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8話 コツ

講堂を出た環輪は、クウアの指導でやっと鎖を魂に戻せ、鎖が消えた右腕を振って安堵していた。


受験生たちは、クウアに導かれ、講堂の隣にある訓練場へ移動した。広大な円形の場は、星空のガラスドームに覆われ、地面は創造力に応じて光を放つ。中央には、障害物が不規則に配置されている。

クウアが場を見渡し、


「受験生諸君。講義で学んだ創造力の使い方を、ここで体得する。創造力は、創名の具現化を超え、身体を強化し、物体を変え、想像した動きを実現する。」


彼女は手を振ると、空中に無数のシャボン玉が浮かぶ。虹色に輝き、訓練場の光に揺れる。


「第一の訓練。シャボン玉に創造力を込め、割れないように強化せよ。意志とイメージを明確に。制御できねば、創造力は無駄に消費される。」


輪はシャボン玉を手に取り、目を輝かせる。


「お、なんか楽しそうじゃん! 」


彼女の視線が一瞬、輪に止まる。


あ、俺、暴発させたからな。若干目の敵にされてるのか?


受験生たちがシャボン玉を手に持ち、創造力を込め始める。輪はシャボン玉を見つめ、深呼吸する。


「よし…割れないように、ってことは、めっちゃ硬くするイメージか?」


輪は目を閉じ、シャボン玉を鉄の球のように想像。だが、力を込めすぎ、シャボン玉がパチンと弾ける。


「うわっ! 割れた! なんで!?」


周囲の受験生がクスクス笑い、輪は顔を赤らめる。


「くそっ、もう一回だ!」


悠真は隣でシャボン玉を手に、冷静に集中力を高める。彼の創造力は、まるで空気を纏うようにシャボン玉を包み、地面に落としても割れない強度に。


「こんな感じか。環輪、力みすぎだよ。集中して、薄く均等に力を込めろ。」

「こんな感じか?」

悠真のシャボン玉を見てコツをつもうとするが、あっけなく割れてしまう。

白月は離れた場所で、静かにシャボン玉を強化。彼女の指先から放たれる創造力は、まるで空間を滑るように繊細だ。シャボン玉は星のような輝きを帯び、叩いてもビクともしない。

輪はチラリと見て、


「…白月、めっちゃ余裕じゃん。なにあの優雅さ。俺も負けてらんねぇ」


シャボン玉に向いて、創造力を纏わせるが、ものの数秒で割れてしまう。

「うわっ! またかよ!」

周囲の受験生も次々とシャボン玉を割り、訓練場は失敗の音で騒がしい。ほとんどの受験生が創造力に不慣れで、力を込めすぎたり、イメージが曖昧で失敗する。

輪は焦りながら、悠真に近づく。


「なあ、悠真! どうやったら割れねえんだ? コツ教えてくれよ!」


悠真はシャボン玉を手に、冷静に強化。地面に落としても割れない輝きを放つ。


「環輪、力むな。創造力を薄く、均等に流すんだ。イメージをシンプルにしろ。」


輪は目を閉じ、試すが、シャボン玉はまた割れる。


「シンプルって言われても、わかんねえよ!」


なら、と輪は白月に近づく。彼女は無表情でシャボン玉を強化し、星のような輝きで叩いてもビクともしない。


「白月、お前、めっちゃ上手いな! どうやってんの?」


白月は輪を一瞥し、静かに言う。「…集中。」

その冷たい一言に、輪は肩を落とす。


「集中って…みんなそれしか言わねぇじゃん…。」

もう一度集中を意識して、力を入れるが、虚しくシャボン玉は割れる。


「あぁーなんでだぁ」

「力みすぎだ。もっとリラックスしろ」

「お、助言サンキュ! って、お前、誰?」

は静かに答える。


「伊雅千鶴。雷の創造者らしい。よろしく。」


輪は目を輝かせる。 


「雷! めっちゃカッコいいな! 俺は環輪、鎖の創造者だ!」


続いて、悠真が軽く会釈する。


「黒神悠真。剣の創造者。よろしく、千鶴。」


輪は千鶴の言葉を思い出し、シャボン玉に集中を試みるが、またパチンと割れる。


「千鶴!コツを教えてくれ〜」


千鶴はシャボン玉を強化し、鋭い輝きで成功させる。


「イメージを絞れ。たとえば、シャボン玉が水面のように揺れる姿を想像しろ。力を押し込むんじゃなく、包むんだ。」


輪は目を輝かせる。「水面! それ、めっちゃ分かりやすい! ラーメンのスープの油みたいなもんか!」


千鶴は小さく笑い、

「まあ、そんな感じだ。やってみろ。」


輪は深呼吸し、スープが揺れるイメージで創造力を流す。シャボン玉が光を帯び、地面に落としても割れなかった。


「やった! できたぜ! 千鶴、サンキュ!」


千鶴は頷く。


「あぁ、お互い助け合いだ。」

「そうだな!千鶴が助けが欲しい時は俺が手伝ってやる!助けられるかは分からんけど!」


クウアが声を上げる。


「次は、身体を強化し、想像した動きを実現せよ。バク転やパルクールで、自由に動け。」


受験生たちのほとんどが創造力の制御に失敗し、壁にぶつかったり、バーから落ちたりする。訓練場は転倒の音と叫び声で騒がしい。

輪は拳を握る。


「よし、いくぜ!」


バク転を試みるが、創造力を脚に集中しすぎ、ドサッと転ぶ。


「うわっ! 痛ってえ! ムズすぎだろ!」


悠真に駆け寄り、


「なあ、悠真! バク転のコツってなんだよ?」


悠真は軽やかにバク転を決め、創造力を加えると空中で3回転。着地は完璧だ。


「イメージを明確にしろ。身体を軽く、風を切るように動かすんだ。」


輪は試すが、ふらついて失敗。


「風って…わかんねえよ!」


白月に目を向け、


「白月、お前なら分かるだろ? どうやってんの?」


白月は静かに壁を登り、滑るように障害物を越える。無駄のない動きに、輪は感嘆するが、彼女は一言。


「…動きたいように動く。」


輪は頭をかく。


「それ、めっちゃ抽象的じゃん…。」


千鶴が近くで正確にパルクールをこなし、瞬発力でバーに飛び乗る。輪は再び話しかける。


「千鶴、やっぱお前、めっちゃ上手いな! バク転、どうやってんだ?」


千鶴は落ち着いて言う。


「身体に力を入れるんじゃなく、動きをイメージしろ。たとえば、雷が一瞬で落ちるような素早さだ。」


輪は目を輝かせる。


「雷! それ、イメージしやすい!」


創造力を身体に流し、雷の素早さを想像。バク転で一回転し、ふらつきながら着地。


「よっしゃ! できた!」


その時、長髪の少年が悠然と目の前に、現れる。背が高く、気品のあるオーラが漂う。彼は障害物を一瞥し、創造力を放つ。まるで時間がゆったり流れるように、異常な優雅さで壁を登り、バーを飛び越える。受験生たちが息をのむ。

翔は悠真に近づき、上から目線で言う。


「黒神悠真、か。なかなかやるな。だが、この程度の訓練、俺には児戯に等しい。お前はこの白恩翔にどこまで食らいつける?」


悠真は冷静に返す。


「なら試験で試してみるか。」


翔は鼻で笑い、


「ふん、面白い。せいぜい俺を楽しませろよ、黒神。」

輪はムッとして呟く。


「なんだよ、あの翔って奴。めっちゃ上からじゃん!」

「だが、実力は凄まじい。彼に勝てるかは、合格に大いに影響するものだろう。」

「よしっあいつに勝てるように特訓だぁ!」

明日投稿できたらします。

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