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『伝説の魔剣を引っこ抜いたら、魔剣が美少女化して「責任とってよね!」と離れてくれない~勇者辞めて剣と結婚します~』  作者: 無響室の告白


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第2話:崩壊する遺跡と王女の誤解

「責任……? いや、ちょっと待ってくれ。俺はただ、世界を脅かす魔王を倒すために、ここにあった剣を……」


アルヴィンは脂汗を流しながら、腕に絡みつく銀髪の美少女――グラムを引き剥がそうと試みた。


しかし、彼女の細い腕は万力のようにアルヴィンの二の腕を締め付けており、びくともしない。


「言い訳は聞かないわ! 私の封印を解く時のあの力強さ……。数千年ぶりに感じた男の人の熱気……。あんなことされて、もう他人同士に戻れるわけないじゃない!」


「だから、それは剣を抜くために力を込めただけであってだな!」


グラムは潤んだ瞳でアルヴィンを見上げ、頬を赤らめる。


「照れなくていいのよ、ダーリン。さあ、ここを出て式場へ行きましょう。ハネムーンは魔界がいいかしら?」


「順序も行き先もおかしいだろ!」


その時である。


ズズズズズ……と、地下空間全体が激しく振動し始めた。


天井からパラパラと石屑が落ちてくる。


「な、なんだ!?」


『警告。警告。聖剣の封印解除を確認。防衛システム、起動』


無機質な声が響き渡ると同時に、祭壇の四隅に設置されていた石像がギギギと動き出した。


古代の守護者、ガーディアン・ゴーレムだ。


魔剣が悪用されるのを防ぐため、剣が抜かれた瞬間に試験として襲いかかってくる防衛機構である。


「まずい、試練が始まったんだ! 武器……武器がないと!」


アルヴィンは腰に手を伸ばすが、そこにあるのは空の鞘だけ。


肝心の魔剣は現在、美少女となって彼に抱きついている。


「あるじゃない、ここに」


グラムが妖艶に微笑むと、彼女の右腕がカシャンと硬質な音を立てて変形した。


白魚のような指先が鋭利な刃となり、銀色の輝きを放つ。


「二人の愛の共同作業、始めましょうか!」


「共同作業ってそっちの意味じゃないだろ!?」


ゴーレムが巨大な石の拳を振り下ろしてくる。


アルヴィンは反射的にグラムを抱え上げ――いや、彼女が勝手にアルヴィンの動きに合わせて跳躍した。


「はあっ!」


グラムが腕を振るうと、空間そのものが断裂したかのような斬撃が走る。


硬度な魔法金属でできたゴーレムの胴体が、豆腐のように斜めに滑り落ちた。


ズドオオオオン!


轟音と共に崩れ去る守護者たち。


そのあまりの威力に、アルヴィンは唖然とするしかなかった。


「す、すごい……これが伝説の魔剣の力……」


「ふふん、すごいでしょ? でも、私の本当のを引き出せるのは、あなたとの愛が深まった時だけよ?」


「物理的な切れ味だけで十分すぎるよ!」


だが、戦闘の振動で遺跡の崩壊はさらに加速していた。


アルヴィンはグラムの手を引き(あるいは引かれ)、必死で出口へと走った。


「とにかく脱出だ! 話はそれからだ!」


長い階段を駆け上がり、ようやく地上の光が見えた時、アルヴィンは安堵の息をついた。


しかし、その安堵は一瞬で凍りつくことになる。


「ご無事ですか、アルヴィン様!」


出口である王城の中庭には、完全武装の騎士団と、その先頭に立つ煌びやかなドレス姿の少女――セシリア王女が待ち構えていたのだ。


「セ、セシリア様!?」


アルヴィンが立ち止まると、セシリアの視線が彼の隣に張り付いている銀髪の美少女に釘付けになった。


「アルヴィン様……? その、ふしだらな格好をした女性はどなたですか? まさか、魔剣の呪いで召喚されたサキュバス……?」


グラムがむっとした顔で一歩前に出る。


「誰がサキュバスよ。私は彼の妻、グラムですけど?」


「つま……?」


セシリアの可憐な顔が、般若のように引きつった。


「ご、誤解だ! これは魔剣なんだ! 剣が変身してこうなっただけで、決してやましい関係では……!」


アルヴィンは必死に弁解するが、グラムがこれ見よがしにアルヴィンの腕に胸を押し付け、先ほど自作した婚姻届(羊皮紙)をひらひらと見せつける。


「ほら見て、これ。これから出しに行くの。邪魔しないでくれるかしら、泥棒猫さん?」


ブチッ、と何かが切れる音がした。


「……全軍、攻撃開始! その魔女をアルヴィン様から引き剥がしなさい! アルヴィン様は騙されているのです!」


「ええええ!? 待って、話を聞いてくれ!」


騎士たちが槍を構えて殺到してくる。


背後には崩壊する遺跡、目の前には嫉妬に狂った王女と騎士団。


さらに隣には暴走する愛妻(魔剣)。


アルヴィンはこの瞬間、悟った。


(だめだ、このままじゃ魔王を倒すどころか、俺の身が持たない……!)


「グラム、強行突破だ! ギルドへ向かうぞ!」


「キャッ、駆け落ちね! ロマンチック!」


「違う! 辞表だ! 俺はもう勇者を辞めて、このわけのわからない状況を整理するんだ!」


かくして、勇者アルヴィンの新たな目的は「世界平和」から「勇者の定年退職」へと劇的な下方修正を遂げたのであった。



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【登場人物】

- セシリア王女: 王国の姫・勇者の幼馴染


- ガーディアン・ゴーレム: 遺跡の防衛機構


- 騎士団: 王国の兵士たち


【場所】

- 王城の中庭: 封印の祭壇からの出口がある場所。セシリア王女らが待ち構えていた。


【アイテム・用語】

- 部分変身: グラムが全身ではなく体の一部(腕など)だけを武器に変える能力。


- 魔剣グラム(人間形態): 普段は美少女の姿をしているが、アルヴィンが手に取ると最強の剣に変身する(あるいは腕の一部だけ刃にするなど部分変身も可能)。切れ味は凄まじいが、機嫌が悪いと重くなって持てなくなる。

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