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正道こそ王道  作者: マスター
02.閑話1
19/66

18:病魔

いつもありがとうございます。

作者です><

 消毒液の特有の臭いがするこの場所、『ハイトロン法国』にある病院である。


 タワーで怪我をした者達や病気で入院また通院する者達が数多くいる。その中で、長い時間を病院のベッドの上で過ごす者達も少なくない。また、病魔に身体を蝕まれて、治る見込みの無い者達もいる。


 だが、そういった何の生産性の無い者達も適切な治療が行われる事で延命され、早々に死ぬ事は無い。病院側としても当然、最善を尽くす。なぜなら、それが仕事だからだ。更に言えば、お金になるからだ。


 とある病室でも、長い期間をベッドの上で過ごし未だに生きながらえている者がいる。その一室に、その者の家族とダオスが居る。


「ダオス先生……お願い致します」


「承った。では、彼に安らかな眠りを」


 数年寝たきりで意識の戻らない彼にダオスは、安らかな死を与えるお仕事をしている。名誉ある死を授けるお仕事なのだ。


 これで、彼の家族から彼という病魔が取り除かれる。家庭経済を蝕む病魔を排除するのがダオスの仕事なのだ。医師免許を持ち、状態異常魔法をこの上なく得意とするダオスにはまさに天職とも言える職業だ。


 血盟戦の一件もあり、ダオスの名が知れ渡った。元法王の直系という事もあり、やんごとなき血筋の人から、尊厳死が賜れると言う事で仕事が捗っているのだ。病院の医師側からしてみれば金蔓かねづるが失われる行為なので、嫌われるが……患者の親族達からは、好評を得ている。


「"睡眠(スリープ)"、"衰弱(ウィークネス)"」


 ダオスの魔法により、病魔の存在が徐々にこの世から足が遠のいてく。


 その様子を見て涙を流す彼の家族だが、やっと肩の負担がおりたと心なしか安堵していた。これが現実なのだ。


 ダオスは、脈拍を確認し死亡診断書を記載する。これを渡す事でダオスの仕事は、完遂される。彼の親族達がそれを受け取り、ダオスに心ばかりのお礼とエース金貨5枚が渡された。


 その金額が、ダオスと約束されていた対価なのだ。


 生きた対象を使った魔法の練習にもなり、お金にもなるこの行為はダオスは一石二鳥であると考えている。繊細な魔法操作は、やはり実戦で鍛えるしか無い。


「後の事は、病院側で対応してくれるでしょう。それでは、失礼する」


 ダオスは、患者の親族達に別れを告げて、院長室へと移動した。



◇◇◇


 院長室には、20代半ばの男性が一人椅子に腰を掛けている。親から受け継いだとはいえ、異例の若さで院長の座についた者だ。優秀な回復魔法の使い手でもあり、経営面でも敏腕と称されている男である。


「義兄さん、どうですか。そろそろ、うちの病院に就職しませんか? 法天エンプレスのメンテナンス代も経費で落とします。お給料もこれだけの額はお約束致します」


「その誘い文句は、何度目だったかな。残念だが、医師の仕事はアルバイトに過ぎない」


 この病院……ダオスの妹の嫁ぎ先なのだ。故に、ダオスの安楽死のアルバイトに対しても非常に寛容なのだ。院長は優秀である為、ダオスの安楽死業と状態異常魔法を天秤に掛けた場合、十分におつりがくると計算して居る。


 "麻痺(パラライズ)"や"睡眠(スリープ)"などは医療の現場でも役に立つ。繊細な魔法の操作について、ダオスは、若手の医師達に指導などもしているのだ。


「つれませんね。それはそうと……ここ最近、病院に便秘で困っているから、なんとか出来ないかと貴婦人の方達が内密に訪れるのですが、どうしましょうか」


「何を求めてこの病院にくるかは理解できるが、生憎と、例の魔法は血盟戦後に法王様に禁術に指定されたから、法王庁の認可なしに安易に使う事はできない」


 物理的では無く、社会的攻撃力という過去に例をみない事例で、初めて禁術に認定されたダオスの"便意(デフェケーション・デザイヤー)"。これにより、ダオスは禁術保持者として、名声を得たのだ。『ゴスペラーズ』に在籍している他の者達ですら持ち得ていない称号なのだ。


「そういう事でしたら仕方がありません。今後訪れた患者には、禁術のため法王庁に認可を取ってからお越しくださいと伝えておきます」


 権力を有する貴婦人達とて、自らの便秘を治すために禁術使用許可を取る事は難しいだろう。


「あぁ、そうしてくれ。貴婦人達とて、法王庁相手に無理は言えまい」


 それから、ダオスは義弟である院長と話し込んだ。年齢と価値観が近いという事もあり、ダオスはこの時間が気に入っている。何より、義弟を通じて、実の妹が幸せな家庭を築けている事を知る事ができて嬉しいからだ。


………

……


 話し込んで30分程が経過し、お昼を迎えようとしていた。


「そろそろ、昼食の時間ですが、一緒にどうですか?義兄さん。 もうすぐ、サクラがお弁当を持ってくる時間です」


「いいや、二人の時間を邪魔するのは野暮だ。私はこれにて失礼するよ。サクラには、また会う機会もあるだろう。それと、コレを渡しておいてくれ」


 サクラ・ベルトゥーフ――ダオスと年の離れた妹である。既に一児の母であり、ダオスとの仲も良好だ。


 ダオスは、義弟にステラの美容室の予約券を渡した。貴婦人達が懇意にしているステラの美容室は、半年先まで予約が埋まっているが、血盟員という立場を活用しダオスはちゃっかりと手土産を用意してきたのだ。


 ダオスは、敵対する者には容赦しない。だが、身内にはその反面、甘いのだ。どれほどまでに甘いかというと、身内に危害を加える者がいたら地の果てまで追いかけて、一族郎党をいかなる手段を用いても抹消する気構えでいるほどだ。例え、相手が豪商や大貴族であってもだ。


「相変わらず甘いですね。分かりました、必ず渡しておきます」


 席を立ちダオスの背を見送る院長は、彼の安全を祈願した。ダオスが身内に甘いように、院長も身内にはゲロ甘なのだ。だからこそ、話が合う義兄を無事を切に願うのだ。



◇◇◇


 法天エンプレスのメンテナンス代金は、血盟員のミーミルのお友達価格ですらエース金貨750枚という途方も無い額だ。ミーミル曰く、年の一回のメンテは必要だという事でダオスは金策に明け暮れていた。


 義弟の病院で医師のアルバイトもしているが、安楽死希望者はそこまで多くは無い。だからこそ、次回のメンテナンスに向けて纏まった額を稼いでおく必要がある。それも、メンテを終えて万全なこの時期こそがそのタイミングでもある。


 『ゴスペラーズ』のホームにある自室で、ダオスは一枚の手紙を開いていた。


「やはり、この話を受けるしかなさそうだな」


 その手紙の内容は、『ゴスペラーズ』の非戦闘員にしてエルフの上位種族であるエロフの女性が持ってきた物だ。彼女の実兄が、『ゴスペラーズ』の同盟血盟の盟主でもある為、そちら経由で来た依頼なのだ。


 『ゴスペラーズ』の同盟……『メイデン』とは、うって変わった男性だけで構成されているよくある血盟の一つ『アッーーーメン』。構成員は300人を超えており、総合戦闘力で言えば『ゴスペラーズ』以上だ。


「バルブリエル・エントマント……会いたくないな~」


 ダオスは、気が重かった。


 エロフの女性は、平和主義で博愛主義者でもある。ムチムチのバインバインで、ピチピチの服を着ているのだ。当然、『ゴスペラーズ』のエロフもそれに漏れていない。


 だが、エロフ男性も平和主義で博愛主義者でもある。加えて、ムチムチのバインバインでピチピチの服を着ている。人格者でもあり、決して悪い人物ではないのだが、その服装に物申したくなるのだ。


 種族の伝統衣装でもあり、それを貶すことは殺し合いにも発展しかねないので、ダオスは血盟戦の引き金を自分が引いてしまうのではないかと会う前から気が重いのだ。

 

同盟と仲良く大人の階段を登る話に決定だ!!


※エロフ男性のイメージは、能天使(福音を……)みたいな感じです。


さぁ、また男達の戦いが今始まる!!

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