Prinz_Eugen_4
更新、今回は戦闘のみとなります。
Prinz_Eugen_4
「敵襲ーーーーーーーーーーーーーー!」
「やかましい!」
絶叫を上げる鳩村上等兵の頭を蹴飛ばして黙らせつつ東城少佐はコンソールとPPIスコープから外部の情報を分析する。
大型の理力反応が複数、一直線にこちらに突っ込んで来る。
世界転移するに当たり、神器が持つ世界の座標をトレースしたが、その世界の詳細な位置は大きな理力がある場所しか指定できなかった。
それが今回は外来種の大群だったわけだ。
今も眠っている神器:蒼空剣が覚醒のために理力を求めていることも影響しているのかもしれない。
「やべーよ!突っ込んでくる!よけないとぶつかる!」
パーン!
指示を待たず転舵しようとした鳩村上等兵の耳元に東城少佐の六連発銃が噛みついた。
「ぎゃあああああ!?」
「進路を維持せえ、敵前逃亡で処理されとうなけりゃな」
現時点で異世界に転移完了しているのは先頭の機動祭壇2輌のみ、今転舵して陣形を乱せば転移中の後続が次元の狭間に放り出され部隊は壊滅する。
という説明は鳩村上等兵にはしている暇はなかったが、上等兵はきちんと命令に従い進路を維持する。
「朝陽、準備せえ」
「うん、いくでトリ女」
兵員室の敷島少尉に指示を出す。
理力反応目がけて転移する時点でこういう事態は織り込み済みだ。
だから防衛のための戦力はすぐ出せる位置に置いておいた。
「人!人がいる!」
鳩村上等兵がのぞき込んだペリスコープ、外来種の大群の手前に別の集団がいる。
手が2本足が2本なんか動物に乗ってるやつもいる。
この世界の原住民?
外来種に追われているのか、それとも戦う気だったのか?何か長い武器持ってるやつもいる。
「踏み潰せ」
鳩村上等兵の報告を鑑みてなお東城少佐の命令に変更はない。
人がいるから何だというのか。
縁もゆかりもない他人の命と麾下の兵員の命、どちらの値打ちが高いかなど赤ん坊でも分かることだ。
という説明を鳩村上等兵にするのは面倒だったが六連発銃の撃鉄が起きる音を聞いた鳩村上等兵に抗命の選択はない。
命令を遵守した鳩村上等兵の操縦を遵守した機動祭壇は状況に対応できない原住民を命令通り履帯に吸い込んでいく。
「ひいいいいいいいい!」
異物を噛み込んだ履帯の感触に鳩村上等兵が悲鳴を上げる。
鳩村上等兵の足から不快感が消えたタイミングで、外来種が機動祭壇に狙いを定めた。
転移とほぼ同時に戦端が開かれた。
この状況は想定通り、想定通りに兵員室を出て車輌の屋根から朝陽とセシリアは前方を見る。
「迎撃せよ!」
ー兵装機動
想定通りの命令を直ちに実行。
朝陽は自身の得物、槍と斧を組み合わせた機械の武器を起動、迷彩服が分解され、緑の鎧を纏い指揮車輌の前面に降り立つ。外来種、魔物の中で足が速い個体が朝陽に突進していく。
大型の魔物は小さい護衛をたやすく蹴散らせると判断したのかまっすぐ朝陽に飛びかかる。
ー溶断刀
朝陽は魔物が振り下ろした前足を、重い機械の武器をより速く振り抜いて切断。
ー重力斬
体勢を崩し地面に落ちた魔物に状況を理解する時間も与えず、朝陽は機械の武器、その斧の部分で頭部を叩き潰した。
「トリ女!」
先頭を走る車輌は2輌、朝陽を手強いと判断した魔物の一部がもう1輌に向かっている。
呼ばれる前に、既にセシリアは動いていた。
空気抵抗になる上着を脱ぎ捨て、もう1輌の援護に向かう。
ーアクティブスキル:飛翔
ーアクティブスキル:加速
ーアクティブスキル:縮地
移動系奇跡多重起動による高速移動で機動祭壇に飛びかかろうとした魔物の眼前に一瞬で到達。
同時、腰の刀を抜き放つ。
ー風刃
圧縮空気の刃が地面を蹴ろうとした魔物の足、その腱を切断。移動出来なくなった魔物が地面に倒れ、機動祭壇が踏み潰す。これで終わりではない。
後続の魔物はなおも機動祭壇に向かってくる。
「後続車!転移完了次第援護に向かえ!」
楠大尉から通信が入った。
援軍が来るまで先頭車輌を護衛する。
「おりゃああああああああ!」
朝陽は群がってくる魔物を次々に薙ぎ倒し前進する。
自身の体よりも大きく重い武器を自在に操る筋力、それを持続させる膨大な体力。
そのどちらもセシリアにはないものだ。
ー風刃
セシリアに狙いを定めた魔物を空気の刃で迎撃する。
それは金属を含んだ固い外殻を貫くには至らない。
「・・・」
脅威ではないと判断した魔物が反撃のために金属質の腕を振り上げる。
ー風刃
開いた外殻の隙間に空気の刃を撃ち込んで行動不能にする。
朝陽であれば得物の一凪で済む相手だ。
セシリアにはそのような戦い方は出来ない。
弱い部分を探し、そこを狙うしかない。
強い体、強い命。
羨ましい。
あのトリ女、やはり強い。
移動強化系奇跡の併用による奇跡による高速移動は間合いの概念を消し飛ばす。
向かってくる相手は朝陽と教官が作った兵装でどうとでも出来る。
だが分散して複数の目標に向かわれたら対処は困難だった。
トリ女、妖鳥は目まぐるしい高速移動の中、集団で機動祭壇に向かう外来種の動きを正確に分析し適切に対処している。
ー重力斬
一撃で倒した外来種、それは囮だった。
倒した死体に身を隠していた小型外来種の群れが朝陽の背後に抜けていく。
「くっ」
兵装の腰部にマウントした小型ミサイルで追撃、かろうじて教官の車輌への接近を防いだ。
飛び道具は有限。
こういう攻め方を何度もされるといつかは抜かれてしまう。
的確な判断、精密な奇跡の制御、それが出来るトリ女ならたやすく追いつき、対処出来る相手だ。
外来種の動きが変わった。
敷島少尉が護衛する指揮車輌には小型外来種が散開、妖鳥が向かった側は硬質な甲殻を持つ外来種が集結。
両者がそれぞれ苦手な相手を差し向ける、判断が早い。
「野生ならそろそろ逃げを打つ頃じゃがこいつら何モンかが操っとる可能性があるのう」
「どーすんだよ!」
「フルブレーキ!朝陽!戻ってこい!」
ー爆炎
敷島少尉が兵装を横に振り抜いて扇形に爆風を発生、さらに小型ミサイルを全弾ばら撒いて後退する。
ー旋風
同時、妖鳥も護衛対象の停止を見て外来種を足止め、広範囲を空気の渦で拘束する。
「よくやった渡来人!」
動きを止めた大型外来種の頭部と胴部に穴が開き、はじけ飛んだ。
「姫!待たせたな!」
同時、朝陽の弾幕をくぐり抜けた小型の群れ、その頭上から炎が降り注ぐ。
「装甲車は先頭を護れ!少佐!輪形陣の中へ!このまま突破する!」
後方には硝煙を上げながら速力を上げる機動装甲車、緋本原旅団の転移が完了した。
「まずは一段落じゃのう」
「なんかすげー人撥ねてんだけど」
後方では陣形を組み直す車列に巻き込まれて原住民が次々に履帯と車輪の餌になっていく。
「右前方に丘!」
「よし、そこに陣地構築しよう。無人機を飛ばして周囲を偵察する」
少々のアクシデントに見舞われたが、異世界調査の初日は順調にいきそうだった。
to_be_continued




