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正道こそ王道  作者: マスター
01.血盟戦
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04:因果応報


 人との出会いを望んだとはいえ、ダオスが望む形とは全く違う形でダンジョンはそれを叶えてくれた。


「くそぉ!! あの女ども後で殺す。チッ!!」


 ダオスは思わず舌打ちをした。


 つい数分前に、大量に出現したモンスター処理が間に合わず逃亡を図ったパーティーがダオスの横を走り去ったのだ。咄嗟とっさに状況を理解したダオスも逃げに転じたが一瞬行動が遅れてしまいモンスターの目に留まってしまった。


 3級モンスターを含めて50近い数のモンスター達が走ってくる。ダンジョンで無ければこの程度の数など、逃げ去ったパーティーなら簡単に処理できただろう。


 どのような理由があるにせよ被害者であるダオスにとってすれば、自分可愛さにモンスターをなすり付けてきた連中など敵でしかない。


 ダオスは、祖父の言葉『死中に活をあり』という明言を思い出す。ダンジョンでは焦った者から死んでゆく。考えた結果、敢えて女達パーティーと別方向へと逃げた。全モンスターが此方に来る可能性は低いと踏んだのだ。モンスターとしても食事量が多くなるだろうパーティーの方へと向かう。


「この業界、舐められたらそれまでだ。だから、その前に貴様等にも協力して貰おう」


 例え、便所に隠れていようが、ダンジョンに隠れていようが必ず息の根を止めるとダオスは誓った。特殊条件下でのダオスの対人戦闘力は、一線を画す。ダオスの状態異常魔法を防げる手立てを持つ探索者は極めて少ない。


 ダオスは後方を確認し、自分の方へ来たモンスターの数と質を確認した。そして、振り返り魔法を発動させた。


「―"石化(ストーン)"!! 」


 ダオスが呪文を唱えると石灰のような白い粉が突如舞った。ダンジョンの通路を塞ぐかのように広く浅く展開されており、それに振れた4級以下のモンスターがその姿を石へと変えていく。


 広く浅くの広範囲への状態異常魔法。今後、更なる問題や帰りの事も考えるならば、戦闘は最低限にすべきだとダオスは考えていた。自然回復するとはいえ、有限である魔力の消費は抑えるのが生存への秘訣なのだ。


 今回の目的は、水の確保であり重量的な問題からもモンスターからの戦利品は不要なのだ。ならば、魔力消費が少ない魔法で安全に乗り切る事を優先すべきである。


 だからこそ、モンスターそのものを石に変えるのでは無く、皮膚だけを石へと変えた。この細かい魔法の操作を習得するまでには、才能あるダオスでも年単位の時間を要した。


「残り4匹か。3秒やる――引け」


 特殊条件下で一人相手に大敗したという事実は、モンスター達も理解していた。自らの魔法耐性を貫通しうる敵だという事実を。だが、同時に好機だと理解したのだ。言葉こそ通じ合えないが、モンスター達はダオスが見逃すと言った意図を理解した。


 モンスター達は身を翻し、別のパーティーが向かった先へと走っていった。


「さて、ではお仕置きの時間だ」


 敵の敵は味方だと、モンスターが理解してくれたと期待するダオス。モンスターに混ざり探索者を処理する事でその成功率は跳ね上がる。利用できるならば、例えモンスターとて構わないという考えなのだ。


………

……


 モンスターの処理が一段落して、つかの間の休息を楽しむ女性4人組。女性だけの血盟として有名な『メイデン』に所属する探索者達だ。そして、ダオスにモンスターの一部をなすり付けて逃げた連中でもある。


 全員が喜びを分かち合っている。瓦礫に押しつぶされたモンスターの死体から戦利品を剥ぎ取っている最中だ。


「ねぇ~、さっきの人、大丈夫かな?」


「大丈夫よ、きっと」


 心にも無い事を口にして少しでも罪悪感を無くそうと仲間達に声を掛けるエルフ女性のミッシェル。何の根拠もなしに返事をする女性のサーシャが苦笑いをしつつ応えた。


 誰も、生きているなど思ってはいない。だけど、自らの正当性と緊急だったので仕方なかったと仲間内で再認識する事でダオスの事を忘れようとしているのだ。


「見て見て!! ゴブリアスの肝だよ!! 」


「こっちは、ゴーレムの核だ」


 嫌な事はすぐ忘れるために、モンスターから剥ぎ取った戦利品を何所どこで売ろうかなど、既にダンジョンから帰った後の事を考えている。


 このとき、一言でも『彼が生きているかも知れないから助けに行きましょう』『生きていたら、謝りましょう』など言葉があれば、ダオスもなるべく苦痛無く死ねるように配慮してくれただろう。


 だが、このやりとりをダオスに聞かれている彼女達は、楽には死ねない。ダンジョンとは存外声が響くのだ。それが、女性の甲高い声ともなれば尚更だ。キャフキャフと生存を喜ぶ声を一刻も早く途絶えさせてやりたいとダオスの雰囲気が物語っている。


「――おしゃべりは、そこまでよ。どうやら、あっちへ行ったモンスターが此方に来たみたい」


「ミッシェルは、索敵。サーシャは、私が一瞬足を止めるから、天井を崩しなさい。後、セリスもアーナもサポートするんだよ」


 リーダーの一言で全員が戦闘態勢に入る。警戒こそしているが既に勝利を確信している彼女達。ダオスの元に向かった数は、先ほど彼女達が処理した半分にも満たない。そして、今回はその迎撃に当たるのに十分な準備が整っている。


「数は4です……でも、これは!?」


 索敵魔法を得意とするミッシェルが言葉に詰まった事に彼女達は疑問を覚えた。4匹の中に1級もしくは2級モンスターでも混ざっているのだろうかと、そうとなればすぐさま逃げに転じる必要があるからだ。


「セリス、照明を」


 セリスの手より火の魔法が天井に向かい打ち上げられた。暗いダンジョンないでよく使われる方法だ。


 そして、彼女達は目にした。3級モンスターのパイロンスネーク、3級モンスターのラットマインダー、3級モンスターのハイゴブリン……そして、ダオスの4名が居る事を。


「"沈黙(サイレンス)"」


 確実に殺す為に、ダオスは相手が動揺している最中先手で魔法を封じる。本来なら、畳み掛けるように状態異常魔法を掛けて完封するのだが、楽に殺す気がない。


 パリーーーンと良い音を立てて、彼女達が持つ抗魔クリスタルが砕け散った。


 抗魔クリスタルは、身に降りかかる魔法……マイナス要因になるバッドステータスを打ち消してくれる消費アイテムなのだ。クリスタルの質により打ち消す魔法の許容量が決っている。許容量の限界を超えるとクリスタルが砕けるのだ。この身代わりをしてくれるアイテムは、探索者の必須アイテムでもある。


 彼女達は、決して安物を持っていたわけではない。ダンジョン内部で状態異常魔法を使った殺人は、常套手段なのでその対策は打つのが探索者だ。だが、ダオスの状態異常魔法の前では、御自慢の抗魔クリスタルすら意味をなさなかった。


「待ってちょうだい!! 話を聞いて欲しいの」


「遺言か、2分だけ待ってやる。一人30秒だけだ」


 ダオスは、今にも彼女達に襲い掛かろうとしていたモンスター達に"麻痺(パラライズ)"を掛けて行動を止めた。これが、優しさである。


「だが、その前に"攻撃力低下(ウェポンブレイク)"、"防御力低下(アーマーブレイク)"」


 安全対策のために、彼女達の筋力を低下させ、身につけている防具の耐久度を限界までさげた。もはや、彼女達はしゃべる肉塊にすぎない。自らの体重すら支える事ができずに、地面に崩れ落ちた。


 絶体絶命……絶望という感情が彼女達を襲う。魔法が使えないなら、物理攻撃でと考えていたがそれも封じられたのだ。ダオスと彼女達では対人戦闘の経験が違いすぎるのだ。


「ごめんなさい。あの時は、仕方なかったんです」


 ダオスの事を唯一少しだけ気に掛けたミッシェルが謝り倒す。探索者なら、あの状況で逃げるしか無い事を理解してくれると考えたのだ。そして、謝ることでこの場をしのぎきろうとしている。


 だが、ダオスは甘くはない。


「それが遺言か。"恐怖(フィアー)"」


「あっ…あ゛あ゛ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー」


 過去のトラウマを何倍にも増幅させて効力が切れるまで延々と再生させる状態異常魔法。罪人などに使われる事が多く、下手すれば廃人になるほどの危険な魔法だ。


 そんな魔法を涼しい顔をして使うダオスは、彼女達にとってモンスターより質の悪い存在にしか写っていないだろう。


「貴様ぁ!! ミッシェルになんて事をしやがる。殺してやるぞ」


「そうか。なら、先に殺しておく」


 リーダーらしき女性を指さしてモンスターに一言ダオスが命令した「殺せ」と。


 モンスターへの状態異常魔法は、手加減して掛けていた。一定時間おきにかけ直していた行為を辞めたのだ。当然、モンスターがダオスの意図通りに動かなければ再度動きを止める。意図通り動けば、何もしない。


 動物の調教と同じだ。


「そんなやめぇ………」


 グシャリ


 ラットマインダーによって、捕食されて床の染みへと変わった。


「危ない、殺されるところだった。で、もうすぐ2分経過するけど、残り二人の遺言を早く聞かせて欲しいな」


 二人に優しく微笑みかけた。だが、ダオスの祖父の手帳に書かれていたニコポという効力は全く発揮されない。はやり、10代限定の特殊能力なのだろうかと真剣に考えるダオスがいる。

降り掛かる火の粉は、全力で払う!!

明日のこの時間に投稿予定です~。


読者の皆様へ、感想ありがとうございます。

誤字脱字も散見されており、誠に申し訳ありません。

過去作品に比べて大分改善されていると思っているのですが、中々0に出来ないorz

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