29 予感は結果として正解
「それでは、続いては私が、」
改まった様子でビスターが軽く手を上げて、「いいかい、ニアキン、」と丁寧にニアキンに順番を先に済ませることを尋ねている。
「気にしないでください。」
真面目なニアキンはこんな時でも一歩引いている印象だ。
「ビスターはメナンドロス博士の元へ行ったのだったよな?」
キュリスが確認すると、ビスターは「そうです、」と肩を竦めて返事をした。
「面会の約束を取り付けて、研究室へ伺ってきました。メナンドロス博士はとても友好的だったと言えると思います。」
とはいえ、ビスターの表情はあまり良い印象だったとは思えないぎこちなさがあった。
「そんな風には見えませんよ?」
ランスが揶揄うように言うと、ビスターは苦笑いをした。
「簡潔に言って、博士との面会において有意義な収穫はありません。」
「どういうことだい、簡潔に言わなければ、あるのかい?」
キュリスが首を傾げた。
「あまり断定したくはありませんが、表情や言葉の端々に血統至上主義の気配がありました。素の自分を見せてくれたという点で、友好的でした。」
「確か、メナンドロス博士はオルフェス候の一族の出身でしたね?」
ランスは眉を寄せて尋ねた。「オルフェス候の威光を翳してきたのですか?」
はあ、とひとつ溜め息をついたビスターが、そっと視線をテーブルに向けた。
「再現すると心まで穢れそうであまり気が進まないのですが、言わなくてはいけませんか?」
「報告ですから、割り切って下さい。」
ランスは容赦ない。フリッツとしては、信心深く敬虔なビスターが嫌悪するような経験をどうして最高学府である学術院で味わわなくてはいけないのか理解できずに困ってしまった。純粋に学問を究める研究機関なら、無駄な感情など削ぎ落しているのではないのか?
「殿下、才能に溢れた者は時として自分ではどうしようもないことで足を引っ張られたりするのです。」
考えが表情に出てしまっていたようで、カークがフリッツを見て宥めるように言った。「妬みや嫉み、僻みはどこの世界でもあるのです。」
「階級や身分など学術の前には関係ないと思うのですが、そうではないと考える者が研究室の室長を任されているとなると、貴族階級ではない学生は大変ですね。」
キュリスも哀れむように肩を竦める。
「すべて追体験してみたいとは言いませんが、可能な限り聞いてみたいですね。興味があります。」
「教官殿は意地が悪いですね。」
ランスの好奇心にキュリスが呆れたように言うのを見て、仕方なくビスターは話し始めた。
「ご存知かと思いますが、チャイカ博士は平民の出身です。真偽は不明ですがメナンドロス博士は妾の子と呼び、これだから父親のわからないような輩を我が学術院に迎え入れるのは嫌だったのですと言っていました。マチリク博士に関しても、チャイカ博士にまんまと騙されてうまく使われていると酷評して軽蔑している様子でした。他にも見損なったとか、卑しい根性だとか、恩師に対する態度とは思えないくらいの辛辣さのある表現が続き、返答に困るような細かなことを例に出してあれこれと不満を述べたり、老いて耄碌した結果があの醜態だと言って舌打ちをしていました。ダクティルに関しても、皇国出身の言語学者プルポット博士ともどもこき下ろしていました。」
うわーっと思わず声を出し、キュリスがうんざりした表情になる。ランスは冷静だ。
「相当に不満が溜まっていそうですね。他に何か知り得たことはありますか?」
「メナンドロス博士の休暇の過ごし方ぐらいですね。引きこもって、趣味の園芸にいそしんでいるそうです。寮の一室を温室に改造して故郷のオルフェス領から取り寄せた植物を育てているようです。」
「チャイカ博士の人物評は聞けたのですか?」
「それが…、事前に客観的な人物評価を希望しますと話がつけてあったはずなのですが、嫌いだから知らないという態度で話になりませんでした。同じ研究室と言ってもチャイカ博士やマチリク博士の研究についても教えてもらえませんでしたので、興味がなさ過ぎて無関心なのだと納得してしまったほどです。」
「学術院まで同じ馬車で向かったのだったよな? 教官殿との待ち合わせまでの時間、ずっとそんな状態が続いたのかい?」
「あまりにも早く面会が済んでしまったので、学術院の散策をして時間を潰しました。気持ちを整理したかったので。」
ビスターは、うっすらと微笑んだ。
「キイホ博士やティオ博士には出会いませんでしたが、12号棟へも行ってみました。中庭の散策をしていると、警邏中の騎士や学生、他学部の教授と話をすることが出来ました。」
キュリスが「そっちは収穫があったみたいだな、」と尋ねた。
「ええ、それなりに発見がありました。学術院の警備は王都の騎士団なので、先日の市場の狼頭男達の襲撃の一件を知っている者たちもいました。狼頭男達の襲撃の被害を受けたあの馭者には、見舞金と称してマチリク博士が服のポケットから無造作に宝石を取り出して渡したそうです。おかげで馭者はまた馭者の仕事に戻れそうだという話です。」
「へえ、財布を盗られた男が剥き出しで宝石を別に持ち歩いているのですか。準備がよすぎな気がしますねー。」
キュリスが意地悪く笑った。
「あとは…、メナンドロス博士は動物が嫌いなようです。学術院の敷地内に野良猫が餌を貰いに来たりするのだそうですが、近寄ろうものなら不機嫌になり唸って威嚇したり蹴る真似をしたりするようです。精霊や半妖、獣人は許せるらしいので不思議がられていました。ダクティルに関しては、身元保証人であるプルポット博士が夏季休暇に入ってしまったのもあって、最近は学術院に来ていないとわかりました。」
「あの日、市場のあの店にいたのはダクティルだとして、相手はチャイカ博士なら、学術院ではない場所で密会しなくてはいけない理由とは何だったのでしょうか。気になります。」
ランスが首を傾げると、ビスターも首を傾げた。
「ダクティルの王都の拠点に呼び出されたわけでもなく、混雑する市場の、人相まで誤魔化せる酒場ですからね。学術院など素性がすぐにばれてしまう場所ではまずいことなのだろうとは思います。」
「チャイカ博士にとって皇国人の本屋ダクティルとは学術院で会うのを憚られる相手なのだとしたら、弱みでも握られていたりするのかもしれないですよ?」
突飛なことを口にしつつ、キュリスも首を傾げる。「平民で、国益を守るために宣誓もしたチャイカ博士を強請るのだとしたら、短絡的に思い浮かぶのはチャイカ博士が国益に反する行為をしでかしているということぐらいですね、」
「キュリス、言いすぎだよ、」
ビスターが即座に窘めたのを見て、ランスは「いや、案外そうかもしれませんね、」と頷いた。
「教官殿?」
「例えば、学術院で発見された何らかの情報を王城や学界に発表せずに金銭的見返りの為に皇国側、つまりダクティルに流しているのなら、十分に国益に反しています。」
「そんな…、そんなことありえませんよ、」
「そうですか? 情報は強みにもなります。もし皇国人に立場を利用した発見や発見を王城へ報告するよりも先に提供し金銭と交換していたとなると、学術院での立場もありますから堂々と学術院で取引はできないのではないですか? しかもマチリク博士のように、価値を知る者が介入した結果、取引の邪魔をされたりもするのではないですか?」
ランスが言いたいのは先日の市場での狼頭男達の襲撃の際のトリアス博士の行動についてなのだと気が付いて、フリッツは顔を上げた。
「メナンドロス博士を避ける為もありそうですが、学術院に常駐する騎士の目も避けたかったのかもしれないですね、」
キュリスの意見に、ずっと黙って聞いていたニアキンも頷いている。
「やはりニアキンもそう思うか? チャイカ博士を捕まえて実際のところ何をしているのかを尋ねてみたいよな。」
「しかし、どうやって捕まえたらいいのか、悩ましいです。」
狼頭男達の襲撃にあう程危険な状況下にあるチャイカ博士は、きっと、会ってはくれないだろう。
「教官殿は、マチリク博士の立場はどちらだと思いますか。横取りしたのは仲間だからですか。それとも、敵だからですか? 仲間だからなのだとしたら…、マチリク博士は国益に反する行動をとっているのでしょうか。」
「キュリス、本人の告白もないのに思い込みで断定はいけません。」
苦笑いしつつ、ランスは「宣誓した相手である国母様の状態を誰も知らないでしょうから、国母様がきっかけだとは考えにくいです。別の何か別の要因があって裏切り者となってしまったのなら、原因を突き止めない限りふたりの暴走は止められる気がしないですね、」と言った。
ダクティルとチャイカ博士がどんなやり取りをしているのかが判ったら疑惑も張れるだろうに、そう思っても、現時点でどういった被害が王国側に出ているのかもわからない。
「何も起こっていないといいのだが、」
フリッツの呟く声にビクッと緊張する反応したのはニアキンだった。フリッツと目が合うと、重苦しい沈黙を破るようにすくっと背筋を伸ばした。
「私は同じ時刻、前情報がない状態でマチリク博士に会ってきましたが、印象として、とても裏切り者とは思えませんでした。」
「続けて、」
ランスに促されて、ニアキンは頷き小さく唇を噛んだ。
「学術院のマチリク博士とは、学術院ではなく、花鳥公園で接触しました。突然の面会を申し込んだのですが、以前の私の名と王都の騎士団の所属だったことを覚えていてくれたようで拒絶されることもなく、場所の指定付きですが約束は容易く取り付けられました。」
「ああ、あの四阿でですか、」
キュリスが懐かしそうに言う。フリッツはゆっくり何度か瞬きをして、けたたましい鳥の鳴き声や初めてコルと出会った不思議な体験を思い出していた。
「あ、皆さん、ご存知なのですか?」
「ああ、別件で学術院の別の学者たちと面会に使ったことがある。」
フリッツが答えると、ランス達もしみじみと頷いた。
「王都の騎士団の治癒師は優秀だったようで、怪我も後遺症もなくマチリク博士はお元気そうでした。精神的な面で先日の一件で王都を逃げ出しているかと思いましたが、面会に応じてくれました。」
「火の精霊王様の神殿近くに学術院の教授たちのための寮があるのでしたね、こんな状況ですから、身を案じて引きこもっていたのではないですか?」
キュリスがニヤリと笑った。
「ですが、あのすごい神官がいる火の精霊王様の神殿が近くにあるのですよね? 会うのなら神殿か、寮の方がよくないですか? 花鳥公園まで無防備に王都の街を歩くことになるわけですよね? 盗賊団や狼頭男の報復を想定していれば、危険だと思います。それにあの方は強そうに見えなかったのに、王都にいること自体、勇敢過ぎじゃないですか? 」
カークが首を傾げている。キュリスもビスターも頷いているので、ニアキンは小さく咳払いをした。
「だからこそだからだそうです。マチリク博士曰く、王都から逃げ出して身を潜めると、闇に紛れて襲撃されてもそもそも身を隠しているのだから誰にもいなくなったことを気が付かれないから困るのだ、と笑っていました。」
「博士は誰かに生きているという事実を伝える必要があるからですか、」
ビスターが小さく手を上げて質問する。「まさか、内通者でしょうか。」
「違うと思います。マチリク博士は死ぬことについて恐れてはいないと断言されて、むしろこんなことで学問の道が廃れる方が厄介だともお話になっていました。お話をされる姿勢も堂々としていて、先日の動揺した姿の影響など一切感じられませんでした。肝が据わっているという印象です。」
「へえ、意外ですね、ニアキンを騙そうとしているのではないですか?」
ムッとした表情になり、ニアキンはキュリスを睨んだ。
「キュリス、言いすぎだよ。案外豪胆な性分なのかもしれないよ、あのマチリクって博士。だからこそ、王都の市場なんかで大暴れする羽目になったのかもね、」
ビスターが肩を竦めた。
「失ったものについて、何か説明などあったのですか?」
ランスが小さく手を上げて質問している。脱線した話を元に戻すようだ。
「何もありません。王都の騎士団に既に問われているはずと判断して鍵とは何の鍵だったのかを確認がてら聞いてみましたが、マチリク博士はそんなことを聞きにきたのではないのだろうと話を逸らして、驚く私を見て我に返ったように、たいしたことはないので気にしないでほしいと言って口を噤んでしまいました。」
「答えを用意していたはずの質問を誤魔化したのですか。怪しさばかり募りますね。やはり犯人なのではないですか?」
ぽつりとキュリスが言ったのを聞いて、ニアキンが「気にはなりましたがおかげで別の話に気兼ねなく移れました。なんとなく、博士は時間を気にしているという印象でした。どこかへ行く用事でもあるのではないかと思いました」と軽く答えた。
「場所を指定してきたのにですか?」
「ええ。だから、おかしいなと感じました。いっそのこと理由を聞いてしまおうかと思いました。」
ニアキンの感覚に誰もが同意したようで、フリッツと同様に頷くのが見える。
「王都の騎士団と情報を共有していると想定されているのなら、王都の騎士団でも確認したことは聞くのが時間の無駄なのだろうと閃きました。馭者の証言は既に王都の騎士団も把握済みだとすれば、マチリク博士に聞くべき質問は、『探されていた鳥はもう見つかりましたか』だと確信しました。」
「待ってくれないか。馭者にはそう頼んでいたからと言って、本当に鳥を探しているとは限らないのではないですか?」
「マチリク博士は馭者が事情を話すよう質問攻めにあっていることぐらい想定しているとすれば、鳥を探している話など騎士団にも知られています。馭者に無理を押し付けた注文だったのだとすれば、鳥に執着はないはずです。ですが、他にも公園はあるのに花鳥公園にどうしてわざわざ呼び出したのかを考える時、私にはマチリク博士はこの面会で鳥について話すつもりがあるのではないかと思えたのです。」
「予感は当たっていたのですか?」
「ええ、結果として正解でした。皆さんは化かし鳥を知っていますか?」
「ああ、アンシ・シで。」
「まさか、探していたのは化かし鳥だったか?」
「ちょうどけたたましい鳥の笑い声が聞こえてきたのもあって、まだ躊躇っている様子のマチリク博士を少々刺激してみました。『博士は御存知ですか? 王都には魔物が入り込んでいるようです。ヒトに紛れて狼頭男に検問所を突破されているからこそ、襲撃してきたのだろうと思われます。同じように鳥に紛れて化かし鳥も侵入してきているのかもしれません、』と。」
ニアキンが楽しそうに言ったので、「どうなったのですか?」とキュリスは身を乗り出して聞いている。
「あなた様は本当に化かし鳥を知っているのですか、と驚いたような反応がありました。私は実は、そういうものがいるのだとは知っていますが、声ばかりです。実物は知りません。王都ではまだ目撃情報はないのです。いくら学術院の辺りは何でもいそうだからと言っても、退魔煙も焚いていますから、」
竜穴のひとつであるとされている学術院には、以前、キイホ博士も潜んでいた。確かに何でもいそうだとフリッツも思ってしまった。
「マチリク博士は細い目を見開いて驚いていました。その瞳の色が、私には青く光っているのに気が付きました。王国人にありがちな黄緑色ではなく、青い、黄緑色です。」
「博士は皇国人ではないですよね、確か、」
「ほとんどの学術院の教授の身元は、自領の学者を保護するという観点で、後ろ盾となる貴族に保障されています。皇国出身でも、王国人の血が混じっている教授がほとんどです。目が合ってしまったのもあって博士の瞳の色を口走りけた私に、博士は先手を打って『私は皇国人の血を引いている』と告白してくれたのです。多少は魔法も使える、と。もし本当に魔法が使えるなら、あの公国人の酒場で姿を誤魔化して潜入して横取りしたのではないかという教官殿の推理が正しかったのだと思いました。」
「意外ですね。隠さなかったのですか?」
キュリスが顎を撫でた。「だとすると、あの店にも行ったことがあるとそのうち言いだすのかもしれないですよ?」
「急に立ち上がり帰りかけた博士は『気分が悪いので失礼する』と言った丁度その時、急に木々が激しく揺れて若い女性のような悲鳴が聞こえたかと思うと、転がり出るように化かし鳥が出てきて、私たちを見て気まずそうに飛び立ってしまいました。本当にいたのだと驚きました。博士は、追いかけるでもなく声を発するわけでもなく、硬直していました。私は思い切って、『やはり博士が探していたという鳥は精霊ではなくてあの化かし鳥だったのですか』と尋ねてみました。」
「王都にいたのか…、」
驚くキュリスに、「今一度検問所や王都の警備体制を見直した方がよさそうですね、」とビスターが囁きかける。
「博士は頭から水を被ったかのように急に大量の汗をかいていて、『あの鳥を捕まえてきましょうか』と尋ねた私の腕を汗で濡れた手で掴んではっきりと、『見逃してやってほしい』と頭を下げてきました。『いえ、どうか、見逃してくださらないでしょうか』と、これまでの態度とはすっかり見違えるほどに卑屈になってもう一度頭を下げて頼んできたのです。」
「見逃すとは、どういう意味だ?」
つい険しい口調になってしまったフリッツに、ニアキンは頷いた。
「私も気になったので問い詰めてみました。博士は最終的に、あの鳥は知り合いの獣人だと教えてくれました。」
「獣人…、」
キイホ博士の他に獣人が王都にいるのか。フリッツは驚きで声が詰まる。獣人など貴重なのだと思っていた。だからこそ、自分の容姿に悩むのだとも理解していた。ヒトの姿を維持できなくとも花鳥公園に隠れていられるのなら、王都の他の場所でも人々の暮らしの中に溶け込んで獣人が無数に王都に暮らしているのかもしれないなと思えてきて、自分の認識が偏見で凝り固まっているのではないかと思えてきた。
「博士がひとりで私に会いに行くのを心配してくれてついてきてくれたのだと教えてくれて、博士は優しいあの鳥を助けてあげたいのだと項垂れていました。こちらとしては好都合です、あの鳥の獣人を見逃す代わりにいくつか質問に答えてほしいと交換条件を出してみました。博士は、可能な限りでしかないですがいいですかと言いつつも、逃げませんでした。」
「見逃す見返りが素性を話すこととは、初めから秘密を共有したがっているようにしか思えませんが、話に乗ったのですか?」
「ええ。皆さんのお話を先に聞いていたならもっと別の対応ができたのかもしれませんが、あの時の私は、共犯関係にならないと見えてこない世界があるのならマチリク博士の秘密を受け入れた方がよさそうだと判断しました。」
ニアキンはあっけらかんと言った。
「ここまでの流れで、皇国人ダクティルやチャイカ博士の名前は出てきていません。マチリク博士が馬車で逃げてまでして守りたかったのは獣人ではないと見当がついていますから、思い切って『あの時協力者に何を渡したのですか、』と聞いてみました。」
ランスの読み通りなら、待ち合わせていた冒険者たちに狼頭男達から守りたかった宝物を引き渡しているはずだった。
「博士は困った顔をして、鍵だと言いました。鍵は見つかったのではないですかと指摘すると、あの鍵ではない鍵だと言って、黙ってしまいました。」
「鍵ではない鍵とはいったい…?」
首を傾げ、キュリスとビスターが顔を見合わせた。
ありがとうございました。




