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17、北の海の聖女は半妖を狩る

 冒険者となった時に与えられる1周目の未来を経験しているからと言って、誰もが皆誰かと分かち合いたいような幸せな記憶ではないとわたしも知っているし、忘れたくなるような苦しいものだったりもするのだと理解もできる。

「あれは、もういいんだ。」

「モリス?」

 視線を逸らして、モリスは黙り、眉間を曇らせると、小さく溜め息をついた。苦い記憶の方が勝っているのだと思える。

「冒険者になって、どれぐらい経ったの?」

 一度死んでしまう経験をしたのを、わたしは既に満月を2回過ぎてもまだ覚えている。体感としては冒険者登録をしたつかの間の時間しかたっていない筈なのに、記憶に残る時間としては密度の高い月日を、しっかり覚えていたりする。

「まだひと月ほどだ。」

 ミンクス侯爵領の田舎町ククルールの隣にあるエルス村の月の女神エリーナ様の神殿から王都までの距離を、街道を走る駅馬車を利用せずに自力で移動して来たとすれば、それぐらいの日数がかかってしまう。

「まさか、歩いて、きたの?」


 1周目のわたしはミンクス侯爵領マルクトで知り合った他の冒険者たちと狼頭男(ワーウルフ)の盗賊団ギルドを討伐していたので、報酬を持っていたから移動は基本的に駅馬車を利用していた。宿屋代や酒場での情報収集で資金が足りなくなったら(ドラゴン)騎士(・ナイト)であるシューレさんと魔物(モンスター)を倒しては輝石や武器を集めて換金し、駅馬車を利用して別の街へと移動するという日々を繰り返し王都まで出てきていた。


隊商(キャラバン)に世話になったり、駅馬車も利用したよ。1周目で学んだことを生かして王都へ来たんだ。王都にきてすぐに聖堂へ来たわけじゃない。」

「1周目の未来とは、全く違う生き方をしていたりするの?」

 そのまま踏襲するには抗いたくなるような結果があったから、わたしも全く別の生き方をしている。

「そうさ。ビアとは違う。聖堂に入れば、情報が集まるって思ったんだよ。」

 モリスも1周目の未来は繰り返したくないんだってわかって、急に親近感が湧いてきた。

「情報…、1周目に関係があること?」

 聖堂に集まる情報って、何の情報だろう。

「違う。1周目は、関係ない。もともと冒険者になった理由の方。」

 道場が見えてきて、モリスは、ジェーニャを見つけて表情を変えていた。もっと聞いてみたかったけれど、時間があまりない。

「理由を、聞いてもいい?」

 固くなっていく表情のまま、モリスはちらりとわたしを見て、「幼馴染を探しているんだ。あの子が生きていると信じて、助け出しに行こうと思っている、」と呟いて、口を噤んでしまった。


 道場の前にいたジェーニャは親指の爪を噛み空中を睨んで考え事をしている様子だった。わたしとモリスの足音や気配に気が付くと指を口から離して、「私の方が早かったようだね、腹ごしらえは十分かい?」と明るい表情に切り替えた。腹の中にある企みごとを見せてくれるつもりはないらしい。

「はい、ありがとうございます。遅くなりました。」

「いいんだ、モリス、助かったよ、ありがとうな。それじゃあ、ビアが包帯を巻けたら、移動するから。モリスも新しいものと巻きなおしてくれて構わない。」

 ジェーニャはわたし達に命令すると、「待っているから」と言って背を向けた。

 

 ※ ※ ※


「じゃあ、行こうか、」

 支度し終えたわたしとモリスに説明もなくジェーニャは振り返らずに歩いて行くので、わたし達は小走りに後を追った。向かった先は鍛錬場で、待っていたのは、巫女服の女性と剣士とを取り囲む聖堂の軍服を着た男性たち3人だ。

 揃いも揃って帯剣しているので少なくとも彼らは軍人で、残りは先日食堂でも見かけたあのふたりだ。あのふたりはわたしやモリスとは着ている格好が違うので、訓練生ではないのかもしれないと思えた。


「ジェーニャ、そのふたりかい、」

「そうだよ、連れてきた。」

 真ん中の軍服の男性が声を掛けると、ジェーニャは気安く答えている。ジェーニャと対等な立場なのだとしたら彼らは同じ世話役か軍部の剣士だ。

 会釈をしてみると、「堅苦しい挨拶は抜きだ、正式なものではないからな、」と言い放ち、真ん中の軍人が趣旨を説明し始めた。

「さて、これから、ちょっとした試合を行う。なあに、ほんのお遊びだ。」

 こういう場合の『お遊び』とは実際はお遊びじゃないとわたしにだってわかる。

「キーラとラザロスは模範演技だと思ってくれていい。モリスとビアは、訓練の実習だ。」

 右隣の軍人には、笑顔でさらりとわたしとモリスは格下なのだと言われてしまった。


 待遇が違うのだから模範演技のやられ役という扱いでここへ呼ばれたのだろうなと理解して、わたしは感情を殺して黙って話を聞いていた。

 だいたい、魔力を黒い箱に持っていかれているのだから、この先の展開はわたしにとってはお遊びではなく過酷な状況しか待っていそうにない。遊びだと笑えるような結果なんて想像がつかない。試合というよりは一方的に受ける虐待に耐える試練なんだろうなと思って覚悟するほかないのだ。


「魔法は好きに使ってくれて構わない。無制限にとしたいところだが、遊びでも長引くと意外と楽しめないものだ。味方のひとりが膝をつけばその組の負けとしよう。」

 真ん中の軍人は過激なことを言っているのに表情を変えない。一方的にわたしやモリスが嬲られる傷つくのを期待している素振りがするのは気のせいじゃないと思う、絶対。

「怪我の心配はしなくていいぞ、医務室からじきに治癒師(ヒーラー)も見学に来る。」

 左隣の軍人は笑い話のように軽く言うので、ジェーニャが楽しそうに、「いい訓練になってよかったな、お前たち、」とまで言う。いや、どう考えたって、いい訓練に思えないよ、ジェーニャ。

 握った手の中に汗が溜まってきた。走って逃げだしたいって気持ちと、わたしが無力だったとしてもシューレさんとなら勝てたかもしれないのにっていう悔しさで、いつの間にか唇を噛んでいた。


 1周目のわたしとシューレさんとは、聖堂に所属が決まった際に実戦形式で能力を調べられているのを思い出して、つい比較してしまう。あの時、対戦したのは男性の剣士数名だった。試合が開始するなりわたしの魔法で強化されたシューレさんは、自身の契約している風竜の力を借りて旋回し、駆け抜ける風が空を切る一瞬の速さで軍人たちすべてを一蹴して手足を折り倒してしまった。

 審判役となった軍人が唖然としつつ勝ちと告げると、わたしは即座に神鹿(かじか)として召喚し姿を現したラフィエータとともに『骨接ぎ』して『修復』し、さらに『治癒(ヒール)』し『回復』して、納得できる実力を見せつけて終わっていた。

 2周目の世界でのわたしは今度は逆の立場となって、モリスとふたり、キーラとラザロスの実力を計る対戦相手として選ばれたのだ。


「本当にいいのですの?」

 くすくすと笑いながらキーラと呼ばれた巫女服の女性が冷ややかな眼差しでわたしとモリスを見て尋ねた。目鼻立ちははっきりしている美しい顔立ちだけに目の中に浮かぶ負の感情がはっきりと汲み取れて、ほぼほぼ面識がないのに相当嫌われているという体感がする。

「使い物にならなくなるかもしれませんわよ?」

 口を隠して笑う仕草も、魅力的に見えなくてはいけないはずなのにとても陰湿な印象がする。

 キーラの指のそれぞれには玉髄(カルセドニー)空色縞瑪瑙ブルーレース・アゲート紅玉髄(カーネリアン)が輝いていて、両手首には黒っぽい深緑色の天眼石(アイ・アゲート)が見える。よく見ると淡い桃色のイヤリングは桜瑪瑙チェリーブロッサム・アゲートだし、楕円形の月の形の大きな石を使った深緑色のネックレスも苔瑪瑙(モス・アゲート)だ。彼女はやたらと瑪瑙(アゲート)が好きなようだ。

 整った顔立ちの剣士ラザロスは視線を地に向けていてわたしやモリスを見ようともしない。好戦的なキーラの嫌悪の感情が読める分、異質に不気味だけど知りたくもない感情をぶつけられるよりはマシかもしれないななんて思ってしまった。


「そうはならないと期待している。何しろジェーニャの教え子たちだから、ある程度は歯応えのある試合となるはずだ。キーラとラザロスの実力を測るにはもってこいの人選だ。」

「クリストロが高く評価していた魔法使いなら、相手に不足はない。いい試合となるさ。」

「半妖なら、人以上に耐えれるだろうからな。絶対的な差があるくらいの方がどの程度の剣士なのかもわかる。」


 わたし達が選ばれた理由は、わたしが魔法が使えモリスが剣士だからなのだと察しがついた。

 つまりは、わたし達はキーラとラザロスの技の練習台となって勝たない程度に耐えてくれたらよいと期待されているようだ。

 いくら怪我をいくら治癒されようと、痛い感覚は味わう。痛みを伴う叩き台って、ある意味私刑(リンチ)だ。

 わたしには、一方的に嬲られて喜ぶ趣味はない。どうしてこんな扱いを受けるのかを考える時、1周目での待遇の理由がミンクス侯爵様が後見人となってくださっていたからこういう扱いをされていなかったのだとしたら、チュリパちゃんやエベノズさんの危惧していたような後見人の差があるのではないかと思えてきた。後見人の社会的地位が高ければ、という条件に、無性に腹が立ってくる。聖堂は階級社会なのだという実態を改めて実感して、どうして知っていてこんな場所へ戻ってきたのかとちょっとだけ嘆きたくもなる。


「お前たちがアイツらに勝てたら、午後の仕上げの試合は見逃してやってもいい。いいかい? 訓練の成果を披露するんだ。」

 ジェーニャの言葉とは裏腹に、醸し出される雰囲気には『勝てるわけない』という見下した感情が含まれていて、見守る軍人たちの顔には『ありえない』といった蔑みの感情が見え隠れしている。


 ぎゅっと手を握ってみても魔力は回復しない。ここ数日の剣の特訓の成果だって、まだまだモリスにすら追いついていない。

 せめて、魔力が回復させてほしい。身を守るために必要だし、巻き込まれたモリスを守るためにも、魔力が欲しい。


「モリスは私の剣を使えばいい。ビア、剣は必要かい?」


 わたしは首を縦に振っているのに、ジェーニャは「そうかい、」と答えつつ短剣でさえ渡してくれる素振りを見せない。

 しかも、モリスが何か言おうとしたのを、「わかっている」と言って遮ってしまった。


 魔力は半分ほど、剣もなく、実力がどういうものかわからない者たちと試合という名目で私刑を受ける…。


「ジェーニャ、その者は丸腰か? 逃げ惑うだけでは実力が図れないぞ。」

 キーラの味方である軍人が意外にも助けてくれるようだと感激していたら、「賭けにもならないだろ?」と続けたので呆れた。

「そうだね、ひとりは魔法が使えるくらいが面白いな。」


 軍人たちにとってあくまでも他人事で、あくまでも座興でしかない試合なのだ。逃げ惑う様を面白いって期待するなんて、馬鹿にし過ぎだ。腹が立つけど、今は辛抱して聞き流しておくと決める。わたしの目標は、王都を脱出することだ。今感情を剥き出しにしては、ジェーニャの訓練に耐えた日々が無駄になる。

 うまく逃げるしか、ないのかな。

 特訓が待っていようと、仕上げの試合があろうと、さっさと膝を付いて逃れた方がいいような気がしてきた。


「ビア、これを、」

 笑いながらジェーニャがポケットから差し出し渡してくれたのは、生成り色の艶やかな絹のハンカチに包まれた黄水晶(シトリン)紫水晶(アメジスト)紅水晶(ローズクオーツ)といった水晶(クォーツ)が連なるブレスレットだった。


 石が放つキラキラと輝く光には濃い魔力が宿っていて、手に触れた瞬間から魔力がわたしに流れ込んでくる。


「あー、そういえば、あの女がこれを渡してって言っていたっけ、」

 眉間をさらに曇らせて、ジェーニャが忌々しそうに革のベルトにつけた小物入れから小さな青い小瓶を取り出した。

「ジェーニャ、なんだそれは。」

「不正はするなよ?」

 軍人たちは興味深そうにわたしを見て、ジェーニャを目を細めてみている。

「しないよ。医務室のヨランダがやりすぎだって怒っていたから断れきれなかったんだよ。」

 不満そうな顔のジェーニャは「私のやり方に口を挟む奴はどんな奴でも大嫌い」と呟いて小さな青い小瓶を握り、一瞬力を込めた後、はあと溜め息をひとつして諦めたようにわたしに手渡してくれた。うっかり壊れてしまったから渡せなかった、とでも言って渡さなかったのを誤魔化そうとしたのを、もともとまっすぐな性格だからできず、結局わたしに渡す気になったようだ。

「ビア、これも飲んで。ヨランダから預かった。」


 差し出されるままに受け取り、詰められていた栓を抜いて飲み干すと、体の中に鮮やかな薔薇の花弁が溜まっていく錯覚がした。中身は女神さまの神殿の聖なる泉から汲み取った水だった。

 魔石と、聖水とで、わたしの魔力は最高値の半分ほど回復していた。全回復とは言えず、十分というにはまだまだ足りないけど、希望が見えてきた。


「少しは魔力が回復したかい? やれるかい? ビア、」

 回復した結果を不満そうにジェーニャは尋ねてくる。あなたはどっちの味方なのかって尋ねたくなるけど我慢しておく。

 

「半妖から魔力を抜き過ぎると精霊化してしまうことがあるって言われたんだ。少しだけでも魔力を与えておかないと貴重な治癒師(ヒーラー)が減るってうるさくて。ビアはここ数日、精霊化しなかったから大丈夫だって断ったんだけど、あの女、しつこいんだよ、」


 ヨランダ、ありがとう。意外に心配症だったんだねって感心もするけど、感謝が強い。

 ふいに、舌打ちが聞こえた気がして視線を向けると、視線の先にいたキーラに不快そうに目を逸らされた。


 モリスを見やると、剣を手に馴染ませながら、静かに意志の燃える瞳で深く頷いてくれた。

「キーラは剣がいるか?」

「いりません。」

 軍人が問いかけると、キーラは鮮やかに微笑んだ。

「魔石は必要かい?」

 ジェーニャの問いには、つんと澄まして「十分ですわ、」と自分を飾る瑪瑙(アゲート)を見せつけている。

「ラザロス、何か必要なものは?」

「何もない。」

 低い声で答えて、ラザロスは黙って鍛錬場の端まで歩いて行ってしまった。キーラも同じ方向へ悠々と歩いて去っていくので、何が始まるのかわからないでいるわたしは戸惑ってしまう。モリスを見やると、モリスも目を丸くしているばかりだ。


 軍人のひとりが、「私たちも移動するぞ、」とジェーニャに声を掛けた。

「そうだな、治癒師(ヒーラー)たちが来る前に終わらせてしまわないかい? あの女、面倒なんだよな、」

 怜悧な含みのある言葉に、ジェーニャって敵なのかなってますます思えてしまう。

「お互いに端まで行きなさい。私たちも距離を取る。お互いに端まで行ったら、試合開始だ。」


 一方的すぎるのも説明不足なのもわたし達が彼らにとって取るに足りない存在だからなのだとしたら、この扱いを改善させるには価値のある人間だと認めさせるしかない。

 

 シューレさんもコルも、わたしを価値のある存在として扱ってくれた。

 師匠だって、ベルムードだって、レゼダさんだって…。

 わたしを、必要だと言ってくれて、わたしを認めてくれたんだ。

 やるしかないし、やらないと、王都を出るまでにわたしは心が折れてしまいそうだ。


 モリスは、遅れてやってくる。

 わたしはキーラたちと対峙するために移動しながら、深く深く息を吸って吐いてを繰り返して、この鍛錬場に残る魔力の残り香を探した。

 午前中も試験に使ったのなら欠片でもクリストロの魔力が残っていたらいいのになって期待したのに、集まってくる魔力は無くて、シャルーの声も拾えない。この土地のどこかにいるはずのシャルーは、身を潜めて様子を伺っているようだ。


 どうしようか、相手の情報が無さすぎる。

 せめてオルジュがいてくれたらって思うけど、オルジュは今、遠い公国(ヴィエルテ)でマハトの足取りを探ってくれている最中だ。

 風の魔法使いなら師匠もだけど、師匠も、ここにはいない。


 クリストロがいないので、環境(フィールド)作りはされていない。

 ある武器は、わたしのささやかな魔力と、モリスの剣の腕前ぐらいだ。

 勝つには、弱い。だけど、勝ってみたい。


「ビア、」

 追いつき、隣に立ったモリスが釣り上げるようにわたしの腕を掴んだ。そのままを維持して、端へとゆっくりと歩く。

「モリス、痛いよ。離して?」

 聞こえていないみたいで、そのまま、連れて歩かれる。

「端に付いたら、ビアは動かないでいて。」

 モリスに自ら生贄になるって遠まわしに宣言されてしまった。

「どうして、」

 一人で行かせた結果加勢しないまま見捨てるなんてできないし、モリスに無理をさせたくない。

「モリスひとりで戦うつもりなの? そんなの、勝てっこないよ。」

「ビア、あの女は、水竜の竜人の血を引く巫女だ。ダイモス伯爵家に関わる者で、『北の海の聖女』と呼ばれている。」

「竜人…、北の海の聖女…、」

 わたしの1周目の世界での聖堂の人間関係には登場しなかった存在だ。

「実際に聖女かどうかまでは判らないが、聖女と呼ぶにふさわしい人物らしい。治癒(ヒール)も水の攻撃の魔法も使えるって話だ。」

「モリスは、どうしてそんな人を知っているの、」

「1周目の世界で、」

 モリスは言葉を探すように黙って、悲しそうに目を伏せた。

「…仲間と、竜人を探していたんだ。」


 吐き出すような言葉は、恥じている感情があるからだと思えた。いくら待ってもそれ以上を教えてくれないのは、1周目の終わりにかかわる出来事だからなのかなって、なんとなく、わかってしまう。

 向こう側の端から嫌悪感全開な表情で睨みつけてくる巫女が竜人の末裔なのだとすると、確かに精霊の子であるわたしとは相性は良くない。


「…キーラも、そのひとりなのね?」

「ああ。ビアには、相手が悪い。」

 気まずそうに、モリスは腕を離してくれて「開始したら、すぐにでも逃げろ、いいな?」と念を押してくる。


 わたしには、母さんの、人間の血が流れている。キーラだって、半分は人間だ。 


「どうして逃げろってばかり言うの、モリス、」

 人間対人間だとは、モリスは思わないようだ。

「あの女は水を扱うし、それに、」

「それに?」


 モリスはわたしを見て、ひと呼吸おいてから、「あの者は半妖や精霊を狩るんだ。王国には竜がいるから悪しき存在は必要ないと言って、半妖狩りを容認していた、」と肝心な根拠を教えてくれた。

ありがとうございました

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