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正道こそ王道  作者: マスター
01.血盟戦
16/66

15:テロリスト

いつもありがとうございます。

今日というか、昨日で実は投稿を初めて一ヶ月目なんです><

ここまで頑張れたのも本当に読者の方々のオカゲです。


そして、不定期な投稿でご迷惑を掛けるのを重々承知していながら@@

一日遅れのホワイトデーの自家製の生チョコ(意味深)を送りたいと思います!!

温泉回同様にテコ入れ回だと作者は確信している。

こういうとき画力があれば自分で挿絵を描くのにと思ってしまう。


 ダオスの状態異常魔法により、『メイデン』の者達に衝撃が走る。


 開始と同時に、この日の為に苦労して用意した抗魔クリスタルの大半が砕け散ったのだ。無事な者は、過剰なまでに抗魔クリスタルを装備していた1級探索者と一部の2級探索者だけだ。


 『メイデン』の者達は、状態異常魔法を得意とするダオスという存在がいる為、このような事態も覚悟していた。だが、早すぎる展開に驚きを隠せていない。


 しかし、彼女たちもプロだ。状態異常魔法における対応は、身につけている。ダンジョンで生計を立てる探索者としては当たり前だ。


「この距離でどうやって!! 動ける者は身を隠せ」


 出鼻はくじかれたが、『メイデン』のトップ戦力達は、仲間に回復魔法を掛ている。状態異常魔法とて万能では無い。回復魔法と強化魔法の併用で、強引に回復させられる。


 だが、状態異常魔法の威力に比例して、回復に必要とする魔力も上がる。その為、『メイデン』は、万全な状態からは程遠い開幕となったのだ。


「ミーシャ……何か、変よコレ。治したはずなのに、顔が青ざめているわ」


 『メイデン』の中で、回復魔法を得意とする1級探索者が仲間の異常に気がついた。


 催した便意は、確かに彼女の魔法によって回復した。だが、強制された便意が収まったにすぎない。その回復に要した僅かな時間で、大腸の滞留物が出口のそばまで移動しているのだ。後は、人として正常な便意が襲うという二段構えの状態異常魔法なのだ。


 抜かりのないダオスは、『メイデン』の同盟を経由し、消化に悪いが美味しい食料を血盟戦の数日前から送っていたのだ。『メイデン』の同盟も『ゴスペラーズ』のスポンサー達に睨まれるのは御免だという事で快く協力したのだ。晩餐を楽しんだ彼女達に、便意を止める術はない。


「ご、ごめんなさい。ミーシャさん、少しだけ……本当に少しだけ後方に下がらせて」


「何を考えている血盟戦中だぞ!! 気合いを入れろ。負けたら全て終わりなんだぞ」


 ミーシャが言う事は、誰しもが理解している。


 だが、目の前の敵より先に腹の中の敵と戦っている苦しみを味わっていないミーシャに、彼女達の思いは届かない。ミーシャにしてみれば、じ気づいているようにしか映っていない。


 大事な事だが、上空には『メイデン』の様子も逐一映し出されている。


◇◇◇


 ダオスは、膝をついていた。


 150名を超える者達に同時に状態異常魔法を放ったのだ。目視ではなく、映像越しという荒技でもあり、魔力をごっそり消費していた。


「素晴らしい魔法だなダオス・ベルトゥーフ。この距離に加え、あの数だ。どうやったかは知らないが、称賛に値する」


 その場にいた13使徒達がダオスの初手を褒める。一撃にして過半数近い者達を足止めし、大量の抗魔クリスタルを粉砕したのだ。恥じない一撃である事は間違いない。


「ありがとうございます。しかし、本領はこれからです」


 上空に映る『メイデン』陣営の者達が盟主の制止を無視して後方へと……更には、草むらへと駆け込んでいった。どこからどう見ても敵前逃亡だ。


 血盟戦というイベントの状況下なのだ。彼女達の行動にどのような意味があるか知りたいと思うのは、観客達も同じだ。だからこそ!! 彼女達の映像がアップで映し出される。


 投影されている事は『メイデン』の者達も知っているのに、いきなり脱衣を始めたのだ。最初こそ、男達の熱い声援が沸き上がった。だが、それを見ていた者達も彼女達の姿勢を見てこの後の出来事を予見したのだ。


 そして、盛大な効果音が観客達の耳を汚し、時が止まった。


 何が起こったかまでは言うまでもあるまい。映像テロが行われたのだ。観客達の中には、食事をしている者もいる。まさに外道の所行だ。これにより、最後まで『メイデン』の無実を信じていた者達の心が完全に離れた。


 観戦していた法王も手にしていたグラスを床に落とす程で、『メイデン』の名は地に落ちた。もはや、『ゴスペラーズ』に勝利した場合であろうと、汚名返上することは叶わない。


 『メイデン』の様子を満足そうに確認するダオスに、『ゴスペラーズ』の血盟員が一人近づいてきた。ドワッ娘のミーミルだ。


「あのさ~ダオス。肉弾戦主体の私は、当初の予定通り『メイデン』のスタート地点に特攻を掛けないといけないんだけど、何か言いたい事はない?」


 ミーミルがダオスに小言を言う。ガチガチの装備に加え、不老不死という特性を利用して戦う彼女にしてみれば、この状況は喜ばしくない。敵陣営は、おぞましい人為的なトラップが大量にばらまかれているのだ。


「クリーニング代は、経費で落として貰えるようにザックスにお願いするよ」


 それを耳にしたザックスは、首を横に振っている。血盟の金庫番である彼の許しなくして、経費は通らない。『ゴスペラーズ』の財政的に余裕は、十分にある。だが、この人為的なトラップはダオスのせいでもあり、それを理解しているザックスは自分で責任を取れと言っているのだ。


「分かった。私が持とう」


「領収書を見て、驚かないでね。じゃあ、少し間引いてくるわ。"攻撃力強化(エンハンス・アタック・パワー)"、"防御力強化(ストレングス・ディフェンス・フォース)"、"加速(ヘイスト)"、"五感強化(ストレングス・ファイブセンス)"、"状態耐性(ステート・レジスト)"、"属性耐性(アトリビュート・レジスト)"、"凶暴(バーサク)"」


 過剰なまでの強化魔法。1級探索者でも三つ以上の強化魔法を掛ける事は殆どないのだ。なぜなら肉体が耐えきれず後遺症が残る可能性があるのだ。だが、不老不死という特性があるミーミルには無縁の事だ。ここまで強化された1級探索者である彼女を止められる者は、多くはいない。


 そして、武器から防具まで国宝レベルのミーミルの装備一式のクリーニング代金は、ダオスの懐にダイレクトアタックをする事になる。国宝レベルの装備を持ったことがないダオスには、その一言を後悔する事になる。だが、ダオスが持つ法天エンプレスも国宝レベルなのだ。そのメンテナンス費用を知り、探索者家業に精を出すことになるだろう。


「いつも思うけど、デカい斧だな。それじゃあ、私も少し休んだら商品を捕まえにいく」


「なるべく早くきなよ。ダオスより状態異常魔法が得意な人いないんだから」


 ミーミルが強化魔法をかけ終わると、身長より大きな斧を軽々と持ち上げて、回転を始めた。ハンマー投げの要領で、『メイデン』のスタート地点へとミーミルが斧を投げた。斧に繋がっている鎖の末端をミーミルがしっかりと握っている。そして、ミーミルが物理的に大空へと舞い上がった。理論上可能な移動方法だが、あまりお目にかかれないやり方だ。


「さて、我らが先方は飛んでいった。観客達を待たせても悪いから、コチラも動くとしよう」


 テルミドールの一言で、13使徒達の雰囲気が一変した。濃厚な魔力がまき散らされる。ダオスも13使徒の実力は分かっていたつもりだが、その底が見えない力に畏怖を感じるばかりだ。


「契約の名の下に来たれ我が僕――九尾 御前ごぜん"召喚"」


 チリーーンという鈴の音がすると同時に空が割れた。割れた空から優に20mはある九尾の狐が現れた。テルミドールの召喚獣の一匹だ。当然、ただの召喚獣ではない。テルミドールが長い年月掛けて、各国を渡り歩き契約して回った選りすぐりだ。一部の地域では神獣と名高いものまで、テルミドールは呼び出すことができるのだ。


「ほほぅ、久しぶりに見るな御前ごぜんは」


『久しいなオプティマス。さて、我が呼び出されたと言うことは、また戦争……では、なさそうだな。ふむ、これが話に聞く血盟戦というヤツか』


 呼び出された御前ごぜんは、状況を直ぐに把握した。周囲の状況や観客席からの音声を拾いあげ、そこから答えを導き出したのだ。知性が高い故の行動だ。


「話が早いな。そうだ、やる事は至って簡単だ。敵を戦闘不能にしろ」


『殺す方が簡単なのだが、まぁ、主の命とあれば喜んで』


 ダオスは、御前ごぜんの尻尾をモフリたり衝動に駆られていた。そのオカゲで、今までの真面目なやり取りが全く耳に入ってこなかった。テルミドールと違いケモナーではないダオスでも、魅惑してしまう程に九尾の毛並みは美しかったのだ。


 事実、観客席でもモフモフしたいという者達が多数いる。


「あぁ~、この毛並みやっぱり良いわね。ねぇ~、一本だけでいいから頂戴」


 【剣聖】のヴァレンタインが御自慢の聖剣をかざして、テルミドールに強請ねだっている。神獣にも名を連ねている御前ごぜんの尻尾となれば、誰だって欲しいだろう。だが、忘れないで欲しい……ケモナーのテルミドールがそのような暴挙を許すような者では無いのだ。


 血盟戦の最中、13使徒同士で殺し合いに発展する事態になる。


「何度も言うが、駄目だヴァレンタイン。どうしてもと言うなら、戦争だ」


「そぉ~、じゃあコレが終わったら一晩貸して!! そうしたら私のお代はタダでいいから」


 13使徒達に払う今回の代金は、1万エース金貨だ。それの代金として、御前ごぜんを一晩レンタルならば、決して悪くはない。彼女は、一緒にお風呂に入って布団代わりにして寝たいだけなのだ。その用途でこの金額なら破格の報酬だ。


「よっしゃ!! それなら構わないで!! テルミドールは、命に代えて説得したるわ」


「あら本当。それは助かるわ。それじゃあ、早く終わらせてくるわね」


 ザックスが命に代えても説得すると言ったことにダオスは、テルミドールでも折れるだろうと予想している。事実、テルミドールもザックスの性格を知っているので、時間の無駄を避けるために、御前ごぜんのレンタルを許容する考えでいた。誰だって、トイレの中まで執念深く説得に来る奴を相手にはしたくないのだ。


 ダオスは、ヴァレンタインが進む方向を目で追った。彼女が進む先々にある大木が一瞬で木っ端微塵みじんになっている。様子を見て、これが13使徒の力なのかと改めて思う次第であった。


 それから、続々と13使徒達が戦場へと足を踏み入れ始めた。


 スタート地点に残るは、非戦闘員である『ゴスペラーズ』の一部の者達だけだ。  

日曜日も投稿できるように頑張ります^^


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