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暁の双翼  作者: 万卜人
第三章 尾行と追跡
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 その時、通路の奥から、突然、爆発音が響き渡った!

 ずしん、と腹に籠もるような音がして、圧縮された爆風が、ドアを抜け、部屋の中へと吹き込む!

 驚きに、ゴロスはさっと立ち上がる。

「何事だ!」

 爆風と共に、埃が舞い上がり、鼻の置くにつんと来る、火薬の匂いが押し寄せた。

 だだだっ! と、足音が聞こえ、ぱんぱんと、軽い銃撃音がして、数人の悲鳴が交錯する。

 よたよたっ、と一人の部下が、ドアから室内に転げ込んできた。

「少佐殿っ! 敵襲ですっ! 何者かが、一気に押し寄せ、何人か不意を討たれ……」

「うぬうっ!」とゴロスは怒りの呻き声を上げた。

 きっ、と好敏を睨む。

「貴公の企みかっ? いつ、連絡を取った?」

 ゴロスの言葉遣いは、やたら古風になってしまう。古語が混じり、好敏の貧弱なドイツ語の知識では判り難い。

 銃声が近づき、びしっ、びしっと漆喰の壁に、銃弾が食い込む。ゴロスの部下は、通路の奥へ向けて手に手に、拳銃を撃って反撃を試みるが、完全に不意打ちされた不利は覆うべくもない。

「見張っていろ!」

 ゴロスは部下に叫ぶと、巨体をドアに捻じ込み、通路に駆け込んだ。

 好敏は、残された部下を盗み見た。部下は好敏に向けて銃を構えているが、通路の騒ぎに、すっかり気を取られている。

 その部下に、セーラがこっそり、背後から近づいている!

 やめろ! 危ないぞ!

 叫びたかったが、声を出すと、セーラが逆に危険だ。好敏は唾を呑み込み、見守った。

 好敏の視線に、何かを感じたのか、部下はくるりと振り向いた。

 セーラが凝然と固まった!

 好敏は、目の前の机に両手を差込み、えいっとばかりに持ち上げ、部下に向かって突撃した。

 足音に、再び部下が顔を戻したときは遅かった。好敏は持ち上げた机を盾にして、灰色の部下に突進する。

 ぐわんっ! と手応えを感じ、部下は「わっ!」と叫んで壁に押し付けられた。手にした拳銃が火を噴くが、銃口は明後日の方向に向けられている。

 好敏は歯を食い縛り、掌底を使って、部下の顎を壁に向かって突き上げる。

 がつんっ! と厭な音がして、部下の頭が壁にいやというほど、激突した。

 くたくたっ……と、部下の全身から力が抜け、その場に蹲った。好敏は部下の手から拳銃を奪うと、セーラとアドルフに向けて叫んだ。

「逃げよう!」

 二人は好敏の言葉に、無言で頷いた。

 好敏はさっとドアに近寄り、通路を覗き込んだ。細かな埃が舞い上がり、悲鳴と銃声、ゴロスの怒号が聞こえてくる。

 たたたっ、と足音が聞こえ、煙の中から、数人の若者が姿を現した。こちらは灰色の部下と違い、粗末な衣服を着ている。顔つきは浅黒く、真っ黒な髪の毛に、同じ黒い瞳をしていた。

「あんた、日本人か?」

 下手糞なドイツ語で、叫ぶ。好敏が頷くと、苛立たしげに、手招きした。

「来いっ! 逃がしてやる!」

 好敏は、セーラとアドルフを見た。二人とも、好敏に、縋るような視線を向けている。好敏は素早く、決断を下した。

「さあ、早くっ!」

 男は、さっと背中を見せる。つべこべ、説明をする間も惜しそうだ。

 好敏は無言のまま、男の背後に付き従った。

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