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第二幕

 探偵は立ち上がって歩きながら、語り始めた。

「まったく、これがクエストシナリオだったら反則だって怒り出すところだよ。でもこのゲームには、シナリオなんてものはない。それが面白いとこだよね。どのキャラクターも自由に動いている。誰の作為もない。何が起こるか決まっていない世界。だからこんなことが起きる! 殺人事件が起きる! まったく信じられない自由度、なんてリアルなゲームだ!」

 探偵は興奮を隠せぬ様子で天井のシャンデリアを見上げたまま数秒黙った。

「全く、たまたま僕がい合わせなかったら、この事件はこの世界の警察に、自殺として片づけられちまったことだろう。信じられないような無駄なキャラの死だ」

「キャラ……? おい、こいつは何を言い出したんだ?」

「さあ……私にはわかりかねます」

 呆れるコッフと、それに答えて首を横に振るパズール。

 探偵はそんな二人を、おかしくてたまらないというように見ながら言った。


「キャラさ。君たちは全員、NPCなんだよ」



「説明しようか。

 君たちが現実だと思ってるこの世界は仮想世界だ。サーバ・コンピュータの上で動いているプログラムに過ぎない。

 スモール・ワールドというオンラインゲームなんだ。現実とは違う、中世ヨーロッパをライトにした雰囲気の仮想世界。そこには君たちのようなNPC……つまりノン・プレイヤー・キャラクターたちが生きている。

 ノン・プレイヤーというのはつまりプレイヤーではないという意味だが、プレイヤーとは何か? そう、たとえば僕がそうだ。僕は本当はこの世界の人間じゃない。ジェームというのは本名じゃない。この世界で使っている仮の名前だ。本名のイニシャルがJ・Mだからジェームと名乗っているだけさ。

 僕は外の現実の世界で生きていて、今は分身をこの世界に送り込んでいる。だからこの体は本物じゃないし、叩かれても痛くはないんだよ。ただダメージは受ける。怪我はするし、時には病気にもなる。結構リアルなんだ。

 何しに来てるかって? 大した目的はない。プレイ、つまり遊びだよ。ただ遊びに来ているだけ。街を歩いたり、こうしてNPCの家を訪問して、そのまま長期滞在したりね。いろんな楽しみ方があるけれど、僕がやっていたのは平たく言って、君たちの生活を覗かせてもらうことだった。

 この世界に生きているNPCは約6万人を越える。それに対して僕らプレイヤーは3千人弱だ。5パーセントにも満たない。このゲームは、プレイヤー同士よりも君らNPCを相手に遊ぶことこそ真骨頂なんだ。

 この世界は本当にリアルにできていて、細部まで作り込まれている。そしてなお素晴らしいのは、シナリオが無いことだ。プレイヤーには目的が与えられていないから自由に行動する。でも、それだけじゃなくて、ノン・プレイヤーの行動も決められていない。皆、自由に行動している。だから何が起こるか、それは誰にもわからない。いや、僕もびっくりしたよ。まさか、NPC同士で殺人まで起こるだなんて。

 このスモール・ワールドの世界ではキャラは死ぬ。復活はしない。そんなことは知ってるって顔してるが、死があるってのは驚きなんだぜ。だいたい、プレイヤーもNPCも皆、毎年一つずつ年齢を重ねていくのが凄い。子供は大きくなり知恵を増していく。そして……老人は寿命を迎え、死んでいく。ははっ。パズールさん、あんたももう危ないぜ。この世界のNPCの平均寿命は60歳。少し短めに設定されてた筈だ。

 話がそれたな。とにかく、この世界では老衰や病気でキャラが死ぬことがある。それは知ってたけど、まさか殺人で死ぬNPCがいるとはね。

 さて、事件の話をしようか。

 死体の発見されたのは今朝で、殺人事件があったのは昨夜だ。オズワルド・ベイリー氏は寝室で殺された訳だが、朝になって発見されるまで部屋の鍵は内側からかけられた状態だった。

 犯人が誰か、僕は知っている。なぜなら、僕は部屋に入る犯人を見たからだ」

 探偵はそこで、一端話を区切り、全員を見渡した。

「……何の話をしているのかわからない、という顔だね」

「ああ、全然わからない。一体お前は何を言ってるんだ? 狂ったのか?」

 コッフの言葉に探偵は笑った。

「まさか。僕は君らが知らないことを知っているだけさ。まあ、この世界の仕組みなんてのはどうでもいいが、一つ言っておかなくちゃならないことがあるな。実はね、僕はある超能力が使える。その力を使って、昨晩犯人が部屋に入るのを見ることができたんだ」

「超能力……だと?」

 ラズカー教授の問いに、探偵はにやりと笑ってズボンのポケットから赤い飴玉を取り出した。

「これを食べると……何が起こるか、みんな、よく見てなよ」

 そう言うや否や飴玉を口に放り込む。

「あっ」

 探偵の姿が消えた。皆が広間中に視線を踊らせる中、声だけが響いた。

「どうだい。透明になれるのさ。これは超レアアイテムのピーピングキャンディというものでね、この状態だとこのとおり誰に見られることはないし、触れられることもない。つまり攻撃を受けることもないんだ。こっちからも人には触れないが……。まあ覗き見にはぴったりのアイテムだ。高額だけどね」

 そして、探偵が再び姿を表した。

「……そしてこの青いほうのキャンディを食べれば姿が戻る訳さ」

 表情の変化に乏しいミリーナやラズカー教授も含め、皆驚きのあまり言葉を発さなかった。

「もうわかっただろう? 僕がどうやってミリーナちゃんの首飾りに隠された写真を見たのか。父親との会話を盗み聞きしたのか。はは。皆の生活を覗くのは楽しかったなぁ」

 そして探偵は、見る者に嫌悪感を抱かせずにはおかない野卑な笑いをその口に浮かべ、ミリーナを見た。

「くくく……。一番長い時間見ていたのはミリーナちゃん、君だよ。直接話しかけても無視してくれちゃって、つれないけどね。観察していて本当に楽しかった。自分の部屋で窓の外を眺めている時に時折見せる乙女の表情、日頃の君からは想像もできない愛らしさだ。しかもそれが向けられている相手が実の兄。もう大興奮だ僕は。それに……くく、成人アカウントにしといて良かったと思ったね。お風呂では良いものを見せてもらった」

 ミリーナはそれを聞いても全く顔色を変えなかったが、一方でベイリー夫人は顔を真っ青にして娘の体を後ろから抱きしめ、兄のコッフは逆に顔を真っ赤にして怒鳴りだした。

「この下衆野郎!」

 殴りかかったコッフの拳が当たる前に、探偵は姿を消した。

「おっとっと……。危ないな。殴られても痛くはないがダメージはあるんだよ。怪我もするし下手すると死ぬこともある。死んじまったら、また新しい僕の分身を作らないといけないから手間だし、何より結構な金がかかるからね。仕方ない、しばし、このまま話をさせてもらうよ」

「貴様! 卑怯だぞ。姿を現せ!」

 コッフは声のするあたりの何もない空間を殴り続けたが、手応えの無いことにやがて諦めて肩を落とした。

「お兄様。所詮覗くだけの者には何もできません。私には何も影響していない」

 静かにミリーナが言った。

「おお……。さすがミリーナちゃんだ。でも僕にだって秘密を暴くことくらいはできるんだよ? ミリーナちゃんの秘密はさっき喋った通りじゃないか。おっと。そんな怖い顔をしないでくれ。話を続けようか。昨日、そろそろミリーナちゃんを覗くのに飽きてきた僕は、リータちゃんにターゲットを変更した。まあお嬢様に比べるとメイドの生活は忙しすぎるねぇ。一日見てたらこっちまで働き詰めだったような気がしたよ。でもまぁ、部屋で着替えるところを見ることができたのは良かったけどね」

 リータが身体を両手で抱いて一歩後ずさった。その肩をコッフが支えた。

 その時、ラズカー教授が口を開いた。

「貴様は……。あの晩、凶行の現場に居合わせたと言うんじゃあるまいな。その姿を隠す妙な薬の力で」

「おっと……教授、残念ながらそうじゃないんだ。あの日の夕方から、僕はリータちゃんの部屋に潜んでいた。もちろん透明でね。寝顔を近くで見たりしてようとわくわくしてたって言うのに、リータちゃんたら全然眠らないんだ。僕のほうが眠くなってきた頃、夜中の十二時頃になって、部屋を出ていくじゃないか。どこ行くのかと思ったら旦那様の部屋に入ってく。うわぁ、こりゃ偉いものが見られそうだ、メイドが主人の寝室に夜中に行くとは……なんて思って僕も中に入ろうと思ったんだけど、タイミングが遅かった。鍵をかけられちゃって入れなかったんだ。凄く後悔したよ。この薬は透明にはなれても壁や扉はすり抜けられない」

 探偵は未だ姿を消したまま、虚空から声だけを響かせている。

「仕方なく僕は廊下で聞き耳を立てていた。でも扉はぶ厚くて話し声はほとんど聞こえない。そして……少し経ってから、聞こえたんだよ。銃声が」

 探偵はそこで、消していた姿を現した。コッフは目をつり上げたが、無駄だと悟ってか殴りかかろうとはしなかった。代わりに問う。

「じゃあリータはどうやって部屋を出たんだ? 翌朝こじ開けた時は鍵がかかっていた。リータが部屋を出るには鍵を開けなきゃならなかった筈だし、その後誰かが部屋に入って鍵をかけたとでも言うのか? 誰もいなかったんだぜ」

 コッフの問いに探偵は我が意を得たりとばかりに微笑んだ。


「銃声の直後……。サーバーがダウンした」


 誰もその言葉の意味をわからなかったがそれは探偵には想定内。探偵は再び解説を始める。

「リータちゃんはどうやって部屋を出たのか? それは、偶然だった。君たちNPCには知覚できない偶然によって、それは起きた。

 このスモール・ワールドが動いているサーバ・コンピュータは結構不安定なのが欠点でね。一年に何度か、こういうことがあるんだ。

 サーバーがダウンする、つまり止まってしまう。復旧するまでの数時間の間……このスモール・ワールドはどういう状態か? 簡単に言えば、世界が眠っている状態だ。

 誰も動けない。何も動かない。いっさいの活動が停止している。君たちNPCも、全員眠っているのと同じ。いや、眠っているというより消えていると言ったほうがいいかもしれない。この世界はその間存在しないんだ。

 我々プレイヤーの分身たるキャラも存在できない。つまり強制的にこの世界を追い出され、外の世界に戻される。ログアウト、と我々は呼んでいるけどね。そして再びこの世界に戻る……ログインできるのは、サーバが復旧した後だ。今回の場合、復旧したのは翌朝、つまり今朝だったな。

 ここで重要なことは、ダウンしたサーバが復旧した時、プレイヤーとノン・プレイヤーがそれぞれどういう状態になるかだ。プレイヤーはログインすると、強制ログアウトさせられた場所に戻ってくる。たとえば僕の場合だと、廊下だ。ベイリー氏の寝室の前に戻った。

 ノン・プレイヤーの場合は事情が異なる。ここがポイントなんだ。

 ノン・プレイヤー、NPCの場合、プレイヤーと違ってサーバの一時領域にしかログが残っていない。だから直前の数時間の情報が失われてしまうんだ。するとどうなるか? サーバが復旧した翌朝、君たちは一日前の朝と同じように、自室のベッドで目覚めた筈だ。前の晩どこにいようともね。配置情報がリセットされたんだよ。辻褄があうように記憶も多少操作されていて、前日の記憶があやふやになっていた筈さ。そうしておかないと、夕飯を食べていたと思ったらベッドでした、みたいなことになっちまうからね。

 ……もうおわかりかい? 君たちは前日の晩どこにいようと、翌朝は自室に移動している訳さ。期せずして、リータちゃんもベイリー氏の寝室ではなく自分の部屋に戻ってしまった。密室を出てしまったんだよ」

 探偵はそこまで語り、一同を見渡す。

「ここで一つ疑問がわく。ベイリー氏の部屋の鍵はリセットされなかったのか? それは多分、僕が部屋の前にいたからじゃないかな? ジェームというキャラクターがサーバ・ダウン前に扉の鍵がかかっているのを確認していて、ログに残っていた。それで翌朝、施錠された状態で復旧した……のかな、と思うが、まあ確証はない。

 とにかく、そんなタイミングの良すぎるサーバ・ダウンのせいで、偶然に密室ができあがってしまった。僕は翌朝サーバ復旧直後から部屋の前を動かずにいて、皆が扉をこじあけるまで誰も部屋を出入りしなかったことも確認しているよ。つまり、死体は間違いなく前日の夜から部屋の中に存在している。となればリータちゃんの手によるものだろう。

 ……もしかしたらリセットの影響でリータちゃんは自分が殺人を犯した事実を忘れてしまっているかもしれないけどね」

 誰も、探偵の言うことに理解が追いついていない様子だった。リータでさえ何を言われているのかわかっていない。探偵はそんな皆の様子を楽しげに見ている。

 そのとき、低い声でラズカー教授が話し始めた。

「お前の言うことは……殺人現場にリータがいたことと、密室が破られた仕組みを解説したにすぎん。

 それらが本当だとしても、リータが犯人であることの証明にはなっておらんな。お前はリータが部屋に入るのを見たかもしれんが、それ以前に他の者が部屋に入らなかったことまでは確認しておるまい。殺人者は別の誰かで、リータは居合わせただけかもしれん」

 探偵はしばし沈黙した。

「驚いたなぁ……。飲み込みが早いおっさんだ。そうだよ、確かに僕はリータちゃんが部屋に入る前に誰も入らなかったとは確認してない。ずっとリータちゃんの部屋にいたからね。だから確かに、第三者がいた可能性もある。まあ……だとしてもリータちゃんの容疑が晴れる訳じゃない。共犯かもしれないよね。

 僕がリータちゃんが一番怪しいと思ってる理由は、つまり部屋に彼女が呼ばれた理由自体だと思う。僕は聞いてしまったからね。あのスケベじじいが昼間、リータちゃんに言ってた台詞を。今夜寝室に来い、可愛がってやる……って」

 リータの顔がさっと曇った。コッフが怒鳴る。

「黙れ! いい加減なことを言うな!」

「おっとぉ。こればっかりは事実だし、昨日の昼間だからリータちゃんの記憶にもある。ほら、そうやって浮かない顔をしてるリータちゃんを見りゃ嘘じゃないってわかるだろ? 残念だったねコッフ君。君の愛するメイドは旦那の愛人として雇われたんだ。まあそうなる前に撃ち殺しちゃった訳だからまだ清い身かもしれないが……」

「貴様……!」

 しかし、殴りかかろうとするコッフを止めたのは……リータだった。

「コッフ様。おやめください。その人の言うように……私は旦那様を殺してしまったのかも……しれないのです」

 息をのむコッフ。リータは、コッフを見なかった。顔を伏せている。

「私には……殺意が無かったと言い切ることは……できません」

 語尾が霞んだ。

「いいえ」

 そんなメイドの告白を、打ち消すように強く言ったのは、ミリーナだった。

「私の可能性のほうが高い」

 探偵は顔をゆがめた。

「何と?」

 無視してミリーナは優しくリータに言った。

「リータ。貴女が何をされようとしていたか……私は知っていました。そして父とはいえ、あれは人間の屑です。私が昨晩あの男を殺すことを考えたとしても不思議はない」

「そんな! ミリーナ様……」

「そ、それを言うなら僕のほうこそだ。僕はにぶいから気づくのが遅かったのかもしれないが、気づいてたら間違いなく親父を殺してる」

「おやめ。二人とも。昨夜あの男を殺したのは私だと思うよ。私だってリータを雇うと言い出した時点であの男の目的には気づいていたさ。夫とはいえ私はあの男を愛しちゃいない。いないが……リータ、おまえに手を出そうとするならその時は殺した方がいいと思っていたんだよ」

「奥様。お嬢様もコッフ様もどうか、この老いぼれをかばわないで頂きたい。私はあの男に自分の経営する店を潰された時から明確な殺意を持ってこの屋敷で働いていたのですから」

 ミリーナ、コッフ、モンロ・ベイリー、パズール。次々殺意を告白する四人に、探偵はあっけにとられていたが、やがてぽつりとつぶやいた。

「こ、怖くなってきたな……。なんだ……凄いなこの家。全員動機は十分だ。まあ、この際誰が犯人でもいい。

 昨夜午前二時のサーバ・ダウンの前の数時間……夕方あたりからの君たちの行動も考えも、すべて消え去ってしまったからね。真相は闇の中。何があったのか、もうわからない。ただ、僕の分身であるこのジェームというプレイヤーが見たもの聞いたものだけはプレイヤー・ログとして別サーバーに記録が残っている筈だ。ジェームが死んでアカウントが抹消されたりしない限りね。それが証拠になる。昨夜のリータちゃんが犯行現場へ行ったことと、銃声。これだけは確かに記録されている筈で、システム運営側はそれを閲覧できる。

 だからとにかく僕は、警察にかけこむことにするよ。システム側の要因が絡んでいるから、警察経由で運営側を動かしてプレイヤー・ログを調査して貰える筈だ。そうなれば……。少なくともこれが殺人だってことははっきりさせられる。このスモール・ワールドのニュースにすることができるんだ。僕は一躍、殺人事件を解決した名探偵だぜ……」

「そんなことはさせない!」

 コッフが叫んだ。だが探偵はせせら笑う。

「まあ、僕も罪は償うべきだ、なんて考えている訳じゃないんだ。僕にとってこの世界は所詮バーチャル。法も秩序も興味はないからね。でもさ、殺人事件を解決した名探偵としてこの世界で名を上げるってのは面白いじゃないか? 知ってるかな、プレイヤーの間ではさ、この世界に暮らすNPC達の間で有名になるってのがステータスなんだ。会社を興して大儲けしようとする奴もいるし、芸能人になりたがる奴もいる。NPCと違って、有料のアイテムを駆使できるっていうアドバンテージがあるしね。僕もいい加減、ただ覗きを楽しむだけのプレイスタイルも飽きてきたところだし」

 ラズカー教授は目の前の狐目の男を信じられないものを見るような目で見た。

「有名になりたい……だと? それだけの理由で?」

「おいおい。罪があるだろう。罪を犯したら逮捕されるのは当然だぜ? まして殺人という大罪。見過ごせというほうがおかしいよ。通報するのは善良な市民の義務さ。僕はその当然の義務を果たすまで」


 探偵の演説はかき消された。

 銃声だった。

 額を打ち抜かれたジェームの命はあっさりと失われ、プレイヤー・アカウントの抹消プログラムがサーバ・コンピュータの中で動き始める。


 ブラックアウトしたモニタの前で、レアアイテムを使って姿を消したままにしておかなかったことを、ジェームというキャラクターのアカウント所持者である戻川もどりかわ次郎じろうは後悔していた。


 誰が撃ったのかは……わからなかった。

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