-the_Sentinel- 第十三話
続き投稿します
鉄乙女のスペックは下記
開発:緋本火砲技研
所属:『暮』旅団陸戦隊
年齢:25(勤続11年)
戦闘スタイル:
緋本原の敷島朝陽に対し理力量が少ないためメイン火力は砲熕に依存し、理力によって火器を制御する戦闘スタイル。
-the_Sentinel- 第十三話
天の助けが来た!
更年期暴れ熊を吹っ飛ばしたフルメタル美女『鉄乙女』は機導兵と呼ばれる旅団の最高戦力だ。
その戦闘力はそこらの異世界転生者をはるかに凌駕してる。
「やった!?」
「Negative.目標沈黙せず。戦闘を継続」
『鉄乙女』は右腕に取り付けた大砲に次の弾を装填して鎧アシラが倒れた方向に向ける。
それにしても、自分の身長ほどの鉄の塊を軽々片手で操るなんて、機導兵はとんでもないな。
過去に一度地面にめり込むくらい重い薙刀をぶん回す機導兵を見てるのに全く驚きが衰えない。
一方、爆発で吹っ飛んだ鎧アシラは『鉄乙女』の分析通りまだピンピンしている。
不機嫌そうに鼻を鳴らし頭を振ると頭の鎧がパラパラと落ちた。
そしてそのことに気づくやいなやブチギレMAXだ。
「なんか不細工なすっぴんを見られて怒ってるけど大丈夫?」
「no_probrem. これより整形にかかります」
『鉄乙女』に訪ねるとこんな答えが返ってきた。
堅物かと思いきや冗談も言うんだこのおねーちゃん。実に頼もしい。
「頼もしいついでに僕らをここから逃がしてくれないかな?」
「copy.もとより最優先目標に設定されています」
そりゃよかった。
「退路を確保します」
「チビ、退路が出来たら逃げるぞ。熊を起こせ」
「わ、わかった。セルゲイ頼むぞ」
イワンが雄の鎧アシラを起こして自分たちを運ぶよう指示を出す。
名前を付けたのかよ。
「Open_combat.戦闘を開始します」
突撃を開始した更年期すっぴん鎧アシラに向けて『鉄乙女』が大砲をぶっ放した。
鎧アシラの恐ろしさは人間を縦に押しつぶして佐世保バーガーにしてしまうパワーや全身を守る鎧もそうだけど、なによりやばいのはその俊敏さだ。
『鉄乙女』の放った砲弾を横に飛んで回避、
砲弾は目標を外れバリケードを吹き飛ばした。
再装填の暇は与えないと言わんばかりに鎧アシラは突進。
迎え撃つ『鉄乙女』は左腕のバルカン砲で弾幕を張る。
炸裂弾(中に爆弾が入った銃弾)が命中し小爆発を起こすも有効打にはならない。
それを見て取った鎧アシラは勢いのまま直進。まずいぞ、予想外に手強い。
『鉄乙女』は背中のフライトユニットに火を入れる。
「待て待て待て待て待て!」
後ろには僕がいることを忘れないでいただきたい!
『鉄乙女』が上空に退避したら僕がフレッシュトマトになってしまう。
何が何でも食い止めてもらわないと。
鎧アシラが間合いに入るべく深く踏み込んだところで地面が爆発した。
「機銃の弾幕は囮か・・・。さらに飛行を偽装して上に注意を向けて敷設した地雷から注意を逸らすとは、本土の兵は優秀だな」
サトーが楽しそうに戦局を分析する。
なんで楽しそうなんだよ。
こっちは今ので少しちびったぞ。
「Reloaded.Fire!」
他の地雷を警戒して前足を上げたところで『鉄乙女』の砲弾が鎧アシラの鳩尾にゼロ距離でぶち当たった。
「Guooooooaaaaaaa!」
汚らしいうめき声とともに鎧アシラがゴロゴロ転がり、再度壁際にぶち当たって動かなくなった。
「や、やった?」
静まる場内に僕の疑問に答える者はいない。
『鉄乙女』が淡々と大砲に次の弾を入れる金属音と現状が理解できない『長耳』の声にならない呻きが流れること数秒。
「うひょおおおおおおおおおおお!いええええええええええええあああああ!勇者様が勝ったばい!うちの大儲けたい!」
静寂を破ったのはシオだ。
ぱっと見穏やかそうな見てくれに似合わない品のない歓声を上げて飛び回る。喜びのあまり観客席から飛び降りて僕のところに走り込んでくる。
「勇者様!喜ぶと!これでうちは大金持ちたい!」
僕の手を取ってぶんぶん握手。
「いてえ!そっちは折れてるんだって!」
てゆーかこれは僕が勝ったことになるのか?
戦ってたの『鉄乙女』なんだけど。
「なわけあるかボケエエエエエエエエ!」
「無効だ無効!」
「軍曹がくたばるまで倍プッシュじゃボケエエエエエ!」
静寂を切り裂いていくつも怒号が生まれた。
やっぱ駄目だった。
「そんな!?うちの全財産はどうなると!?」
「「「知らんわボケエエエエエエエエ!」」」
「ひ、ひどい・・・うちのこと騙した!?」
打ちひしがれるシオ。
いや、誰が見てもおかしいだろ。
むしろなんでこれがいけると思ったんだよ。
『長』なんか言葉を失ってプルプルしてるぞ。まあいい、とにかく今の間に逃げてしまおう。
「チビ」
「あ、ああ。セルゲイ、頼む」
さっき『鉄乙女』が大砲で開けた穴がある。
今なら逃げられそうだ。
「サトオオオオオオオオオ!軍曹を逃がすなあアアアア!」
やべ、気づかれた。
さっきまでプルプルしてた『長』が更年期熊さんに負けないヒステリックな叫びを上げる。「やれやれ・・・中隊、追撃に移れ!」
サトーの号令一下若い『長耳』達がライフルをこっちに向ける。
「勇者様!逃げると!」
シオが『長』に向けてライフルを撃つ。
若い『長耳』の一部が『長』の護衛のため戦列を離れた。
「Intercept. 援護します」
『鉄乙女』が肩のミサイルポッドからミサイルをぶっ放す。
その全てが若い『長耳』のライフル弾によって空中で撃ち落とされた。
まずいぞ、これまで騒いでたやつらと違ってサトーが中隊と呼んだ連中はめっちゃ強い。
「煙幕か・・・」
撃ち落とされたミサイルはそれでも仕事はした。
中から吹き出した煙が『長耳』達の視界を奪う。
これで飛び道具の狙撃は防げるぞ。
「『鉄乙女』さん!三人来ます!」
でも今の間に三人の『長耳』が煙に紛れてこっちに肉薄してきてるのが『鷹の目』で見えた。
「Copy.迎撃します」
逃げる僕らの後ろでバルカン砲の弾幕が展開。弾幕を防ぐため奇跡で地面を盛り上げて盾にする。
これで足止めできたのは一瞬。
『長耳』は即座に散開して三方向から間合いを詰める。
『鉄乙女』の銃口は一つ。
銃口が向いてない『長耳』が接近し、銃口が
向くと即座に防御に移る。
銃口が逸れた二人は即座に移動を再開。これを迅速、的確に行って距離を詰めてくる。
このペースだとすぐに追いつかれてしまうぞ。
「よおおおおおおし!お前ら!今のうちに逃げるぞ!」
ここで新たに叛乱が起こる。
観客席で動向を見ていたマジアカ組学生達が見張りの『長耳』を攻撃してライフルを奪い僕らと反対方向に逃げているのが見えた。
煙に紛れて森の中に駆け込んでいく。
「サトー!何しとるあいつらを逃がすな!」
「・・・一人戻れ」
『長』が喚き、サトーがなんともいえない顔で中隊に指示を出す。
僕らを追い回してた三人のうちの一人が離脱した。
それでも煙の中残った二人は怯まず接近してくる。そろそろ『鷹の目』なしでも見える間合いに入ってしまう。
「GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
やばいと思ったそのとき後ろでヒステリックな咆吼。
倒したと思った鎧アシラが起き上がり怒りのままに暴れ始めたらしい。
ほんとにしぶといなあの熊。
「ひっ!ひいいいいいいいい!?サトー!何しとる!わしを守れ早く!」
「中隊戻れ!」
鎧アシラは怒りの矛先を同じようにわめいている『長』に定めたようだ。
サトーの号令によって僕らを追っていた『長耳』は引き返していった。
「見ろよ!森だ!」
チビのイワンが歓喜の声を上げる。
何度も死にかけたけど、ようやく闘技場から脱出出来そうだった。
「で、これからどうすんだよ」
「知らねえよ」
チビが訊いてくるけどそれは僕も知りたい。
森に逃げ込んだはいいけど森は『長耳』のテリトリーだ。
場合によっては余計に状況が悪くなったといえる。
「で、君はなんでいるんだ?」
僕らと一緒にシオが紛れ込んでいた。
一緒に逃げるときに鎧アシラに飛び乗っていた。
僕が考え得る最悪の可能性は、シオが仲間に僕らの居場所を知らせる可能性だ。
それをやられると僕らはまた闘技場に逆戻り。そうなれば今度こそフレッシュトマト確定だ。
なんとかシオを排除したいけど戦っても勝てる気がしないぞ。
おまけに僕は片腕を骨折しててチビは地元の中坊にも勝てない。頼りの『鉄乙女』は今近くに居ない。どうする?
「心配なか」
「何の伏線もなく心を読まないで欲しいな」
どうやらシオの意図は違うらしい。
「サトーの指示たい。勇者様が本土の援軍を呼びに行くまで同行するばい」
ああ、そういう。
サトーはどうやら僕との取引に応じるつもりのようだ。
シオを使って僕らを逃がしつつお目付役にして見張らせようって魂胆だな。
不自然に闘技場に乗り込んできたのも武器の差し入れをしてくれたのもその一環と言うところか。
「勇者様が勝っとりゃ今頃大金持ちやったとに・・・弁償すると!」
でも金の方がウェイトが大きそうだ。
ともかく、シオはとりあえず味方と考えて良さそうだ。
それが分かったタイミングで『鉄乙女』が戻ってきた。
彼女の誘導に従ってしばらく進む。
「合流地点に到着」
「崖なんだけど」
目の前には断崖絶壁。断層が視界を埋め尽くしていた。
むしろ袋小路に追い詰められたんじゃないのかこれ?
「All_Clear.回収願います」
『鉄乙女』がどこかと通信すること数秒後。
ーパッシブスキル:自己防衛
目の前の絶壁が爆発した。
シオが素早く爆風の範囲から外れ、
僕が全自動で地面に伏せ、
セルゲイがイワンに覆い被さって、
吹き飛んだ石片が僕の頭上を通過していった。「おお、渡来人!生きてたか!」
爆発があった場所からは聞き慣れた太い声がした。
空挺部隊の指揮官、大塚大尉のイケボだった。「みなさんよくご無事で」
ジークフリートのおっさんも生きてた。
「細かい話は中で話しましょう。追っ手が来る前に中へ」
「ぜひそうしたいね」
大塚大尉とおっさんに促されて、爆発で開いた穴の中へ入っていく。
おっさんが先頭で最後尾を『鉄乙女』が見張りつつ、全員が入ると仕掛けていた爆弾で入り口を爆破、これで追っ手は撒くことができた。
外からの光がなくなった後、洞窟の中は光る苔型の植物型外来種と白熱灯で明かりが確保されている。
つまりここには人間がいて、彼らは僕らの味方と考えていいということだ。
よかった。
この後は知らないけどとりあえず危機は去ったということだ。
それを確信した安心感から僕の意識はゆっくりと薄れていく。
「お、おい、どうしたんだよ!?」
イワンが心配そうに駆け寄ってくる。
「しっかりしろ!死んじゃだめだ!」
全くうるさいチビだ。
僕は朝から連戦で疲れてるんだぞ。
少しくらい休ませろよ。
-to_be_continued




