初戦
全四部で構成されちゃうかも。
もしかしたら五部かも。
ついでに、それ以上になるかも。
――――天使――――
それは天の使い。
背中に純白の翼を持ち、神に使える者。
死者を天国に導く者。
そして――――――
時として、神に抗う者。
めっちゃ昔の天国。
「あーー疲れた。」
神の住む宮殿の中庭のベンチで一人くつろぐ天使が一人。
彼の名前は『ルシファー』。
年齢不明、性別男。容姿十代。
性格・ずる賢い。勝気。
そんな彼は天使歴60年弱。
まだ半人前の代だが、戦闘のセンスはずば抜けている。
天使始めて30年くらいの時に、決闘で15人の屈強な天使相手に無傷で勝利したという武勇伝がある。
そんな話もあってか、天国での知名度はまぁまぁ。
三人に聞けば一人は「話を聞いた事はある」というレベル。
「天国は平和でいいけど、暇だな~。なんか起こんないかな~。」
現在仕事サボり中。
こいつの仕事は地上で彷徨っている魂(要するに幽霊)を天国に誘導する事。
天国よりかは狭いものの、地球だって簡単に全部見れるほど小さくは無い。
だからこそこの仕事があるわけで。
いちいち探すのが面倒なので、ここで休んでいるのだ。
(やべ・・・眠りそう・・・)
なんでわざわざ神の住む宮殿に居るのかというと、灯台下暗しを参考にしている。
流石に宮殿内で堂々とサボってるわけ無いよな、と、裏をかいた訳。
「お昼寝ですか?ルシファー。」
「ふぁっ!?」
不意に声をかけられた。
あわてて周囲を見ると、ベンチの横に一人の女性が立っていた。
「マ、マリアさん・・・。」
マリアといわれた女性は、ニッコリと微笑んだ。
「だめじゃないですか。仕事サボってちゃ。」
「ごめんなさい・・・。」
この人は、神の一人、女神のマリアだ。
神、神、って言っても、一人じゃない。
天国には天使より少ないけど、結構な数の神様が居る。
ゼウスをはじめ、アフロディテやガイア、オーディンなんてのもいる。
「早く行ってきなさい。この事はゼウス様には黙っておいてあげるから。」
「はぁ、どうも。それじゃ。」
そう言うとルシファーは、背中の羽を羽ばたかせて飛んでいった。
「あ~あ。めんどくさー。でも、マリアさんがわざわざ黙っててくれるんだし・・・。」
数多くいる神の中でも、めっさ恐ろしいのとかさっきのマリアみたいに優しいのもいる。
その中でもゼウスは、神々の王、とだけあってめちゃめちゃおっかない。
ちょっと前に、マッサージと称して関節技かけたら一週間磔にされた。
その時の形相ったらもう魔神だよ、魔神。
自力で脱出できなかったら多分今でも磔のまんまだよ。
「帰ったら誰かと飯食いに行こーっと。」
「なんだぁ、途中でいないと思ったら宮殿にいたんだ。」
「まぁな。でも、マリアさんにみっかった。」
同世代の天使達と呑気に食事をするルシファー。
今日のメニューは、普通のパンと普通の赤ワイン。
一般の天使の食事なんてこんなもん。
位がもう三つくらい上がると少し豪華になる、という噂が結構ある。
「おい、ルシファーいるか?」
食堂に、一人の声が響いた。
「あーーい。俺だよーー。」
片手を上げて知らせる。
「ゼウス様が呼んでたよ。また磔にでもされるんじゃないか?」
「縁起でもない事言うな。じゃ、お先。」
一緒に食事していた天使仲間に挨拶をして、ゼウスの下に向かった。
「ここでいいのか・・・。」
指定された場所は、特に何もなく、青々とした草が広がる草原だった。
強いて言うと、夜だから静かですごく怖い。
「何してんだよあいつ(←ゼウス)早く来いよ・・・。」
静けさに本気でビビッていると、
「グルルルル・・・・。」
背後から、うなり声が聞こえた。
「何々!?」
振り返ると、そこには全長3mほどの巨大な黒毛の犬がこちらを向いて牙をむき出しにしていた。
「あ~~ん?んだコラ犬。ホットドッグにされたくなかったら今すぐ失せ・・・」
悪態をついていると、後ろからもう一匹。
今度は白い毛の同じ大きさの犬が現れた。
「・・・やば。」
二匹は、予想通りいっぺんに襲い掛かってきた。
後ろに身を引き、両腕に自らの武器を出す。
「ったく・・・どこのオル○ロンだよ。狩っちゃうぞ、銃で。」
両手に持つ白い銃を犬の眉間を狙って撃つ。
が、敵さんも中々やる。銃弾かわされたよ。どんだけ。
一方を狙っていると、もう一方が背後から襲ってきた。
流石に避けきれず、右肩に爪が掠る。
「痛った・・・。もう怒った。お前ら消し飛べ。」
前後にいる犬が、同時に噛み付こうと飛び掛る。
ルシファーは軽く浮き上がり、体を埋め、羽で包み込む。
二匹の犬が、ルシファーの射程圏内に入り込んだ。
その瞬間、ルシファーの翼が輝き、翼と両手足を大きく広げ、衝撃波を放つ。
二匹の犬は、同時に吹っ飛んで動かなくなった。
「ハハッ、名づけて『天使の咆哮』だ!!」
勝利したルシファーは犬の顔面をベチベチ叩いて大喜びする。
「流石だなぁ。ルシファー。」
「げ・・・この声・・・。」
後ろから聞こえる低い声。
忘れもしない。
追っかけられてる時に嫌というほど聞いた。
恐る恐る振り返った先には、やっぱり、例の人がいた。
「ゼウスさん・・・。」
「なんだそんな顔して。磔がそんなに怖かったか。」
「いや、そんなんじゃ・・・。」
「まぁ、あれは悪かったと思っているが・・・四の字固めかけるお前も・・・な?」
足をさすりながら微笑するゼウス。
見た目は50歳くらい。がっちりした体系に神とは思えぬツンツン頭。
かなりトラウマの人物が目の前にいる。
「天界獣を二匹いっぺんに倒せるお前なら、頼んでもいいだろう。」
「は・・・何を?」
ゼウスはフッ、と笑い、口を開いた。
「悪魔を撲滅してきてくれ。」