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正道こそ王道  作者: マスター
01.血盟戦
15/66

14:終末を告げる魔法

いつも本当にありがとうございます。

感想、評価や活動報告のコメントという反応は本当に嬉しい限りです。

これからも読者の皆様のご期待に応えられるような男らしい話を続けたいと思います。

 『ゴスペラーズ』と『メイデン』の雌雄を決する戦いが始まろうとしている。


 元々人気のイベントである血盟戦。今回は、13使徒の内5名も出場するとの事で隣国から足を伸ばしてくる者達も多数いる程だ。そのおかげで、本イベントを仕切っているレイレナード家とゴールドマン家は、懐に流れ込んでくるお金で笑いが止まらない状況になっている。


 その反面、血盟員達は、自分の運命を賭けた戦いである為、緊張からか会話が少ない。無理も無い。一生に一度あるかないかのイベントだ。人生のイベントで表すならば……離婚というイベントが近いだろう。普通に生きていれば、体験する事は一度あるかないかのはずだ。


「感謝します、サリアお婆様」


 ダオスは、真横に置かれている黒いケースをでた。血盟戦を前に、母方の祖母がダオスを心配に思い会いに来てくれたのだ。そして、激励の言葉と一緒にこの黒いケースが託された。


 『メイデン』の汚い敵情視察により、ダオスの装備は相手に漏れていた。


 情報漏洩しても、対処しようのないレベルの物を身につけている者達は、問題が無い。13使徒達は、身を固める装備一式は、全て国宝レベルだ。ドワッ娘のミーミルも、王女という地位にいるので装備一式は、国宝レベルになっている。真祖のシャルロットは、一族の秘宝と言われる物を身につけており、他の者達と引けを取らない。


 同じ探索者として活動をしている他の血盟員と比較した場合、ダオスだけが浮いている状況だった。ダオスの装備も決して悪いわけでは無い。ただ、周りが国宝レベルで身を固めているのが異常なのだ。


 だが、それも今日、この時までだ。


「それを使うのかねダオス」


「その通りだエスカロリオ。サリアお婆様が私の為に、わざわざ持ってきてくれたのだ」


 血盟戦開始の数日前、『ゴスペラーズ』のホームにダオスの祖母が訪ねてきた。『メイデン』の刺客かと大騒ぎになりそうだったのだが、13使徒に名を連ねる者達は、地位に恥じない教養があった。一目でダオスの祖母が誰だかを見抜いたのだ。やはり、法王の座に居ただけあり、身からあふれ出るオーラの格が違うのだ。


 ダオスの祖母は、表向きに行方不明という形で二ヶ月という任期で法王の座を退いた。事実は、ダオスの祖父が法王を口説き落とし愛の逃避行。本来、そのような事で法王を辞任するなど許されない。


 だが、事情があったのだ。


 蘇生魔法の次に希少と言われる洗脳魔法の使い手として、名を馳せていたダオスの祖父と法王という地位が最悪の組み合わせだったのだ。よって、本来なら許されざる事であるが、洗脳されているか分からない法王を国のトップに据えておくのは問題だという事で行方不明という形で落としどころが付けられた。これにより、表舞台から消えたのだ。


「まだ、ご存命だったとはな。長生きは、するものだ」


「長生きしてください、テルミドール」


 テルミドールは、ダオスの吹っ切れた顔を確認し安心した。ダオスが、周りと自らを比較して劣等感を抱いている事に感づいていたのだ。だからと言って、同情と言わんばかりに装備を恵むのも体裁が悪い。それを行ってしまえば、仲間ではない。


「そろそろ定刻だ」


 テルミドールの一言で、控え室内にいる『ゴスペラーズ』が集まる。本来なら、円陣を組んで気合いを入れるのが習わしだが、異性との接触がタブーである者が多いため目で物語る。


「え~、では、血盟主であるテルミドールから一言を」


 最年少であるシャルロットと最年長であるテルミドールのやり取りが微笑ましく、皆の空気が和らぐ。


「多くは言わない。それは、この場に居る全員がプロだからだ。頭に叩き込んだリストの連中を生け捕りにする事を忘れるな。ただし、身を守る事が最優先だ。場合によっては、殺して構わん。……では、『ゴスペラーズ』に栄光を」


 テルミドールに続き、全員が「『ゴスペラーズ』に栄光を」と声を上げ入場ゲートへと足を運んだ。


◇◇◇


 この度、『メイデン』が選んだ戦場は、『ハイトロン法国』の首都から西へ5km先にある樹海だ。視界の悪いこの場所でゲリラ戦を行い『ゴスペラーズ』の人数を削ぐ気でいるのだ。テルミドール以外の13使徒が居る以上、どこを選んでも大差が無い状況だったのだ。だからこそ、彼女達は狙いを"(ちか)い"持ちに絞った。


 『ゴスペラーズ』は、いつどこから飛び出てくるか分からない異性という恐怖に怯える事になる。


 そして、その樹海の外には本日のイベントを観戦するために沢山の観客がいる。


 上空には、戦場の様子が窺えるようにレイレナード家とゴールドマン家が用意した索敵魔法の使い手達がその様子を映し出している。"千里眼(クレヤボヤンス)"と"投影(プロジェクション)"という高度な魔法を組み合わせた技術だ。コレを習得できた者はコレだけで生涯食べていけると言われている魔法だ。


『さぁ~、お待ちかね!! 今月のビッグイベントの血盟戦だ。スタート地点から両チームが入場を開始したぞ~。それにしても、13使徒の方々がこうも揃うと、実に盛大です』


 イベントを盛り上げるための司会者。猫耳亜人の女性が、事楽しげに声を上げる。高い時給で雇われたプロだ。当然、口にする事は公平性などあってないような物だ。如何いかにして、この場を盛り上げるかがお仕事なのだ。


 よって、雇用主の意見を最大限に反映する。その雇用主は、ゴールドマン家であり、『ゴスペラーズ』の不利になるような事は、一切口にしないという契約内容だ。勿論、命が惜しい司会者も素直に従う。


『さてさて、コチラの声はそちらまで聞こえていますか?『ゴスペラーズ』の皆さ~ん? …………手を振り返してくれているから、大丈夫でしょう。しかし、一部の13使徒の方を除き、全員が仮面を被っていると、誰だか判断が難しいですね』


 司会者のツッコミは当然の意見だ。だが、仮面は『ゴスペラーズ』のアイデンティティなのだ。外せと言われて外せるような物でも無い。身の安全の観点からも。


『まぁ、装備をみれば大体誰だか分かりますね。それにしても、国宝展か何かですかね~。これだけの数の品物は早々とお目には……うん!? ちょっと、映像担当の人。『ゴスペラーズ』の左から三番目の人をアップにして!! 』


 ダオスがアップで写る。だが、大きく移っているのは本人ではない。ダオスが手にしている深紅の神々しい杖――法天エンプレスだ。ダオスの祖母が法王に就任した際に用意された物で、他の者達が持つ国宝レベルの品と比較しても遜色無い。


 その映像を見て、気がついた一部の観客達は(どよ)めきだす。


 だが、当然の反応だ。法王と一緒に行方が知れなくなった品がこの場に写っているのだ。法王のために用意された特別製であり、血縁者しかそれを扱う事ができない事は周知の事実なのだ。よって、杖を持つ者は必然的に本人か血縁者という結論に至るのだ。


『あ、あれって私の記憶が確かなら法天エンプレスじゃありませんか!? ちょっと、左から三番目の人!! えーっと、ダオス・ベルトゥーフ選手!! まさか……えっ、問題無い』


 司会の猫耳亜人は、一部の観客と同じく知識人であった。杖を見ただけで、ダオスの正体に行き着いたのだ。だが、スポンサー達から横やりが入りダオスの正体が、この場では全員に知れ渡る事はなくなった。


 このような事態は想定の範囲内であったので、譲り受けた装備に関しては、既に法王庁に申請済みなのでダオスに抜かりは無い。既に、13使徒の者達から現法王にも報告されている。


 法天エンプレスは、ダオスが正統な所有者として法王庁にも記録されている。


 それから、司会からつつがなく出場者の紹介がなされた。『メイデン』は数が多いため、一部の幹部を除き以下省略と。そして、この血盟戦後、直ぐ横に特設された奴隷商主催のバザーがある旨が告知される。お金が要り様な方は、ゴールドマン家が直ぐ横でお金を貸してくれるサービスも完備していると。


◇◇◇


 血盟戦開始まで、5分を切った。ダオスは、緊張が解れ、逆にワクワクしていた。


 年を重ねる事に力を増す"(ちか)い"の特性。その為に、本日の試合は、月初めになったのだ。前月中に、ダオス、エスカロリオ、ミーミルの三名は節目の年である30歳を迎えたのだ。これにより、ただですら低い『メイデン』の勝算が更に下がったのだ。


「年甲斐もなく、ワクワクしてきたな」


 ダオスは、"(ちか)い"により増した力を感じ、喜びに震えていた。加えて、祖母から譲り受けた法天エンプレスという国宝レベルの装備だ。もはや、3級探索者の枠に収まる者ではなかった。この時点で、状態異常魔法に限定すれば、並ぶ者はいない。


「ダオスもか、実は私もだよ。見給え、この死霊魔法を!!」


エスカロリオの死霊魔法により動く爆弾達。その様子は、まるで生きてるかのように感じる程、精気に溢れている。その様子のおかげで、『メイデン』から血盟戦にルールに抵触するのでは無いかと抗議があったが、それをいうなら召喚魔法や精霊魔法も同様になるのだ。当然、そのような抗議は通るはずもない。


「しかし、良く出来ているな。で、本当にあの作戦をやるのか?」


「当然だとも」


 ダオスは、エスカロリオの死霊魔法を使った作戦を聞いて流石と思った。さも、生前の意識を取り戻したかのような行動をさせ、『ゴスペラーズ』を裏切って『メイデン』に助けを求めさせる。当然、演技をより迫真の物にさせるため、この事はダオスしか知らない。


 死霊魔法という希有な魔法の詳細を知る者は少ない。だからこそ有効なやり方なのだ。そして、敵陣営で綺麗に散った後に、新しい死体を再利用して爆弾にするという手はずなのだ。


「では、私の方は『メイデン』連中を社会的にも殺してくる」


 ダオスは、法天エンプレスを強く握りしめた。十分な魔力を注ぐ込み最高の一撃をお見舞いすべく開始の瞬間を待っていた。『メイデン』の数々の外道な行い。そのおかげで祖父母にまでご迷惑が及んでしまった事にダオスは申し訳ないと思っていた。平和に余生を過ごしたい2人に要らぬ心配を掛けてしまったのだ。


 後の憂いを残さないためにも徹底的に処理する他無いとダオスは、考えているのだ。


「目視は、距離的に難しいが……やれるなダオス」


「任せてくれ。最初の一撃を任された以上、13使徒達にも劣らぬ恐怖を刻んで見せましょう」


 今回の血盟戦の発端となった事件の被害者であるダオスは、華々しい初手を任されているのだ。13使徒という大物達がいる中で任される大任である。『ゴスペラーズ』の沽券にも関わる重大な任務だ。


 だが、ダオスは言うだけの自信はあった。


 30歳という節目の年を迎えた事で飛躍的に能力が向上しているのだ。目視できなければ、掛ける事が困難……事実上不可能に近いのが状態異常魔法の常識だ。だが、常識を覆すのが"(ちか)い"なのだ。距離的制約などの条件こそあるが、空に映し出されている映像越しにも行使可能となったのだ。


 状態異常魔法しか使えないダオスには、宝の持ち腐れのような力だ。


『間もなく、血盟戦の開始の時刻です。双方の血盟員の方達は、スタート地点にお願いします』


 お互いのスタート地点が映し出されており、まさにダオスとしては最高のシチュエーションだ。そして、カウントダウンが開始される。


 ダオスは、全身全霊の一撃を放つ為に魔力を法天エンプレスに託す。そして、同時に外道達に天誅てんちゅうをという強い思いを込める。その願いに杖が呼応する。まるで、新しい使い手であるダオスを歓迎するかのようだ。


『10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!! 『ゴスペラーズ』対『メイデン』の血盟戦の開始でーーーす』


 開始の合図と同時に、ダオスが先陣を切る。状態異常魔法の常識からは考えられない、映像越しでの状態異常魔法!!


臓物(はらわた)をブチ撒けろ!! "便意(デフェケーション・デザイヤー)"」


 ダオスのオリジナルの状態異常魔法が『メイデン』全員に襲いかかる。誰も知らない、誰もマネできないダオスだけの状態異常魔法。30歳という節目の年で得た新魔法の一つだ。


 どのような魔法かは、最早語るまでも無い。その名の通りなのだ。大空に今も様子が投影されている事により、『ハイトロン法国』のトップである法王を含む、国内外の沢山の人達が見る中、『メイデン』の者達が自発的(・・・)にテロを行うのだ。


 まさに、人生の終末を告げる魔法だ。


 対人戦における有効な状態異常魔法が、この瞬間生まれたのだ。まさに、歴史に名を残す瞬間であった。対象者を社会的にも抹消しかねないその魔法は、近い将来、禁術に指定される。


『メイデン』の名は、地に落ちた。

さぁ、狩りの時間だ。


外道『メイデン』の話も、たぶん次話までだと思います。

その後は、日常をちょっと挟んでタワーでのお話予定。

もしかしたら、『ゴスペラーズ』の同盟血盟とか登場するかも。


作者、英語はグーグル翻訳頼みなので魔法名間違っていたらごめんなさい><

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