朝陽が昇った日-序章:少女の記憶-
『僕』の話がとりあえず落ち着いたので本編より10年ほど前の外伝になります。
敷島朝陽と教官:東城護の出会いの話になります。
生まれつき『渡来人』のような強い理力を持っていた少女は、同時期『渡来人』の奇跡と祝福の研究に従事していた東城研究員にその才能を見出されることとなります。
暗い部屋、なにもない場所、それが少女の全てだった。
いつからそうだったのか少女はもう覚えてない。
大人たちの叫び声、『イミゴ』ってなんだろう。
それがこの部屋の外での最後の記憶。
そこからはただ、暗い部屋を眺めていた。
ときどき眩しいものが入ってくる。
そしたら大人がきてごはんを置いて帰っていく。
小さな虫がいるごはんはおいしくなかった。
でもほかにすることがないからたべた。
そしたらまた暗い部屋を眺めて・・・。
それで全部、それだけ。
どれぐらいそうだったか、それは突然終わった。
いつものように眩しいものが入ってくる。
いつもごはんを置きにくる大人がいて、ほかに白い大人がいた。
白い大人は少女に歩み寄ると大きな手で少女を抱えて囁いた。
「おいで、一緒に行こう」
そして白い大人は少女をいともたやすく暗い部屋の外に連れ出した。
冷たい風、赤い光、いろんな音。
知らなかったことが次々に少女に触れる。
暗い闇、そこに張り付いた小さな光、そして、それらを消し去るほどの眩しさの奔流。
白い大人は目を細めて眩しいものと少女を見比べ、抱え上げた少女を眩しさの中にかざした。
「朝陽、君の名前だ。どうかな?」
それが、敷島朝陽の始まりだった。




