第一章「殿様、時空を越えてホームレスに!」
――江戸時代。
天下泰平の世といえど、松平源之助の心は騒がしかった。
この小藩を治める若き殿様、しかし周囲はイエスマンばかり。
町の者と語らえば「殿、おやめください!」
茶屋でだべれば「そんなご無体な!」
もう、全然つまらん。
「やってられるかぁ!!」
源之助はある夜、近くの神社で奇妙な石を拾う。
それはまるで目玉焼きのような石で、裏には「タイムポータル石」と書かれていた。
なんじゃこりゃ、と触れた瞬間――
バゴォォォン!!
白い光に包まれ、次に気がついたのは――令和の名古屋駅前、噴水のど真ん中だった。
「……ん?ここは……江戸じゃない!?」
着物姿の殿様が噴水からズブ濡れで出てきた瞬間、街の人々は
「誰だよあいつ!?」
「時代劇の撮影か?」
「え、濡れてるんだけど!」
騒然。
当然、服も金も無い。
スマホも使えず、SuicaもPayPayも分からない。
気づけば夜、段ボールにくるまった男たちの溜まり場。
そこで出会ったのが、ホームレス歴10年のタケシだった。
「おっさん、いや、アンタ。濡れネズミでどこ行くんだよ」
「わしは松平源之助、この国の殿様じゃ!」
「はぁ!?」
タケシ爆笑。
周囲のホームレス仲間も寄ってきて、源之助は事情を説明。
当然誰も信じないが、妙に威厳ある口調と、やたら人望を集める不思議な力であっという間にリーダー格に。
「よし、まずはこの“ナゴヤ”の城を攻め落とすぞ!」
「いやいや、それイオンモールな」
そんなこんなで令和ホームレス生活スタート。