42、分化しても努力は必要
汗をかいて気持ち悪い。
着替えたくて起き上がるとナイトウェアを着ていて、わたしの部屋のわたしのベッドで、カーテンの隙間から明るい日差しが入ってきていた。どれくらい寝ていたのか判らないほど眠っていたのかと思いながら立とうとして力が入らなくて、腕に力が入らなくて体が震える。
いったいなにが起こっているの?
感覚として魔力は多少はあるので自分自身に向かって治癒の魔法を唱えると、染みていくように力が戻っていくのが判る。でも本調子じゃない。お腹が空いた。何かが食べたい。
着替えたくてラグの上に裸足で立つ。踝が痛い。膝が軋む。この痛さは何。
立っているだけでも、足の指先まで重みを感じてしまう。久々に歩く感触で、膝が痛いし腰も痛い。もっと言うと、背中も痛い。わたし、どれくらい寝ていたんだろう。
鏡の前を横切ってクローゼットに向かおうとして、視界の隅に映った姿に違和感を覚えて引き返してもう一度見直してみる。
「誰?」
わたしにしては背が伸びている。手が大きくなった? 父さんのお母さんがいたらこんな感じなのかなと思うような、父さんが念入りに女装したみたいな顔立ちになっていた。目の色は同じだけど、皇国を出る時に見たわたしの顔じゃない。髪伸びた? それよりも何よりも。これ、誰の体?
何年寝たらこんな体に変わるのか判らないほど成長しているわたしの姿は、どう見たって女性に分化していて、どう見たって結婚適齢期な妙齢の女性に変わっている。
「ビア…、」
部屋に入ってきた母さんと、その後方にいる父さんとオルジュとが振り返るわたしを見て絶句していた。
「お母さん、わたし、どうなっちゃったの、」
「ビア!」
駆け寄ってきて抱き着いた母さんよりも、わたしの方が背が高い。わたし、背が伸びている!
「良かった。帰ってきてすぐに動かなくなっちゃったから、大変だったのよ? 地の精霊王さまのご褒美をもらっていたってオルジュが教えてくれたから良かったけど、もうお母さんびっくりしちゃって。ご褒美って何かしらって思っていたの!」
「お母さん、」
「地の精霊王さまのご褒美は分化だったのね。おめでとう。ビア。ちゃんと分化できたのね!」
心の底から嬉しいと思えないのはどうしてだろう。少しだけ納得がいかない気がしながらも、わたしは曖昧に微笑んだ。
「…みたいだね、」
ちらりと父さんを見ると、何やら言いたそうな含んだ顔つきをしている。地の精霊王さまがわたしに何をしたのか説明できるけどしたくないとでも言いたそうな雰囲気だ。
ぐうっとお腹が鳴って、母さんと目が合った。
「お母さん、お腹空いた。」
「そうね、何か食べましょうか。分化をするとお腹が空くってのはお父さんの言っていた通りね!」
目の前には笑う母さんがいて、わたしはしみじみと母さんの顔を見つめていた。
「ただいま、お母さん。」
「お帰り、ビア。」
「予定より早く帰ってきちゃった。」
この家を出た時の予定だと、場合によってはもう帰ってこれないかもしれないと覚悟していた。帰ってこれてよかった。また母さんに会えてよかった。
「そうね。いつでも帰ってきて? いつでも歓迎するから。お父さんもお母さんも腕によりをかけてご馳走を作るわ。」
「お母さん…。食事はもちろん嬉しいけど、わたし、着替えたい。お風呂入りたい。」
「そうね。あなた達! そろそろ出て行ってちょうだい。あなた、ビアのための朝食の準備をお願いね。お替りができるほどいっぱい作って欲しいわ。」
「ああ、わかった。」
返事をしてオルジュと出ていった父は、たとえ本性が歴史に名を残すような悪い魔性でも、この家では最愛の母のためだけのの愛すべき料理人でもあり最愛の母を守るためだけの忠実な下僕だったりする。
母に支度してもらって、入浴し着替えて、髪を乾かしてもらう。『種火』の母さんは髪の手入れが上手い。鏡の中には実年齢程度にはしっかり見える容姿となったわたしが映っていた。
「今までの服だとあちこちの寸法が足りないから、袖のない夏物を着ましょうね、ビア。冬が来るまでに揃えないといけないわね。」
髪を綺麗に梳いてくれながら母さんは鏡の中のわたしに微笑みかけている。
昨年までのわたしが着ると七分丈だった袖レースのブラウスも、今のわたしが着ると肘までのレース袖になっていた。首回りも胸回りも少しきついので、夏服も総入れ替えをした方が良さそうだ。
「お母さん、驚いたりしないの?」
「いつか来る日がこの家に帰ってきてくれた時に来たんだから、お母さんは嬉しいわ。」
帰ってこれてよかった。母さんの笑顔を見ていると、心からそう思う。
「ねえ、もう旅に出なくてもいいんじゃないの、ビア、」
「そんなわけにはいかないわ、お母さん。」
確かに分化をしたから発作は起きなくなるかもしれない。1周目の未来と2周目の未来とはかなり変わってしまった。分化した時点で未分化の半妖のわたしが供物となる未来はなくなっても、まだ本当に重要な、エドガー師が竜化するという未来は可能性として変わらずに残っている。
「ビアが女性に分化した理由の、結婚のお相手、あの人でしょ?」
「どの人?」
オルジュのことを言っているのかな。
「またまた~、あの素敵なお師匠さんのおかげでしょ? もう、ビアったら。お母さんに似て面食いなんだから。きちんと紹介してよね。」
「ん?」
どういうこと?
「おかあさん、わたしが眠っている間に何があったの?」
「何って。とっても素敵なことよ?」
「お父さんも知ってるの?」
「もちろん!」
母さんはニヤニヤと含み笑いをした。わたしの両親と師匠とが何をしたのかすごく気になる。
※ ※ ※
久しぶりの食事をとりながら、父と母にわたしが眠っていた間にあった出来事を教えてもらった。オルジュはおとなしく聞いていて時々頷いているので、父さんも母さんも本当の話ばかりをしてくれているのだと見当がついた。
時間の経過としては既にわたしが公国に戻ってから3日経っていた。まず、師匠ことバンジャマン卿がわたしが約束の時間に現れないのを心配して、家を探し当ててお見舞いに来てくれたそうだ。師匠は、有名な吟遊詩人だとバンジャマン卿のことを思い出した母さんと話をしたらしかった。父さんとオルジュに警戒されつつ、わたしの師匠だと名乗って、わたしたちの関係を吟遊詩人と治癒師による人を癒すための師弟関係と話したようだ。
母さんが言うには、やたらと師匠はわたしに会いたがり、発作の件を話して心配をしていたらしい。仕事の話はかなりぼかしていたみたいで、帰りにまた来るとだけ伝言を残してエドガー師の元へ向かってしまったらしかった。
こっそり師匠の後をつけて様子を見に行ったオルジュによると、わたしの回復を待ってからの移動だと行程の進捗に差し障りがあるから独断で任務を遂行したらしかった。師匠はマライゾ辺境伯爵とイリオスと共にエドガー師を訪れていた。ちなみにイリオスは公都へ戻る最中に騎士団に引き渡されて、王の庭に連れ去られたらしい。
その後は、わたしが眠っている間、人間の母さんは精霊の父さんを捕まえてわたしの状態を詳しく説明させていたそうだ。
父さんの説明によって『精霊との間に生まれる子供の分化は個人差があっても死ぬほどの事態にまではならない』と判って安心した母さんは、昼間は仕事のある母さんの代わりに父さんに、夜はオルジュに主に看病を頼んでいたらしかった。母さんは時々様子を見に来て、わたしの顔を撫でて励まして、水差しで水を口に含ませてくれて見守ってくれていたそうだ。
食事をして気分がよくなったのもあって母さんと食器を洗いながら服や下着の新調をするため出かけたい希望を話をしていたら、ふいに力が抜けて、糸が切れたようにあっけなく倒れてしまった。
目が覚めるともう夜になっていて、様子を見に来た母さんに「しばらく外出は無理ね」と駄目押しされてしまった。
眠りから覚めると目を開こうと意識するだけで体力を消耗している感覚がしたので、おとなしく療養生活を受け入れるしかなかった。
※ ※ ※
「ビア、元気そうで安心しました。」
バンジャマン卿が訪ねてきたのは実に公国に帰ってきてから1週間ほど経っていて、わたしはすっかり分化して成長した自分の体の扱いに慣れてき始めていた。歩いていて距離感が掴めなくて小指を家具にぶつけるヘマもしなくなったし、背の高さが変わって見える景色が変わったのにも慣れたし、なにより髪の長さや鏡の中の自分の顔にも慣れた。魔力も体力もほとんど元通りに回復していて、いつだって旅に出られそうな勢いで元気なわたしに戻っていた。
わたしたちはフユエ園にいた。
フユエ園は湿地ばかりの公園で、水面と蓮ばかりの、水属性にとっては楽園のような公園だ。大きな蓮の葉が湖面にいくつも浮かんでいて、うっかり足を踏み外すと底の判らない泥沼に落ちてしまう。飛び石の代わりに蓮の上移動するので、水属性か風属性を持っていないと面白みのない場所だったりする。そんな場所なので子供は基本いないし大人も来たがらない。
わたしは水属性を持っているので、湖面に足の裏を付けて人気のないフユエ園で魔法の練習をしていた。父に言われて水を空気中から取り出して水の量を増やす訓練をしていたのだ。分化したからといっていきなり基礎能力は上がらなかったし、魔力量も変わらなかった。精霊の要素が強ければ違ったのかなと思ったりするけれど、わたしは人間として生きる道を選んだ。仕方ない。コツコツと習得するしかないみたいだ。
空気中から生み出した水を使って蓮の葉の上に団子状に水の球を作って、いくつも並べていくのだけれどなかなかに難しい。水の中に少しだけ地属性の魔法を込めてゲル状に状態を維持するのが、集中力を欠くとすぐに液状に戻ってしまうのだ。生活魔法の簡単な風魔法で表面を凍らせてもいいぞと父さんは言ってくれたけど、わたしは風魔法が割と苦手だ。オルジュに頼むのは手抜きだから駄目だと言われたので、別の方法でゲル状にしていたのだ。
水属性の魔法使いの一番の弱みは、水がない場所だとまるで使えない存在になることだ。ただし、空気中から水を作り出すのに慣れていれば多少は凌げるし、空気さえあれば武器が作れるのだから意表を突く戦力になる。でもそれは、慣れていないとできない芸当だ。空気があっても武器が作れるほど水が作れなければ意味がないし、早さがないと作っている最中に負けてしまう。最悪の場合、自分の血を使えばいいけど、最終手段としてとっておきたい。
フユエ園は水だけは豊富なので、空気に含まれる水も豊富だ。ある意味甘やかされた環境で訓練している。
水属性を鍛えているのは、アレハンドロの波止の剣の威力を体験してしまったからではないと思う、多分。あれと同じくらいの魔法が使えたらなんて思っているのは内緒だったりする。
「師匠、お帰りなさい。お久し振りですね。」
父さんに言われた課題のために、朝食を済ませた後からずっと家の近所のフユエ園に来ていた。いい天気なので夏服を着ていても違和感がない。
「予定よりも早く帰ってこれたので見舞いに来たのですが、ここへきていると聞いて会いに来たんですよ。」
こざっぱりとした恰好の師匠は今日は休日といった感じの余裕があって、明日へ向けての骨休みなのかなと思えた。わたしの療養中にエドガー師の元へ行ってくれていた疲れもないようで安心する。
「ご心配をおかけしてすみません。この通り、元気ですよ。」
わたしは現在、レース職人の母さんと身の丈に合った衣服を集めている段階で、母の仕事関係の伝手を頼って仕立ててもらっている最中だったりする。貴族じゃないのである程度出来上がった既製品を買うのだけれど、袖丈や裾丈などのあちこちの調整が必要なのだ。
「ビア…、」
目を細めて、師匠はわたしの顔を感慨深そうに眺めていた。
「無理をしていませんか、」
「大丈夫です。」
何かしていないと、落ち着かない。
強くなりたい。
強くなって、悔しい思いを手放したい。
置いていかれる気がして、じっとしていられなかった。
「あんまり見ないでください。」
分化して変化しても、わたしの中身はあまり変わっていないのだ。
口を尖らせると、師匠は笑った。
「すっかり見違えました。」
「でしょう? わたしもまだ自分の姿に慣れません。」
じっと見られ続けているのは落ち着かないし、だから何だと問い質したくなってしまう。
「そう言えば、お見舞いに来てくださったんですよね。ありがとうございました。」
「待っていられなくて探しました。本当にこの街に住んでいたんですね、あの方も。」
「ええ。父は一応人間の名前がありますから。」
ローアンという皇国人の扱いになっている精霊なんてうさん臭さ満載だけど、そこは触れないで欲しい。
「ビアのお母さまとお話をさせてもらいました。とても瞳の美しいしっかりものな方でした。」
「母は師匠を気に入ったようですよ、お世辞でも言ったんですか?」
揶揄って笑うと、師匠は「そんなところです」と笑った。
「何を言ったのか気になりますね、」
「ビアを責任もって貰いますと言っておきました。そう言っておけば、何かあった時、ご安心なさるでしょう?」
ぎょっとするようなことを言うのね、びっくりする。
「何も起こらないように努力するんで、貰ってもらわなくていいですからね、」
「そうですね、そういうことにしておきましょう。」
師匠は小石を投げるようにして風を湖面にぶつけた。流れるように風紋が遠く遠くまで流れていく。
吟遊詩人の師匠がこの場所に居るのも妙な気がする。職業柄、人気の多いところにいる印象が強い。ここで歌っても聞いているのは蛙や魚ばかりだ。
師匠は風属性を持っているので、湖面の上に風の力で浮いている。足の下には風紋が幾重にも広がっていて、直接湖面に立つ私の足の下には水紋がないので負けた気分になる。
「エドガー師、お元気でしたか?」
わたしの1周目の世界で見たエドガー師を思い描く。衰弱してしまっていた姿とは違う元気な状態でお会いしてみたかったな。ちょっぴり残念に思う。
「ええ。ラボア様のご紹介だったのが功を奏しました。マライゾ辺境伯爵やイリオスが一緒だったのも助かりました。」
わたしの1周目の世界だと、エドガー師は渇水対策として雨を降らせるために乞われて王国へと出向いていた。
「師匠はエドガー師と面会されて、どのようなお話をされたのですか?」
「単独で王国には行かないようにと念を押してきました。ビアを引き合いに出してイリオスを挑発しておきましたから、イリオスは何があってもエドガー師に同行すると思いますね。」
「そうですか、」ひとりじゃないのは安心だけど、イリオスの同行は純粋にいいことなのかな。彼は面倒を起こす人じゃないのかな。
「レゼダさんとアレハンドロも一緒だったんですか?」
いなかったとオルジュから聞いて知っていても尋ねてみる。
公都で療養休みをして待っている間、体調が回復してからはずっと、父さんに教えてもらっていた波動の練習をしていた。いくら治癒術に長けていても自分の身を守るためには攻撃魔法を覚えないと、わたしは彼らの足を引っ張る存在になる。
「あの二人は先へ王国へ旅立ちましたから、同行していません。あの者は、ビアによろしくと言っていましたよ?」
「先に、行っちゃったのですか?」
「ええ、『ビアが倒れたのは暗黒騎士である私のせいかもしれない』とアレハンドロが言い出して、気にして単独で王国へ向かうと決めたのです。違うだろうと私は思いましたが止めませんでした。」
「どうしてですか?」
「合流するのは6月にアンシ・シだと宝石商のセサルと約束していましたね? ビア、」
「そうです。あの街にその時期に来てほしかったんです。」
「1周目の未来を語ってくれた時、ビアは王国でエドガー師が竜化したと話していたので、クラウザー領の領都ガルースかアンシ・シ、王都でアレハンドロと合流できれば未来は良い方向へ変わるのですよね?」
「そう、だと思います。」
断言はできないけれどそう思う。
「わたしたちはビアが倒れたと聞いた時点で、ビアの回復がいつになるか判らないので私たちだけでも王国で地盤を整えようという話になりました。アレハンドロはもともと冒険者になるために王国入りを急ぐ必要がありましたし、あの者も天女の羽衣を持って弟子入りを果たして剣術舞踏家になるのだと張り切っていましたから、それぞれに別行動をとって自分を磨こうと話し合って決めたのです。最悪の場合は、ビア抜きであの街で起こりうる事態を収拾する予定です。」
エドガー師の竜化の話は1周目の未来を語った時に伝えてある。アレハンドロの役どころは話していないのに、アンシ・シに魔石を持ったセサルが来てくれる予定があるだけで、師匠はあの街で起こる未来をある程度は予想を付けたみたいだ。
「師匠は、エドガー師の元へ行ってくださったんですね?」
「ええ、ラボア様から頂いた任務ですからね。ビアがいなくて幸いでした。」
「どうしてですか?」
「エドガー師の屋敷は精霊や妖精だらけで、前評判として聞いていた以上にあの方は人間離れしていらっしゃいました。住みよい環境とはいいがたい、物に溢れたお住まいでした。そうそう、私が尋ねた時、天球図を使って星を見ていたと仰って、『公都に地の精霊王さまが出現したから公都へ行きたい』とお弟子さんに懇願されていましたね。」
ドキッとして、息を飲む。変な汗が出そうになって、師匠は体臭の変化で感情を読み取るのだと思い出して冷静になろうと深呼吸をする。
わたしが会っていたのは地の精霊王様だとまだ師匠には告げていない。母さんたちも黙っていてくれたと教えてくれていた。ダール様の御褒美に価値を感じるのは地属性の魔力を持つ者だけとは言い切れない。余計なやっかみを生んでは困ると判断してくれたのだと思う。
「私が公都から来たと知ってしつこく詮索されましたが、私が風使いだと知って残念がっていましたよ。あの調子だと、ビアが属性がふたつある半妖だとバレたら、何を要求されていたのか判らないですね。」
「好奇心の旺盛な方なのでしょうか。」
「いい方向へその好奇心が向かってくれることを望みます。」
師匠はにっこりと微笑むと、わたしを見て「この先のことを話し合いましょうか、ビア、」と静かな声で尋ねてきた。
「どういう意味ですか?」
「ビアは、マハトとはどうするつもりなのです?」
「どう、とは、」
「マハトを見つけたらこのまま結婚するつもりなのでしょうか、」
「…判りません。結婚を申し込まれた時は嬉しかったですが、アレハンドロのおかげで虫卵は消えました。あの時と状況が違います。」
わたしの中でマハトとの結婚を意識する一因だった虫卵が消えた現在、婚約を続けるのは怖い。マハトとは脅されるように結婚しなくてもいい対等な関係で話し合う必要があるし、マハトが分化したわたしを見てどう思うのかも知りたい。会ってみなくては何も終わらないし、始まらない気がする。
「ラボア様には、公都に戻り次第、ビアと合流して王国へ向かうようにと指示を頂いています。」
「明日には、旅立つのですね?」
「ええ。ビア、」
公園の先の先の、公都の街中へとの外へ視線を逸らして、師匠はふうっとひとつ溜め息をついた。
「マハトは今、王国のガルースにいると思われます。」
あんまりびっくりしすぎて、わたしは思わず水作りを間違えて溜めていた水団子を水に戻してしまった。
ありがとうございました




