-the_Sentinel- 第十七.五話
少し脇道に逸れて、本編過去、本土の話になります。
長耳の少年サトーと異世界転生者サージの心温まるふれあいの話になります。
こちらは次で島に流れ着くまでやる予定なのでぜひ楽しんでください。
本土にて
隻腕の異世界人、軍曹率いる異世界の勇者達によって街周辺の火蜥蜴は瞬く間に駆逐された。
時を同じくして『耳なし』の大群が鉄の馬に乗ってやってくる。
「軍曹!着いたで!」
「こりゃ、豊島小佐殿。お早いお着きで」
「なんや汚い瓦礫の山やな。さっさとぶっ潰して工場建るで」
「北に100キロ地点に鉄山があり南には海岸線がありましたわ」
「読み通りやな。石油と石炭が出たら満点や。引き続き偵察頼むで」
「はっ」
少年、サトーが住んでいた街は『耳なし』達の鉄の牛によって瞬く間に取り除かれ、彼らが住む住居が立ち並んだ。
よく遊んだ森は切り開かれ、溶けた炭が敷き詰められた。
「おうサトーあれがパワーショベルあれはブルドーザーやあっちでアスファルト均しとるんがロードローラーやでどうや凄いやろせやさっき補給物資からちょろまかしてきたんや氷砂糖食うか?」
これらは『機械』だ。
軍曹が教えてくれた。
『耳なし』達は街の生き残りに危害を加えることはしなかった。
「わいが指揮官の豊島少佐や。おみゃーらがわいらに協力するなら食うもん着るもん用意したるで」
『耳なし』の頭目、トヨシマという男は恭順する者には危害を加えないと約束し、その約束をよく守った。
サトーは周辺の道案内という理由で軍曹と一緒に行動することが増えた。
『耳なし』のこと、機械のこと、この世界のこと、軍曹は聞けば何でも教えてくれた。
「ええかこれが五式歩兵銃や口径8mm装弾数5発手動装填式や銃床を肩右手で引き金左手をバレルこの3点で支えるんやでそしたら後ろの照門と前の照星を見てみいこれが重なったら撃つんやで」
パーン
肩に重い感触を受けると、筒が向いた先で鹿が倒れた。
「ようやった、命中や」
あるとき『耳なし』の武器、銃の使い方を教えてもらった。
サトーと街の仲間はすぐにこの素敵な道具の虜になった。
仲間に教えるとこぞって使い方を教わるようになり、街を失った悲しみを紛らわすために猟に出るようになった。
そうして銃を使って狩りをすると、『耳なし』の軍が獲物と彼らの道具や嗜好品と交換してくれた。
それから一年、街の生き残り達は豊島少佐の元に集められた。
「わが大隊の開拓は順調に進んどる。これはひとえにおみゃーらの協力と献身によるものや。そこで、皇帝陛下に掛け合ったところ昨日めでたい返答が帰ってきた」
トヨシマは街の生き残りの名前を列挙した張り紙を広げる。
「本日をもっておみゃーらはこの緋ノ本の臣民、皇帝陛下のアカチャンやで」
森林智
森林詩緒
それが、『耳なし』の国、緋ノ本での名前となった。
『耳なし』との関係は良好だった。
異変は急に訪れる。
偵察に出ていた分隊が未帰還となり、軍曹の部隊に捜索命令が出たのだ。
道案内として軍曹と同行したサトーが目にしたのは自分と同じ耳の同胞の集落だった。
「おうおうおう『耳なし』ぃ!誰に断って俺たちの森を切り開いてんだぁ!?あぁ?」
しかし彼らは『耳なし』に友好的ではなかった。
敵対の意図がないことを示すため武器も持たず四起自動車から降りた軍曹を『長耳』達が取り囲む。
「サトー、こいつらなんていうとんねん」
軍曹には彼らの言葉が分からない。
だからサトーが代わりに軍曹の意思を伝える。
二分達に敵対の意図はないこと、行方不明の仲間を見つけたら即座に撤収すること、今後、自分たちと友好関係を築く意思があるなら尊重すること。
それを聞いた『長耳』はゲラゲラと笑い嘲笑する。
「寝言言ってんじゃねえぞ『腕なし』」
サトーが上げようとした歩兵銃の銃口を軍曹が一本だけの腕で押さえる。
「抑えろ」「だって、あいつ軍曹を!」
侮辱した。
怒りが収まらないサトーの銃口を抑え軍曹は次に伝言を伝える。
「あれはなんだ?」
軍曹が指さした先には細長い肉の塊がぶら下がっていた。
その問いに『長耳』達はゲラゲラ笑いながら答える。
あそこに吊してあるのは自分たちが探していた偵察隊だと。
軍曹と同じことを言っていたから同じように対応し、皮を剥いで見せしめにしてやっているのだと。
「こ、このやろう・・・」
サトーの怒りの銃口を軍曹はなおも抑える。
「『腕なし』ぃ、お前も同じ目に遭いたくなかったら俺の靴を舐めな。首の動脈切って楽に死なせてやるよ」
『長耳』の嘲笑に軍曹は淡々と最後の質問をする。
「頭はお前か?」
「あぁ、何言って
瞬間、軍曹に突っかかっていた『長耳』の天地が反転、頭から地面に激突し、頭が半分胴体に埋まり絶命した。
山嵐、ジュードーという軍曹の世界の殺人術だ。
「え、『長』?」
死んだ『長』の息子、サトーより一回り上の『長耳』が間抜けなつぶやきを漏らす。
「よう聞け蛮族、おどれらは緋ノ本、すなわち皇帝陛下の土地に先に住んでる罪で豊島大隊より討伐命令が出とる行儀ようするなら見逃してやるつもりやったがおどれらの意思は尊重したるわ」
宣言とともに、軍曹は先ほど殺害した『長』の死体を盾に『長耳』の陣地に飛び込んだ。
ー変化
軍曹の奇跡。
軍曹の顔が変化する、耳が伸び髪色が緑に変わる。
「なに!?」
怯んだ『長耳』から蛮刀を奪い左腕を切り飛ばすまでを一つの動きで行う。
「ぐあああああああああああああああっ!」
ー変化
即座に左腕を切り落とした『長耳』の顔に成り代わる。
「怯むな!殺せ!」
「どっちをだよ!?」
同士討ちを恐れ、攻撃をためらった者が軍曹によって腕を切り飛ばされる。
ー変化
「ち、ちくしょおおおお!」
「ま、まて、ぐふ!?」
そして、腕を失った者は恐慌状態の味方の攻撃にさらされる。
そうなるともう軍曹の手の内だった。
軍曹は『長耳』の間を移動するだけで恐慌状態の『長耳』が同士討ちで勝手に数を減らしていく。
軍曹は『長耳』の攻撃も意に介さず集落を移動する。「ひっ!?」
そして隠れていた女の左腕を一人ずつ切り飛ばす。
「ちくしょう!どこ行った『耳なし』いいいいいい!」
軍曹の奇襲を恐れた『長耳』は恐怖にせかされるままに守るべき女子供も構わず手当たり次第に矢を放ち蛮刀で斬り殺す。
醜い同士討ち、悲鳴と怒号、同胞への呪詛が鳴り響き、『長耳』は最後の一人になった。
『長』をオヤジと呼んだ若い『長耳』だ。
「こいつどうする?」
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
サトーが指さすと最後の一人は腰を抜かしてへたり込んだ。
「た、たす、たすk、こ、ころ」
涙と鼻水を垂れ流し命乞いを試みるがそれすらできない若い『長耳』。
軍曹はサトーから歩兵銃を受けとる。
初弾は装填済み、片腕の軍曹でも一発は撃てる。
パーン
「うわあああああああああああああああああああ!いやだ、いやだああああああああああああああああ!」
空中に向けて一発、『長耳』は糞尿を垂れ流しながら森の中に消えていった。
「帰るで、あいつら下ろしたろ」
犠牲になった偵察隊の死体を回収し、二人は帰路についた。
to_be_continued




