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正道こそ王道  作者: マスター
04.勇者
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39:尊い犠牲

 自らに試験が行われているなど、全く知らず、ダオスはタワー内部を走っていた。


 だが、先行しているアレンサーに追いつけていない。強化魔法を用いている対象を生身で追いかけているのだ。相手が休憩でもしない限り、差は広がる一方である。


「ッチ!! 道中のモンスターは全て無視しているな」


 アレンサーは、化け物と言う名の幼女を救うため、道中のモンスターを全て無視して進んでいる。だが、素直に探索者を通す程モンスターも馬鹿では無い。モンスターに取ってしてみれば、探索者は食料だ。


 って、追いかけるのは当然の帰結。


 そこで、アレンサーが取った方法は、すれ違った探索者に擦り付けているのだ。幼女の命と赤の他人の命を天秤に掛けた結果の行動である。自分の都合しか考えないという、実に勇者らしい行動原理である。それによって生じる不都合は、誰かが穴埋めするという鬼畜理論。


 だからといって、ダオスはその被害者達に手を貸したりはしない。当然だ……謝罪と賠償ならば、アレンサーが負うべき責である。


「くっそ、あの野郎!!」


「動かないで。骨まで食い込んでいるんだから」


 今現在、ダオスの横でアレンサーの被害者と思われる者達が回復に精を出している。周囲には複数のモンスターの死体があり、中には二級モンスターの死体もある。この数を四人中二人の犠牲で凌ぎきったのであれば、上々の成果である。


 ダオスは思考した。アレンサーを如何にして処理するかを。契約魔法の条件を満たした上で殺すため、利用出来る者は何でも利用する。


「……手を貸そうか。安心しろ怪しい者じゃ無い」


 白装束のいかにも怪しい男が、声を掛けてきたのだ。その本人が怪しい者じゃないといっても、難しい。100人中100人が不審者と思う風貌をしているのだ。


 よって、そんな不審者に声を掛けられたときの対処は一つだ。逃げる!! タワー内での特殊条件下では、正しい回答の一つである。加えて、男女は負傷しており殺し合うのは不利なのだ。


「「……」」


 顔を見合わせている。逃げるタイミングを計っているのだ。


「『ゴスペラーズ』所属の3級探索者。ダオス・ベルトゥーフだ。医師免許も持っているから安心しろ。見たところ、骨まで逝っているな。応急処置程度は、してやれる」


 ダオスは身分証を提示した。


 試験に関係ない人間に身分をバラしても、問題は無い。よって、せんじて確かな身分を提示する事で相手の不信感をぬぐったのだ。医師免許まで持っているとの情報は相手に取ってありがたい事である。


「『ゴスペラーズ』ってあの『ゴスペラーズ』?」


「恐らく、あの『ゴスペラーズ』だな。その手に持っている杖……覚えがある」


 男女は、警戒こそ解いていないがひとまず安心していた。


 無視せず、声を掛けてきたと言うことは何かしら用事があるからに他ならないからだ。装備狙いの犯罪者達なら、有無言わさず殺してくるからだ。


「どうやら、身分は証明できたようだな。では、取引しよう……そこの男性の治療に加え、幼女を背負って走り去った者の名前を教えよう」


 男女は不信感を露わにした。


 自分達の状況を話してもいないのに、まるで見てきたかのような発言。裏で糸を引いていたのではないかと誰しもが思ってしまう。しかし、男女としてはダオスの手を取りたかった。


 治療に加え、犯人の情報まで手に入る。二人の仲間を失った切っ掛けを作った者に制裁を与えたいと思うのは心情である。


「……精霊魔法の行使は構わなくて? 疑っているわけじゃないけど、あまりにタイミングがいいもので」


「勿論だ。ただし、私にも事情があるのでね。全ては答えられない」


 ダオスは、試験に関する内容は、答える事は出来ない。


 真偽の判断は、正確無比の質問をしないかぎり、いかようにも回答出来るのだ。その為、経験を積んだ裁判官でも無い限り、ダオスから真実の情報を抜き出す事は難しい。


「……貴方の言っているとおり、私達がこんな事になった原因を作ったのは幼女を背負った逃げ去った男よ。彼の名前を知っているのね」


「その通りだ」


 ダオスの言葉を判断した結果、真実と出た。


「あの逃げた彼と貴方は仲間かしら」


「仲間? 面白い冗談だ。寧ろ、殺したいほど憎い」


 化け物に妹の名前を付けられた事を再び思い出し、ダオスから嫌な雰囲気が漂い出す。ソレを察し、男女はこの話題はマズイと判断した。余程、恨みがあるのだと……。なぜそこまで恨みをと考えた二人で会ったが、思い当たる節が多すぎた。現に、彼らも同じく憎しみを抱いているからだ。


「分かったわ。じゃあ、最後に治療の対価は何かしら? タダで人助けするようなお人好しじゃないわよね」


「とある場所、とある時間にこの度の主犯格が現れるだろう。その鬱憤を晴らしたくは無いかね? かくいう私も晴らしたい。お互いに協力しようじゃ無いか」


 悪魔の囁き。二人には、ダオスの胡散臭い提案ではあったが、嘘偽り無い真実である事は間違いないと理解出来た。なにより犯人に繋がる手がかりが無い以上、ダオスの手を取る以外の選択肢は残っていなかったのだ。


◆◆◆


 アレンサーは、モンスターを振り切って力の限り最短ルートでタワーを脱出していた。


 コレに関しては、本試験を担当する者達の予想を上回る成果をはじき出したといえる。この短期間で急成長を果たしたのだ。誰かを救いたいという一心の思いが、ポテンシャルを上昇させた。


 これにより、アレンサーは勇者適性を持つ者であると断定される事となった。多少の犠牲者は出たが、試験をする側としては嬉しい誤算である。


 その影で犠牲となった者達は、どう思うであろうか。幼女の皮を被った化け物……代替可能な消耗品の為に、大事な仲間を、恋人を失った者達をアレンサーは納得させられるであろうか。


 そんな犠牲になった者達の思いなど知らず、アレンサーはエスカロリオが所長を務める第8研究所に足を運んでいた。実家のツテを使い、各方面に金をばらまいてようやく所長であるエスカロリオと直接面会にこぎ着けたのだ。


 研究所の一室で対面して座るアレンサーとエスカロリオ。


「まさか、生きて対面できるとは思っていなかったな。外での活動限界はとうに過ぎているというのに」


「やはり!! いいや、今はそんなことどうでも良い。この子を……サクラちゃんを助けて欲しい」


 化け物の名前を聞いた瞬間、エスカロリオはアレンサーに対して「死んだな」と内心思っていた。ダオスの妹であるサクラの名前を偶然にも付けてしまったのだ。ダオスやサクラとは旧知の仲である故、性格も把握しているのだ。


「要望は理解した。では、その子を連れて付いてきたまえ」


 活動限界を超えても生存している貴重なサンプル。研究者として、是非に欲しい検体だ。だから、エスカロリオはアレンサーの要望を叶える事にした。


 アレンサーは、エスカロリオに付いていく最中、国家の最重要機関である様々な者を目にして驚きを隠せなかった。その中でも、年端もいかない子供達が幾人も居るのを目にし、シャーリーの言葉を思い出していた。


「エスカロリオ殿。あそこに居る子供達は」


「あぁ、あのガラスの向こう側にいる子供達ね。それの元人格達だ……と、言っても理解できないか」


 孤児院から引き取られた者達が、超一流の講師陣によって十分な教育が施されている様子がそこにはあった。アレンサーはその様子をみて、思っていた場所と違うのでないかと思い始めた。


 だが、研究所の奥に進むにつれその思いは完全に粉砕されていた。


 培養液の詰まったガラスケースに浮かぶ容姿端麗な幼女達。その光景は美しくも恐ろしい物である。


「少し待っていてくれ。今、空きを作る」


 エスカロリオがパネルを操作すると、アレンサーの真横にあったガラスケースに異変が起こった。培養液が真っ赤に染まり、中に入っていた幼女が溶け出し、骨になり、消失したのだ。


 まるで便所紙でも流すかの如く平然とその作業を行うエスカロリオにアレンサーは畏怖の念を抱いた。本来なら、色々ともの申したいアレンサーではあったが……優先事項をはき違えてはならないと、全てを飲み込んだ。


「さぁ、そのケースにソレを放り込みなさい。そうすれば、要望通り直してやろう」


「お願いする」


 この時、二人の中で決定的な食い違いがあった。


 エスカロリオは、外見が気に入ったのであろうと理解していた。よって、外見のデータを元に新規個体を準備する予定でいたのだ。


 対するアレンサーは、今手渡した化け物を治してくれると信じていた。


「明日には、渡せるだろう……だが、その前に君に会わせたい者達がいる。付いてきてくれるかね」


「私に? 知り合いはいないはずだが、分かった」


 疑問に思うアレンサーだが、今この場でエスカロリオの依頼を断れるとは思っていなかった。指先一つで、今までの労力が全て水の泡となる可能性があるからだ。


「私もよく知らないが、君に会いに来た女性だよ」


「シャーリーか!! 無事でいてくれたのか」


 エスカロリオの発言は嘘では無い。女性も居るだけなのだ。男性もいたり、複数いたり、ダオスが居たりする事もあるかもしれないが、発言に嘘は無い。

さて、お礼参りの時間だ@@

勇者ならこの程度、やり過ごして当然だよね!!



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