↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
62/86

61 ピスタチオのヌガー


 ニニンドが起きた時、ナガノから食事の招待のメモが届いており、どうしようかと思っていたら、リクイが眠そうな顔をしながら部屋にやって来た。


 リクイもナガノから招待されているということで、ふたりで浴室に行き、汗を流してすっきりとした。


 サララがナガノの部屋にいるはずだから、とにかく、まずは謝ろうとニニンドが言った。


「ぼく達、サララ姉さんに謝るようなことはしていないですよ。姉さんがもっと理解すべきです」


「でも、サララに心配をかけたのは事実だし。私がすぐに説明しないで、逃げようとしたのが悪いんだ」


「急いでいたから、仕方がないですよ」


「本当は、なんか恐ろしくなって、逃げてしまったところがある」


「サララ姉さんが怖いんですか」


 まぁね、とニニンドが頷いた。


「珍しいですよね、そんなの。どうしてですか」


「どうしてなんだろう」


 ニニンドは半分びくびくしながらも、それでもいそいそとナガノの部屋にやって来たのだが、そこに着くと、サララはすでに帰ってしまっていたことがわかった。


 怖れながらも膨らんでいた期待が、風船のように萎んだ。


「どうして帰したの?」

 ニニンドがせめるに聞いた。


「泊まっていくようにとお勧めしたのですが、お忙しいようで、すぐに帰っていかれました」


「今の季節は、特にキャラバンの仕事が忙しいんです」

 

 リクイがそう言って身体を揺らしながら、料理を覗いた。ナガノがおいしい猪肉を取り寄せて、きのこをたくさんいれたシチューを作ったのだという。


「うれしいなぁ。おいしそうです。ずうっと食べていなかったから、空腹なんです。ニニンドも、な」


 しかし、ニニンドのほうはうれしそうではない。


「猪肉ときのこシチューは若さまの大好物でしたから」


「昔はあれしか、なかったから」

 

 ニニンドは機嫌が悪い。


「ナガノさま、サララ姉さんの様子はどうでしたか。怒っていましたか」


「さあ、どうでしょうかね」

 

 ナガノが黙ると、「どうなの?」とニニンドが追いかけるように訊いた。


「泊まらないでさっさと帰ってしまったくらいですから怒っていましたけれど、でも、お土産を置いていきましたから、それほどでもないでしょう」


 ナガノが小さな包装されたお菓子を見せた。リクイがそれを手に取って、「ヌガーだ」と言った。


「それ、ピスタチオのヌガーだろ」


 ニニンドがうれしそうな声を出した。


「ニニンドは、食べたことないのかい」


「こういう高級なのはない」


「おありですよ。もっと高級なのもありました。甘すぎて嫌いだと言われたではありませんか」

 とナガノが口をはさんだ。


「これは違う」


「違いませんよ。もっと高級なのをご用意したことがありますよ」


「ナガノは頑固だなぁ。これは異次元のおいしさなんだよ」


「頑固なのはどちらでございますか」


「ふたりとも、頑固ですよ」

 とリクイが言った。


 ニニンドが包装紙をあけて食べようとした。


「若さま、だめでございますよ。お食事を召し上がった後でなくては」


「おれは子供か」


「幼子でございます」


「司令官だぞ」

 とニニンドが睨んだので、リクイがふふっと笑った。


「リクイがついに笑った」

 とニニンドが微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。