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正道こそ王道  作者: マスター
04.勇者
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34:お荷物

 アレンサー達が救った幼女……エスカロリオが所長を務める第8研究所より生み出された研究成果の一端である。ダオスが以前に持ち込んだハーフの死体を解剖し、得られた情報を元に製造されたのだ。


 その原料は、鮮度の良い人間とモンスターの死体から作り出されている。合法非合法問わず様々な薬品や魔法が使われている事が短命の要因で、改善すべき課題だ。生命の創造とは、神の領域である。エスカロリオを筆頭にする頭の可笑しい研究所の職員達でも一筋縄にはいかないのが現状だ。


 だが、その事実を知る術も無い。アレンサーとシャーリーは、幼女を連れてタワーの外へと足を急いでいた。


「ねぇ、アレンサー……言うまでも無く、この子厄ネタよね」


「分かっている」


 アレンサーは、背中で寝息を立てる幼女を見た。その健やかに眠る様子に思わず和んでしまった。


 二人も当然馬鹿では無い。『ハイトロン法国』が厳しい管理を行っているタワーなのだ。入場する際も身分証が無ければ入れない……そんな場所に、いたいけな幼女が地下20階という場所でいる事など考えられない。


 どう考えても、国の思惑が一枚絡んでもいない限り不可能なのだ。


「今更見捨てても目覚めが悪いから、その子が起きたら少し話を聞いてみましょう」


「そうしよう。最悪、実家に泣きつけば何とかして貰える……はず。悪いが、寝る際はシャーリーがこの子の面倒を見てくれよ。子供とは言え、同じ毛布で寝るのは些か問題だからね」


 子供に優しい彼氏は大好きであるシャーリーだが、幼女に欲情する可能性を示唆されてしまってはなんとも言えない感情が芽生えてしまう。優れた容姿を持つ幼女である為、邪な感情を抱く者がいるのも不思議では無いが、アレンサーもそれに漏れないという知りたくない事実を知ってしまった。


「言っておくけど、その子に何かしたら、そぎ落とすわよ」


「するわけないだろう!! 一般論の話だ!! この子が目覚めた時、横に見ず知らずの男が寝ているのと女が寝ているのとでは、色々と違うだろう」


 世の中は、不思議だ。


 救い出した幼女の隣に、女性が寝ている事は問題にならない。ならば、救い出した男児の横に男性が寝ている事は問題にならないのだろうかと言われれば、違う。非常に問題だ。世の中とは、男性に不利に出来ているのだ。


 そんな理不尽な思いを抱きつつアレンサーは、索敵魔法を展開し就寝の準備に入った。


 だが、その時コツコツと足音が響く。


 足音を拾ったシャーリーは、アレンサーを見た。怠けて、索敵魔法を怠っていたのでは無いかと思ったからだ。だが、事実は違う。


◇◇◇


 ダオスは、索敵魔法も強化魔法も使えないため、一度目標を見失えば探し出すのは困難だった。だが、この試験に限って言えば、当然、試験をサポートする者達がいる。その者達から情報を貰い、ダオスは逃げていた者達に追いついたのだ。


 アレンサーの索敵魔法を状態異常魔法で打ち消しつつ、ダオスは三人が休む場所へ一歩一歩足を進めた。


 白装束に身を包んだダオスがアレンサー達の前に現れる。信じられない者を見るような顔をするアレンサーと困惑するシャーリー。


「今晩わ。探索者の方々……悪いが、ソレは私達のモノだから返して頂きたい。当然、危ないところを救って貰ったのだから、相応の謝礼はしよう」


「あ、ありえない」


 アレンサーは、驚愕していた。


 他者より優れた探索魔法の使い手であると自負しており、目の前にいるにも関わらず魔法に検知されないダオスの存在が理解出来ないのだ。その気になれば、庭に落ちる葉の数まで察知できるアレンサーの索敵魔法……目の前にいるダオスに意識を集中しても、なんら手応えが無いとなれば、当然だ。


「そんな怪しい風体の男に、女の子を渡せといわれて分かりました……なんて、言うと思っております?」


「理解していないのは貴様等の方だ。薄々感づいているだろう。タワー内部で何の戦闘力も無い幼女が歩いているなど、あり得ないと……これで引け。エース金貨50枚ある」


 ダオスは、エース金貨が詰まった袋を床に置いた。


 幼女一人を見捨てて手に入る額としては十分なモノだ。この分岐点、幼女を見捨てるルート、見捨てないルートがある。だが、どちらに転んだとしても実は良いのだ。勇者には色々なタイプが存在する。同じ系統の勇者ばかり揃えても、扱いづらい。


 例えば、国家の重鎮の娘を救うために、街を焦土にしても気に掛けない勇者というのも必要なのだ。冷静沈着で、任務を最優先と考える者。人材を最適に運用するのは国家の仕事である。


「おじちゃん、うるさい……イっ!? イヤァァァァァァァァ!!」


 眠そうな目を擦りながら起きた幼女。ダオスの顔をみて、絶望の顔をする。


 幼女は、覚えている。タワー内部に連れてこられる前に、エスカロリオの研究所で行われていた様々な実験を。その最中、薬物を投与する際に自らの傍らに立っていたダオスの存在を覚えていたのだ。


 大事な事だが、ダオスは医師免許を持つ極めて優れた状態異常魔法の使い手だ。よって、幼女が死なないように痛覚を麻痺させる等の要員で側にいたに過ぎない。だが、幼女からしてみれば、鬼にも悪魔にも思えたのだろう。


「この子を引き渡したとして、この子はどうなる」


「死ぬだけだ」


 どのみち、培養液の外では長くは生きられない。だが、それはアレンサー達が連れていっても同様だ。現在は、ダオスが掛けた"麻痺(パラライズ)"により痛覚が麻痺している。それが、時間経過で解けた段階で激痛のあまりショック死するであろう。


 当然、その事実を教えることは無い。


 生き物を引き取るという事は、健康管理も責任の一環なのだ。


「アレンサー!! 男でしょ!! 」


 シャーリーがアレンサーに活をいれる。古来より男を活かすも殺すも女の仕事と言われている。目の前で、折れそうだった男の心を建て直したシャーリーにダオスは素晴らしいと思った。


 これが勇者適性が持つ者が集めた仲間なのだ。実によく出来た女性である。男を支える的な意味で言えば満点だ。


「悪いが、助けを求める幼女を見捨てたとなっては目覚めが悪い!! 折角の申し出だが、提案は拒否させてもらおう……"土壁(アース・ウォール)"」


 床が盛り上がり、ダオスとアレンサー達を仕切る壁が現れる。通路一杯に広げられた壁は、中々の出来映えだ。アレンサーの魔力をつぎ込んで作られた力作だ。普通ならば、コレを突破するには、攻撃魔法を当てて破壊するのがベターである。


 だが、タワーの特性上ダメージ反射という物がある。その為、壁の向こう側を気にする必要があるのだ。土壁の反対側に体をくっつけられている場合、勢い余って魔法が突き抜けたらダメージが反射して死ぬ可能性がある。


「判断力は、なかなか。私が床に置いた金貨まであちら側に持って行くとは考えたな」


 ダオスは、土壁に近づき手を当てた。


 ダオスは、身元が割れそうな品である法天エンプレスを所持していない。国宝級という圧倒的な性能を誇る武器になれてしまっており、ダオスは些か物足りなさを感じていた。


「タワー内での戦い方を心得ているな。では、タワー外へ逃げて幼女が救えるか試そうじゃ無いか……"腐敗(カラプション)"」


 ダオスが状態異常魔法を使うと、通路いっぱいに広がっていた土壁が崩れ落ちる。


 "沈黙(サイレンス)"でも同様な事ができるのだが、対象が土壁と言うことで費用対効果の高い状態異常魔法を選び行使された。ダオスの予想通り、土壁に背をぴったりと付けていたと思われる二人が姿を現した。


 ダメージ反射狙いでのやり口だ。


「っ!! シャーリーーーー!!」


「"沈黙(サイレンス)"」


 アレンサー達は理解した。


 目の前の怪しい白装束の男がタワー内での対人戦闘技術に長けており、一筋縄ではいかないという事実を。よって、殺すのは難しいと判断し無力化する方向へ切り替えたのだ。実に正しい判断だ。


 しかし、世の中には抗魔クリスタルと言う便利な物がある。


 ダオスのような、特化型でも無い限り、その守りを突破する事は難しい。更に言えば、万全な準備をしているダオスが身につけている抗魔クリスタルの数も質もアレンサー達とはレベルが違う。


「無駄だ。私とて、抗魔クリスタルを保有している。状態異常魔法とは、このように使うのだよ……"病気(シック)"」


「あれ?なんだか、目がぐるぐるする」


 幼女は、フラフラと揺られて床に崩れた。


 状態異常魔法とは、相手の行動を阻害する魔法である。


 相手が見捨てられない存在に対して、魔法を行使する事がベストなのだ。幼女は、抗魔クリスタルも所有していないので、ダオスの魔法をモロに受ける事になる。絶妙な手加減をしなければ、死に至った可能性すらある。


「力加減はしたが、常に回復魔法を掛けねば命の保証はしかねる。索敵魔法、回復魔法、強化魔法と果たして、いつまで魔力がもつかね」


 アレンサー達は、このままダオスとやり合っても勝てぬと理解した。


 抗魔クリスタルを渡していなかった幼女を狙い撃ちしてくるような外道な方法をとられるとは考えていなかったのだ。戦闘員以外から狙うようなやり口は、有効的だが、非道である。


 よって、残された選択肢は逃亡のみだ。


 ダオスの第二第三の状態異常魔法を警戒し、視覚外へ逃れるための"土壁(アース・ウォール)"が建てられる。当然、ダオスが一瞬でそれを瓦解させる様子を目のあたりにしているため、何重にも建造される。


 その様子にダオスは、採点表に◎を付けた。 

足手まといを抱えてドコまで逃げれるかな@@

ジワジワと追い詰めてやる。


次話は、幼女メインで執筆予定@@

皆の大好きな人造幼女!!

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