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迎撃せよ、異世界防衛戦線  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
the_sentinel
33/53

-the_Sentinel- 第十四話

プライベートでいろいろあってだいぶ間が空きましたが最新話更新しました。

また随時更新していく予定です。

僕は夢を見てる。

なんで夢だと分かるかって?

目の前にいる洟垂れボーズのたかし君は実際には僕と同い年で今は酒が飲める年齢だからだ。

そのたかし君と子供の頃プロレスごっこして遊んだ頃の夢だ。

この頃はたかし君はプロレスにはまってていろんな技を試したがってたものだ。

中学を出た後、たかし君が「俺はビッグになる!」とかいって高校中退して大阪に行ってしまってから僕と進む道は分かれてしまった。

風の噂では、ヤクザのまねごとをして警察にパクられて服役中だという話らしい。

その夢の中のたかし君が少年時代の僕に腕ひしぎ足十字固めをキメてきた。

小学生の見よう見まねでほんとにごっこ遊び、悪ふざけなんだけど今回は気合いが入ってるのか痛みがある。

「ちょっと、いたいって」

「もうちょっとだって」

さすがに痛くなってやめるように言ってもたかし君は力を込める。

いやちょっと待って痛いマジ痛い腕折れる痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!?

「それ!」

たかし君のかけ声とともに腕に激痛。

「ぎゃああああああああああああああああ!?」

すさまじい痛みとともに意識が現実に引き戻された。

「ぎゃふ!?」

起き上がった勢いで頭がチビのイワンに当たる。「あ、勇者様起きた」

鼻を押さえてうずくまるチビと、ライフルの手入れをしているシオ。

空の見えない周囲。

洞窟に逃げ込んだまでは覚えてる。どうやらそこから気を失っていたらしい。

床に転がってる使用済みの注射器。

回復薬が入ってるやつだ。

現実で熊にへし折られて夢の中でたかし君にキメられてた腕に力を入れるとちゃんと動く。

どうやら夢の中での痛みは、回復薬で無理矢理骨折を直したために生じたものらしい。


「おお!起きたか!ちょうどいい、これからブリーフィングを始めるところだ」

激シブボイスの大塚大尉が『鉄乙女』を伴って入ってきた。


ー16:00 北千練島(きたちねりとう)洞窟内


状況はいまだ混沌としているようだった。

僕らがフェイスマスクにタコ殴りにされて長耳の蛮族に捕まって全身からビームを出す勇者と戦わされて行き遅れ更年期熊さんの餌になりかけてた時に空挺部隊もフェイスマスクと交戦し撃退、その後僕らの捜索に向かう途中『長耳』の迎撃に遭い足止めを食らってるときに第三の勢力、『長耳』がモグラと呼ぶ勢力が掘った坑道を発見し、利害の一致から彼らの協力を取り付けた、という状況だ。

「友好的な部族で良かった」

坑道を見つけたのはジークフリートのおっさんの『制地』の奇跡(スキル)だった。

地面としぇっしょくしている物体、生物のあらゆる情報を得ることができるこの奇跡(スキル)によって『長耳』も攻めあぐねていた坑道にすんなり入り込むことができた。

「おかげで助かった。作戦終了後追加手当も検討しよう」

早めに拠点が確保できたことで大塚大尉はおっさんに景気がいいことを言う。

チビで猫背のこのおっさんは戦闘ではクソの役にも立たないくせにこういうことやらせたら値千金の働きをするな。

「あんたら、『中隊』を振り切ったのかい?やるね」

坑道の住人、その頭目(金剛というらしい)が僕を見上げてきた。

ここの住人はみんなだいたい人間の小学生くらいの背丈だ。ちょうど夢の中のたかし君と同じくらいか。

しかし僕はこいつらとプロレスごっこしようとは思わない。どいつもこいつも薄いシャツとニッカボッカの下の体はバキバキで血管が浮き上がってる。

ーグシャ

頭目がおもむろに拾った石を握ると一瞬で砂になった。

試しに僕が同じ石を拾って握ってみたけどびくともしないどころかとがったとこが肉に食い込んでめちゃくちゃ痛い。

「ここの石は脆いな。崩れるかも知れねーや、掘削ルートを修正すっか」

頭目にとっては物足りないらしい。

なんてパワーだ。

このチビマッチョどもは人権と引き換えに狭い穴蔵で動き回るのには適したボディを手に入れたと言うことか。

「Halffoot.彼らは採鉱を生業とする亜人種です」

そう説明したのは『鉄乙女』だ。

この世界には日本人そっくりな人類(モヒカン)の他に独自の文明を持つ亜人種が複数種類いるらしい。

「『長耳』の親戚みたいなもんか」

「Negative.『ナガミミザル』は聖和(しょうわ)25年の開拓法666条により害獣に指定されています」

僕のコメントは『鉄乙女』に即決で否定された。人間扱いじゃねえのかよ。

「街道、鉄道の破壊、農作物および畜産物への損害、景観への被害、糞尿による汚染、家屋被害、病原体を媒介する有害鳥獣として現在も最優先駆除対象となっています」

その話を大塚大尉の激シブボイスが引き継ぐ。

「つっても俺が生まれる頃には地元でも見なかったがな。じいさんから話に聞いてただけだ。で、味は?」

「Unknown.ナガミミザルが食用に用いられた情報はありません」

「そうか?だが食ってみたらうまいかも知れんだろう。あんたもそう思わないか?」

なんだこのこの大尉、その食への執念はどこから来るんだ?

『長耳』てゆーかシオに同意を求めるなよ。

「鎧アシラの方がうまか」

シオは害獣呼ばわりにも堪えた様子もなく淡々と答える。

てゆーか食ったことあるのかよ。

「そうか・・・」

大塚大尉は残念そうに、しかしどこか諦めきれない様子で肩を落とす。

「それでは軍議に入ります」

ジークフリートのおっさんがホワイトボードを叩き、もっとめしバナがしたい大塚大尉が寂しそうに引き下がる。



1.ハーフフットの状況


『長耳』がモグラと呼び、本土人がハーフフットよ呼ぶ彼らが北千練島(きたちねりとう)に来たのは3年前だそうだ。

本土から紫国(しこく)に進出する本土人の一団に同行し、資源の捜索、採掘を行うことで彼らは人類と共存してきた。

その過程で、北千練島(きたちねりとう)を発見、資源採掘に一部の部隊が引き抜かれたということだ。

「Unknown.(くれ)旅団に採掘隊の情報はありません」

金剛の説明に早速『鉄乙女』からのツッコミが入った。

「そりゃわしらに関係ねーや」

金剛は質問に答えない。

痛いところを突かれたというよりホントに心当たりがない、みたいな反応だ。

話を引き継いだのは大塚大尉だ。

「大方、どこかの企業が雇ったんだろう。な」

「秘密保持契約あるんで言えねーや」

旅団と協力関係にある企業は多数存在するが、企業同士は必ずしも仲がいいわけではない。

互いに土地や資源を奪い合うライバル関係といった方が適切だ。

その中で利害が一致した企業が旅団を間に挟んで表向きは協力している、という関係らしい。

チビマッチョどもは企業に雇われたことは間違いないが、それ以上の情報は契約上出せないということらしい。

「これは後で本土で議論すればいい。話を進めよう」

大塚大尉の提案で再び軍議に戻る。

外界から遮断された島の中で本土のいざこざに首を突っ込めるほど暇なやつはここにはいないからな。

最初期は順調だった。

ハーフフット独自の探知能力でレアメタルの鉱脈はすぐに見つかった。

問題はその後、先に北千練島(きたちねりとう)にいた『長耳』もまたレアメタルを集めていたらしく、すぐに戦端が開かれることとなった。

「『長耳』の連中は森の声が聞こえるらしい。地上に出たらこっちが不利だ。特に『中隊』と呼ばれる精鋭部隊は森の中では無敵というほかねーや」

ハーフフットのリーダー格『金剛』が血管の浮いた腕を組んで唸る。

「しかし、今の状況から見るに、彼らは地下までは追ってこれないようですね」

引き継いだのはジークフリートのおっさんだ。

「Collect.ナガミミザルは植物が光合成できない場所での索敵能力が著しく低下します」

本土においてナガミミザルの駆除を行う際は森の外からの空爆、枯れ葉剤(オレンジ)の散布および坑道を用いた巣の爆破がセオリーだと『鉄乙女』は説明する。

「それに、推測ですが、あなた方は地下および閉所の空間把握を行う奇跡(スキル)およびそれに相当する技術を持っていると思われます」

だからこのチビマッチョどもは洞窟内を素早く動き回れるわけか。

それで、互いに相手のホームに切り込めない代わりに、相手からも攻められない膠着状態が続いているというわけだ。

「ついでに、本土からの補給が途絶えちまったからねえ・・・武器弾薬は無駄遣いできねーや」

なかなかチビマッチョの状況は良くないみたいだ。

でもそのことをべらべら喋っていいのか?

そう思って視線を向けた先には『長耳』の一人、シオがいた。

「そのバアサンは敵じゃねえや。(さとる)サンとこの手のモンだ」

なんだ?『長耳』とは敵対してんじゃないのか?

えらく友好て


ーパーン!


瞬間、シオの背中のライフルが高速で回り金剛の顔面に弾丸を放った。

友好的じゃなかった!?


「ババアじゃなか!」

シオの見た目はぱっと見僕より年下に見える。でもカラー写真がなかった時代にはもう生まれてるんだから人間からしたらいい年なんだろう。まあ、沸点の低さは中年のオバハンと競り合えることに代わりはない。

顔面に弾丸を撃ち込まれた金剛はマトリックスみたいに反り返った体を腹筋の力だけで起こすと、歯で食い止めた弾丸を吐き出す。

なんだこいつら、どういう身体能力してんだ。

「わしからしたらどいつも年寄りにゃちげーねーや」

「いいから続きをやりましょう!」

二度目の弾丸を放とうとしたシオを止めるべくジークフリートのおっさんが机をバンバン叩く。

「そうだね、『長耳』のシオがなんでチビマ、ゴホン、ハーフフットとつるんでるのか聞いた方がよさそうだしね」

少なくとも説明してる間は銃をぶっ放さないでくれる、と思う。

「歯で鉛玉を止めるとはすごいな!で、味は!?」

「うまくねーや」

なんか大塚大尉がチビマッチョと打ち解けてた。


2.『長耳』の状況


『長耳』が置かれている状況については僕がこれまで聞いてきた内容とほぼ同じだった。

軍曹(サージ)と呼ばれる異世界転生者率いる外人部隊(レジオン・エトランジェール)によって本土を追われ、僅かな生き残りが北千練島(きたちねりとう)に流れ着いて復讐の機会をうかがっているらしいという話だ。

「Seargent?軍曹で指揮可能な単位は分隊レベルまでですが・・・」

首をかしげる『鉄乙女』にジークフリートのおっさんが答える。

「半世紀以上前にそういう『二つ名』の転生者がいたらしいですね。多大な功績を緋ノ(ヒノモト)に讃えられて外人部隊(レジオン・エトランジェール)を創設したらしいですよ」

半世紀以上前だからそのときのことを知ってる人間は、シオくらいか?

「今の外人部隊(レジオン・エトランジェール)の階級制度が等級で区別されてるのは、その人の影響らしいですね。一番上が『軍曹』だと紛らわしいですからね」

当の一番上は軍曹(サージ)という『あだ名』を生涯好んでいたためやむなく階級制度の方を変更した経緯があるらしい。

てゆーかなんでこのおっさんそんなこと知ってんだ?

え?外人部隊(レジオン・エトランジェール)配属時にもらった資料の巻末に書いてる?

誰も見ねーよそんなとこ。


それはさておき、『長耳』における軍曹(サージ)の位置づけは一様ではないらしい。

これはサトーから聞いた話と同じだ。

「『長』や上の年代はともかく、島で生まれた世代は軍曹(サージ)を見たことなか」

それも言ってたな。

シオもその頃には赤ん坊だったらしいし。

だから分断は世代単位でのものになっているらしい。

世代間対立はどこの世界でも同じなんだなって。そうした不和を抱えた状態で、転機が訪れたのはチビマッチョとの邂逅だ。

『長』に代表される年寄り世代は外敵の排除に走った。そして今の膠着状態に陥っているというわけだ。

一方で、若者世代は別のことを考えていた。

『外から入ってこれるということは島から出ることもできるのでは?』

長い時間閉鎖された空間で過ごしてきた若者世代は、島から出られないことに不満を持つものが多くいたということらしい。

そして、それに呼応するようにアクションを起こしたものがいた。

「智サンが乗り込んできた時は疑ってたがね」

「智?」

って誰?

「緋ノ(ヒノモト)本土での名前らしーや」

森林(もりばやし)(さとる)

どうやら『サトー』のことらしい。

「ガキの頃に緋ノ(ヒノモト)の戸籍を取ってたらしーや」

サトーというのは(さとる)が訛った呼び名らしい。

「ちなみにうちも国籍もっとるとよ」

森林(もりばやし)詩緒(しお)

なんか古ぼけた手帳にかすれた文字でそう書いてある。

「へーそー」

割とどうでもいい。

割とどうでもいいが、そのサトーが島を出るための相談を持ちかけてきて、一時はまとまりそうになった。

横槍を入れてきたのは『長』の派閥だ。

本土から逃げるときに持ってきてた神器(アーティファクト)を起動し、外界と島を切り離してしまったということだ。

「うちやサトーにも隠しとっと」

シオが吐き捨てる。

この時点でシオの心は『長』からは離れているらしい。

そして、外に出たがっている若い『長耳』との軋轢もこれで修復不能になったということらしい。

「ちょっと質問」

「何とね」

ここで僕はちょっと気になったことを訊いてみる。

「そんな神器(アーティファクト)を持ってるなら何で今まで使わなかったの?」

神器(アーティファクト)はいろいろあるけど、強力なものだと核兵器に相当する力があるらしい。しかも核兵器と違って多くは手に持って運べる程度のものがほとんどだ。

本土から逃げるときに持ち込んだというなら、大きな船や飛行機で輸送するような大きなものではないだろう。

それを割と最近まで使わなかったのは何でだろう。

「うちは『長』じゃなか。腰抜けの考えることは知らんばい」

僕の素朴な質問をシオは鼻で笑う。

まあ、気が小さそうなやつだったから単に軍曹(サージ)と戦う度胸がないとみてもいいんだろうか。

そういう態度だから若い衆に嘗められてると。

神器(アーティファクト)は使い手を選ぶらしいんですよ。もし正規の使い手以外が使用した場合、何らかの副作用があると聞きます」

追加で、ジークフリートのおっさんが情報を提供してきた。

「最近、使い(ハンドラー)が現れた、ということではないですか?」

瞬間、シオの目が鋭くなる。

それを見逃さなかったのは僕だけではないようで、『鉄乙女』がしれっと射線に割り込み、同時に大塚大尉がシオのライフル、その尻を掴んで動きを封じた。

「別に食ったりせんとよ」

「俺は食ってみたいがな」

食い意地の張った軍人だ。

「半分だけあたっとるとよ」

半分、というのは正規の使い手は現れなかったということだ。残りの半分は、正規の使い手出なくても神器(アーティファクト)は起動可能ということだ。

ただし副作用副作用付きで。

正規の使い(ハンドラー)以外が使用した場合、神器(アーティファクト)は使ったやつの体内に入り込み、時間を掛けて内臓を食っていき、やがては皮だけになって死ぬ、ということだ。

なにそれ怖い。

「うぶっ!?」

イワンのチビが口元を手で押さえる。

「ここで吐くなよ」

汚いからな。

「つまり、非正規の使い(ハンドラー)が大量に手に入った、ということですね?どこかで見てませんか?」

おっさんが僕に訊いてくるけど一切全く何一つ心当たりがない。

「そんなやついたかな?」

大量にってことは結構人数がいるはずだけど。

そんなの見た覚えがない。

そいつらが来るまで神器(アーティファクト)を起動してないということは『長耳』は同族を生け贄にする習慣はなさそうだけど。

「勇者様も見とると」

全く心当たりがない。

「もしかして、あの制服のやつらじゃないのか?」

チビの言葉に得心がいった。

「ああ、あのマジアカどもか」

そういえばいたなそんなやつら。

チビはそうそう、と頷く。

「あいつら、無事だといいよな」

「バカかお前何言ってんだ、あいつらは死んだ方がいい」

僕を殺そうとしたクソみたいなやつらだからな。

生きていてもなんの得にもならない。むしろ害悪だ。

シオが続けて説明するには、400人弱(大体高校の一学年分)転生者が転生(リスポーン)したとのことだ。

戦闘力に秀でた一部を『長』が手駒としてキープして残りは

神器(アーティファクト)の餌にする。

神器(アーティファクト)は内臓を食い尽くすまでは餌を死なせない。何かの力で無理矢理生き延びさせるから一人あたり1ヶ月近く結界を維持できるとのことだ。

それが400人。

「燃料切れを待つのは現実的じゃないな」

大塚大尉がライフルの弾をかじる。

「まずい!」

そりゃそうだろ。

そこでおっさんがホワイトボードに丸を一つ書く。

丸の上に日本語で『長耳』の集落制圧および神器(アーティファクト)破壊と注釈が入る。

「『長耳』の巣にある神器(アーティファクト)、これを破壊および無力化できれば島外からの支援が期待できますね」

いいね、さっそくやろう。

島の外から戦艦なり飛行機なりが来れば僕らは晴れて休暇が取れる。

「Negative.結界は一つではありません」

『鉄乙女』が白けることを言ってきた。

ていうか心を読まないで欲しいんだけど。

「じゃあここからは俺が説明しよう」

口直しに煙草ふかしてた大塚大尉が乗り出してきた。



3.空挺部隊の状況


僕とはぐれた後の空挺部隊はさっき話に出たもう一つの結界の発生源を見つけたらしい。

おっさんがホワイトボードに島の絵を書き、その左上、北西に四角を書く。

「航空母艦、それも核動力だ。(くれ)の所属ではない」

神器(アーティファクト)を用いず大規模な結界を作るためには、相応に大型の設備と大量のエネルギーを生み出す施設が必要だ。

それは巨大な軍艦と核動力(原子炉的なやつ)で解決できる。

だから結界の発生源は消去法で航空母艦以外にはあり得ない。「Clawl(強暴領域).ベルンハルト財団が開発した人造奇跡(スキル)およびその発生装置です。海洋性外来種の脳波に干渉し制御することが可能となります」

『鉄乙女』が言うには、過去に財団から売り込みが来ていたそうだ。

金が掛かりすぎるという理由で(くれ)では採用は見送りになったが、今この島にあるということは買い手が付いたということなんだろう。

「並の船じゃ外来種の攻撃で近づくこともできねーや」

『長耳』の結界だけであれば水面下から潜水艦で輸送することは可能だったらしい。

金剛も『強暴領域』が展開されるまでは潜水艦から物資を受け取っていたという。

「島を制圧できる火力を輸送するにはこっちの結界の解除も必要だな」

『長耳』の結界を解除すれば飛行機やヘリで空から侵入することはできるようになる。

(てゆーか僕はそれだけでいい。生きて島を出られたら後はどうでもいい)

でも島を制圧し、恒久的に維持するには結界を両方解除しなければならないということだ。

そこでおっさんが航空母艦の絵の隣にもう一つ丸を書く。

そうしてできた島の絵と二つの丸。


・『長耳』の集落制圧および神器(アーティファクト)破壊

・空母制圧および結界の無力化


「状況を打開するにはこれら二つを処理する必要がありますね」

問題はどの順序で行うか・・・。

また、どうやって攻略するか。


ビービービー!


全員が喋りを止めたタイミングで警報が鳴った。

「Enemy.敵襲です」

『鉄乙女』が筋肉質な太ももからごつい拳銃を抜く。

「瑠璃、瑪瑙、迎撃せーや」

「うい」「おす」

チビマッチョどもが短く改造した散弾銃を手に散開していく。やれやれ、息つく暇もない。

息つく暇もないけど朝から何も食ってないから腹が減った。

「なんか食べたいんだけど」

「敵を撃退してからにしましょう」

おっさんが『制地』で敵の位置を探る。

ヘッドセットから指示を飛ばしてチビマッチョが展開していく。

それにしても腹が減った。

「チビ、なんか出せ」

「なんもねえよ!」

クソ、使えねえ。

「これを食え」

大塚大尉がまた梅干し綾子をくれた。

いい加減飽きたな。

「終わったら飯だ。楽しみだな」

大塚大尉がナイフとフォークを手に戦闘態勢に入る。

このおっさんまさか侵入者をとって食う気なんじゃないか?

「早速か」

大塚大尉がラップトップを開くとコンソールの数字が既にめまぐるしく動いていた。

戦闘が始まったようだ。

それにしても腹が減った。

大塚大尉からもらった梅干し綾子を一箱まるごと頬張る。

めっちゃ酸っぱい。



ーto_be_continued.


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― 新着の感想 ―
なんでもすぐ食おうとして名前が大塚…ダメだ、もう脳内イメージがスネークに固定されちゃったw
 ベト○○戦争めいた枯れ葉剤散布による害獣扱いの二足歩行・知的生命体への複数昏倒に、高機能なオーパーツ運用のための人間電池化。 ド安定のおっかなさですな。
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