22、紫水晶に消える影
水の中にあるからと言って魚が泳いでいる訳でもないのに、湖の底の神殿に向かっていくつものひらひらとした何かが黒く浮遊している。はっきりとはわからなくても、月のない夜だから何も見えないというわけではない。
湖底にある神殿へとわたし達の球体の空間は水の中をゆっくりと近寄っていた。地上にあるとしたら石造りの頑丈な円盤のような作りの建物だとわかってきて、覆われた天井の中心は丸く明かり取りの窓が見える。その奥深くからの青白い光が眩しいまでに明るくて、この光量だから水底にあっても地上へと届きはっきり輝いて見えているのだろうなと思えた。
光があるからこそ黒い影が渦を巻くように神殿に集まり吸い込まれるように暗い穴の中へと消えていくのも見えてしまっていて、自分の知りうる情報と照らし合わせていく中で次第に水の流れに流される影はヒト型に見えてくる。ただ、先に行っていると思われる老女神官様やコル達ではない人数に見えたし、水に濡れなく湖底に降りる方法を知らないとなると、黒い影はだんだん怪しい集団に思えてきた。
「盗賊団ギルドか何かでしょうか、」
首を傾げてしまうのは、自信がないからだったりする。この湖の水は危険だと判っているのに損害を受け入れてまでして常人が泳いで湖底の神殿に追いかけて行くという理由が見つからなかった。
「お前が排除しなかったからだろう。」
当然だとでも言いたそうなシンの言い方に、当たりなんだ?と判り意表を突かれる。
「何をですか、」
盗賊団らしき人、いたかな。
「手伝ってやっただろう?」
「え、」
何をですか、と繰り返すのは止めておく。これ以上愚かだと思われたくない。
「お前がいた部屋にあった変な魔道具は壊しておいた。」
そうみたいですねと思うし、あれは盗聴できる魔道具なので壊して正解ですと、シンと父さんの存在を誰かに明かしたくないわたしとしてはこっそり思ったりもするけど、一応庭園管理員だったりもする立場でもあるし、ブリスさんの行動も動機も理解できるので言葉にはせずに頷くだけにしておく。
「入り込んでいた者たちがいたのには気付いたのか、」
「聖堂に、ですか、」
入り込むっていう言葉の選び方から想像するなら、招かざる敵か悪意を持って侵入した者だ。そんな者はいなかったと言いかけて、言葉を飲み込む。支援者たちが治癒師を求めて集まっていた中にシンが言う『入り込んでいた者たち』がいたのだとしたら、わたしは見つけられなかったし、気付いてもいないのだから排除など出来ていない。
溶け込んでいたとしても、シンにはわかる違いがあった…?
考え込むわたしの顔を見て、シンは小さく息を吐いて、「気にするな、過ぎたことだ、」と言ってくれた。
そんな風に言われると余計に気になる。
神殿の上を一周くるりと旋回した後、わたし達を包む葡萄を模したという球体の空間は神殿の入り口だと思われる暗い穴へと引き寄せられていった。
先へ入っていったのは、人に見えた黒い影の集団だ。
「気にしないといけないような者たちだから排除する必要があったのではないですか?」
何を見落としたのか、知りたいと願う。同じ間違いをしてしまうのは避けたい。
シンは瞬きをした後、まっすぐ前を見て、穴の中へと入っていく最中で「到着したようだ、」といって再び水との膜へと手を付けた。
※ ※ ※
しゅるんと空気の皮が剥けたとしか思えない素早さで外と中の空間とが馴染んで境界が消えて、わたしとシンとは洞窟の中に立っていた。入ってきた湖の方へと目を向けると、外の世界では雨が降っているかのように地面に水が落ちてくる音ばかり聞こえる。
息ができる。空気の流れや風も感じる。奥は薄暗く光っていて、誰かが松明でも持って移動しているみたいに灯りが揺らめいていたりもする。
月のない夜に湖の中に魔法の仕掛けで降りたのだとこれまでの時間の流れを覚えていなければ、わたしはシンと土砂降りの雨の中を雨宿りをしたくて洞窟まで走ってきて奥へと進んでいる最中なんじゃないのかなって勘違いしてしまいそうなくらいに、水の中だと意識できないでいる。
「…ここはどうなっているのですか?」
「見たままだ。」
「神殿に入りましたよね?」
「言っただろう、これは神事ではない。」
「神殿があるから、宝珠があるのではないのですか?」
わたしが聞いていたこの湖についての情報をシンに伝えるべきかどうか悩むけど、この際わたしが聞いていた情報とシンの持っている情報の擦り合わせをしたいと思ってしまった。地質学者がこの湖を調査したという領主代行様の話が嘘だとは思えないし、新月の夜に宝珠の交換をするために巫女や老女神官様がこの場所に降りてきているのも伝聞とはいえ事実であると思いたいのもある。
「…この先に、待ち構えている者たちがいる。」
「侵入者ですか?」
「お前とは話がかみ合っていないようだな。」
「そうみたいですね。」
立ち止まって、シンはわたしを見降ろした。
「お前は何も知らないようだな。」
表情に変化が乏しくても、忌々しそうな口調から怒っている心情が想像できる。
言葉を待っても親切に教えてくれる風でもないシンは、わたしを残し、洞窟の奥へと向かって先に歩き始めてしまった。
「教えてくださいませんか、」
追いかけるわたしは、食い下がると心に決める。
「お前がいるだけで手伝いになっているから教える必要はない。」
「あの、」
わたしは勇気を出して尋ねていた。
「あのまま…、わたしがこの街に戻ってこなかったら、お手伝いなんかできていないと思うのです。」
シンは聞いていないふりをしているのか応える気がないのか知らないけど、黙ったままで、振り返る素振りすらない。
「例えば、その…、戻ってきていなかったら、手伝いはどうするつもりだったのですか、」
「そうだな、いくらでもやりようはある。気にするな。」
「わたしと父とをつなぐのはわたしの影です。父と同じように…、あなたも、わたしの影が必要なんですか、」
シンは立ち止まり、わたしの顔を見た。
わたしは指摘してはとてもマズいことを口にした?
「影から出たのなら、わたしは必要ないはずですよね? 影、もしかして関係なかったりしますか?」
聖堂でと湖の近くでと、2回、わたしの影を使って現れているのだとしたら、わたしがこの街に帰ってこなかったら、どうやってシンはこの街に来た理由とやらに取り組むつもりだったのか気になる。
「わたしはもう、お手伝い、終わりなのですか?」
「いや、まだまだ協力してもらう、」
「だったら教えてください。どうしてまだわたしが必要なのですか?」
シンは黙ったままだ。
だからといって、不機嫌だと見せつけて威圧して黙っていればやり過ごせると思っているのなら大間違いだ。答えが出るまで問い詰める覚悟はできている。
「もしかして、わたしの影と関係なくこの街に来ていたのではないですか?」
ブリスさんは、地竜王さまの神殿での竜の召喚は失敗したと教えてくれた。
わたしが父さんを呼んだのは同じ頃だ。
シンは、竜なの?
言葉にするのが怖い。
「わたしの手伝いとは、わたしに召喚されたと見せかけておいた方が都合がいいからですか?」
竜の召喚が成功していたとわかると、せっかく身を隠していたのに召喚した者に従うしかなくなるから?
「…だったら、どうする?」
当たり?
ちょっとだけ浮かれかけて黙る。
竜なら、わたしは分化が停滞した半妖だ、喰われてしまう可能性がある。
シンからは竜独特の威圧感はしない。
苦手意識があるとすれば、父さんの取り引き相手だという扱いにくさからだと思う。
「話してくれたら、手伝いがしやすくなります。」
話とともに道は途切れ、煌びやかな広い空間が目の前に広がっていた。
※ ※ ※
洞窟の奥は開けて広くて紫色に輝いていて、丸く大きな天井の中心は穴が開いており、すり鉢状になっている見下ろす先の中心には神殿が作られていた。輝きの元であるぐるりと周辺には紫水晶の柱がみっしりと立ち並び、光を反射しあう中に白い神殿があった。
意外にも神殿からは光が放たれていなくて、外から見えていた青白い光というのはこの紫水晶の光なのかなと思えてきた。
「降りるぞ、」
シンがわたしを引き寄せて小脇に抱えてくる。嫌な予感がする。
「投げるつもりですか?」
「そうだ。」
「止めてください、怪我しそうです。」
どう見たってこの位置から中心の神殿まではかなり距離があって、その間には地から突き出た紫水晶の鋭く尖った幾千幾万という柱が剣山のように隙間なく密集している。
「ここの魔法の癖のようなものだ、安心しろ。」
「無理です!」
軽く笑いながら、シンは臆することなくひょいッと軽々しく投げ出した!
自分自身を『強化』する間もなくて、わたしは思わず目を瞑る。
最悪の場合しか待っていない気がする。
…?
「おい、目を開けろ、勘違いするな、」
落下するでもなく痛みを感じるでもなく、柔らかいものに包まれる感覚の中で、シンの声を苦も無く聞けていた。
「あれ?」
紫水晶の剣山に刺さった自分を想像していたのに、うっすらと目を開けると、透明な水を固めたようなフワフワとしたものの背に抱き着くようにして乗っていた。大きさは馬車一台分ほどありそうな結構な広さと幅と厚みがある。ずるずると剣山のような紫水晶のトゲトゲの上を神殿に向かって動いているのが透けて見えているので、生き物ではないのだろうなと思っても生き物にしか思えなくて不思議な感覚がする。
「なんですか、これ、」
悠々と腰かけているシンに対してわたしは水に飛び込んでいるマヌケな体勢のままなので、恥ずかしくて視線を逸らしながら何事もなかったかのように座り直す。
「ナメクジみたいですけど、違いますよね?」
とぼけておくのも保身からだ。
「違うな。この神殿に来る前に使った葡萄の皮の中身だと言えばわかるか?」
わたしの知っている葡萄は口に一口で放り込める粒が集まって房になったものなので、人ひとりが乗れる大きさの液体のような塊が葡萄と言われると、比喩なんだろうなってわかっても違うって言いたくなってしまう。
「…わかりません。」
言葉を、すり替える。
「錬金術師が作る人工物の一種だ。土人形ならゴーレムと呼んだりもするな。こんな見てくれでも魔法陣に織り込んだ指示通りに動く。」
「これも指示の一種ですか?」
「そうだ。発動する条件は『空中から落下すること』だから、放り投げるのが手っ取り早い。」
「作り主にどうしてそんな条件にしたのか、一度じっくり聞いてみたいですね。」
冗談で言ったつもりなのに、シンはまじめに「歩いて湖に侵入する者は『しかけを知らない』という証明になるからだ」と教えてくれた。あっさり知れてしまった。
「知っていたから湖に入る時もわたしを投げたのですか…、」
説明してくれていたら心の準備をできたのに、と思うと、文句のひとつやふたつ言いたくなってくる。
「説明している時間がなかったからな。」
「質問していたら教えてくれていましたか?」
質問しても教えてくれないシンに尋ねてみる。
もちろん、聞いてみたいのは、わたしのお手伝いについての件だったりする。
睨んでいると、シンはわたしの顔を見て、「お前の影は使わず、ここへは別の手段で来た。頼まれたから父親を呼ぶのを待っていた」とようやく教えてくれた。
「父を呼ばなかったらどうしたのですか、」
「砂時計だけ渡しただろうな、」
シンに会っていなければ、と考え始めると、結果として現在は助けられてばかりだ。意外とわたしは利益を得ている。
「父のわたしへのお使いが先でこの街へ来たのですか? それとも、父はあなたがここへ来ると知ってわたしへのお使いを頼んだのですか?」
シンが先にこの街へ来たいと考えていたのなら、わたしの手伝いは初めから想定されていない。
父さんのお使いのついでにこの街へ来ることになったのなら、わたしは都合よくそこにいたからついでに使われていると考えた方がよさそうだ。
「お前の父親の考えていることは計画を聞く前も聞いた後も実験的な試みだと考えているし、どうなるのか結果が興味があるから関わっている。ここへ来る目的を知っていたからお前の父親が各所で囁いて動かして、関係がなかったはずのお前との縁をつながれてしまった。」
父さんが囁いて動かした?
「この街にもともと来ると決まっていた竜人の娘が当初の計画通りにこの街に来て神事にかかわっていたら、あなたのこの街での用事はこなせたのですか?」
自分でも声が震えているのが判る。
キーラの行く先を変えたのはキーラやキーラの後見人ではなく父さんなの?と思い始めると、何日前からの計画なのだろうとか、シンですら操られてしまっているのかなとか、規模が見えなくなっていた。何よりもコルも巻き込まれてしまっている原因が父さんだなんて、想像すらしていなかった。
「少し厄介だっただろうが、あまり関係ないだろうな。」
シンはそう言って顎を撫でた。
視線の先を追うと、つい身震いしてしまった。
紫水晶の剣山の切れた先には広場があって神殿が見えている。
中央の神殿の入り口の前には人だかりができていた。移動中見えていなかったので、この紫水晶の柱は一本一本が人が何人か分かの高さがあるのだとようやくわかった。
「いや、そうでもなさそうだ。ああ、そうだと手に入れられなかっただろうし、望んでいた結果にはならなかっただろう。」
神殿前にいる人々は老若男女様々で、かなりの高さから放り投げられた結果、頭が割れていたり、首が背中に折れていたり、全身血だらけだったり、手足がおかしな方向に曲がっていたりしてしまったのかなって首を傾げてみたくなって、違うと閃いてしまった。
この人達は水の中で黒く揺れていた影だ。
「なんですか、あれ、」
生きているはずのない状態の者たちが動いているのは、ありえなく異常な事態だ。
「死人だ。」
見たままなんだ…!
わたしは実は1周目の世界で死人に遭遇していない。
「どうしてこんな場所にそんなものがいるのですか、ここ、神聖な場所ですよね?」
「わからない奴だな。ここは神殿ではないと説明しただろう。」
「神殿ではないのだとしても、ここは純度が高たくて曰く付きの水の湖なのに、どうして魔物が侵入しているのですか、」
すぐさま生き物から生きる力を奪う水だから死人には関係ないのだ、と自分の中で答えが見つかって気まずくなる。
「お前が排除しなかった者が連れてきたからだが?」
シンは眉間に皺を寄せた。
「こうなると判っていたのではないのか?」
「いえ、知らないです。死人って、だいたい、どうして動けるのですか?」
「お前の父親は人形を作るのに、お前は無知だな。」
愚かとせせら笑われても、教えてくれるなら許せる。
「死人の作り方は簡単だ。闇落ちした人間に襲われて死ねば死人になり、死ななければ魔物に生まれ変わる。」
「闇落ちって、同族殺しですよね。特に共食いが最短だって聞いたことがあります。」
精霊の愛する国・公国では精霊と半妖と人間が暮らしているので、闇落ちするための条件は禁忌でもあり口に出すのも憚られる。公国の公都の図書館でも研究する学者の文献はすべて禁書扱いで、わたしも自分が精霊の子なので他人事ではなかったりした。
ただし、父さんがかなり特殊な精霊なようだと探り当ててからは父さんと同族を探す方が難しそうだと思ってしまったので、あまり自分には当てはまらないのではないかと思うようにもなっていて危機感も興味もない。
「意外と知っているな。」
「一応、知識として知っているだけです。死人は死人ですよね? 人のように動かす言葉や条件などがあるのですか、」
「操るのは闇落ちさせられた闇落ちした者で、屍食鬼であり、元凶だ。その者を断たなければ増え続ける。」
屍食鬼? 闇落ちした者に闇落ちさせた?
「元凶の元凶は、人間ではないのですか?」
「そうだ、狼頭男である場合が多いな。」
わたしは声をあげられないまま固まってしまっていた。
狼頭男がここにいたりするの?
「どうして、こんな場所に、」
「ここにいるのは元凶だけだ。元凶の元凶はいない。安心しろ。」
「こんなに数がいるのに、元凶を見つけないといけないのですか?」
「先に奥に行ってしまったのだろうな。追うぞ、」
わたし達の話声で接近を察知したらしい死人が、怒号をあげて襲撃してきた。
幸い紫水晶の柱に一本一本が高いのと昇るのに適していない形状なのとで直接危害を加えられてはいないけれど、集まってきた者が死肉で出来た土台となりあって高さを増し、手を伸ばし、魔法陣の指示通りに動き止まろうとせずに進んでいく透明な水の塊に迫ろうとし始める。
「どうやって先へ進むつもりですか、集まってきてしまいました、」
ここを抜けたとしても死人をやっつけるには元凶を討たなくてはいけないのなら、一体一体確認しなくてはいけないのではないかなと思うと、気が遠くなる数だった。
同時に、そんなに多くの人間から希望を奪った人物がいるのだと思うと寒気もする。誰かに希望をかける魔法を使う治癒師であるわたしの対極だ。
「これ、止まらないです、」
どういう仕組みでどこまで運んでくれるのかわからない水の塊に乗っている以上、突っ込んでいく気しかしない。
「じきに止まる。お前は伏せろ、」
「伏せるんですか?」
わたしとシンが乗る透明な水の塊は、シンの言葉通りにゆっくりと止まった。
伏せたりしたら余計に登ってくる死人と顔が近くなるだけではないのかな。
「早く、」
いきなり投げ込まれたのよりは説明があった方だと割り切るしかないようだ。
命令に反抗してみたいのを我慢して、顔を隠して伏せてみる。透明な水の塊の下はわたしで影になっていて、紫水晶の美しい紫色の柱が暗く鈍った色に変わっている。
影に映り込み互いに柱に反射して連続するわたしの姿はどれも驚いた顔をしている。
「目を瞑れ、」
どうして、
文句を言いたいのを飲み込み、わたしは目を瞑って反射的に口も噤んでみた。
シュン、シュン、シュン
ザン、ザン
プシュ、プジュ、
回転する遠近感で鋭い金属の風を切る音が聞こえてきたかと思うと、分厚い何かを断つ音や液体が吹き上がる音が響いた。
「もういいぞ、」
シンの声におとなしく従って顔を上げ、立っているシンを真似て立ち上がると、ついさっきまで死人の山となっていた場所にくすんだ灰の山が出来ているのが見えた。
「全部、倒したのですか?」
魔物は宝石を隠し持っていたりする。灰の山にはいくつか小さな輝石が見えて、さっきの一瞬で死人をシンが倒したのだと理解できた。
「どうやってやったんですか、すごいですね…!」
シンはちらりとわたしを見て一瞬目を細め、「たいしたことない、」と呟いた。
死人とはいえ、人間だった存在だ。胸に手を当て頭を垂れて悼んでいると、「名の知らぬ誰かのために祈るのか、」と呆れる声がする。
「だからこそ、です。」
輪廻の輪に戻った先を祈りたい。
「行くぞ、」
シンはわたしを小脇に抱えて飛び降りると、面食らうわたしに背を向けて先に神殿の中へと入っていった。
いきなりはやめてほしい。心の中で呟いて気持ちを切り替えて追いかける。
「つくづくお前は父親とかなり違うな。」
追いつくと小さく聞こえた声にほんのりと優しいがあった気がするのは、気のせいじゃないと思いたい。
ありがとうございました




