-the_Sentinel- 第十三.五話
筆が乗ったので、本土視点の話を書いた
赫腕
提督
この二人は十年前の過去編「刃と翼編」にも出てるキャラになります
よかったら探してみてね
https://ncode.syosetu.com/n0162ht/
-the_Sentinel- 第十三.五話
ー10:00
空挺部隊突入後、暮旅団駆逐艦隊もまた受難の渦中にあった。
局地結界発動から撤退までの15分、前衛艦隊が外来種の迎撃で注意が逸れた僅かの隙をついて、潜伏していた潜水艦の雷撃が『鳴瀬』を襲った。
空挺部隊のアルバトロス輸送機の撤退中で回避行動が取れなかった『鳴瀬』は魚雷三本を受け大破。
ダメージコントロールもむなしく30分後に機関浸水により漂流となった。
『鳴瀬』は僚艦に曳航され暮で修理を受けることになるが、暮の設備では損傷した局地結界の修理は出来ない。
これにより暮旅団は局地結界を運用可能な艦艇を事実上喪失したこととなる。
そしてそのことは、北千練島に降下した部隊は自力のみで島内の結界を解除する以外に道は無くなったと言うことを意味する。
暮旅団の困窮は即座に怒りに置き換わった。
報復に燃える駆逐艦隊は持てる全ての爆雷と対潜噴進弾により損害を与えた潜水艦を猛追、二隻を撃沈し、一隻を洋上降伏に追い込んだ。「田舎者どもめ!私を誰だと思っている!虜囚規定を知らんのか野蛮人め!」
潜水艦は政府軍所属だということがすぐに分かった。
降伏した潜水艦の士官が対応が気に入らず己の誉れ高い生まれを自慢し始めたからだ。
「私を誰と心得る!貴族院、巣茂議員の第5子
「やかましい!」
脅し文句になると思って自身のバックをひけらかした潜水艦艦長の顔面に提督の精神注入棒が炸裂した。
「ぼごおおお!?」
砕け散った艦長の前歯が甲板上を転がる。
「貴族院がなんぼのもんじゃボケ!旅団嘗めて生きて帰れる思うなアホが!」
うずくまり悶絶する艦長のこめかみを軍靴で踏みつけながら提督が吼える。
政府軍の士官以上は確かに貴族院議員や宮内庁、御所の要人の子息が多く在籍している。
しかし、その多くは家督を継げない立場の末子中間子、私生児だった。
つまり厄介払いで地方に飛ばされてきた連中だ。
こいつらの本家からしたら、嫡子の立場を脅かしかねない連中で死んでくれた方がありがたいとすら思われていることを旅団の人間で知らない者はいなかった。
そして、地方に飛ばされた要らん子どもは地方で手柄を立てることで首都への返り咲きを狙う。
その手柄というのが、地方から富を収奪することだ。
徴税の名の下に私兵を引き連れて海賊まがいの略奪を行う。
善良な地方民にとって百害、いや万害しかない連中だ。
旅団からしたら政府軍の軍人などは駆除すべき害獣でありそれ以上にはなり得なかった。
「殺せ」
提督が艦長を蹴り転がすと群がってきた水兵が全身に銛を突き刺す。
「がっ!?ごっ!?ぎゃっ!?」
水兵が突き刺した銛をこじって傷口を広げる度に艦長の悲鳴が甲板に響き、臓物ごと銛が引き抜かれて悲鳴が止む。
絶命した艦長はそのまま海に投げ捨てられると外来鮫に食い散らかされて一瞬すら掛からず海面を赤く染めて海の底に消えた。
「「「「「ひ、ひいいいい!?」」」」」
潜水艦乗組員達は降伏したことを後悔した。
艦長が降伏を決定した瞬間なぜ古参の砲雷長が即断で拳銃自害したのかもっと考えを巡らすべきだったと後悔したが時既に遅すぎた。
「旅団は寛大じゃ。お前らクソ役人は残らずぶち殺す。仲間はずれは出さん」
寛大ってなんだろう。
じゃが、と前置きして提督は続ける。
「そして本艦は特に寛大じゃ。小鬼にも劣るクソ役人じゃろうと死に方を選ぶ権利はあると考えとる」
「え、うん」
「お前らの編成、航行経路、目的、これら全てゲロすれば軍人らしく名誉の銃殺に処すことを約束する」
乗組員一同は周囲を見回す。
ー銛を構える旅団の水兵
ー艦長が惨殺された後に残った甲板上の赤黒いシミ
ー海面に鼻を出して次の餌を待ち構える外来鮫
ー口にくわえた銃で安らかに死んだ砲雷長
「わ、分かった!白状する!」
名乗り出たのは航海長だった。
脳の許容範囲を超えた恐怖に突き動かされた彼の股間は湿り気を帯びていた。
恐怖に支配された頭で考えたのはいかに旅団の慈悲にすがるか、それだけだった。
「わ、我々は、きさ、、、ぎゃあああああ!」
貴様と言おうとして銛で尻の肉を抉られた。
航海長を締め上げて聞き出した内容は
・旅団の地方拡大を憂慮する政府は不拡大方針に則り旅団の戦力削減を決定
・資源地帯として開拓が進む紫国と本土の通商破壊を開始したのが5年前
・通商破壊の拠点として北千練島の補給基地化が決定されたのが1年前
・航空母艦一隻を含む艦隊で島の制圧を試みるも原住民の反撃に遭い未だ橋頭堡の構築は出来ていない
・反撃を受けた航空母艦は島内に擱座
・島に取り残された航空母艦の救出と維持のため、原住民が展開した結界の範囲外(つまり海中)から細々とモグラ輸送を行っている
・モグラ輸送の帰路に暮艦隊と遭遇、欲をかいた僚艦の雷撃により発見され交戦し敗北、洋上降伏に至る
「つまり潜水艦なら島に物資を送れる訳か」
潜水艦で小火器と食料、歩兵くらいのものだが、孤立している空挺部隊への支援としてはないよりマシと言ったところか。
いずれにしても、島内には空母を擱座させる
だけの戦力が待ち構えている以上結界の解除は必須なのは間違いないが。
「航路は」
口の滑りを浴するべく提督が航海長の首をなで回す。
恐怖に突き動かされるまま、航海長は口を滑らせる。
「し、知らない!」
「殺s
「待ってくれ!言い方が悪かった!」
「待て!」
航海長の尻穴に銛をねじ込もうとしていた下士官が舌打ちしながら下がる。
「チッ」
過呼吸を起こした肺を叱咤しながら航海長は続ける。
「け、結界の有効範囲は常時変動しているんだ!」
「続けえ」
「結界の範囲は空母の電算機で解析しないと分からないんだ!」
全身から冷や汗がドバドバ出る。こいつらは情報を聞き出す気はない。
航海長はパニックになった頭でそう判断した。この野蛮人どもは『情報を聞き出せない↓だから生かしておく価値がない』
という『なぶり殺しにするための口実探し』をしているに過ぎないのだ。
だから、一瞬でも口実を与えた時点でなぶり殺しにされる。
航海長には交渉の余地など『一切』ない。
今できることは、口実を与えないためにとにかく口を滑らせ続けることだけだ。
「島への経路は空母からの暗号通信がないと分からないんだ!」
「暗号は」
このとき、航海長に天啓が降りた。
「暗号の解析には専用の暗号機が必要だ!だが暗号機は(自害した)砲雷長が破壊してしまった!」
「よし、殺s
「だが私は本日より一週間以内の島への侵入経路を把握しているんだ!」
当然だ、航路を決定する航海長に情報が回ってこない道理はない。
野蛮人は野蛮人であるが故に群れの仲間意識が強い。
島内にいる仲間を『絶対に』見捨てない。
だからこそ野蛮人どもはこの情報が必要だろう。
「航路は私の頭の中だ!殺せば永遠に闇の中だぞ!」
「下がれ」
水兵達が忌々しげに引き下がる。
助かった。
これで殺されずに済む。
「船長ー!」
航海長が安堵した瞬間、外部からの声が掛かった。
暮旅団が雇った外人部隊の渡来人が潜水艦から這い出してきた。ハッチから投げ出されたのは血まみれの防火斧、次いで投げ出されたのは手足を切り飛ばされた見習士官。
「どしたんなら」
「一人魚雷管に隠れててさ」
無傷で連れてきた方がいいかと思ったけど抵抗したから『やむなく』無力化したんだ。
と血まみれの防火斧をベルトについたホルダーに付ける。
航海長はこの見習士官を知っている。
宮内庁のお偉方の二十五男だとかで威張り散らしていたいけ好かない通信士官だ。
ダルマにされたことは清々するが、ここで航海長に一つの不安要素が持ち上がった。
実は提督に説明した内容には一つだけ事実と異なる部分がある。
ー暗号機は破壊されていない
降伏するときはそんなことには頭が回らなかった。
暗号機が破壊されたというのはとっさに思いついたでまかせだ。
いや、破壊されていないという表記も適切ではない。
そもそも暗号機は通信科の受け持ちだ。
航海長にも砲雷長にも破壊する権限はない。
だから航海長は暗号機の破壊を確認していないだけだ。
つまり手順通り通信科で確実に破壊が行われていれば問題はないのだ。
だが、しかし、もしも、通信科が暗号機を破壊していなかったとしたら?
いや、そもそもこの通信士官はなぜ魚雷管に隠れていた?
まさかと思うが、暗号機を手土産にして自分だけ助かろうなどと浅ましいことを考えていたのではあるまいな?
「で、こいつがこんなの持ってたんだよ」
そう言って渡来人が提督に見せたその機械。
「暗号機・・・」
航海長の悪い予想は的中した。
そして、その事実が甲板上に浸透し、『口実』を得た水兵達が幽鬼のごとく航海長を取り囲む。
「ま、まtぐぶうううううううう!?」
何かを言おうとした航海長の口に砕いた貝殻が押し込まれる。
口を養生テープで塞がれて言葉が出せない。
「ーーーーーーーーーーーーーッ!」
言葉にならない命乞いをする航海長に精神注入棒を手に提督が迫る。
「おうクソ役人、随分コケにしてくれたのう」
提督の精神注入棒が航海長の顔面に直撃、貝殻を詰められた口内は衝撃の行き場なく口内を暴れ回る。
砕けた歯と貝殻が口内を切り刻み裂けた口から飛び出した。
「@-¥@:p0z%(&%$」
激痛でのたうち回る航海長を見下ろし提督は無感情に命令した。
「全員殺せ」
「とりあえず、島に救援は送れそうってことでいいんだよね」
渡来人『赫腕』と提督、暮旅団と外人部隊の軍議がささやかに行われる。
旅団は迅速に鹵獲した潜水艦に戦闘員と武器弾薬を『装填』。
救援に向かうのは『赫腕』以下外人部隊の兵士一個分隊。そして旅団選抜のクルー達だ。
「頼むぞルーキー」
「もうルーキーじゃないよ」
互いに拳をぶつけ合い、武運を分け合う。
二人は10年来の付き合いだ。
この男がルーキーだった頃は提督は漁師だった。
甲板でゲロ吐いてた新兵も随分頼もしくなったものだ。
「船長はどうする?」
艦隊の武器弾薬は心許ない。
おまけに損傷艦を抱えていてはこれ以上の戦闘は困難だろう。
一度修理、補給を受ける必要があるが、艦隊が引き上げればその間政府軍の横暴を許すことになる。
「わしは経石に向かう」
予想通りの答えだ。
経石は暮より東にある漁港で、漁師時代の船長の仕事場だった。
そして、政府軍の圧政に苦しみながらも抵抗する勇敢な男達の住む場所だ。
彼らなら船長が頼めば協力してくれるかもしれない。
「じゃあ行ってくる」
「アルバトロスを出せ!」
駆逐艦の後甲板から船長を乗せたアルバトロス輸送機が飛び立つのを確認して『赫腕』も潜水艦に乗り込む。
「近づけそうになかったら自分をVLSで撃ち出してくれ。後は何とかする」
物資と援軍を乗せ、潜水艦は深く静かに潜航を開始した。
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