-the_Sentinel- 第十五話
-the_Sentinel- 第十五話
ー二式自動迎撃火器乙型:千鳥
侵入者の存在に最初に気づき警報を鳴らして危険を知らせた後今まさに敵と交戦している空挺部隊の相棒。
坑道へ退避する際に通路に仕掛けておいたものだが、新たな侵入者を排除するために弾丸を吐き出している映像が空挺部隊のコンソールに映し出されていた。
「Aが80%、Cが70%」
「瑠璃はA、瑪瑙はC、逃がすんじゃねーや!」
大塚大尉と金剛がそれぞれ自分の手下に指示を出す。
「千鳥?啄木鳥ではないんですか?」
この非常事態に空気を読まない質問をしたのはジークフリートのおっさんだ。
「Nonsense.啄木鳥は豊島火器の登録商標、暮旅団は全品緋本火砲技研製で統一されています」
空気を読まない質問に『鉄乙女』が空気を読まない返答を返す。
「それはいいから、先行ってくれないかな」
侵入者が誰かは知らないけど僕の戦闘力で接触したら僕は二秒でミンチ確定だからな。
だからこの全身武器のゴリラ女に先に行ってもらわないと困る。
『鉄乙女』は外で使ってたごつい大砲ではなく屋内戦闘用の小型マシンガンを構えて侵入者の迎撃に向かう。
「じゃあよろしく」
「Negative.外人部隊には索敵への協力があります」
「ア、ハイ」
僕としては比較的安全なこの部屋から一歩たりとも出たくなかったけどすさまじい腕力で襟首掴まれて引きずられてはどうしようもできない。
「では、ご武運を」
気軽に言ってくれる。
おっさん僕と代わってくれよ。
「Cが30%。増援が必要だ」
「Copy.向かいます」
大塚大尉の指令と『鉄乙女』の返答、シンプルなやりとり。
「向かうってどうやって!?」
チビマッチョどもが掘った坑道は酷く複雑で入り組んでる。
僕の奇跡『鷹の目』は敵の場所は分かっても地形を見ることはできない。
だから真正面にの赤い光点が敵なのは分かるけどそこへたどり着くにはどう行けばいいか全く分からない。
「経路を指示願います」
「僕が聞きたいよいででででででで痛い痛い指折れる」
このゴリラ女ノータイムで指を潰そうとしてきたぞ!?
どこの静岡県警だよ!?
親子丼食えよ!?
『経路はこちらで指示します』
ヘッドセットからおっさんの助け船が来て僕の指は潰れずに済んだ。
実に的確な指示であっという間に目的地到着だ。
侵入者は『長耳』が三人、坑道に乗り込んだものの千鳥の迎撃に遭い横穴に逃げ込んで立ち往生していた。
僕らはその逃げてきた三人を待ち構える形で接触した。
「この耳なしがぁ!」
『長耳』がよく使うライフルは閉所では役に立たない。
先っちょのナイフを取り外して突っ込んでくる。
「Intercept.敵を排除します」
「え、ちょ、ま!?」
『鉄乙女』は僕を『長耳』に向けて投げつけた。
「死ねや!」
その迎撃とばかりに『長耳』の奇跡が僕目がけて飛んでくる。
ーパッシブスキル:自己防衛
全自動回避!
火球と真空波と氷塊をギリギリで躱したところで今度は『鉄乙女』の小型マシンガンが火を噴いた。
僕に注意が向いていた一人が対応できず蜂の巣になる。
「クソがァ!」
二人目は対応できた。すぐに先っちょのナイフを構えて『鉄乙女』へ突進する。接近戦ではナイフの方が速い。
ーパッシブスキル:自己防衛
投げ飛ばされて地面に転がってた僕の体は全自動で対抗策をとる。
投げ飛ばされた時に転がった僕の自動小銃、その肩紐を突進を試みる『長耳』の足を全自動で引っかけた。
『長耳』はすんでのところで踏ん張ってこけずに済んだけどそこに『鉄乙女』の銃弾が降り注ぎ二人目の『長耳』も即座にミンチになった。
今気づいた。
『鉄乙女』とミンチと僕の位置関係、一直線になってる。
間にミンチが入り込まなかったら僕がミンチになってたのか。『自己防衛』が発動した理由が分かったぞ。
「あと一人は?」
「Chase.追撃します」
ああ、そう。僕は正直御免被るけど『鉄乙女』の怪力にはあらがえず引きずられるしかない。
逃げる方向と言えば一つだけ、そこには千鳥が待ち構えている。
もう僕が出る幕ないんじゃないかな?
できれば楽がしたい。
『C弾薬欠乏!』
あ、はい、分かりました。
目的地に来たら先に蜂の巣になった死体がいくつか、地面に伏せる『長耳』、それに銃口を向ける千鳥、銃口は向いてるけど銃口からは全く火を噴かない。カチャカチャ音は鳴ってるから銃自体はちゃんと作動してるようだ。
ホントに弾切れしてやんの。
「は、はは、お、脅かしやがって・・・」
弾切れに気づいた『長耳』がゆっくりと起き上がり悠々と千鳥を蹴り飛ばす。
それでも使命を果たすべく弾の出ない銃口を向ける千鳥を鼻で笑い両手を広げてやれるモンならやってみろと勝ち誇る『長耳』。
ー火炎弾
その背後から放たれた火球が余裕かました『長耳』の背中に命中、腹から飛び出して胴体に穴を開けた。
「あ、が?」
最後の『長耳』は驚愕しながら背後を振り向く。
その視線の先には血まみれで横たわる小太りのマジアカ学生がいた。
僕らが『長耳』の集落から脱出したときにドサマギで逃げてたやつの一人だ。
鷹の目で見るとかすかに青い光が見える。
生ゴミみたいにズタボロになってるのにまだ死んでないのか。転生者の祝福のたまものだな。
「こ、み、み、な
ー火炎弾
小太りのマジアカはギリ動かせる人差し指から放った火球で怨嗟を絞り出す『長耳』の顔面を吹き飛ばした。
こいつ、僕の火炎弾の100倍くらい威力高いな。
「へ、ざま、みろ」
そして小デブは沈黙。まだ死んではいない。
『侵入者は全部で10人います』
『坑道の情報を持ち帰られると厄介だな』
『逃がすんじゃねーや』
僕と『鉄乙女』が2人、小デブが一人、千鳥が3人・・・。
『逃げるんじゃねーや』
紛れ込んできた通信。
子供のような声と独特の訛り、チビマッチョの片割れ『瑪瑙』の声と散弾銃の銃声、『長耳』の断末魔のあと骨を砕く音が聞こえてきた。
鷹の目で青い味方の光が赤い敵の光を見る間にかき消した。
『四人』
1+2+3+4=10
「Clear.Cを制圧」
「じゃあ一度司令所に
『よし、じゃあそのままAに向かえ。そっちはもっと数が多い』
安心する間もなく大塚大尉の激シブボイスが無慈悲な指令を伝えてくる。
「Copy.」
「待て待て待て待て待て待て!」
再び僕の襟首を掴もうとする『鉄乙女』から逃れる。
冗談じゃない。また投げ飛ばされて指を潰されるなんてまっぴらだ。
おまけにAの方が数が多いって?冗談じゃない。
「Shit.」
「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!傷病者!傷病者!」
電流バチバチの棒を僕に向ける『鉄乙女』の注意を全力で生ゴミみたいになってる小デブに向ける。
「こいつはまだ息がある!司令所に連れ帰れば注射で回復できる!」
いやまあ、僕としてはこの小デブが死んでもどうでもいいんだけど、なんなら僕を殺そうとしたやつらの片割れだから死んでくれた方がいいまである。
それでも、Aに向かわなくて済むなら何でも利用するぞ。
自分の命のために他人の命なんか惜しんでられないからな。
『有益な情報が聞き出せるかも知れませんね』
『聞き出せんかもしれんぞ?』
『聞き出してから考えりゃいーや』
「とにかく!僕はこいつを救助するからあとよろしく!」
こんなところにいつまでもいられるか。
僕は司令部に戻るぞ。
残りの敵は『鉄乙女』に任せる。後は知らない。
「クソッ!重いんだよこのデブ!BMI25以上は人権ないって知らねーのかよ!」
愚にも付かない重労働で司令部に戻ると小デブの治療に掛かるぞ。
やると言っても比較的清潔な布の上に転がして注射をぶっさす位のもんだけど。
「た、大変だ、しっかりしろヨシュア、」
チビのイワンがオロオロと慌てふためいてる。なんだこいつこのデブと顔見知りか?
「だめだ、治らない」
「梅干し綾子で治るわけないだろ!注射を使えよ!」
なに傷口に梅干しタブレットをねじ込んでんだ。
アクティブスキル:鷹の目
旅団支給の龍脈活性薬は自身の持つ祝福を強化して回復力を強化する。
その祝福を司る不可視の器官を僕の奇跡で特定し、的確に『龍脈』に注射すればより効果を期待できる。
ちょうど背骨のあたりがいいらしいけど自分で打てる位置じゃないから自分に使うときは適当に打ってるけどな。
「よし、打つぞ押さえろ」
ブスー
小デブに注射を打つと消えかかってた青い光が少し明るくなった。
転生者が持つ自動回復の祝福が効き始めた証拠だ。
小デブがガクガク痙攣を始めた。
ついでに声にならない呻きが上がる。
痛いかクソッタレ回復ってのは苦痛から始まるんだ。
ダメージを受けた痛みを逆再生するような感じだ。
奇跡を使って傷を治すとだいたいこれを味わうことになる。
「押さえろ!」
こうなると痛みで暴れないように周りの人間は押さえるのがセオリーだ。
チビは肩、僕は下半分を押さえ
パッシブスキル:自己防衛
バシュッ!
「うおっ!?あぶね!」
高速で回復する過程で小デブ体内に残っていた機銃弾が飛び出して僕の頭があった場所を通り抜けた。
「大変だ!なんか出てる!」
チビが悲鳴を上げている。
銃弾が飛び出した時に臓物が出ないように縛ってた布が破れて内臓が飛び出してやがる。
飛び出した内臓を掴んで無理矢理体内に押し戻す。
「ガアアアアアアアア亜アアアア!」
フリーになった小デブの足が暴れて僕を蹴り飛ばした。
ちくしょう痛えなんて力だ。
結構な距離飛ばされたぞ。
「ヨシュア!良かった!生きてる!」
痛みに耐えて起き上がるとチビが歓喜の声を上げていた。
どうやら回復したようだ。
「ああ、イリーナちゃん。君もな」
小デブは大泣きしているチビの頭をのそのそと撫でている。
「おい!助けたのは僕だぞ!感謝しろ感謝!」
「ああ、あんたか、そりゃどうも」
なんだそのどうでも良さそうな返事は、実に態度の悪いデブだ。
『A戦闘終了、帰投します』
そうこうしてたら『鉄乙女』から通信が入ってきた。
ほら見ろ、あの筋肉女がいれば僕は要らなかったんだ。
行かなくて良かった。
行ってたら投げられ損になってたところだ。
「どうやら、Aに来たのは味方のようですよ」
マジか。
アクティブスキル:鷹の目
青、味方、ホントだ。
『外人部隊より増援のようです』
かくして、この地下坑道のメンバーは随分賑やかになった。
チビマッチョ軍団
『長耳』
空挺部隊+『鉄乙女』
そして僕ら外人部隊
「全く、お前らが遅いからケツ叩きに遭ってんだぞ」
ブチブチ文句言ってるのは潜水艦で坑道に侵入してきた『帳簿係』だった。
西部のガンマンのような装いに防火斧という戦闘時のスタイルだ。
こいつは絶対に前線には出てこないと思ってた。
てゆーか前線に行きたくなくて『帳簿係』やってると公言してる人間だからな。
こいつと転生者の増援が10名、『鉄乙女』が使う武器がいくつか。
潜水艦で運べる物資だから十分にはほど遠いけど戦力は大分増強されたな。
「それでは、ブリーフィングを始めましょう」
おっさんがホワイトボードを持ってくるのを僕は押し止める。
「その前に飯が食いたい」
当然だ。
僕は朝から梅干し綾子しか食ってないんだ。
このままだと餓死待ったなしだ。
to_be_continued




