朝陽が昇った日-第五話:-転生者現る-
わらわらと集まってきた松明が森の中に散開していく。
この狭苦しい集落のどこにこれだけの頭数がいたというのか。
いや、違うな、これ以上に頭数がいるから人間を売りさばいているんだった。
集落を強行突破しなくて良くなったのはありがたいが、C地点に着く前に見つかりそうだ。
「それでは、陽動をお願いします」
「了解した。誘導弾二発装填、座標入力、発射」
主任麾下の武装キャラバンからの支援攻撃。
目標は集落であり、そのうち二箇所から火の手が上がった。
それを見た松明たちは慌てて集落に戻っていく。
「命中です」
当たった、いや、狙った場所は食料庫と、『商品』を飼育する厩舎だ。
この2つは集落の生命線、ここが攻撃されたとなれば俺にかまけている場合ではあるまい。
「松明がそちらに向かっています」
「了解した。『はぐれ渡来人』が来る前に陣地転換しよう。欺瞞航路を取りつつC地点に向かう。君のほうが早く着くかもしれんな」
機関銃の射撃音とともに通信が切れた。
「よし、俺たちも急ごう」
「おー」
売るほどいた人員は集落の火消しと、武装キャラバンの捜索に駆り出されて俺を探す松明は殆どなくなっていた。
「おー、おー」
「ほらほら、あんましはしゃぐんじゃない」
背中に背負った子供には俺の白衣を着せてある。
山狩りはまばらになったとはいえ、歩きやすい場所には人間が張り付いているから枝をかき分けながら脇道を進無必要がある。
一人二人であれば対処は可能だが交戦は最低限にしたいし、銃を使って集まってくるのも面白くない。
防火、防刃、耐薬品の耐久性に優れた財団支給の白衣でくるんでおけば枝で怪我をする危険は低くなる。
夜の闇の中では目立ってしょうがないが、それでも持っておいてよかった。
「いて、いてて」
枝でいくつか切り傷ができたが、C地点に到着だ。
「ふっ!」
「がっ!?」
C地点にいた先客に牛蒡剣を投げ、処理する。
牛蒡剣は先客の喉に突き刺さり、そのまま倒れた。
しかしここで気が緩んだのがまずかったかもしれない。
「おい何寝てん・・・」
C地点の先客は二人だった。
パッシブスキル:先制
パアン!
「 」
二人目を処理することはできたが、銃を使ってしまったことで居場所がバレた。
「東城研究員!追手を撒いたぞ。我々もC地点に向かう」
「了解。攻撃を受けているので早めにお願いします」
いつの間にか枝で切ったところの血は止まっていたが、それを喜ぶ余裕はまったくなかった。
C地点は遮蔽物になる古い社があってよかった。
「いい子にして待っとれよ」
「うまー」
腐った床の下になにかの部屋が隠してあったのを見つけたので子供はここに隠そう。
四方が石だから流れ弾に当たる心配もない。
「余所者を殺せ!」
パアン!
半狂乱に叫んだ長老の眉間を六連発銃で撃ち抜く。
崩れ落ちる前にライフルの槓杆も折って飛び道具を使えなくする。
これで多少マシになるだろうが、一〇人以上の取り巻きに一気呵成に攻めてこられると残り四発の拳銃弾と血を吸って切れ味が落ちた牛蒡剣では防ぎきれない。
だが、取り巻きたちは攻めては来なかった。
ここで少し希望的な推測が湧いてきた。
さっき殺した長老は集落で権威はあっても人望はないのではないかという推測。
だから敷島のような離反を企てる者が出たのではないか?
そして、離反を企んでいるのは敷島だけではないのか?
そして、今は離反する必要すらなくなったから長老の命令を実行しないのではないか?
「ま、そんなわきゃねえわな」
攻めてこない理由はすぐに分かった。
集落の住人の列が2つに割れると森の中から新たな人間が現れた。
そいつは何事かを詠唱すると手のひらから火の玉を飛ばしてくる。
あれは、まずい。
避けないとまずい。
いやまて、後ろに火の玉が行くのはもっとまずい。
やむを得ん。
パッシブスキル:先制
六連発銃で火の玉を撃つ。
そして白衣を盾にして衝撃に備える。
奇跡が終了、弾丸が火の玉に命中すると中の熱を四方に吹き散らした。
吹き出した炎は白衣の耐熱性で防げても同時に飛んできた衝撃は防ぐことができない。
俺の体はいともたやすく弾き飛ばされて社の奥の朽ちて原型がわからなくなった御神体に激突した。
「が、っっ、くそ」
めちゃくちゃ痛い。
なんてこった、よりによってこっちに来ているとは・・・。
「『渡来人』・・・」
「あれ?おれなんかやっちゃいました?」
村人と違う顔をした人間、異世界からの転生者はそう言って俺の方に歩を進めてきた。
To_be_Continued.




