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迎撃せよ、異世界防衛戦線  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
the_sentinel
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-the_Sentinel- 第十六話

-the_Sentinel- 第十六話




北千練島(きたちねりとう)坑道内 18:00



「うめ、うめ!」

12時間ぶりの食料が空きっ腹に染み渡る。

生きてて良かった。

空挺部隊が持ち込んだ缶詰にレトルトを固形燃料で暖めただけの食料がこんなにうまいなんて。

「おかわりもいいぞ」

大塚大尉が追加でレトルトを鍋に入れる。

空挺部隊は全部で45人いたけどフェイスマスクや『長耳』の攻撃に遭い坑道に逃げ込めたのは大塚大尉麾下の15名のみ。

人員は失ったけどチビマッチョの協力で食料と武器弾薬はいくらか回収できたから食料には割と余裕があるらしい。

「坑道内で温食が作れるなんて・・・」

飯そっちのけで感動してるのはジークフリートのおっさんだ。燃えてる固形燃料の火を眺めてチビマッチョの頭目『金剛』にいろいろ聞いてる。

全くもってどうでもいい飯盒の米がうまい。

朝からずっと食ってた梅干しタブレット、君とはもう終わった関係だ。

日本人は米が本命、この白さ、箸に張り付く粘り、口に広がる甘み、そしてこの抗いがたい血糖値の昂りがその証拠だ。

「煙の処理はどうしているんですか?坑道外に排出すると地上から発見されると思うのですが」

すさまじくどうでもいい。

このおっさんとつるんでから結構経つけど音楽性の違いは埋まらないな米がうまい。

「心配ねーや」

金剛は淡々と坑道の説明をする。

「煙を送風機で横穴に通して冷却しながら排出している・・・」

これで地上に出る煙を最小限にできる、らしい。

ホントかよ。

「渡来人が広めたらしーや」

「俺のじいさんの代に帝国陸軍出身の渡来人が大量に転生(リスポーン)しててな。そのうちの一人だろうな」

あっちはなんか盛り上がってるが僕にとってはどうでもいい。缶詰の魚の味噌煮がうまい。

お湯で加熱してあるから脂が溶け出しててするする入る。

味噌味もあいまってご飯が進む。

口の中の塩分と脂は米で洗い流す。

酸味しか知らなかった味覚がたちまち活性化する。

これぞ日本の食卓。

「この缶詰、経石(つねいし)のだ」

『帳簿係』が魚を食い終わった缶カラを拾う。

「おい犬のクソ一号(ドッグシットワン)、この仕事終わったら漁船乗るか?」

「ふぁんふぁ(なんだようっせーな)」

「見たとこ魚が好きみたいだからな。自分は港湾労働者組合にツテがあるんだ。陸に帰った後は3年は遊べるぞ?飯もうまい」

『帳簿係』からの突然のオファー。


ーパッシブスキル:自己防衛


口の中で楽しんでた魚が全自動で胃にねじこまれる。

「おごぉ!?うbbbbbぐええええええ!?いえ結構です!ゲホゴホ!」

それは知ってるぞ!


『漁船送り』


外人部隊(レジオン・エトランジェール)で素行の悪いやつや稼ぎの悪いやつが送られる懲罰(ちょうばつ)任務(クエスト)だ。

どんなチートじみて強い転生者でも一度漁船に乗ればみんな黙ることはめちゃくちゃ有名だ。

いきなりなんてこと言うんだこいつ。

僕は真面目に任務(クエスト)に従事してるぞ。

「なんだそうか、港湾労働者組合から生きがいいやつを送ってくれとせっつかれてるんだけどな、まあいい、気が変わったら志願してくれ」

その頃には僕もあんたも寿命で死んでるけどな。

「ヨシュア、できたぞ」

「ありがとうイリーナちゃん」

少し離れたところでチビのイワンとマジアカの小デブが飯を食ってる。

レトルトパウチの豆のスープに直接スプーンを突っ込んで食う。

「うお、痛え!」

小デブが腹を押さえる。

アレだ、腹に穴が開いて臓物飛び出してたのを無理矢理押し戻して適当に詰めたのがうまく治ってなかったらしい。

「ゆっくり食えよ」

速く食われたら僕の分が減るからな。

この豆のスープもうまいな。トマトの酸味がいい感じだ。梅干し以外の酸味なら大歓迎だ。

「おかわり」

手を伸ばした『僕の』次のパウチがひったくられた。

「なんだこの野郎いやなんでもない」

ひったくったのは『鉄乙女』だ。

なんだこの野郎は間違いないがそれを口に出すのは生物の本能が制止した。

「Thanks.適正温度です」

そりゃそうだ、僕が僕のために暖めてたんだからな。

『鉄乙女』は僕の心の声を全く意に介さずパウチを開けて中のスープを2秒で掻き込んだ。

「Good.」

空になったパウチは先に食い尽くされた大量の残骸に投げ捨てられ積み重なる。

それにしてもすごい数の残骸だ。どれだけ食うんだこの女。

『鉄乙女』に気をとられた隙に缶詰が奪われた。

「おいそれは僕のだ」

缶詰を奪ったのはシオだ。

ライフルから外した銃剣で器用に缶詰を開けて中の魚を食う。「こりゃうまか!」

なんてやつだ、人から奪った食い物はこの緑の異種族にとって随分うまいらしい。

勤勉を美徳と教えられた日本人(僕)とは相容れない生物だ。

まあいい、缶詰は他にもある。目くじら立ててもしょうがない。

「おい、それはヨシュアのだ」

「うるせえ!」

パンチ

「ぎゃ!?」


チビが・・・、取られたくないなら金庫にでもしまってろ。


「勇者様?」

缶詰を手にした僕にシオがまた近づいてきた。

「なんだよ、これはやらないぞ」

食い終わったらまたしばらく梅干し綾子で飢えと乾きをごまかす生活なんだからな。

「本土ではこれがいつも食えると?」

「金があればね」

なければ梅干し綾子しかないぞ。

あれは地方の旅団から大量に払い下げられてタダ同然だし保存も利く。

「よか・・・サトーは正しいばい」

シオはなんか納得したようでそれ以上は特になにも言ってこなかった。

「それでは、食べながらでいいのでブリーフィングを始めましょう」

おっさんがおにぎりをかじりながらホワイトボードを書く。

打ち合わせるべき内容はさっき中断したとこからの続き。


島に展開された2種類の結界の発生源


・『長耳』の集落

・政府軍の空母


どちらに誰を振り分けるかだ。

僕は終わるまでここで飯を食いたい。

「ナガミミザルの方は自分たちでやろう」

『帳簿係』が増援で連れてきた転生者を顎でしゃくる。

「いいねそれ賛成!じゃ、あとよろしく!」

『帳簿係』の申し出を僕はすぐさま追認。

僕を指さなかったと言うことは僕は行かなくていいということだ。

いいね『帳簿係』、こいつがこんなにやる気になるのはありがたい。

「空母側にはそこの三人を付ける」

ア、ハイ。

今度は間違いなく僕も含まれてる。

「空母側の情報が少ない以上そっちに索敵できるやつは必要だからな」

僕がどうにかやらなくていい理由をひねり出そうとしていたら『帳簿係』の野郎、理論武装(ロジハラ)してきやがった。

「そいつは助かる!引き続きよろしく頼むぞ!」

「Good.」

大塚大尉と『鉄乙女』が快諾しジークフリートのおっさんと握手する。

なんだ、意外とあっさり決まりそうじゃないか。

後残りは、

「おい小僧」

『帳簿係』がチビと飯食ってる小デブに声を掛ける。

「お前ナガミミザルの巣にいたらしいな。自分たちを案内しろ」

「おい待てよ」

『帳簿係』に噛みついたのはチビのイワンだ。

「ヨシュアはけが人だぞ!さっきだって死にそうになってたのに!」

「おいチビ黙れ!」

『帳簿係』と小デブの間に入ろうとするチビを押さえ込む。

「いいから続けて」

僕は文句を言うチビを引き剥がしながら『帳簿係』に先を促す。

僕が楽できてないのに楽するやつがいるのは不愉快だ。

小デブにも働いてもらわないと困る。

「いいんだ、やるよ」

小デブは特に嫌がるでもなく了承する。

それを確認し『帳簿係』は新品の注射を小デブに渡す。

「使えば一度くらいは死んでも生き返る。生きて帰ったら外人部隊(レジオン・エトランジェール)に編入してやる」

「はいよ・・・」

小デブはのっそり立ち上がる。

「シオはどうする?」

あっちが決まったからこっち、魚の缶詰を食ってるシオに声を掛ける。

「ん?勇者様と同行するとよ」

それがサトーの指示らしい。

「その方がいいな」

大塚大尉も問題はないらしい。


そういうわけで内訳が決まった。


1.集落組

・『帳簿係』麾下外人部隊(レジオン・エトランジェール)10名

・マジアカ学園生存者


2.空母組

・ぼく・おっさん・チビ

・大塚大尉麾下空挺部隊15名

・『鉄乙女』

・シオ


「近道があらーな」

目的地の近くまではチビマッチョが作った坑道から見つからずに行ける。

「逃げ道はねーや」

突入後使用した坑道は爆破するから成功しないと戻れなくなる。

と金剛が説明する。

「いいね」

ならやることは一つだ。

残ってる缶詰に飛びつく。出撃まで胃に入る限界まで飯を食う。僕にできるのはそれだけだ。

「時計合わせ!突入は20:00同時に行う!」

現在時刻、19:30ここからは時間との戦いだ。



to_be_continued


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― 新着の感想 ―
冒頭毒ガス訓練始まるかと思ったw
缶詰の魚と白米の組み合わせは最強。 そして、メシウマ絡みの釣り餌と船の誘い、マグロ漁船並にハードな生活や、かつてのフィリ○ン開拓などで起きた荒れ地送り等の予感しかしませんな。
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