒカンはなんだったんでしょう?」

このままではドワーフ顔は永遠に喋り続けるとでも思ったのか、荷台で休んでたおっさんがドワーフ顔に質問した。

ドワーフ顔は話を止められて不快、といった感じは特に見せずおっさんに対応する。

ほんとに年長者には礼儀正しいんだな。

「あれは『転売屋』です」

ドワーフ顔の返答には深い憤りが感じられる。

「命を削って職務に従事する国防隊にとって娯楽は欠かせないものです。そのため我々は娯楽の入手、提供には多額の投資をしているのですが、中にはそれを悪用して私腹を肥やそうとする許しがたいゴミどもがいましてね」

転売屋が許しがたいゴミだというのは大いに同意するけどそれがモヒカン肩パッドとはどうも結びつかないぞ。

「人気のコンテンツが出るとその流通を遮断して強奪、定価より遥かに高額な金額をふっかけて暴利を貪ろうとする忌むべき害虫です。特に『討魔の一刀』は市場まれに見る大ヒット作なので今まで以上に転売屋の驚異は大きいのです。実際、『満帆(みほ)』『夜鳴子(よなご)』の旅団はかなりの被害を受けているとの報告があり、それを受け我々の旅団は外人部隊(レジオン・エトランジェール)に依頼をかけた次代です」

「それにしても『転売屋』ってあんな武器を持ってるものなんですか?バイクにトラックにミサイルまで」

日本にいた頃はそんな武闘派な転売屋は存在しなかったからな。

「『転売屋』にはだいたいバックになる母体がある場合が大半です。ほとんどが『警察』『文化省』『交通省』などといった旅団の自治を疎ましく思っている中央政府の連中が嫌がらせで雇っている場合が多いですね。あとは金のない旅団が小遣い稼ぎで転売を行う場合もあるので、正規の国防隊でも苦戦することは珍しくないのです」

なんてめんどくさい連中なんだ、ていうかあいつら公務員かよ。

ツッコミが追いつかないぞどういうことだ。

「現在緋ノ本では旅団による自治が皇帝陛下によって認められているのですが中央政府にはそれを快く思わないものも多く影に日向に旅団の弱体化を目論み暗躍しているのです」

そのような中無事に物資を届けてくださり感謝の言葉もありません。

と、ドワーフ顔は深々と頭を下げた。

「そういうわけで皆様がよろしければ本日の夕食は小職の奢りとさせていただきたいのですがいかがでしょうか?」

「喜んで!」

なんだこのドワーフ顔いいとこあるじゃん。

なんたって今僕は0.4上等兵だからね、食費が浮いて出費が減るのはいいことだ。

「ハーピー殿も積もる話があればこの機会に」

「温情に感謝します」

多分ハーピーさんの前でいいカッコしたいってのが本命なんだろうけどおごってくれる人にはちゃんとお礼を言うぞ。

「いででででで」

そういや脚撃たれてたの忘れてた。このままじゃ歩けないぞ。

「朝陽、治してやれ」

「はーい・・・」

タレ目の子がジープに乗り込んできた。

すごいな、でかい槍を棒高跳びみたいにして一気に飛び乗ったぞ。

いやいやちょっと待て、治すってめっちゃ痛かった記憶が

「ヒーリング」

「いでででえでえでえ!」

銃弾が脚を突き抜ける感覚の逆再生に僕の悲鳴が緋本原に響き渡った。







To_be_Continued.


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ドッグシットワンさん、自動防衛ぬきでも味方に物理的鎮圧しかけたり、心の中とはいえ芋ジャージ呼びしたりと、徐々に転移先の空気に毒されつつありますね。 あと、ハーピーちゃんの身につけてる指輪へのコメントに…
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