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4、間の悪い地の魔法使い  

 6つ目の神殿は、公国(ヴィエルテ)公都(ワシル)でもなく皇国(セリオ・トゥエル)皇都(カリオ)でもなく、もちろん王都(ヴァニス)でもなく、山里の神殿だった。

 小さく六角形の神殿は、驚いたことに無人の神殿だった。雨戸もガラスも嵌っていない壁の穴みたいな窓が4方向の壁にあって、扉のない出入り口が、明るい空が見える方向と枯れ木の雑木林が見える方向との2方向にある。

 転送されてやってきたわたしが降り立った衝撃で舞い上がった粉塵から、随分と前から手入れされていないと想像がつく。神殿の規模としては2番目に行った皇国(セリオ・トゥエル)の神殿くらいで、掃除の難易度は昨日までいた公国(ヴィエルテ)のクラテラの神殿以上だ。埃と蜘蛛の巣と年月で朽ちた壁や落ちた天井というあまりの環境の悪さに咳き込んでしまって、悪い冗談か何かかと思ったくらいだ。

 足元からパキパキと割れていく音がするし足場がぐらつくので、崩さないように降りてみる。神殿自体は木材と石材で作られていて一部屋しかない小さな規模なので、祭壇の間でもある場所は廃墟にしか思えない。再利用したくとも、床に落ちて積まれた壁材も瓦も『だったもの』としか言えない。再生しようにも木材には命の息吹は欠片も残っていない。掃除道具すら見当たらないこの神殿でできるのは、素手で摘まんで木片を神殿の外へと出してしまうぐらいだと思えた。ここを一人で掃除するのだと思うと、自分を励ましたくなってくる。

 咳き込みすぎて涙目になりながら神殿の外へ出たところで、村人に出会った。彼らの肩の向こうには下り坂が見えて、ぽつりぽつりと家が見える。果樹園が広がっているのと割と暖かい気候なので、公国(ヴィエルテ)公国(ヴィエルテ)に近い王国のどこかだろうなと推測する。金髪に青緑色の瞳の老人と少女は、恰好からして、近くの農村に暮らす人たちなようだ。

 わたしとしては神殿の外へ出られたという事実に驚いていて、小ぶりの馬に荷物を載せてさらに自身も荷物を抱えて歩いていた彼らは、固まっているわたしを見て同じようにびっくりとした表情のまま固まっている。

「こ、こんにちは?」

 王国語だ。ここは公国(ヴィエルテ)じゃなくて王国(スヴィルカーリャ)なんだ。

「こんにちは。ここは、太陽神様の神殿ですか?」

 神官ではないと思われる人と会話ができるのか不安になりながらも、丁寧な発音で尋ねてみる。わたしの声は言葉になって彼らに届くのだろうかとドキドキしてしまう。

「え、ああ、ワシが子供だった頃はそうだった気がするが、今はそうだった場所だな。」

 良かった。通じた!

 ひさしぶりに神殿関係者という立場ではない人と話ができるという喜びに、わたしは震えてしまった。

「そうですか。今は無人なのですね。」

「神殿というても、先代の神官が先の大戦の頃皇国(セリオ・トゥエル)へ戻った後、後任がやってきていないから役に立っておらんよ。こんな田舎だし、誰もに存在を忘れ去られてしまっていて、旅人も立ち寄らんよ。」

 それって結構前から放置されているよね。先の大戦を知らない世代のわたしは心の中で呟いてみる。

「何年か前の嵐で天井が落ちてしまったままだから、中へ入らない方がいい。領主様に建て替えをお願いをしているのだけど、なかなか関心を寄せてもらえないからこのままだ。」

「じいちゃん、この小屋、聖水も湧かないし、神殿と思われていないのかもしれないよ?」

 

 その中に転送されてきた、とは言えない。しかも転送してくれたのはこの神殿が祀る神様だったりする。

 振り返って神殿を見れば、確かに小屋に見えてきた。

 精霊王様の神殿や竜王様の神殿と、女神さまの神殿の決定的な違いは聖水が湧くかどうかだ。極端な話、聖水が湧かない神殿は女神さまの神殿とは言えないのではないかなと思う。

 いくら無人で神官から祝福がもらえなくてもいくら廃墟に近い状態の神殿でも聖水さえ湧いていれば魔力が回復するので、冒険者にとって女神さまの神殿はとても価値があったりする。


「聖水、湧かないんですか…、」


 これまでに伺った太陽神様の神殿では、神殿か祭壇の間のある礼拝堂と言った本殿と屋外に聖水の湧く溜め池や噴水という設備を設けて用途を切り離した配置の場合と、祭壇の間や聖水の湧く噴水や泉を一つの大きな屋内に備えた場合があった。神官たちの暮らす母屋はたいてい裏手にあって、神殿とは切り離してあった。この神殿も、雑木林の方の出入り口から出れば裏手に母屋があるのではないかなと思う。

 六角形という珍しい形だし、規模が小さいから聖水は別の場所で湧き出しているのかと思っていただけに、この廃材の中に聖水が沸く設備があったというのは意外だ。


「わしが子供の頃は水飲み場があったよ。大きな水瓶にいつもなみなみと水が蓄えてあった。」

 とてもそんなものはなさそうなんだけどな。

「こんな状態だから危ないからって誰も神殿の中へ入らないから、中がどうなっているのか知らないの。ごめんね。」

 少女が気まずそうに微笑んだ。

「庭には食べられないけど果物の成る木が育っていたし、神官様も優しくていい神殿だったんだけどなあ…、」

 神殿の周囲には枯れた木だったものが土に刺さっているといった風情で、外壁の塗装が取れているし天井が抜けているのに修復されもされていない。

「雨風を凌げないから、今じゃ旅人も寄り付かないね。」

 老人も少女も肩を竦めて廃墟のような神殿を眺めている。数日間のうちにすっかり太陽神ラーシュ様の神殿が好きになってしまっているわたしとしては、雑過ぎる扱いにも放置具合にも腹が立ってきていた。

「こちらの領主様は、どなた様なのですか?」

 王国が竜を祀る国だとしても、不敬すぎる気がする。

「ジルベスター伯爵様だよ。とっても優しいお人だよ。」


 頭の中で王国の地図を広げてみて、オルフェス領とソローロ山脈にほど近く、ウィーネ辺境伯領とにも隣接するジルベスター伯爵領を思い描いた。

 たしか、風の精霊王様の神殿が有名な領だ。オルフェス領で出会ったシクストおじさんが『あっち側から来たんだ』とオルフェス領から見て東側を指さしたので、1周目のわたしの旅では立ち寄らなかった領でもある。


「他に神殿はありますか? 魔法を使える人は住んでいたりしますか?」

 坂の下の村の集落だと思われる方向は何やら騒がしい。ドンっと響いた音に、少女が顔を強張らせる。

「ねえ、もう、行こうよ、」

「そうだなあ。ここは田舎だから、なんにもない。魔法が『使える者』は領都へ行ってしまうよ。残ってるのは単なる王国民さ。」

「そうですか。」

 この村はジルベスター伯爵領の中でもかなり田舎だと見当をつける。

 それにしても、少女も老人も体に巻き付けるようにして荷物を背負ったり抱えていて馬にも家財道具が山と積まれているし、「ねえってば、」と少女が老人に催促までしている。

「お二人はお引越しか何かなのですか?」

 老人と少女はわたしを見た後、気まずそうに顔を見合わせた。

「山…、私たち、隠れに行くの。」

「隠れる?」

「ほら、あれ、」

 少女がわたしの視界を遮っていた体を馬側に寄せて指をさしたのは、坂道を下った先の開けた平野にある村の集落から立ち上るいくつもの煙と、屋根を飛び交う黒い飛行物と煌めく何かだ。

「あの煙は?」

「魔物の襲撃。村が燃えてるの。」


 空を飛んでいる黒い影は、鳥なんかじゃない。

 あれは、襲撃なのだ。

 煌めく何かは矢や剣で、向かう先には魔物(モンスター)がいるのだ。

 一匹や二匹と言った数ではなく、集団での襲撃だ。

 1周目の未来で見た光景を思い出して、わたしは声が出なかった。今は5月の終わりで、確かにあの頃、クラウザー領までの旅は魔物(モンスター)退治の旅でもあった。

 シューレさんやコルがいたから退治できたけど、魔法の使えない王国の村人が耐えきれるとは思えない。


「…兵士や、騎士はいるのですか?」

「いないよ、こんな山奥の村じゃ。」

 少女が呆れたように言った。老人が言い難そうに教えてくれる。

「領都までもかなり距離があるから、応援の要請に駐在所の騎士が遠駆けの馬を使って行ってしまった。しばらく誰もいないな。」

「村の男衆が残って応戦してるけど、いつまで持つかわからないわ。」

「そんな…、」

 わたしは戦時下の村の神殿に派遣されてきたようだ。家々を壊し人々を襲っている魔物がいる村に来てしまったのだ。

「残ってるのは気休めの義勇兵と農作業用の馬ばかりだ。今日明日が持ちこたえられるかどうか。」

「子供や、他の人たちは、どこにいるんですか、」

 あの戦火の中にいたりするの?

 老人と少女はわたしをじっくりと観察して、「本当のことを言っても、大丈夫なのかな、」「こんな若い娘が魔物(モンスター)の仲間とは思えないし、」「じいちゃん、」と小声で揉めている。

「私は魔物(モンスター)とは関係ないです。ほら、これ。冒険者の証もあります。」

「本物かどうかわからないわ。見たことないもの、」

 少女が半笑いで言うので、わたしは何も言えなくなる。

 魔法を使うと余計怪しさが増しそうで、悔しさを堪えるしかない。

「人間だったら、かわいそうだろ、」

 老人は少女の肩に手を置いて、ぽんぽんと優しく撫でた。

「先の大戦のときに作った避難用の洞窟があってな。わしらはこれから、避難に行くんだよ、」


 立ち上る煙が増えるのは被害にあい家が燃えている証拠で、煙に刺激されて集まってきているのは魔物で、応援の兵士ではなさそうだ。

 煙が昇る先を見上げて、太陽を見つけて、わたしがしなくてはいけない神様との約束を思い出す。

 家を諦めて逃げたり、いくつも家が燃えるほどの戦闘なら、怪我人だっているはずだ。

 治癒師(ヒーラー)なのに、行かなくてもいいの?

 そんな状況でも、わたしは神殿を綺麗に磨いて先祖に魔力を返すの?

 優先して行うのは人助けなんじゃないのと考えかけて、そもそもラーシュ様との約束があるからこの神殿へ来たのであって、なければ来ない場所だったと思い出す。

 来ていなければ、この状況も知らなかった。

 わたしの最優先は神殿の掃除で、それが終われば6つの神殿を清掃するという目的が達成されて、ラーシュ様との約束が終わる。その先何をしようといいはずだ。

 逃げないで、わたしのすべきことをするしか自由になれる方法はない。


「じいちゃん、行こうよ、」

 考え込んでいるわたしを避けるようにして、老人の袖を少女が気まずそうに引っ張った。

「…洞窟は、狭いからなあ…、」

「気が付かれないうちに、ねえってば…、」


 荷物を体に巻き付けるようにして避難しようとしている彼らの行く先には、同じように避難している人たちがいる。

 狭い洞窟に、村人が集まって隠れているのなら、旅行者であるわたしの存在など想定されていまい。

 

「大丈夫、私、ここにいるから、」

 明るい笑顔を作って、わたしは手を振った。偶然やってきてちゃっかり他の人たちの守ってきた安全をしっかり享受するのは気が引けるし、自分の身くらい守れる。

「大丈夫、行ってください、」

 いざとなれば戦える。わたしは冒険者だから、大丈夫だ。


 躊躇いがちに歩きだして数歩進んで、立ち止まるなり少女が老人に何か囁くとぎこちない動きで戻ってきた。

「これ、食べて。気休めにしかならないかもしれないけど、あげる。」

 まだ熟れ切っていないスモモを一つ、わたしに無理やりに握らせると、「じゃあね」と老人を押すようにして行ってしまった。

「今のうちに。行こっ、」と聞こえた気がしたけど、どういう意味だろう。

 深く意味を考えたらいけない言葉なんだろうなと、忘れることにする。

「ありがとう、」

 できるだけ屈託がない表情を作って明るい声で伝えてみて、見送りながら、スモモを落とさないように潰さないように握った。


 丘を下りて駆け出して戦闘中の村まで衝動的に行ってわたしができることを探すのは、もう少しだけ我慢しよう。

 いざとなれば、あの人たちのためにも魔物(モンスター)を倒そう。

 そう思っている間にも、坂の下の集落から叫ぶ声や魔物(モンスター)の数は増えてきている気がする。

 せめて退魔(モンスター・)シールドでも焚けたら、ここいら一帯が安全になるのに。

 ポケットの中には何もないし、わたしのショルダーカバンもない。首から下げているのは翡翠のカエルとお守り袋ぐらいで、わたしの格好はリディアさんのお下がりの夏のワンピースに、貰ったスカーフ、エプロンと、とても神殿でのお掃除に適している格好だ。

「練り香、入れておけばよかったな…。」

 思わず呟いてしまって、耳を澄ましても一人だった。

 もうあの人たちは行ってしまったのだ。ここには誰もいないのだと再確認してしまった。

 行きたいけど、行けない。太陽神様の神殿に魔力をお返しするために掃除をしないと、わたしは帰れない。

 自由になるためには、しなくてはいけないことをしなくてはいけないのだ。

 小さく溜め息をついて、神殿へと戻った。

 

 ※ ※ ※


 神殿の庭にあったという『食べられないけど果物の成る木』とは何だろうと神殿の周囲を見て回ると、枯れて葉のないレモンが東南に1本ずつ、北東に幹が折れたオリーブが1本、真ん中に枯れ木の雑木林、北西に枝葉のないザクロが1本植わっていた。誰も手入れをしていなかったみたいで、枯れた葉はそのままだし、折れても折れたままだった。

 食べれなくはないけど子供にはおいしい味ではなかっただろうなと思いながら、枯れて折れそうな木の根元を擦って魔力を注ぎ込んで刺激してみる。太陽神様の神殿に育っていた木ならかつては精霊が宿っていたかもしれない。精霊とつながっていれば蘇るかもしれないのだ。

 長い年月を共にした精霊なら、宿木の根の先の先の地下の深くに魔石を貯めこんでいて、魔石の周辺に姿を変えて潜んでいるか魔石の中で眠っている場合がある。わたしは植物に好まれる緑の手(グリーンハンド)ではないけれど、冒険者として旅に出るまでは父さんの元で実験用の植物を育てて暮らしていた魔法使いで、癒しの手(キュア)の経験もあるし現在は治癒師(ヒーラー)だったりする。蘇る可能性に賭けてみた。

 だけど、いくらどの木にも魔力を注いでみても、色艶がよくなったり芽が吹くといった変化はなく、精霊が目覚める素振りもない。

 木に住む精霊の家のドアをノックして待つようなもので、しばらく木の幹に耳を寄せて中からの反応を伺ってみたけれど、どの(いえ)精霊(じゅうにん)の反応はなかった。木が枯れてしまったと同時に、精霊は去ってしまったのかもしれない。

 

 神殿の裏手の幹が折れたオリーブの木の奥には、神官が暮らしていたと思われる小さな母屋があった。雑巾や掃除道具がないかと覗いてみると、母屋には天井はあっても住めない状態だった。薪にでも使ったのだと思うけど、壁はあちこち割られて穴というよりは不自然な窓がいくつも作られていたし、家具や道具がなかった。こっちも住居だった場所の名残といった風情だ。やっぱり、道具を使わずに掃除をするしかないようだ。

 諦めて神殿の中へ戻って、状況を整理してみた。この廃材のどこかに聖水の湧き出る泉が埋もれているから見つけて聖水を手に入れる、という掃除する具体的な目的ができたのは嬉しいけれど、魔力を使って片付けて聖水で魔力を回復して掃除を仕上げるという流れでは、聖水の湧く泉が見つからないと魔力の消費だけが続いていく状態になる。治癒師(ヒーラー)として村へ手助けに行くなら魔力の回復は絶対不可欠だ。どうしても源泉を見つけないといけない。

 しかも道具がないので、素手でできることでなるべく効率のいい方法を考えて行動しなくてはいけない。

 剥がれた漆喰やレンガの大きいものは根気よく細かく砕いて持ち運べる大きさにして、小さなものは手で掬って、神殿の中から何度も何度も外へと運び出して往復する。一応ここは神殿なので避難してくる魔法使いがいるかもしれないと判断して、出入りの邪魔にならないように神殿の裏庭へと運んで瓦礫の山を作っていく。


 片付けていくうちに見つけたのだけれど、六角形という不思議な建て方の神殿の4方面の壁のそれぞれの窓の下には、細い道具でわざと開けたような穴があった。ドアや窓がきちんと嵌められて風の流れを遮っていても、通気口の代わりをしていたのかなと思えた。

 木の枝やゴミが詰まっていたので取り除いて貫通させると、2か所ある窓と4か所ある窓、その下の穴から、風の流れができた。ジルベスター伯爵領は風の精霊王様を祭る領なのだとしたら、風の機能を利用したつくりなのかもしれない。


 破片や枯れ葉、ゴミくずといった堆積した資材を分別して、床に散らばる剝げたり割れた石材の塊を取り除いていく。誰もいないし村から微かに戦闘の音が聞こえてくるし心細くもなる。だからといって歌を歌う余裕もないし、手を止めたり立ち止まると投げ出したくなる弱い気持ちに負けてしまいそうな気がして、汗を手の甲で拭いながら黙って作業を続ける。


 休憩したくなってきた頃、ようやく、大きな丸い盥のような枠組みだったものが現れた。目標が目的になって、目安になってきた。

 所々欠けているので似たような色のタイルや砕けた石材を集めてきて、地の魔法で修復してみる。

 石畳に座って目を凝らして形を合わせて、見落とさないように根気よく作業を続けていると綺麗に輪郭が整い始めた。水が湧き出る様子を想像すると無性に喉が渇いているのを思い出したし、なにより、水が飲みたくなった。

 これって聖水を湛えていたという水瓶なのかなと思いながら作業を続け、やっと終わった頃は日が陰り始めていた。急がないといけない。手で掻きだすように塵や砂を取り除くと、窪む円の中心に穴を見つけた。

 ここから聖水が噴き出していたのかな。甘い期待に気持ちが弾む。

 聖水さえ湧き出れば解決するのだ。

 聖水さえあれば、治癒師(ヒーラー)として魔法を使っても回復が簡単だ。

 

 細い枝を使って穴にたまる砂を掻き出しても、湿り気はなかった。奥深くまで続く穴は真っ暗で、出口を撫でても、水の気配はない。

 瓦礫を取り除いて水瓶を復活させたからと言って水が勝手に湧き出てくるなんて奇跡はないようだ。

 鼻を近づけると、中央にある吹き出し口の奥には水の匂いが微かにある。

 大丈夫だ。まだ、この土地は、枯れ切ってはいないのだ。


『探査』の魔法を使って床一面を調べてみる。地下深くにきらめきを感じてほっとする。わたしにもできることがありそうだ。

ありがとうございました

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