Prinz_Eugen_2
久しぶりの更新
Prinz_Eugen_2
政略結婚
貴族の娘が他国の帰属に嫁ぐ。
セシリアが生まれた世界では特に珍しい話ではなかった。
そして、私第二王女セシリアに縁談が持ち上がることも驚くような話ではなかった。
「ああああああああああああ、どうしようどうしようどうしようセシリアが馬の骨に取られてしまう」
嫁ぎ先の国王と話をしてきたお父様はうろうろと部屋の中を歩き回っていた。
「落ち着け!今更慌てたってどうにもならねえよ!」
お父様お諫めたのはヴァルターお義兄様。
細いお父様と向き合うと幅の広い体がお父様を覆い隠す。
お父様はお義兄様の後ろから聞こえる大きな声を出した。
「黙れ!わしに指図するな!だいたいお前がアリシアに手を出さなければまだ8つのセシリアを出さずに済んだんだぞ!」
「なんだてめえ!じゃあ13のアリシアなら良かったのか!?てめーの孫共々差し出すか?あぁ!?」
「そんなことは言っとらん!」
「じゃあ2歳のエミリア殿下か!?だいたいてめーの国がまともに軍備してりゃそもそもこんなクソみてーな縁談はなかったんだぞ!?てめーの怠慢を棚上げしてんじゃねえぞクソボケが!」
「言わせておけばこの、ペーネミュンデの猿め!今日という今日は許せん!」
「やるか!今年のクリスマスプレゼントはてめえの墓石だ!」
お父様の杖に精霊が集まっていくのと同時、お義兄様の袖の中から小さな刃物が飛び出す。
「やめなさーーーーーーーい!」
そこにドアを蹴飛ばして飛び込んで来たのは第一王女、アリシアお姉様。
「いい大人が二人してみっともない!喧嘩なら外でやりなさいな!」
固まった状態の二人はお姉様と私を見て、もう一度お互いを見る。
「上等だ表に出ろや!」
「忌まわしい猿め!今日という今日は身の程を教えてやるぞ!」
二人は罵り合いながら外に出て行った。
「全く・・・」
二人が出て行ったのを見届けてお姉様は私の前に腰を下ろす。
「あー、しんど・・・」
座るとお姉様の大きくなったおなかが昨日より大きくなっていた。
中ではお姉様とお義兄様のお世継ぎが育ってるとお姉様は教えてくれた。
「不安かもしれないけど、結婚ってそんな悪いもんでもないわよ」
お姉様は薬指の指輪を見せてくれた。
お義兄様から贈られた聖銀の指輪はお姉様の褐色の指によく映えて綺麗に見える。
私の国とお義兄様のいたペーネミュンデは最近までずっと戦争してたのだけど、あるときお義兄様とお姉様が出会って恋に落ちて結ばれたことで戦争が終わったと教えてくれた。
「あなたも、辛いこともあるけど、きっと良かったと思える日が来るわよ」
私が嫁ぐイシュトバーン王国は1000年続く強国、強国との友好関係を強固にするための結婚、責任は決して軽くはない。
だからお父様はずっと反対していたし、お義兄様はお姉様を行かせたくなかったとずっと言っている。
ー恨むなら俺を恨んでください。アリシアは悪くない。
「二人とも難しく考えすぎなのよ。この話はあっちから来てる話なんだから、あなたのことも大事にしてくれるわよ」
あなたは私の自慢の妹なのだから。
お姉様の褐色の手が私の白い手に重なる。
「嫁いだら毎日手紙を書きなさい」
挙式の日は来週まで迫っていた。
懐かしい夢を見た。
セシリアがまだ元の世界にいた頃の夢。
「総員準備にかかれ!武器弾薬、食料をケチるな!金子を出すのは財団だ!」
「「「「サー!イエス!サー!」」」」
少しうたた寝をしていた。
セシリアが天幕から出ると緋本原旅団の兵士達が作戦に向けて準備している。
日差しが暖かい。
セシリアのいた国は雲が厚かった。
この世界で過ごした時間は元いた世界で過ごした時間よりも長くなったけど、緋ノ本の日差しはセシリアにとって慣れることはなかった。
そして、これからも慣れることはないのだろう。
「おお妖鳥殿良いところに見ての通りこれより新たな作戦が実施されることになりましてねその作戦に妖鳥殿も同行していただきたく立ち寄ったんですなこれより会議を設定するのでご参集いただきたい朝陽、菓子を準備しんさい」
物思いにふけっていると旅団の軍議から戻ってきた東城少佐が声をかけてきた。
この世界に適応した浅黒い肌に分厚い体躯、無精髭をさすりながら傍らの愛人、敷島朝陽に指示を出す。
東城少佐の愛人はぱっちりとした大きな目を細めセシリアを見る。
その一瞬後直ちに指示を実行する。
「それでは作戦内容を説明させていただきますこの度我がベルンハルト財団が研究していた試作一号機『フレズベルク』が完成しましたこのユニットは現在運用中の機動祭壇と同一のプラットフォームを使用しており部品の共通化を図ることでコストダウンを実現していますまあ実情を言えば完成すると思われてなかったので修理で回収された機体から部品を抜き取って段階的に作っていっただけなんですがねいやはや予算がないのは世知辛いですねそうそう
「護さん、早く本題に入ってくださいまし」
東城護という男はいつもこの調子だ。
話し好きな性格だが余計なことを喋りすぎ、段階を踏まない。「おっと失礼」
これから楽しくなるのに。
東城は露骨にそういう顔を向ける。
問題はない。
この男の話をいつ遮っても同じ顔をするから早く遮った方が良い。
「早い話、人工的に異世界に転移する技術が開発されたんで、その実験のために人員を集めとるんね」
東城の話を引き継いだのは愛人の敷島朝陽だった。
技術的に異世界への転移は可能だが行った先に何があるのかが未知数なため、探索、戦闘のための要員が必要になる。
朝陽の説明はそのような内容だった。
「妖鳥殿は飛行の奇跡があるので偵察任務を依頼したい報酬は外人部隊が滞納しているあなたと浄眼鬼の保釈金の減額という形になりますな」
セシリアの所属する外人部隊は明確に旅団に対し立場が弱く、立場が弱い集団にいるお前に拒否権はない。
東城少佐は言外にそう言っている。
言外に、というのは少し違う。
言うまでもないから言わない。
この男は言いたいことには率直だ。
「まあ食うもの着るもの寝るとこは旅団に準備させるんで武器弾薬その他必要なものは準備していただきたい」
ああ、そうそう。と東城少佐が続ける。
「今預かってる蒼空剣セレナリアですが『フレズベルク』を用いてセレナリアから所属していた世界の座標を抽出することが出来るんですね。これを利用すれば狙った座標に転移できる訳ですそういうわけでこちらも使わせていただきますね」
セシリアの心拍が一瞬早くなった。
蒼空剣セレナリアはセシリアが元いた世界からセシリアと共に転移した神器。それが導く世界にこれから向かおうとしている。
それはつまり、これから向かう先は、セシリアが元いた世界ということだった。
元の世界に帰れる。
お父様やお姉様、あの方にまた会える。
緋ノ本に来て10年、もはや叶わないと思っていた願いが今叶おうとしている。
「東城少佐、この作戦、喜んで協力させていただきますわ」
「それが聞きたかった。朝陽、菓子をあげんさい」
東城少佐が指示すると盆に盛られたお菓子がテーブルを滑ってきた。
「教官に感謝しい」
うちがおれば十分なんに。
朝陽は小さく吐き捨てると興味を失ったように自分のお菓子を食べる。
セシリアに渡されたお菓子はとてもセシリアが食べきれる量ではない。
しかし東城少佐は説明の間に同等の量を食べきっており、朝陽はそれ以上の量を平らげてなお食べ足りないのかセシリアのお菓子をチラチラと見ている。
「こんなにいただけませんわ」
「日持ちするんで持って帰ればいいでしょう」
「あ、はい」
to_be_continued




