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迎撃せよ、異世界防衛戦線  作者: ミネアポリス剣(ブレイド)
the_sentinel
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-the_Sentinel- 第十二話

だいぶ間が空きました。

コロナに罹るとは思ってもなかった。

味覚が生きてて食欲があるのがまだ救いか

-the_Sentinel- 第十二話



かくして僕は再び闘技場に舞い戻った。

「絶対勝つと!」

背後からは一方的に僕に全財産を投じたシオの声援。

『長』が準備しているという対戦相手はまだ闘技場にはいない。

ゲーミング勇者の仲間に聞いてみたけど声は掛かってなかったらしい。

一番強かったからゲーミング勇者にお鉢が回ったわけだからそれはそうか。

それに、マジアカ組は島を封鎖する結界の維持にも駆り出されているからこれ以上の消耗は嫌うだろうと安堵混じりに言ってたな。

結界の維持もかなりの負担らしいけど、全身の穴からビーム出すより無限大倍マシと言うことだろう。

「まあ、健闘を祈ってるよ」

僕と対戦するわけじゃないからか、マジアカ組の生き残りは敵意を見せなかった。

おまけに結界発生の神器(アーティファクト)の場所もこっそり教えてくれた。

「いいのかよ」

「いいんだよ。つーかなんで蛮族に義理立てする必要あんだよ」

そりゃそうだ。

むしろマジアカ組からしたら、僕がなんとか外部から援軍を連れてきた方が生き残る見込みが出来ると言うことだ。

問題は、どうやってここから出て援軍を呼ぶかというとこなんだけどな。

「さああああああああああああああじ!」

闘技場に不愉快な怒号が響いた。

『長』が戻ってきたらしい。

「だから違うって」

僕の否定に耳を貸さず『長』は宣言する。

「さっきは命拾いしたようだが今度はそうはいかんぞ!生き延びたことを後悔しながら死んでいけ!」

僕は『長』の宣言に耳を貸さずシオから受け取った武器を点検する。

・拳銃:弾7発、予備弾倉1

・戦闘用剣鉈:理力で作動、高速振動する刃なら薄い鉄板くらいは真っ二つだ。

さっきは丸腰だったけど今度は多少有利に戦えるぞ。

梅干し綾子を一粒口に入れる。

強烈な酸味に意識が覚醒した。

さあ来い。やってやるぞ。何が来るか知らんけど。

「鎧アシラを出せ!」

「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!」

『長』の号令と『長耳』の咆吼。

開いたバリケードの中から檻に入れられて出てきたのは、熊。しかも日本産よりでかい。

四足の状態でも見上げなければならない体躯、それを支える電柱のような足。

それらを動かすための酸素を取り込むべく常にエンジンのアイドリングのような呼吸がめっちゃ耳にこびりつく。

鎧アシラというだけあってその全身には鎧のような殻が付いてる。

これ、こっちの攻撃通るのか?

「出せ!」

『長』の号令で若い『長耳』が恐る恐る檻の鍵に手をかける。

「はぁっ・・はぁっ・・」

若い『長耳』は恐怖で過呼吸になりながら鍵を外す。

やばいぞ、僕より素の戦闘力が高い『長耳』があのビビりっぷりはあの熊が見かけ倒しじゃないことの証明じゃないか。

「ひ、ひいっ!?」

若い『長耳』は鍵を外すと一目散に檻から離れる、ことは出来なかった。

図体に似合わない敏捷性で逃げようとした『長耳』に追いつくと電柱のような前足で一薙ぎ。

『長耳』の上半身は下半身と泣き別れ、上半分は空高く飛んで場外ホームランだ。

鎧アシラは準備運動にもならないとばかりに地上に残った下半身を噛み砕いて食う。

「次こうなるのはお前だ!軍曹(サージ)!」

「いいいいいいいいいええええええええええあああああああああああああああ!」

観客席の熱狂。

やばいめっちゃ怖い。

生物としての格が違いすぎる。

これは小手先の工夫で何とかできる相手じゃない。

それを理解したせいでおしっこ漏れた。

何なら下半身の感覚もない。

感覚がないけど自己防衛の奇跡(スキル)でむりやり立った状態が維持されてる状態だ。

「勇者様ー!しっかり勝つとー!」

シオ、ちょっと替わってくれない?

そう言いたいけど声が出ない。

軍曹(サージ)、その虚勢がいつまで保つかな?」

優位を確信した『長』は悠然と鎧アシラに命令する。

()れ!」

『長』の命令を聞いた鎧アシラは食いかけの下半身と『長』を見比べること二秒。

偉そうな椅子に座る肉が自分の食事を邪魔する意図で雑音を発したと理解した鎧アシラは先ほどまで入っていた檻を『長』に向かってぶん投げた。

『長』以外の『長耳』は素早く退避し、残った『長』と玉座に檻が命中。

鎧アシラは残りの下半身を食うのを再開した。何だったんだ今のは。

「ひ、ひいいいいいいいい!」

しばらくして、檻によって破壊された玉座から這い出した『長』がみっともない悲鳴を上げて逃げていく。

同時に、下半身を食い終わった鎧アシラが僕の存在に気づいた。

第二ラウンドの始まりだった。



「GUOAAAAAAAA!」

鎧を着た熊が突っ込んでくる。

「勇者様!甲皮(カワ)薄いとこ狙うと!」

「それどこだよ!」

僕は生存本能で拳銃を撃つ。

鎧アシラの甲皮の配置は実に合理的だ。

四足で突っ込んだとき、防御力が高い部分が前に集まるようになってる。

何が言いたいかって?

銃弾は全く効いてないってこと言いたいんだ。

「下に回り込むたい!」

ーパッシブスキル:自己防衛

鎧アシラの前足を全自動で躱せた。

そこから戦闘用剣鉈に理力を込める。

高速振動する刃を前足の付け根、人間で言うとこの脇の下に突き刺す。


ーパッシブスキル:自己防衛


その前に全自動で姿勢が崩れた。

「ゴッ!?」

鎧アシラのもう一本の前足が僕の胴体に命中していた。

全自動で回避行動を取ったから爪でバラバラにならずにすんだけどその腕力だけで軟式野球みたいに体が吹っ飛んでバリケードに叩きつけられた。

「ご、ごぼっ!」

これ無理だ。

どうやっても勝ち目ない。

「勇者様ー!何しとると!はよ立つと!」

シオの悲痛な叫びが観客席から聞こえてくる。いや、もう無理、これ無理。

今ので右腕が動かなくなった。

腹から血が逆流してる。どっか内臓痛めたかも。

息がしづらい。肋もたぶん何本か折れてる。

「うちの全財産が掛かっとるとよ!?しっかりすると!」

「ごほっ!」

無理なもんは無理、それを言うことすらもう無理。

鎧アシラがすぐそこまで来てる。

もうだめだ死んだ。

「殺せええええええ!」

「ひゃっはあああああ!」

「いいいいええええあああああああ!」

『長耳』の歓声に答えるように鎧アシラが前足を振りかぶった。

「あああああああっ!勇者様あああああああ!」



死んだと思ったけど死んでない。

恐る恐る目を開けてみると鎧アシラは前足を振りかぶった姿勢で固まっている。

熊の表情は分からないけどなんか困ってる様子で見下ろす先にいたのはチビのイワンだった。

「イリーナちゃん無茶だ!」「早く戻れ!」

観客席からマジアカ組の叫びが聞こえる。

観客席から飛び出してきたらしい。

イリーナって誰だ?

「や、やめろよ・・・」

思わぬ援軍だったがこいつはあまりアテに出来そうにない。

このチビは戦意に対して戦闘力が全く伴っていない。

拳銃弾より強い攻撃用の奇跡(スキル)は保っていないし、腕っ節に関しては現地の中坊にボコられて泣きべそかいてるようなやつだ。

こいつがいても僕が死ぬのが1~2秒遅れるくらいだろう。


その予想はなかなか当たらない。

当たらないどころか鎧アシラはゆっくりと振り上げた前足を下ろすとチビの前にすり寄った。


ーアクティブスキル:調教(テイミング)


そういやこいつこんな奇跡(スキル)持ってたな。

一部の外来種を手懐けることが出来る奇跡(スキル)だ。

ただ、一部じゃない相手には全く効果がないけどな。

どうやら鎧アシラは『たまたま』『運良く』手懐けることが出来る相手だったらしい。

「お、おい、やめろって・・・」

鎧アシラは先ほどまでの凶暴性を完全に失いチビの顔を分厚い舌で舐め回す。

危機は去った。助かった。

「何してんだコラアアア!」

「さっさと戦えボケがああああああ!」

「いくら賭けたと思ってんだオラアアアア!」

ギャラリーからのブーイング。

鎧アシラは全く意に介さない。

「勇者様!やった!このまま行けばうちの勝ちたい!」

僕が死ぬと思ってさっきまでこの世の終わりのような顔してたシオが喜色満面だ。

僕の勝ちじゃないのかそうか。

とにかく、これはチャンスだ。

この手懐けた熊を使ってバリケードをぶっ壊して外に逃げよう。


「狼狽えるな!」

チビに指示しようとしたところで傲然と叫んだのは一番狼狽えていた『長』だ。

「前座はここまでだ。次を出せ!」

『長』の号令。

バリケードが開き、すさまじい呼吸音が響いた。

次いで出てきたのは、またしても鎧アシラだ。今手懐けたやつよりさらにでかい。

檻はない。そんなものは何の役にも立たないからだ。

何か薬か奇跡(スキル)を使って眠らせてるようだった。

「あ、あいつは・・・」

観客席のマジアカ組の一人が説明。

あれはマジアカ組が少し前に戦わされた相手だということだ。

あれと戦って、ゲーミング勇者と同等の強さを持った転生者5人が何も出来ず殺されたらしい。

最終的に精神汚染の奇跡(スキル)を持った転生者が眠らせてかろうじてどうにかなったけど、それが出来る転生者はさっき僕が全自動ネックツイストをかましたからもういない。

つまり、あれが次起きたら確実な対抗手段は無いと言うことだ。

「起こせ!」

『長』の号令。

「え?嫌だが?」

鎧アシラを運んできた『長耳』は承服しかねる。そりゃそうだ、次起きたら眠らせる手段がないんだから。

「おどれわしに刃向かう気か!?」

下の『長耳』まそうだと言わんばかりに唾を吐き捨てる。

まじでこの『長』人望ねえな。

長はこの態度に言葉を詰まらせモゴモゴと何かを言おうとして詰まる。

そして無意味に青筋を浮かべて悶絶すること3秒。

「連れてこい!」

『長』の元に一人の女の子が引っ立てられてきた。

着てる装いからしてマジアカ組の一人だろう。「あいつ生きてたのか」「脱走して殺されたって聞いたけど」

彼らの中では死んだ扱いだったらしい。それが生きてるからマジアカ組も困惑してる。

一方、さっきまで反抗的だった『長耳』の顔は真っ青だ。

「始末したように見せかけて自宅に匿ってるのをわしが知らん思うたか?」

うわあ、過疎地のド田舎村かよ、プライバシーないのか。嫌だな。

「いつもやってる晒し首がなかったのはそういうことか」「要領いいな」

マジアカ組は納得いったようだ。

「くっ!」

『長耳』は憎悪の籠もった目で『長』を睨むことしか出来ない。

そのことに気を良くした『長』はマジアカ組の女の子の細い体のわりにすこし張り出したおなかをなで回す。

「や、やめろ・・・やめてくれっ!」

分析(アナライズ)』の奇跡(スキル)で見るとおなかの中に名前がないパラメーターが浮かんできた。

ああ、そういう。

この『長』クズだな。納得の人望のなさだ。

「もう一度言うぞ。『起こせ』」

「ううっ・・・」

こうなっては従うほかない。『長耳』は苦渋の決断で鎧アシラの洗脳を解く奇跡(スキル)を発動した。

洗脳が解けた鎧アシラは目の前に『長耳』を認めると巨大な前足を振り上げてまっすぐ振り下ろした。

前足は立っていた『長耳』の頭上から何の抵抗もなくまっすぐ地面に落下し鮮血が飛び散った。

残ったのはグロい肉の煎餅だけだ。

「い、いやああああああ!」

悲痛な叫びを上げる女の子に『長』は下卑た笑みを浮かべる。

「安心せい、今度はわしがかわいがってやるわい。おい、ガキはオロしとけ」

女の子は金切り声を上げながら取り巻きに連れて行かれた。

「ちくしょう殺してやる!殺してやるぞくそジジイ!」

まったく、ろくなもんじゃねえなこいつら。




「高齢の雌で、子供を持っていない。こういう個体は極めて凶暴になることが明らかになっている」

とはサトーの説明だ。

ちなみに鎧アシラは雌の方がでかくてガタイがいい。

新たに出てきたでかいやつは、外敵にぶつけるために人為的に凶暴化させた個体ということだ。

が、凶暴化しすぎて制御不能になり、マジアカ組転生者の犠牲の下かろうじて無力化、黒歴史として封印されて以降は小型な代わりに素直で従順な若い雄個体を手懐ける方向にシフトしたらしい。

最初に出てきた鎧アシラがその素直で従順な若い雄で、

それゆえにチビのイワンが手懐けることができたというわけだ。

「チビ・・・」

無理とは思うけどイワンに調教(テイミング)させてみる。

「わ、わかった・・・」

イワンは奇跡(スキル)を発動する。

直後に鼻血を吹き出して膝をついた。

使用者の理力が外来種の野生、凶暴性に浸食されたせいだ。

「だ、だめだ・・・」

調教(テイミング)出来ない相手だと起こる現象だった。

これ以上やらせても別の穴から血が出るだけだ。

「お、おい、逃げるぞ、掴まれ」

イワンはフラフラしながら僕の腕を肩にかける。

「痛えよ!腕折れてるの分からねえのかよ!折れてない方持てよバカかよ!」

「怒ることないだろ!」

「あるわ!」

ほんとに要領悪いチビだな。

社会でやっていけないやつ筆頭だ。

こいつが唯一要領良かったのは社会に出る前に死んだことだ。

「イリーナちゃん!そいつはもうだめだ!」

「そいつを囮にして早く逃げるんだ!」

「ほっとけそんなやつ!」

マジアカ組が観客席からロープを投げる。

つーかそんなやつ呼ばわりかよ、ずいぶんな物言いだなおい。

生き延びたら覚えてろよこいつら。

「勇者様!鎧アシラの注意が逸れとるばい!やっつけると!」

シオはもっとずいぶんなこと言ってくる。

どう見たって無理だろ。

振り返って後ろを見ると凶暴な雌の鎧アシラは僕らには目もくれず、居合わせた若い雄の鎧アシラにすり寄っていた。

地の底から出るようなうめき声ではなくゴロゴロと喉を鳴らし金属のような体ををぐねぐねくねらせる動き。

なんだ、今までに味わった恐ろしさが消し飛ぶレベルで、気持ち悪い。

「鎧アシラの求愛行動だ。普通は雄が雌に対して行うんだ。雄の求愛を受けたことがない雌も同様の行為を行うが、大半の雄は嫌悪感からか逃げてしまうんだ。それにしても気持ち悪いな」

ポーカーフェイスだったサトーがマジで気持ち悪そうに説明する。

ああ、道理で、気持ち悪いのも納得だ。

これはK流スターに鼻の下伸ばしてる更年期ババアと同じ気持ち悪さだ。

それは鎧アシラの基準でも気持ち悪いらしく、

雄のほうは完全にビビって立つもんも立たなくなってる。

「おい『長』ぁ!?気持ち悪いぞ何とかしろ!」

『長耳』連中からもブーイング。

応対する『長』は何かの革袋にゲロ吐いててそれどころじゃないらしい。


どうやら、『気持ち悪い』という価値観に種族、文化の違いというものはないらしい。

ここに来て一つ賢くなってしまった。

「つーわけだチビ、今のうちに逃げるぞ」

「わ、分かった」

あの更年期鎧アシラがバイオハザードにいそしんでる間に今の間に気配を消して観客席に逃げ込もう。

それにしても気持ち悪い。

その気持ち悪さを最前線で味わってる雄の鎧アシラは泡噴いて失神寸前だ。

僕を鎧アシラに産まなかったことを親に感謝したいね。

雄が心を開かないことに苛立ってきた雌はその気持ち悪い唸りから一転、金属をこすり合わせたような不快な咆吼を上げた。

これは分かるぞ。

ヒステリーってやつだ。

ヒスッた雌はうまくいかない原因を探すこと3秒、気配を消していた僕らを見付けると金切り声を上げて突っ込んできた。

これも分かるぞ。

八つ当たりってやつだ。

その様はまさに暴走機関車。

「ひっ!?」

ああもう、チビにせこせこ稼がせた距離がたったの5秒で無になった。

それどころか進路に割り込まれた。

「きゅるっるうrrrrrrrrrrrrrrrr!」

怒り狂うでかい雌が気持ち悪い奇声とともに前足を振りかぶる。

そこにさっきまでさっきまで泡噴いてた雄が突っ込んできた。

攻撃態勢のところにぶち当たったために雌は体勢を崩す。

突っ込んできた雄は僕らと雌の間に立ち塞がると全身を広げて雌を威嚇する。

「鎧アシラの雄は基本的に温厚で従順だが番がいる個体は勇敢に戦うことが確認されてるな」

僕は雌じゃないぞ。

まあ代わりに戦ってくれるなら何でもいいか。「gりゅっるるりりおああろあ!?」

良くなかった。

若い雄が明確に僕らを庇ったことが雌のプライドを傷つけてしまった。

雌は怒りのままに前足を叩きつける。

雄は後ろの僕らを庇い背中の鎧で攻撃を受ける。


グシャ


一撃で銃弾も通さなかった外殻がひしゃげ雄は苦悶に顔をゆがめる。

だめだ。全く勝負にならない。

体格差が違いすぎる。

戦車のような雄も戦艦のような雌にはとても敵わない。

一撃で死にかけの雄は倒れ際に僕らに覆い被さると4つ足の爪を地面に突き刺した。

即席のシェルターが出来たけど燃え上がる雌の怒りは収まらない。

怒りのままに降ってくる攻撃に雄の鎧アシラの動きが目に見えて悪くなっていく。

「みんな!イリーナちゃんを援護するぞ!」

マジアカ組がここにきてやる気になったのか奇跡(スキル)を一斉にブッパした。

シンプルな攻撃系の奇跡(スキル)、しかし鎧の薄い部分に一斉に命中したため雌が体勢を崩す。

「よし、人が陽動、残りが防御が薄いとこに攻撃!イリーナちゃんを死なせるな!」

マジアカ組の攻撃は鎧アシラを倒しきるほどの威力はない。

それでも体勢を崩したところに的確に撃ち込んで有効に足止めが出来ている。

こいつら地味に統率取れてるな。

最初にこいつらと戦わなくて良かった。

「イリーナちゃん早く!


パーン


観客席から手を伸ばしたマジアカ組の一人が倒れた。

眉間に穴、狙撃だった。

「耳なしどもォ!嘗めた真似しやがって!先に殺されてえか!」

「くそ!全員防御だ!」

『長耳』の妨害が入った。

これで援護はもう期待できない。


体勢を立て直した雌の鎧アシラはさらに怒りを増大させて金切り声を上げる。

まだ怒り足りないのか。

一方こっちの熊は死にかけだ。

次攻めてきたら防ぎきれない。

「ふははははは、ついに年貢の納め時だぞ軍曹(サージ)・・・」

『長』のイラッとくる哄笑。

「勇者様ー!勝つとー!」

シオの理不尽な声援。

「おいチビ」

僕はイワンに指示を出す。

「あれを出せ」

「梅干し綾子は持ってないぞ」

ボカッ!

「手榴弾だ馬鹿野郎!」

「バカって何だよ!?」

シオからペリカンケースを返してもらった中に入ってたやつだ。

チビに自決用に渡しておいたやつを使う。

チビの腰から手榴弾を受け取ると口でピンを引き抜いて投げる。

鎧アシラの足下に転がった手榴弾は爆発しなかった。

モクモクと煙を吹き出しただけだった。

「ああ、もう」

これで倒せるとは思ってなかったけどがっかりだ。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!軍曹(サージ)!頼りの爆弾が役立たずでどんな気持ち?ねえどんな気持ち?」

『長』が爆笑。

「あぁーッ!?うちの全財産がぁー!?勇者様!なんばしょっと!?」

シオが絶叫。

「きゅrrrrrrrrrrrryyyyyyyyy!」

金切り声とともに雌の鎧アシラが突進。

「総員防御態勢!衝撃に備えろ!」

サトーが吼えた。


ーパッシブスキル:自己防衛


全自動で僕の体が倒れ、ついで雄の鎧アシラがイワンを地面に伏せさせると同時、突進中の鎧アシラ(雌)の顔面が爆発し、壁際まで吹っ飛んだ。


「救難信号、友軍を確認。これより救助する」

地面に降り立ったのは鈍色の鎧、全身に取り付けた火器、よく鍛えられた張りのあるお尻。

見覚えがある。

(くれ)旅団が庸する機導兵、『鉄乙女』だった。



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― 新着の感想 ―
最初の鎧アシラも物騒だけど、後から出てきた鎧アシラはもっと物騒!  そして、妊婦を平然と人質にして脅してはアシラにも部下にも負の感情向けられてる長、人望も人格も壊滅的すぎる……。  あと時折カラダを…
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