表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

01

 俺の通う高校「茅ヶ岳高校かやがおかこうこう」は男女共学の公立高校。偏差値は56といたって平凡な高校で、ここを受験する者は大抵地元の人が「滑り止め」として受けに来ている事が多い。


 現に俺自身も滑り止めで受けた身だし。


 それに加え特殊な科も無く、どこぞやのギャルゲに出てきそうな非公式●●●などと言った変わった部活動も無く、強いて言えば最近新しい校舎が建てられ、新校舎には最新設備の整った家庭科室やパソコン室、それと理科室があるくらいのザ・平凡! と言った当たり障りもない何処にでもある学校だ。


 俺は7月の夕陽をバックに、向かいに建てられた新校舎を眺め、一体誰に説明しているんだろう? と疑問に思いながらも自身の席に座り一人、思いふけっていた。


 ・・・・・・つか遅い、遅すぎる。


 現在時刻は16時20分。

 俺は今日に至るまで学校が終わった後は何処にも寄らず一目散に家に帰り、自室に帰還するやいなや相棒(自作ハイエンドPC)の電源をすぐさま入れ、その後は深夜になるまでひたすらギャルゲをプレイしていたのでこの時間帯まで校内に居るのは人生で初だと思う、というか帰りたい。


 あのやろぉ、あれだけ恐喝まがいな事をしておきながら放置プレイって真性のドs教師かよ。

 しかも「待ってるから」って言っておきながらどうして俺が待ってる側になってんだ?

 物売るっていうレベルじゃねーぞ! て、これは違うか。

 はぁ、もういっその事何かしらの理由を付けて帰ろうかな。

 わざわざ職員室まで行って先生呼んでくるのもだるいしな・・・・・・。 あ、それ以前に

居るかどうかも分かんないか。


 俺は帰るに帰れない状況をどう切り抜けようか考えていると、コツコツと廊下を歩く音が誰も居ない教室に響き渡ってきた。


「悪い、穂積、待たせたな」


 俺は文句の一言でも言ってやろうかと思っていたのだが実際口に出たセリフは違っていた。


「・・・・・・え?」


 授業が終わった後だからなのか知らないが、何時もぶっきらぼうにポニーテールにまとめられていた髪は落ち着いたブラウンのシンプルなシュシュでサイドポニーテールにまとめられており、それに付け加え、チョコブラウンの落ち着いた髪色が俗に言う大人可愛いを上手く演出していた。

 や、やばい、緊張してきた。

 先生! その髪型良いですよ! 凄く良い! 正直少しだけドキッとしました。

 早川先生って怖いイメージが強かったけど髪型一つでここまで変わるとはな。 

 

・・・・・・まぁ、相変わらず目つきは怖いけど。

 

俺が先生の意外な一面に驚いているのをよそに、そそくさと俺の前の席に座り、鋭く吊り上が

った目で俺を見据えながら予想外な一言を俺に言い放った。


「早速だが穂積、お前彼女欲しいか?」


 ・・・・・・え?


 いやいや、ちょっと待ってくれ。

 確かにそんな淡い期待とかしてましたよ? 

 で、でもさ、幾らなんでも事がトントン拍子に進みすぎじゃないか?


それによく言うじゃないか「おいしい話には裏がある」って。

 過去に某ネットショップに格安でPCが売られており、俺は「これは祭りだ!」と確信し、いざ購入してみたら展示用の模型PCだった、と言う苦い経験をした事だってあるじゃないか。

 そうだよな、絶対何か裏があるはずだ。

 俺は早川先生の鋭く吊り上がった目にビビりながらもゆっくりと口を開けた。


「えーと、欲しいですけど・・・・・・。何故急にそんな事を?」

「いや、先日隣のクラスに転校してきた子がちょっと変わり者でな」

「変わり者?」

「そうなんだよ、それで「まだあなたは教師歴が浅いからこれも経験の一つだ」とか教頭に言われてその子の面倒を見る事になったんだけど・・・・・・。ってあれだな、お前も十分に変わってるけどな」

 おい、何勝手に俺を変わり者扱いしてるんだ。俺は変わり者じゃねーぞ! 主人公だ! 頭脳明晰でイケメンな主人公だ!

「ま、まぁ、僕の事は置いといて、その子はどう変わってるんですか?」

「んー、何て言えばいいのかなー・・・・・・。とりあえずクラスで物凄い浮いてるのは確かなんだ。そ れ で だ 」

 早川先生は少し身体を前のめりにし、俺との顔の距離を近づけこう言った。

「お前のその優秀な頭脳で何とかその子をまともな子にしてやれないか?」


 ・・・・・・はぁ?


 何言ってんだコイツ? 

 要するに面倒見切れなくなった生徒を俺に押しつけてるだけじゃねーかよ!


「いやいや、待って下さいよ。それとさっきの「彼女欲しいか?」ってセリフの関連性が全く見えないんですけど」

「まー待て、その子はな、超が付くほどの美少女なんだ」


 び、美少女だと!


「そ、そうなんですか?」

「あぁ、そうだ。それでな、そんな超が付く程の美少女との出会いの場を提供してあげるって言ってるんだ。それにだ、お互い思春期真っ只中の花の高校2年生。お互いの気が合えば彼氏彼女の仲になるのも夢じゃないぞ?」


 そ、それは何ともおいしい話だな。

 確かに今の俺はクラスに仲の良い友達も居ないし、部活動をしている訳でもないから出会いのチャンスなんて皆無だし・・・・・・。


 これは・・・・・・。即決だろ!


「分かりました! 全力で先生の気持ちに答えれるよう努力します!」

「うん、それでいい。それじゃ、ちょっと付いてきてくれ」


 早川先生はそう言うと席から立ち上がったので、俺も先生につづき席から立ち上がり後を追う事にした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ