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迎撃せよ、異世界防衛戦線  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
the_sentinel
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-the_Sentinel- 第十四.五話

弱肉強食。

自然の摂理。

強者が弱者を食う。

それだけ。

実に単純な摂理だ。

その摂理を教えてくれた父はもういない。

強者が弱者を食う。

今このとき、自分たちは食われる側、弱者だった。

大量発生した火蜥蜴(サラマンダー)が街を襲撃、圧倒的な物量の前に何度も魔物の襲撃を防いできた防壁はついに崩された。

そこからは一方的な殺戮だ。

街を守ってきた守備隊は全て火蜥蜴(サラマンダー)に食い殺された。

「この子を、死なせるなっ!」

近衛隊長だった父は自分に赤子を託し火蜥蜴(サラマンダー)に立ち向かった。

父が向かった櫓に火柱が上がる。

獲物を取り尽くした火蜥蜴(サラマンダー)が燃やし尽くした櫓から這い出す。

逃げるしかなかった。

戦おう、父の敵を取ろう、そんな発想は湧いてこなかった。

ただ恐ろしかった。原始的な本能に突き動かされるまま赤子を抱いて逃げた。

抜け道を通って脇目も振らずただ走る。

泥水をかぶって匂いを消し、大人が通れない抜け穴をくぐる。死なないためにあらゆる知恵が湧いてきた。

夢中で抜け穴を抜ける。

燃える街が夜の闇を焼いている。

気づけば遠くまで逃げていた。

そう思った瞬間足から力が抜けた。

もう大丈夫。

父から託された赤子の頭を撫でる。

その上からべたつくものが垂れてきた。

「Grrrrrrrrrrrrrrr」

火蜥蜴(サラマンダー)だ。

簡単な話だ。

火蜥蜴(サラマンダー)は街の外からきたのだ。

街の外にいるのは当然の話だった。

「は、はは・・・」

自分は逃げていたのではなかった、ただ、捕食者に向かっていただけだった。

何もかも無意味だった。

「はは、ははは・・・」

笑うしかなかった。

涙が止まらなかった。

涙で埋め尽くされた世界が白く照らされる。

もう駄目だ。

そう思い目を伏せるが、最後の時が来ない。

ー???

恐る恐る目を開けると、二本足の乱入者達がいた。

ー耳なし

街の大人達がそう呼んでいる外の世界の亜人類たちだ。

「外来生物発見、交戦に入る」

そう言ったのは大人の倍近い体躯の鱗を持つ竜の亜人。

そうか、彼らは渡来人だ。

ここではない別の世界から来た、異世界の勇者。

世界を統べる女神によってこの世界に招かれるという、救世主。

風の噂に、勇者が現れたという話を聞いていたが、まさか本当にいたなんて。

「%#$#’’+P」

勇者の一人、片腕耳なしの小柄な男が鱗の勇者に指示を出す。それを受けた鱗の勇者が前に出ると、火蜥蜴(サラマンダー)の群れは威嚇もなく炎をぶつける。

石の城壁すら焼き切る熱量。父も、街の守備隊もなすすべなく焼き殺された熱の暴力。


祝福(バフ):遠距離攻撃無効


鱗の勇者はそれらの全てを防いだ。

鱗の勇者は反撃の体勢に入る。


熱線砲(メガフレア)

祝福(バフ):炎耐性


火蜥蜴(サラマンダー)の体表は炎を防ぐ。

その防御すらあっさり貫くほどの熱量が目標の火蜥蜴(サラマンダー)を溶断した。

「つ、強い・・・」

恐るべし、異界の勇者。

ここに来て、強弱の関係は逆転した。

火蜥蜴(サラマンダー)たちは異界の勇者達によってその数を減らして行く。

今ここでは、彼らが捕食者で弱肉強食の頂点だった。

「一体抜けた!」

勇者の一人が撃ち漏らした一体がこちらに向かってきた。

「&#&”{*`{」

片腕耳なしの勇者が間に入る。

火蜥蜴(サラマンダー)は眼前で止まる。

鱗の勇者は強かった。でもこの勇者は分からない。

大人より小さい体躯で、それも片腕を失っている。

火蜥蜴(サラマンダー)に勝てるとはとても思えない。

片腕耳なしの勇者はしかし、恐れることなく前に出る。

それを見た火蜥蜴(サラマンダー)は、下がった。

そして、それをごまかすように威嚇の咆吼を上げる。

片腕耳なしの勇者は構うことなく腰の武器を片手で器用に取り出す。

短い、剣のような武器だ。

それを見て更に火蜥蜴(サラマンダー)は下がる。

信じられない、先ほどまで狩る側だった火蜥蜴(サラマンダー)が怯えている。

「(’%$%#(」

「krrrrrrrrrrrrrr」

火蜥蜴(サラマンダー)は己の愚かさを呪うように低く唸る。

戦っても勝ち目はない、しかしそのような相手を前に逃げを打つのは死を意味することは生物の本能で嫌というほど分かる。

だから動けない。

「&%」

熱線砲(メガフレア)

片腕耳なしが合図すると回りの獲物を取り尽くした鱗の勇者が熱線を放つ。

決断できない哀れな火蜥蜴(サラマンダー)は一瞬で消し炭となった。

魔封剣(ルーンセイブ)

獲物を消し去ってなお勢いが収まらない熱線を片腕耳なしが剣のような武器で切り払うと暴れ回っていた熱線が消滅した。「外来生物後退!」

「掃討完了!」

気づけば、勇者達によって火蜥蜴(サラマンダー)はほぼ倒された後だった。

片腕耳なしは武器を納めると自分たちの方に寄ってきた。

「’%&$’%(%」

何かを伝えようとしているけど、何を言っているのか分からない。

「%$5487::」@-0」

なおも何かを言おうとして、伝わらず困った後、片腕耳なしは指で自身を指さす。

「さーじぇんと! おれ! さーじぇんと!」

サージェント、そう名乗った片腕耳なしは疲れた様子で自分と赤子を自分たちが乗ってきた鉄の馬に乗るように促した。





軍曹(サージ)

「なんや」

輸送トラックの中で対面に座った竜戦士(ルシッフル)が声を掛けてきた。

言いたいことは分かる。

先ほど保護したガキンチョと赤ん坊のことだ。

軍曹(サージ)は吸い終わった煙草を床面に擦りつける。

成り行きで保護してしまったがそのことで予定に大幅な遅れが出てしまった。

本来であれば夜の間に山を抜けなければならなかったが、既に夜が白み始めている。

「しかも、探照灯まで使って・・・」

作戦は秘密裏に行われていた。だから灯火管制しながら移動していたのに、これでは敵に見つかったと見るしかない。

竜戦士(ルシッフル)はそう言いたくてしょうがないらしい。

「ええねん!」

タイミング的に、探照灯でトカゲどもの注意を逸らさなかったらガキンチョどもは食われていた。

たまにはいいことをしたってバチは当たらないだろう。

それに、

「豊島少佐に怒られるんは俺やで?」

実際、家来どもがトカゲと遊んでる間に総司令官に言い訳してたのは軍曹(サージ)だ。

陸軍時代にもらった恩賜の懐中時計を落としたから仕方なかった、と言っといたからきっと許してくれる、と思う。

「そういう問題では」

図体に反して細かいやつだなこいつ。

そう思ってると保護した赤ん坊が泣き始めた。

「なんやなんや?」

回りに聞くも他のやつらも原因が分からないらしい。

「’&$#&%」

ガキンチョが何か言ってきている。

「何言うとるか分からんわい!日本語で喋れ!」

「腹を空かせてると言っています!」

竜戦士(ルシッフル)が翻訳してくれた。

こいつ、というか軍曹(サージ)以外の渡来人(てんせいしゃ)は現地人の言葉を自動で翻訳する奇跡(スキル)が備わってるらしい。

原因が分かれば即対策だ。

外人部隊(レジオン・エトランジェール)に告ぐ。

「お前らん中でおっぱい出るやつ前に出え!」

誰も出ない。

「なんやなんや?大の男が情けない」

「大の男だからですよ」

「ええねん!」

いちいち細かいやつだな。

「代わりのものを探した方がいいのでは?」

竜戦士(ルシッフル)はそう言って軍曹(サージ)の懐を指さす。懐にはおやつに食おうと思ってた氷砂糖がある。

楽しみにとっておいたものだが・・・。

「泣く子にゃ勝てんわ・・・」

軍曹(サージ)が氷砂糖をつまんで赤ん坊の口に持っていくと、赤ん坊は小さい手で氷砂糖を掴んで舐め始めた。

「お前も食うか?」

ガキンチョにも氷砂糖をやる。

恐る恐る氷砂糖を舐めるとその甘さが気に入ったのか、一口で頬張ってしまった。

「随分気にいっとるやん。よし、こいつの名前はサトーや!そっちのチビはシオでいこう!ええな!」

「そんな勝手な・・・」

「ええねん!」

何事にも名前を付けるのは重要だ。

わかりやすければなおいい。

「目標に接近!目視で確認できます!」

運転手連絡。

当初の攻撃目標が見えた。




「燃えとる」

「そのようですね」

攻略目標となっていた城塞は先客が荒らしたらしく、炭と瓦礫に変わり果てていた。

当初の任務、それは緋ノ(ヒノモト)の辺境進出に際しての兵站確保だった。

辺境進出のための橋頭堡にしようと思っていた街道に耳の長い蛮族が先に済んでいたため皇帝の名の下に『駆除』が命令されていた。

当初の予定では夜の間に空爆、砲撃を行い、準備射撃の後に外人部隊(レジオン・エトランジェール)が突入、指揮系統を寸断し制圧する手筈だったが、行軍中に道草を食ってしまったため後ろに倒れてしまったのだった。

昼に強襲を掛けるか、夜まで待つか、豊島少佐も頭を悩ませているところだろうからこれはいい知らせと言っていい。

「よーし、少佐に連絡したら街に入るで!後続が来るまでのんびりしようや!」

何事も楽に済むならそれに越したことはない。

輸送トラックは何者にも邪魔されることなく異種族の街へ凱旋していった。




to_be_continued


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― 新着の感想 ―
ルーンセイブって某マガジン漫画のレイウ゜マスターのや……げふんごほん。  泥にまみれての避難もやむなしの群生からの救出描写、良かったです。 あと、サトーの呼び名、佐藤からじゃなくて砂糖だったんですね…
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