12、集めれば集めるほど絡まっていく
ドアの向こうの気配が伝わってくるなんてここは通りに面している割には意外と静かなのだと思い始めると、どれだけ分厚い壁なのかが想像できてしまって、つい、天井近くの嵌め殺しの窓を見上げてしまった。このドアの向こうの部屋はもしかするともっと気密性が高いのかななんて思ってしまったのもあって、ちょっとだけ怖気づいてしまったからだ。
白い壁の嵌め殺しの明かり取りの窓の切り取られたような青い空に大きく翼を広げた鳥が飛んでいるのが見えて、トンビか鷹かななんて考えて、竜ではないのだと安心したりもする。
「…こんにちは?」
ドアを開けて中へ入ると、通り沿いに面する壁と部屋の奥の壁の天井近くに光源となる明かり取りの細長い嵌め殺しの窓がまず見えた。案外空気は淀んでいない。部屋の中は一定の明るさが保たれているようで、目立つ場所にランタンなどの照明となるような家具もない。
四方は何の装飾もない白壁と、隠し戸を開けないと奥へは入れないよう通せんぼして設置されている受付のカウンターとこちら側にスツール椅子がふたつある。カウンターの奥には壁みたいな天井までありそうな高い棚が部屋の奥までいくつもいくつも並んでいる。店というよりは荷物保管所のような、感覚としてはまるで管理が徹底された資料庫みたいな部屋だ。王都のブレットのいる店も倉庫兼店舗であったけれど、居住部分も備えている分生活の気配があった。このガルース支店はまったく生活感も生活臭もないので、ここは本当の意味で倉庫兼店舗でしかなくて、店を預かる者は別の場所で生活をしていそうだ。
あれ? 肝心の人がいない?
歓迎も何もない状況に我に返ってやっと、ドアの向こう側に人が立っているのに気が付く。
部屋へと入りそっとドアを閉めると、ようやく男性が姿を現した。登場の仕方に実はびっくりしていたのは内緒だ。澄まし顔で目線を合わせると、スイッチが入ったように表情が動いてニカッと笑った顔になった褐色の肌で短めの白髪頭の背が高い細身でも筋肉質な男性は、黄色味の強い淡い黄緑色の瞳でわたしを興味深そうに見つめ返してきた。年の頃は30代から40代。肘まで捲った白いシャツから見える褐色の腕にはいくつかの傷跡が見える。幅や長さから見て刀傷でかなり古そうだ。黒いズボンを履き腰には黒いエプロンを巻いているけど、いまだに現役っぽい筋肉質な腕といい、武闘家か剣士な印象がする。
細かな傷が綺麗に消えているのに跡を消していないとなると、治療した治癒師は戦勝の証としてわざと消さなかったのかなと思えてしまった。
「ようこそ。お嬢さん。何をお探しですか。」
先に男性が沈黙を破った。店の関係者なのだとしたら、わたしを客だとやっと認めてくれたようだ。
ホバッサでは名乗らなくてもノックの仕方でわたしがどういう人物なのか通じたのに確認をされているとなると、この人は相当警戒心が強いようだと判ってくる。確かにひとりで営業にかかわるすべての管理を任されているなら、国境近くの街なら警戒心は高いぐらいの方が難を避けられそうではあるので、妥当ではあるとは思う。
「はじめまして。ビアと言います。ロディスさんにつないでもらいたくてここへやってきました。」
礼儀正しく丁寧にしておいた方がよさそうというなんとなくの予感にしたがって、ぺこりと頭を下げて名乗るついでに、ロディスに敬称もつけてみる。退魔煙の練り香の取引相手であるわたし達は対等であるはずなので必要はないと思うけど、目の前の男性がわたし達の事情を知っているのかどうかなどわからない。
瞳をキラキラさせてじっとわたしを観察していた男性は、自身を握った手の親指でクイックイッと指さして、白い歯をきらりと光らせてニカッと笑った。
「ビア様ですよね? お噂はかねがね聞いてます。店主は俺です。ブワイヨと言います。」
ハキハキとした明瞭で簡潔な口ぶりは、見かけ精悍さと相まって、軍隊に所属したか投獄された囚人など規律のある生活を経験した者なような印象があった。
「ブワイヨさん、早速ですが、急いでいるんです。通信、お願いできますか?」
ブワイヨさんはさっとドアにいくつものカギをかけて頷いた。
「大丈夫です。むしろ、こっちから早くそうさせてもらいたいくらい感激してます。どうぞ、こっちへ、」
「?」
首を傾げたわたしに、ブワイヨと名乗った店主は急いでいる理由を詳しく説明をしてくれない。
促されるままカウンターの隠し戸を開けて奥へとついていく。棚と棚との間の細い通路を通って進む中、通り過ぎる棚の中は同じ規格の籠が縦横きっちりと収まっていて、隙間を覗こうとしても隙間がなくて中は見えない様になっている。籠の中身を知らせる注意書きは棚の段の側面にそっと書かれているばかりで、天井も籠も棚も無駄な装飾はなかった。床にはゴミひとつ、塵ひとつ落ちていない。足音もない。この人は相当綺麗好きだわ。ブワイヨさんの後ろ姿を見上げ、皺もヨレもない白いシャツの後ろ姿を見ながらそっと思う。
棚の通路を奥まで抜けて、曲がって、さらに奥へと行くと、こじんまりとしたスペースが見えてきた。部屋の入り口からは棚の影で死角になっている場所でも、壁の天井際にある明かり取りの天窓のおかげで明るい。ただ、床にはこの部屋唯一の細やかな織り柄の色鮮やかなラグが敷かれた上に台があり、水がたっぷり入った簡素な水桶があるばかりだ。他に椅子も机も何もなく、もちろん、花瓶や花もない。徹底している美意識だ。
無言で壁を背にブワイヨさんは靴を脱いでラグの上に立った。
こっちへ、とばかりに手招きされたので、わたしも倣って靴を脱いでラグの上に立ってみる。
水桶の中には透明な水がなみなみと注がれていて、穏やかな光に時々表面が白く映っている。
何らかの呪文を唱えながら、ブワイヨさんは水桶の中に手を突っ込んだ。
「花や葉を使うのではないのですか?」
遠方への通信の可能な『水鏡』の魔法は、通常花を用いる。
「大丈夫ですよ、ほら、」
水の中にいくつもの白い花弁がポコポコと泡立つように底から浮かび上がってきた。クチナシの甘い香りが漂って、驚きとともにブワイヨさんを見つめ直す。
「俺はこう見えて魔法使いなんです。ほら、」
ブワイヨさんが手を水から引き上げると、白い花弁はぐるぐると渦を巻いて回り出した。
幻影使い?
目をパチパチしながらブワイヨさんを見上げると、ニカッと笑って、水面へと視線を落とした。どうやらやはり説明はしてくれないらしい。清潔で簡素で簡潔なブワイヨさんは、騙すつもりがあって言葉が少ないわけではないようだとは伝わってくる。
教えてくれなくても同じ魔法使いとしていくつか方法は思いついたので、自分の手のひらを盗み見る。同じような状況で同じこと、わたしにもできるかな。かなり度胸がないとできない気がする。
「ガルースのブワイヨです。ロディス様、レオノラ、緊急事態です、」
緊急事態?
選んだ言葉に目を見張ったのもつかの間、水の表面に緊張した顔のロディスとレオノラさんの顔が見え始めた。
※ ※ ※
「ビア様、」
驚いていても反応したロディスはともかく、レオノラはどうも慌てている様子だ。
「そんな驚いた顔をしないで、」
ホバッサのチオクさんから報告が上がっているはずなので、わたしがガルースにいることを驚いたのだと合点する。
「ちょっとした混乱があって、今ガルースにいます。わたしは元気です。」
「そうですか、それは…、」
理解が追いつかない様子のロディスは驚いた顔のままなので、安心させるためにも説明しておいた方がよさそうな気がしてきた。
首にかけていたリディアさんお手製の『アリアドネの糸』と呼ばれる網に絡まる翡翠のアマガエルを水鏡越しにロディスへ見せながら、「これ、アリアドネの糸って言って魔道具だったみたいです。虚空の闇と呼ばれる場所に飛ばされたんですが、この世界との縁を手繰り寄せて帰ってこれたみたいなんです、」と付け加えてみる。
「アリアドネの糸ですか…、道理で、」
ロディスは意外にも効果を知っているようだ。
「ビア様、ガルースにアリアドネの糸でつながった方がいらっしゃったんですね、」
「そうです。この翡翠のアマガエルも魔道具なんです。持っている者同士が近いと反応があります。」
語るうち、吉兆の白鷺のクロヴィスと過ごした虚空の闇での時間の中へと舞い戻った感覚がして、師匠を頼った時の素直な気持ちも思い出す。
同時に、師匠に話せないことをロディスに話してしまうのは違う気がして、これ以上は話せないなと感じていた。
「よかった…、そうですか、虚空の闇という場所があるのですか…、」
「ブワイヨは知っていますか?」
レオノラがいきなりブワイヨさんに話を振った。「ビア様、ブワイヨはガルース支店の店主となる前は、王国の各地を旅して歩いていたのです。」
「ホバッサで出会ったムラさんやメークスさん、エイトさんたちや、王都で出会ったファレスさんやルビオさん、デルカドさんたちみたいなお仕事ですか?」
「ええ、そうです。」
ブワイヨさんは胸を張った。
「虚空の闇とは、公国のおとぎ話に出てくる妖の道という不思議な世界のどこかにある、大昔の大妖が宝物を隠したという秘密の場所のことですね?」
「ええ?」
思いがけない説明に、わたしは思わず驚きの声を上げていた。あの場所のどこに宝物を隠せるのかわからないけれど、妖の道ができる以前のシンの為の場所ならシンはもっと都合のいい場所に宝物を隠していそうなので、まず違うと思う。だいたい、記憶の中にある虚空の闇は虚無の闇とも言えて、何かがあるようには到底思えなかった。
「ビア様、宝物はあったのですか?」
「いえ、そんなものはなかったです。とにかく真っ暗闇で、何もなくて、どこにもつながっていない場所で、誰にも見つけられない場所だから自分で出口を探すのだとばかり思いました。」
冒険者だからという自覚がなかったら、踏み出そうとも思わなかったかもしれなかった。
「そうすると、宝物というのは自分の命か誰かとの縁か、ということになるのでしょうか、」
眉間に皺をよせていたレオノラは、コホンと咳払いをしながらうまく話をまとめてくれた。さすがだ。
「とにかく、よかったですね、ビア様。ホバッサの連中にビア様は無事だと伝えます。」
「そうしてください、それと、」
わたしはホバッサの聖堂で急遽行った馬車での治療で出会った人々との会話を思い出していた。
「練り香、もうじき収益を上げられなくなるのですか?」
「ビア様、どうしてそれを、」
「ちょっと耳に挟んだんです。国の専売になってしまうのなら、契約も終了となってしまうんですね?」
わたしとしては、ロディスとの付き合いはもうしばらく続けていたい。だけど、現段階で退魔煙の練り香以上の対価をロディスに支払えない。
ロディスはまじめな表情でわたしを見ていた。
「ビア様、」
「短い間でしたが、取引をしてくれてありがとう。感謝しています。」
1周目の未来でもし同じように練り香が国に召し上げとなってしまっていたとしても、わたしは知らないまま最期の日を迎えていたのだろうなと思う。何しろ当時のわたしは分化できておらず、聖堂いや先輩に生殺与奪を握られて、自分の頭で考えることなどせず、言われるままに治癒師として働き魔石作りを繰り返していた。
「そんな…、水臭いです。ビア様。当分の間はこのままの関係でいいと思っていますが、いかがでしょうか?」
対価もなく対等でいようとしてくれる提案は破格だと思えた。
「喜んで。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「ビア様がお考えな規模よりずっと稼がせてもらいましたから。これぐらい、気にしないでください。」
上っ面だけの社交辞令の言葉だとしても、王国を網羅する商会を持つロディスと付き合いが続くのは頼もしい。「ありがとう」と呟くと、ブワイヨさんがまたニカッと笑った。
「ところでビア様、今日このガルース支店へは報酬を受け取りにいらっしゃったのでしょうか、」
ブワイヨさんが切り出した。笑顔でとんでもないことを聞いてくる。意図が読めなくて怖い。
「いいえ、違います。もし報酬があるのなら、ホバッサで出会ったムラさんやメークスさんエイトさんたちを労ってあげてください。」
ロディスは目を丸くした。聞こえないのかな。
「ビア様?」
レオノラはかすかに震えている。
言い換えてみよう。
「例えば、宿代にでもしてあげてください。マスリナ子爵領からデリーラル公領はとても遠いです。」
面喰ったような顔になってブワイヨさんが目を何度もパチパチとさせた後、わたしから目を逸らせて、驚き顔のロディス達へと視線を向けた。
「だそうですよ、ロディス様。」
「まさか、ご存知なんですか、」
何かを口走りそうになったレオノラを、慌ててロディスが黙らせる。
「わかりました。そのようにしましょう。」
「あの街からマスリナ子爵領へ戻るのも大変そうです。何かの糧になればいいなと思います。」
ロディスもレオノラも大きく目を丸く見開いてしまったので、間違っているのかなと不安になってきた。まさかご存知って、デリーラル公領の近くにもしかして彼らは家を持っているって意味なのかなと思えてきた。
「でも、もしかしてチオクさんの家に皆で住んでいるんですか?」
プフッとレオノラが噴き出した。
「違いますよ、」
ロディスはゲラゲラ笑っている。
「ビア様は面白い発想をお持ちですね、」
面喰ったままの表情でブワイヨさんが言うので、余程見当ハズレな戯言を口に出していたようだ。
ロディスのリバーラリー商会に謎が多いように、わたしも大切な秘密は隠したままでいる。お互いにあまり事情を話さないのだからこれ以上この話題は続けない方がいいなと思ったのもあって、別の話をしてみようと切り替える。
「今日ここへ来たのは、アンシ・シが封鎖されている件についてなんです。」
わたし自身がレゼダさんという監視の目が付いたことによって自由に妖の道や転送可能な椅子のある月の女神さまの神殿を利用することなく情報を集めるには、リバーラリー商会という頼れる味方を利用するのが確実だと思ったのもあってここに来ていた。
ロディスの配下にある者たちはまったく魔法が使えないわけじゃない。商人として店を構えたり行商人として野山を歩いて国中の小さな村や街を行き来して網羅しているから、もしかしたら春の嵐であるオルジュや冒険者であるレゼダさんや公国の庭園管理員である師匠とは違った視点で情報を得ているかもしれないと閃いたのもあった。
沈黙のまま、誰も教えてはくれない。
水鏡の向こうではロディスもレオノラもお互いに目配せしあうばかりで何も語ってはくれない。
こちら側にいるブワイヨさんを見やると、目線を床に落としたままで目を向けてもくれない。ただし、唇がしきりと動いている。何か語れる情報を持っていてまとめているように見える。
「何か知ってませんか?」
もう一度尋ねると、ようやくロディスが、「ビア様、」と声を発した。
「ビア様はどこまで把握されていますか?」
わたしの出方を見るつもりな姿勢には、わたしの情報量に合わせて出せる情報を制限するつもりでもあるかのような慎重さがある。
「地竜王様が神殿にいらっしゃって、魔香が使われていて、雨を降らせるために公国からエドガー師が呼ばれるのですよね?」
わたしの父さんがアンシ・シにいそうなこと、他にはトマスさんやベルムードも滞在しているとは、ロディス達には面識がないのだから伝える必要はなさそうな気がする。
「ブワイヨ、侯爵家の人間もいるようだね?」
「はい、それだけじゃないんです。あの街には、」
ロディスの確認に答えたブワイヨさんが、腕を擦りながら気まずそうに付け加える。
「先の大戦の功労者である氷雪の教授がアンシ・シにいるようです。ビア様、シクストという薬売りの男性と一緒に旅をされていた時期がありましたね? 彼はシクストと言う名の薬売りより、氷雪の教授として有名なのをご存知でしたか?」
どうしてシクストおじさんがアンシ・シに?
言葉に詰まってしまって、何も答えられないままでいた。
わたしの知っているおじさんはミンクス侯爵領にてわたしと別れた後北の方角へ向かってしまったのだとは断言できても、その後を知らなかった。
まさか、おじさんまでアンシ・シに向かっていたなんて。
「…ロディス様、氷雪の教授は御存知ですか?」
「多少は知っている。氷雪の教授は先の大戦後軍を辞めた後薬売りに化けて気ままに旅をしているという噂と、表向きは薬売りとして領内に忍び込み軍の任務で情報収集をしているという噂とがあったが、一時ビア様と同行されていたと判って、どうやら薬売りであるのは間違いないけれど諜報活動をしている訳ではなさそうだという評価をしているよ?」
わたしはおじさんが探索虫を使ってまでして人か何かを探している様子だったとしかわからない。冒険者になってからは庭園管理員として活動しているつもりなのもあって出し抜かれた気がして、ロディスの評価を素直に受け入れられなかった。
ロディスは視線を斜め上へと向けた。「ブワイヨはどうやって彼を見つけたんだい?」
「簡単な話です。この街に来たんです。薬売りとして。」
「ガルースの市場にかい?」
「そうです。つい十日程前、昼の買い物の最中に見かけました。敷物の上に薬草を広げて道行く者に声をかけている姿を遠巻きに発見したのですが、あまりに売れていなくて気の毒なくらいでした。」
ああ…、わたしの知っているおじさんだ。
「夕方、まだいたので身分を明かさず話しかけて、薬草の効能を聞きながらそれとなく探りを入れて、次は宿の名を聞こうとしたら、彼は突然立ち上がり、荷物をかき集めて去ってしまいました。」
「どうしたんだ? 追ったのか?」
「もちろんです。追跡は得意ですから。アンシ・シへ向かう侯爵家の荷馬車を追って付いていったのだとじきに気が付きました。」
何を見かけたのかまではわからないけど、おじさんが探していた何かか手がかりを見つけたのだとは判る。
「その後、アンシ・シは封鎖されています。」
おじさんはどうしてあの街に行こうとしたのだろう。
「何かあったんでしょうか、」
ロディスもレオノラもブワイヨさんもわたしも、経験上何かがあったんだと察せても、尋ねられないから事実が確かめられそうない。
悔しいけど具体的な情報はわからない。
わかるのは、アンシ・シに行きたい理由が増えたって事実だ。
「ビア様、ロディス様、魔香が使われたとされる街に氷雪の教授と言う通り名のままに水と風を自由に操る偉大な魔法使いがいるとされているのに、もうじき公国から夕凪の隠者と呼ばれる大魔法使いがやってくる状況って、おかしくないですか、」
何も言えないまま、わたしもロディスも、もちろんレオノラもブワイヨさんを見つめるしかなかった。
「ロディス様、どうも妙です。どう考えてもアンシ・シで何かが起こっています。魔香の影響を一掃するなら氷雪の教授でもよかったはずです。何らかの事情があるとすれば、単純に、氷雪の教授では対応しきれないような大事を解決するために封鎖して、大魔法使いのエドガー師がやってくるまで状況を保全している状態にアンシ・シはあると見たほうがよさそうです。」
ブワイヨさんの問いかけに、とりあえずわたしは黙って頷くぐらいしか反応を思いつかなかった。
ありがとうございました。




