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笹川宗次に関係のない修羅場


                 ☆



【キャリバー・タウン】ゲート外・月面露出地区フリーフィールド




 ……俺こと笹川宗次は、こういう役を任される人間ではない。

 


 悲鳴をあげて逃げ惑う〈学院会〉のプレイヤーらを確認してアサルトライフル系兵装【オートマチックハイエクスプロージョン】をフルオートからセミオートに切り替える。

 

 半狂乱になりながらクリーチャーに追いかけられている内の一人は確か、2年E組・女子バスケ部所属の〈鈴木房〉だ。

 話したことはなかったが、生真面目な性格で男子からの人気もそれなりに良い。

 

 けど、今まさに彼女は追従してくる〈学院会〉プレイヤーの男子生徒を蹴とばそうとしている。



「ごめん! ごめんなさい! でも、笹川宗次みたいになっちゃうの私嫌っ。」



「やめろって! オレ身代わりにして一人で逃げようってことか!?

 っ……押すなって、オレ、さっき腕切り落とされて無ぇんだよ!」



 それ以上言葉を交わさずに、鈴木房は無言のままで彼を両手両足を使って、無理やり倒そうとしている。

 その光景はさながら、ゾンビ映画のワンシーンのようだった。


 ただ一つ違うとすれば、ぶっちゃけ、リザルターアーマー着ている彼ら自身のほうが、彼らを追いかけまわしているクリーチャー【リトル・スタッカー】より強靭な見た目をしていることだ。


 【リトル・スタッカー】は小型の自律ロボットが暴走してクリーチャー認定された敵だ。

 もちろん、俺も【キャリバー・タウン】の外側に来て初めて戦ったのだが、見た目通り弱い。

 攻撃もお手伝い用サブアームを伸ばして殴打してくるだけなので、距離さえとってしまえばあとは彼らも持っている初期兵装【10mm徹甲マシンガン】でも倒せる。


 ロボット故、攻撃に怯まなかったのが彼らには脅威に見えたらしい。



 いよいよ、鈴木房さんが男子プレイヤーを押し倒したところで、止む無くこちらも【オートマチックハイエクスプロージョン】を構える。

 いい加減助けないと、この兵装の炸裂弾範囲に彼女らが巻き込まれてしまう。


 【Ver.エインヘリヤル】アーマーの照準アシストを利用しながら引き金を引く。

 反動は大きい部類の兵装らしいが、この次世代アーマーなら正確な連射も可能だろう。

 けれど今は一発だけで十分すぎる威力だ。

 無邪気なホバリング移動でプレイヤーに迫っていた【リトル・スタッカー】が爆発四散する。

 周囲の敵はいなくなり、彼ら二人も自身の安全が確保されたと理解したようだった。


 そしてその瞬間に開始されるのが言い合いなわけで。



「鈴木、オマエ自分だけが助かろうとしてオレを身代わりにロストさせようとしたな!?

 幸也にも言っておくからな!」



「や、やめて!

 だってしょうがないじゃん! 幸也くんは私がバスケしてるのが綺麗って言ってくれたの。

 私、本当は運動音痴だし、ロストしたら”笹川宗次”みたいなことになっちゃうっ。」



「だからって、他人身代わりにしていいわけねえだろ!

 くそっ。 幸也にオマエみてぇなサイコパス紹介すんじゃなかった!」



 ……これでかれこれ3回目。

 似たようなシチュエーションで言い争う光景を見せられている。

 一応、【オートマチックハイエクスプロージョン】の兵装を解除して、空拳にしておく。


 というか、他人の言い合いにどうして俺の名前はちょくちょく登場するのだろうか。

 何、”笹川宗次”って=”無能”で結ばれるの?

 2文字多いから略になってないんだけど。



「そんなこと言わないでよぉ。 私、ノリくんに幸也くんを紹介してもらえて凄く感謝してるの。

 もし、彼と結婚することがあれば、絶対スピーチにはノリくんを招きたいもん」



「オレだってそれくらいの気持ちはあったが、今のことで萎えた。 つか、この状況でよく言えるな。」



 なんか香ばしくなってきた……とか思っちゃうのは釧路さんの影響か。

 


「言えるよ! だってノリくん、私と幸也くんのためなら何でも協力してくれるって、言ってくれたことあったから」



「……マジで頭沸いてるな。人が善意でいったことの上げ足取るとかよ……。

 オレだって、『スターダスト・オンライン』ありきの生活があるって、知ってんだろうが。

 もう話すことなんてねぇよ。

 別行動だ! ログアウトできない以上、勝手にクリーチャーにでも食われて死ね!」



 たった今、二人を助けた俺は無視ですか、そうですか。

 ……っといじけてる場合じゃない。2度の修羅場経験上、この辺りのタイミングで……。



「――私たちのために協力してくれるって言った!」



 【Ver.エインヘリヤル】の可動性能は、推進器移動以外にも単純な脚力による走行スピードすら抜群に高めてくれる。

 

 彼と彼女の間に手甲を伸ばして割って入る。

 程なくして手の甲には衝撃が走った。


 鈴木房が”ノリくん”に【10mm徹甲マシンガン】を撃ったのだ。



「うん、とりあえず落ち着こうぜ。

 ここで殺し合いしてどっちかがロストしたら、”俺”と同じになる。だろ?」



 両手に持ち直した2丁の【ビーム・ピストル】を二人に向けつつ、内、一方で彼女が持っていた【10mm徹甲マシンガン】を撃ちぬく。


 初めて2丁拳銃が役に立った瞬間だった。

 


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