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プロローグ

   プロローグ


 クラスの連中はみな、紙切れ一枚ごときであーだこーだ騒いでいた。

「次、穂積仁崇ほずみきみたか

 ・・・・・・はぁ、これだからモブキャラは。

「あー追試だー」と嘆くDQN。

「私今回あんまし勉強してないんだよねー」と予防線を張るスイーツ。

「なーなー、もし追試だったらみんなで勉強会開かないか?」とこれを良い事に学校外で男女混合の場を作ろうと提案するリア充のまことくん。

 

 ・・・・・・て、べ、勉強会だと!?

 

 べ、勉強会って、手と手が偶然触れ合ったり、休憩がてらのティータイムで恋愛話に花咲かせたり、保健の勉強と称して手とり足とりのお勉強が始まっちゃったりする学園ゲームの定番中の定番のあの勉強会ですと!?


 く、くそ・・・・ッ。モブキャラの癖に生意気な事を。

 

 今に見てろ、俺はひょんな事から口数少ない清楚な美少女と知り合って、それから「先輩~」と慕ってくれる可愛い後輩に「にいさん~待って~」と俺の傍から離れてくれない可愛い妹の3人がおりなすドタバタ恋愛学園ラブコメディが始まるんだからな!

 てめーらなんかスタッフロールに一文字も登場させてやらねーよ。

 

 俺は脳内でその恋愛学園ラブコメディの一人と学園の屋上で愛を誓い合い「・・・・・・仁崇になら全部見せてもいい」と顔を赤らめながらヒロインが自身の服の裾を持ち上げ、その先のシーンに行こうとした直後、透き通った綺麗な声で戻りたくもない現実世界に取り戻されてしまった。


「穂積、今回もクラス順位トップだぞ」


 担任の早川鈴音はやかわすずねは俺に目線を合わせることも無く、それに加え特別感情を込める事もなく俺の前にヒラヒラとテストの答案用紙を差し出した。


「あ、そうですか」

 まぁ、成績優秀なのは当たり前ですよ。


何故かだって? 

フッ、何せ俺は主人公だからね。モブとは違うんだよモブとは。


 どうせさっきのモブ(リア充の誠くん)なんかはすぐに調子に乗って「他の子も勉強会に誘おうよ」とか言い出すに違いない。

 それで知らず知らずと色んな女の子に手を出してしまいそれに加えて優柔不断な性格。最後は一人の女の子から「さようなら」ってメールが来た後ナイフでめった刺しにされ、天に召される事になるだろう。うん、そうだ、そうに違いない。


 俺は優柔不断な誠君が三角関係を作り上げ、最後はヒロインにめった刺しにされてしまう、と言う物語にピリオドを付けた後、席に戻ろうと教卓に背を向けるとふいに背中に声がかかった。


「あぁーちょっと待った」


 早川鈴音は何かを思い出したのか唐突にそう言うと、吊り上がった鋭い目で俺に睨みつけるかのような視線を送りつけてきた。


 えーと、早川先生は何でマジで切れる5秒前!みたいな目を俺に向けていらっしゃるんですか?

 あ、あれか? 俺に声がかけられていると思って返事をするも、実は後ろに居る人に声をかけてましたーって言う友達が居ない奴によくありがちな勘違い返事をしてしまうあ、あれだろ!

現に俺友達居ないし、早川先生に声をかけられるような事をした覚えもないし!


「おい」


 ・・・・・・はい、本日二度目の現実逃避を辞めます。

 俺にはギガロ●●●●●●を使う事ができません、ウェルカム現実。


 なぜ俺に声をかけてきたのかは謎だが早川先生の吊り上がった鋭い眼は相変わらず俺に向けられており「早く返事をしろ。絞殺されたいのか?」と言わんばかりの感情が手に取るように伝わってくる。

と言うかさっき「おい」って催促されたしこれは情況悪化してるんじゃないか?

俺は緊張で強ばった拳を強く握り締め、長年のギャルゲ歴を武器に様々な日常シーンを振り返り一番適切なセリフを抜粋し、勇気を振り絞り第一声を上げた。


「な、なんてすか?も、もすかして採点ミスとかあったんすすか?」


 ほらね。あんたのその吊り上がった鋭い目にビビっちゃって完全に噛んじゃったよ。

てか、あの目は絶対一人や二人やってる目だよ、間違いない。あ、この間違いないってフレーズ昔の芸人の持ちネタだったな。あの人今何やってるんだろう。

 

 そんな下らない事を考えていると早川先生は「はぁー」とため息を一つついた後、前髪を鬱陶しそうに掻き上げ、教卓に肘を付をつけながらへの字で閉ざされていた口が俺の噛み噛みの問いかけに答えてくれた。


「や、テストの話じゃないんだ、お前に少し話があってな。悪いが放課後この教室に来て

くれないか?」


・・・・・・はぁ?


 ちょ、ちょっっっと待ってくれ。これって俗に言うフラグって奴じゃないか? だ、だってさ、お前にって事は要するに放課後二人で教室って事だよ、な?

えーと、確か早川先生って25歳だったよな、それでいて顔は綺麗眼だし、スタイルだって

・・・・・・ってそうじゃない!ギャルゲだったらそう言う展開だが早川先生に限っては絶対にない!


 とりあえず俺の今までの過去を振り返ってみよう。


 初めにこれまで一度でも早川先生の気に障るような事を俺はしただろうか?

 ・・・・・・無い。と言うか会話すらまともにしてないと思う。


 ならこれは一体どう言う風の吹き回しなんだ?

 早川先生は未だ現状把握が出来てない俺をよそに「で、どうなんだ?」とドスの聞いた声で俺の返答に催促ををかけてきた。

 

 な、なんだよこれ、断るにも断れない状況じゃないか。しかも二言、三言の会話の中で二度も催促されるなんて早川先生もしかしたらガチでキレ出すんじゃないか? それにテストの答案用紙がまだ配り終わってないから俺が今こうしている間にもどんどん後ろが詰まってきているし・・・・・・。


 どうする俺? どうしちゃうの?


「分かりました」

「分かりました」

「分かりました」


 ポケットから出てきた選択肢のカードは全て同じ答えだった。

 まぁ、そうだよな。断ったりしたら何されるか分からないし、正直なところどんな内容なのかも気になるしここは素直に早川先生の話を聞いてみよう。


「分かりました」


 俺がそう言うと早川先生は「おー、なら放課後待ってるからな」と言い、用は済んだとっととあっち行け、みたいなジェスチャーで俺も追いやった。


 それにしも「放課後、二人きり、年上の女教師」キーワードだけ並べるとどこぞやのエロゲに出てきそうな内容だな・・・・・・


 もしかするとホントに早川先生ルートに入ったりした?

 俺は返却された答案用紙をそっちのけに、そんな事を考えながら席についた。


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