第一部 真夏 上
うだるような暑さの日が続く、今日はもう7月。もうすぐで夏休みが始まるというのに、俺とノリヒサを含めたクラスメートには大した期待感を感じられない。それは今がテスト週間だからだろうか。俺は確実に違うだろう。
カズヒトが亡くなってから、もう一ヶ月が経つ。俺は割と引きずる性格だと自負していたが自分でも驚くほどあの出来事を引きずっている。今でも部活のたびに盟友がいないことを思い出してしまう。だが数週間前よりかは落ち着いてきたほうだと思っている。今は目の前のテストという試練に全力を注がなければならない。
あの日以来、ノリヒサとは口数が減った。喧嘩をしているわけではない。彼も彼なりにアイツの死を悼んでいるのだろう。だが俺よりかは引きずっていないように見える。ノリヒサはクラスの中心人物で顔立ちもよく頭が良かったため、人気者だった。だから彼の中のカズヒトに対する追悼の意と負の感情が失われるのが早いのも納得がいった。だがなぜか、ノリヒサの満面の笑みを見ていると心の片隅に怒りとも憎しみとも言えない感情が湧いた。俺はそれを気のせいだと思うようにしていた。
俺はある日、ノリヒサに言った。「悲しくないのか」と。実に数週間ぶりに話した最初の言葉がこれでは、さすがのノリヒサも動揺を隠しきれないように見えた。
思えばこの日、俺とノリヒサのすれ違いが始まってしまったのかもしれない。