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2.初召喚とサブスキル

「やばい、忘れてた」


 起き抜けに思い出したことがある。

 それは召喚魔の召喚だ。


 昨日ステータスカードを見た時に「経験値取得条件:召喚回数×召喚ランク」と書いてあった。

 そして調べた召喚士の仕様だが、召喚しっぱなしだと召喚に使用した分の魔力は回復しない。しかも送還にも魔力が1ポイント必要となる。


 魔力は「まる一日で最大魔力値分回復」するものらしいので、上の条件を踏まえると、毎日こつこつ「召喚→送還」を繰り返さないとレベルが上がらない、と言うことになる。


 というか召喚して何かを為したとしても(例えば魔物を倒しても)、まったくレベルが上がらないのだ。


 いわゆる戦闘職(戦士とか魔法使いとか)が魔物を倒すことでレベルが上がることを考えると、明らかに効率が悪い。受付嬢さんが「あまり強くない」と言っていた理由だろう。

 召喚士というのは、召喚と送還を繰り返す以外のことを何もしなくていい立場でもないと、効率よくレベルを上げられないクラスだと言うことだ。


 さて俺の今の最大魔力は5。召喚ランク1を使うのに必要な魔力は3ポイントである。

 

 もうお分かりだろう。

 俺、一日に一回しか召喚術使えないんだぜ。


 そしてその貴重な一回を昨日疲れて眠ってしまったせいで逃してしまった。

 さっさとレベルをひとつ上げてコモンスキルを取得したいのに、少なくとも一日遠のいてしまった。


「くそう……失敗したなあ」


 後悔はあるが、まあ過ぎたことはしかたない。

 とりあえず今日の分をやるとしよう。


 頭の中に【召喚ランク1:クロウ】を思い浮かべるため、集中する。

 やり方なんてギルドの資料で見ただけだが、そこはステータススキル法が補助してくれるらしい。脳裏に浮かぶのは黒い鳥のシルエットだ。まあクロウなんだからカラスがでてくるんだろう。


 イメージが固まったら次は魔力を凝縮させる。

 これもステータススキル法によるものか、やり方を知らなくてもすんなりと魔力を知覚し、凝縮することができた。


 目の前に光の粒子が発生し始め、それが集まり、形を成していく。

 あとは名前を呼べば……、


「いでよ、クロウ!」


 テンションが上がって「いでよ」とか言ってしまった。別に名前だけでいいんだけど。

 そして光が収まり、召喚魔が姿を現す。


「これが……俺の召喚魔……!」


 重課税労働者になるとか、他にも色々制限をつけることになったが、この世界のみんなの憧れステータススキル法で得られたスキルによる召喚魔。感慨深いものがある。


 召喚魔の大きさは想像より一回り大きかった。前世で言えば小さめの鷹とか鷲とかそれくらいだろうか。羽は吸い込まれるような漆黒。嘴も黒だがこちらは艶のある黒で、鋭く光を反射している。


 厨二テイストあふれる姿だ。恐らく声も禍々しい音色なのだろう。ギャーとかそんなん。

 説明文は「地獄からの使徒」とかだろう、きっと。


「クルッポー」


 ……ん? 

 どこからか声が聞こえる。

 幻聴、かな?


「クルッポー、クルッポー」


 いや……幻聴じゃない。

 目の前の漆黒の鳥は間抜けな声で鳴きながらてくてくとこちらに近づいてくる。

 おかしい。何かがおかしい。


「クルッポー」

「いや、おまえハトだろ」


 クロウが英語だったからこの場合ピジョンか。

 いやいや違うそうじゃない。


「何でこの名前でこの見た目でその鳴き方なんだよ」

「ホーホー、ホホー。ホーホー、ホホー」


 気が抜けるからやめろ。ギャップってレベルじゃないぞ。

 何なんだよいったい。


「ま、まあいいや取りあえず用もないし、送還」


 俺の言葉と共に抵抗も無く消えていくハト野郎。ステータスウィンドウを見ると魔力が4ポイント減って1になっている。

 しかしあれがランク1なのか……。クラスの恩恵で得られるメインスキルってレベル5おきに1つずなのに……。相当な日数あいつしか召喚魔いないとか……。


「いやいや、しばらくはお金溜めないといけないし。どうせ使い道は無いんだからあいつのことは忘れよう。そうしよう」


 精神衛生は積極的に守っていくべきである。


 気を取り直して、俺は仕事へと出かけた。

 クエスト受けて飯代と装備用のお金を稼がないとな。


 ギルドでの調査とステータスウィンドウに表示されていた適正のあるコモンスキルから、短期的な方針を決めたのだ。それに向かって取りあえずは邁進すべし。そういうことだ。


 今日は時間があるから一日中仕事できる。がんばるぞ!




 ======




 そうして五日が経った。


 大体肉体労働をずっと受けていた俺だが、農作業と比べて辛さはそう変わらない印象だ。

 やたらしんどい時もあるが、たまに食事が出るところがあったり変化に富んでいて、飽きが来ない。

 農作業は単純作業が一番しんどいからな。

 まあ街での仕事も慣れれば同じようなものなのかもしれないが。



 五日経ったと言うことは、毎日の召喚・送還でレベルが上がったと言うことだ。

 晴れてコモンスキルのレベルを1上げることができた。(最初は全て効力のないレベル0なので、習得と言った方がいいかもしれない)


 今の俺は魔力が二十四時間で5ポイント回復するので、四時間四十八分で1ポイント回復する計算だ。それを考慮に入れて最速でハト野郎を召喚・送還していればもう少し早くレベルアップできたかもしれないが、生活リズムもあって五日を費やした。


 急がば回れ。急ぎ過ぎても良いことはない。


 とにかく、俺はレベルアップした。

 そして俺が選んだコモンスキルは……、


「これだ、『狩猟学』!」

 

 ステータスに書かれていた狩猟学の説明書きはこうだ。



  【狩猟学】

   ・森の歩き方を初め、狩りに必要な知識の習得を早める

   ・思考能力が微増



 コモンスキルは各人の適正によるので、人によってはクラスが戦士なのにコモンスキルで魔法を覚えたりできるらしい。夢が広がるな。


 ちなみに俺が他に選べたのは薬学と生物学、魔力増強だった。



  【薬学】

   ・薬に関する知識の習得を早める。

   ・思考能力が微増。


  【生物学】

   ・生物に関する知識の習得を早める。

   ・思考能力が微増。


  【魔力増強】

   ・魔力をスキルレベル×1パーセント上昇させる。


 

 アビリティ「学識」のせいか「なんとか学」ばっかで即座に役に立つ感じではないが、薬学とかは中々お金の匂いがするので今から期待感が増大している。これなら両親や兄妹を楽させてやれる日が来るのも近い……かもしれない。


 ところで、俺が薬学などを差し置いて狩猟学を選んだ理由は、森に出掛けて魔物を狩るためである。魔物への対抗組織である冒険者ギルドにおいて、それは義務なのだ。


 くわしくはまだ受付嬢さんに聞いてないが、クエストの消化数・達成率が低いと懲罰金が課されることもあるらしい。

 ただ悪いことばかりではないという話も聞いた。

 達成率などに応じて設定される冒険者ランクがあるのだが、このランクに応じて年俸が出るのだ。低ランクだとすずめの涙らしいが、適度にランクを上げて制度の恩恵を受けようと思うくらいにはウマ味がある。


 受付嬢さんからこの話を聞いた時はテンションがあがったものだ。


 と言う訳で、この五日で溜めた小金で買った短槍を手にし、俺は意気揚々と冒険者ギルドへと向かった。




 ======




「その装備で行くんですか? やめた方が良いですよ」


 お、おう。

 速攻で諌められた。受付嬢さんの蔑んだ眼は心にくるものがある。


「レベルは2に上がりましたし、召喚魔もいるから大丈夫ですよ。深入りはしません」

「そう言って深入りして死んだ冒険者はたくさんいます。あなたが使った魔法触媒分くらいはきちんとお金を稼いで返納してもらわないと困ります」


 確かにそれもそうか。


「じゃあどれくらいなら行っても良いんですか?」


 指標が無いとモチベーションを維持しにくいからな。

 できれば教えて欲しいところだ。


「……そうですね、レベルが上がる度にこの話をするのも面倒ですし……。許可が出せる指標は二つあります」

「二つ、ですか」


 レベルを上げる以外に何かあるのだろうか。


「一つはもちろんレベルですね。レベル5なら森の浅いところなら大丈夫でしょう。もう一つは装備です」


 レベルは分かる。レベルを上げて物理で殴ると言うことだ。いや冗談などではなく、俺もレベルが上がっていくつかのステータスが伸びていた。レベルが上がれば上がるほど安全が確保できるのは間違いないだろう。

 しかしもう一つは装備か。確かに低レベルでも良い装備があったら心強いしな。

 

 俺の感想としてはそんなものだったが、続く受付嬢さんの言葉は想像を超えるものだった。


「装備と言っても普通の装備ではないですよ? 私が言っているのは『賦活化アクティベーション』された装備のことです」


 そんなものがあるのか。

 俺が視線を向けると、それに応えるように受付嬢さんが頷く。


「ステータススキル法によって『賦活化アクティベーション』された装備は、それ自体がステータスを持ちます。装備者のステータスはそれを加算したものになるのです」

「なるほど」


 つまり、『賦活化アクティベーション』された装備は、RPGで言うところの「ステータスにプラス修正のある装備」と言うことだ。魔法装備とか特殊装備とかそう言うカテゴリなんだろう。

 確かにそれなら自分より上のレベル並みの強さを得られることになる。どの程度のプラスがあるのかは知らないが、フル装備ならかなり違ってくるだろう。ただ……、


「要するに、今の俺ではダメってことですね」


 まあ結論としてはそうなる。

 どうせ賦活化した装備は高いだろうし、レベルも足りてない。

 何事にも近道はない。急がば回れ。そういうことだ。


「分かりました。安全を取ります」

「聞き分けが良くて助かります。なりたて・・・・の指導はギルドの至上命題なんですよ。予算もあまりないのに、こういうやっかいな仕事だけは振って来るんですから……」


 そう言って受付嬢さんは口をとがらせる。


「確か、レイモンドさんは農家出身でしたね」

「そうですけど」

「やはり目標はひと山当てることですか?」

「ええっと……まあ似たようなもんです。貧乏農家なんで、冒険者になってお金を稼いで、家族を楽させてやろうと思ってるんですよ」

「やはりそれなりの野心はあるんですね。そう言った人間は無茶をしがちなんですけど……どうやらあなたは少し違うようです」

「他の人はどうか知りませんが、農家ですからね。芽吹くまでに時間が掛かることは良く分かってますよ。早く収穫しようったって、できないものはできないですから」


 俺の言葉に、受付嬢さんはにっこりと笑い返してくれた。可愛いです。

 

「私、レミリアです。あなたとは長い付き合いになりそうですね。これから、よろしくお願いします」


 差し出された手を取り、彼女と握手する。


 この受付嬢さんも、少し俺のことを認めてくれたのだろうか。

 多くの冒険者を見て来ただろう彼女のような人種に認めてもらえて、俺はかなり誇らしい気持ちになった。


 この期待に応えられるように頑張ろう。


 差し当たってまずは、レベル5だ。

 


ステータスはあんまり頻繁に公開しません。

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