序章 悲劇
よく晴れた、平日の午後。大会後ということもあり部活動は休み。俺と友人二人、カズヒトとノリヒサは帰路をいつものように自転車で走っていた。
ーそう、本当に 本当にいつものように・・・・・
俺はその日二つのことを知った。血というものは俺たちの想像以上にどす黒く、本能的な危険を感じるものだと。もう一つ、人の命はあまりにもあっけないこと。俺とノリヒサの目の前には、さっきまで俺たちと話していたカズヒトだったものが横たわっている。
即死だった。カズヒトの死因はトラックとの接触。悲しみという感情すら忘れ俺はただ黙って血肉にまみれたカズヒトだったものを凝視することしかできなかった。程なくして救急車と警察のパトカーが到着した。おそらく事故現場に集まった野次馬の誰かが呼んだのだろう。俺とノリヒサはただ黙ってその場を離れ、その後も言葉を交わすことなく、家へと帰った。
数日が経った。放心状態だった俺の心にはようやく悲しみという感情が芽生えだした。親友の死。それは俺にとってあまりにも重く、辛いものだった。彼はもうこの世にはいない。この世から完全に消滅してしまった そう思うたびに胸が苦しくなり、吐き気すら催す。中学時代には、同じ部活に入り、同じ塾に通いともに切磋琢磨しながら市内の進学校へ入学した、俺の親友。友情に順位があるなら彼は間違いなく俺の中で一位だった。そんなアイツが、もうこの世にはいないのだ。