表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
281/328

魔改造

                 ☆



 しかし、【ビゾン・マキシマムレーザーガン】の攻撃は容易く避けられてしまった。

 遮蔽物を貫通するレーザーガンの効果を最大限に活用し、”敵”の虚を突くことには成功していた。

 

 けれど、問題はその強兵装を使う持ち手――つまり、僕の狙いが甘すぎたのがいけなかった。

 


『いいねぇ! 俺が求めていたのはその反応だ。

 ――まぁ、お前が生きていた時点で不快指数は有頂天だが。』



 少年の姿をしたアーマー使いが一時的に低空飛行を続けてレーザーの軌道から外れる。

 常時ホバリングをし続けることができるタイプのリザルターアーマーらしい。

 地面を滑るように移動しながら、続けざまに肩部へ装備しているミサイルポッドを使用してくる。


 面による攻撃であれば、【モルドレッドアサルト】の”消滅効果”は役に立つ。

 迫りくる小型ミサイルの10発に対して、こちらは5点バーストに射撃だったが、一発がミサイルに命中さえすれば、消滅効果のある小爆破が起こり、巻き込まれて複数のミサイルが爆発することなく消えていく。



 続けざまに【モルドレッドアサルト】の銃口を敵――〈レン・ミストレイ〉に撃つこともできた。

 しかし、彼を照準に捉えることができない。


 黒煙を突き抜けて現れた〈レン・ミストレイ〉にこちらの肝が冷える。

 彼が煙を目くらましにこちらへと接近戦を仕掛けてきていた。

 危うく消滅効果で彼を倒してしまうところだった。

 

 こちらが反撃してこないと知るや、彼は防御を完全に捨てて最大出力で【ビームコーティングナイフ】を振るう。

 リーチは短く、避けることは自体は楽。

 だが纏ったビームの閃光に触れれば、こちらとてノーダメージというわけにはいかない。


 しかもここを退けば、同行者である〈HALⅡ〉へと攻撃が通ってしまう。

 彼女の戦力ははっきり言って当てにならない。

 けれど、この状況を打開するには彼女の指示が必要不可欠だった。



「――〈レン・ミストレイ〉は支配を受けている。

 なら、あたしがスティングライフルに撃たれたのと同じように、バッドステータスを無効化させる消費アイテムを使えば、彼を救える――……。」



 〈HALⅡ〉が沈黙する理由が僕にはわかっていた。



『それが、使えないんだ。

 今ずっとメニューからアイテムを取り出そうとしているんだけど、カスタムパーツや兵装は取り出せるのに、回復アイテムだけが選べない。』

 


 彼女が視線を下ろして頻りに瞳を巡らせる。



「……バッドステータス・《汚染》。

 ”人体に有害な物質を浴びたせいで、衛生管理上、治療に関するアクションが一切行えなくなる”。

 嘘、こんなのいつの間に……?」



 彼女がメニューから何かを説明欄らしきものを読み上げている。

 ライフゲージの横に表示されていた水玉模様のアイコンは、そういう意味だったらしい。

 人体にもアーマーにも影響がなかったため、発見が遅れたが、彼女の反応からして僕だけでなく〈HALⅡ〉も同じのように《汚染》状態になっているらしい。



『二度同じ手でオルフェウスの支配から逃げられても困るんだよな』



 口調を荒げた〈レン・ミストレイ〉がもう一方の手に二つ目の【ビームコーティングナイフ】を出現させる。


 笹川の使った2丁拳銃は撃った後の再度射撃を行うためのクールタイムが左右で共通のため、あまり意味はなかった。

 けれど、近接兵装の二刀流は威力こそ半減するものの、クールタイムの概念はないため、使用者のプレイテクニック次第では、攻撃動作、剣の軌道、戦術の幅が広がる。


 彼の胴体の影から急激に現れたナイフは、僕の鳩尾付近を切り裂いて熔解した真っ赤なアーマー片を飛び散らせた。


 レン・ミストレイの口元は三日月状に吊り上がっていた。

 〈古崎徹〉は彼の顔を見せつけるために、あえて急所である頭をヘッドアーマーやフェイスガードで覆っていない。

 

 〈レン・ミストレイ)は既にヤツの【オルフェウス】で撃たれたあとだった。

 古崎徹に支配された彼は、ちょうど〈プシ猫〉や〈リヴェンサー〉と別れた僕ら二人を襲ってきたのだ。

 初撃こそ、古崎徹は〈HALⅡ〉に狙いすまして、小さな体躯を生かしたバックアタックをしかけてきた。

 けれど僕が襲撃者を〈レン・ミストレイ〉と呼んだことで状況は一変し、古崎徹は執拗に僕への攻撃を行っている。


 古崎徹は、僕が〈レン・ミストレイ〉を攻撃できないことを知っていた。

 現に今、ビーム系近接兵装の出力が切れかかっていても、斬撃による猛攻を止めない。

 こちらが反撃してこないなら、アーマーのエネルギーを全て攻撃に費やそうとしている。


 演舞のような連撃を止めるため、【フォトンアーツ・クラレント】の柄でフリーになったボディを殴打しようとするも、古崎徹は手慣れたように紙一重でそれを躱す。


 推進力をわずかに噴射させた無駄のない運用。

 その動作だけを切りぬけば、まるで〈ヴィスカ〉と対峙しているような気分になった。



「あの動き、多分キミと同じようにあっちも【Result OS】を解除してマニピュレート操作でアーマーを動かしている。

 一夜漬けでできる技術じゃないのに……」



『〈ヴィスカ〉を支配してたんだ。

 彼女のキャラクターを自分用に書き換えるときに、身体の動かし方も一緒に奪ったのかもしれない。』



 ありえそうな仮説を並べてはみるが、その実、内心では酷くイラついていた。

 でもこの憤りに身を任せれば、レンを倒してしまう恐れがある。


 【Result OS】なしのアーマー操作は何もヴィスカだけのものではない。

 こちらはアーマーの推進剤噴射の割合や姿勢制御だけでなく、装備している兵装の細かい調整すら行える。


 けれど【ビゾン・マキシマムレーザーガン】は強力すぎる上に、貫通効果があるため、これをどうにかしなければならない。

 

 しかも相手が接近戦に挑むというなら、ただ射程を短くするだけでは、使い勝手が悪すぎる。更に適した調整が必要。

 連射速度の急上昇、それに伴うエネルギーコンデンサーへの負荷、レーザー拡散度の急上昇。

 HUDに現れる計器を素早く操作して、適切な操作を行う。


 そして5秒の間に、レーザー”ガン”と称していながら、新たに調整した【ビゾン】は全く別の兵装に早変わりしていた。

 引き金を引いたままで、僕はなおも攻撃を続けるレンへとビゾンを振り切る。



(”主人の発想は私には理解不能だ”)



 頭の中でグリムの声が聞こえたがスルーする。


 高レートによる連射をし続けるレーザー、そして50cmも満たない射程で拡散し宙で霧散する光の線。

 それはちょうど、レンの持つ【ビームコーティングナイフ】の刀身を切り裂くことに成功した。

 


「……うわぁ……長銃を強引に槍の近接兵装に替えちゃった……。」



 背後で〈HALⅡ〉がそう言葉を漏らす。

 早い話が、短い射程でレーザーガンを高速で撃ちまくり、槍っぽくみせているだけである。


 けれどこれなら、レーザーによる貫通効果を”刀身”として微調整できる。

 致命傷にならない程度に動力部を壊せる無力化兵装の出来上がりだ。





 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 第7章 Please call my name. 魔改造  ……今回に至って、ふと思ったのですが双子はもしやボカロ02がモデルだったり?  フシギ ココロ ココロ ムゲン
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ