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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪夢

気分転換に書きました。

その日俺は頭が痛いと言って保健室へ来ていた。猛暑日の中、外でサッカーなんかやったら具合が悪くなるに決まっている。

保健委員が付き添いを申し出たが、俺は断った。1人で行けるし、着いてこられても特にしてもらうことはないだろう。だって頭が痛いだけなのだ。

保健室の先生は運の悪いことに不在だった。俺は名簿に名前を書き、ベッドに横になってカーテンを閉めた。保健室はエアコンが効いているが、布団をかけると少し暑いかもしれない。だが心地の良い温度だ。


目が覚めると西日と思しき赤い光がカーテンの隙間から差し込んでいた。

ここに来たのが昼頃だから、ずいぶんと長い間眠り込んでいたことになる。声をかけられなかったところからするに、保健室の先生はまだ帰ってきていないらしい。

しかし普通そんなに長いこと帰ってこなかったら、担任の先生あたりが様子を見に来たりしないだろうか。訝しがりつつカーテンを開けると、俺の目に異様な光景が映り込んできた。

空が真っ赤であった。

美しい夕日とかそういうレベルではない。

地面が一面燃えていたら、こんな感じの色合いになるだろうか。薄暗く曇った空が赤く反射しているような、そんな不気味ささえ漂う赤さである。

校庭には誰もおらず、廊下からも声がしない。少なくともこの保健室はしんと静まり返って耳が痛いほどだ。

あまりに現実離れした状況に気味の悪さを感じた。

きっと体調不良でおかしな夢を見ているだけなのだ。また寝て起きれば、元に戻っているに違いない。

ベッドに戻ろうと一歩後ろに足を引くと、ドンと何かにぶつかる感触がした。振り返って見やれば、それは小さく体育座りをした人であった。

俺は驚いて尻餅をつき、ずりずりと後退りをした。そいつは白髪の髪を長く垂らしたガリガリの老人だった。ぶつかられたのに身じろぎもせず、じっと体育座りをしている。

まったく気がつかなかったが、いつからいたのだろうか。この人も俺と同じように迷い込んできたのだろうか。

声をかけようと腰を上げたところで俺は伸ばしかけた手を即座に引っ込めることとなった。

似たような老人が保健室にたくさんいたのだ。

ある老人は床に倒れ込み、またある老人は壁に頭を打ちつけ、さらにある老人は机の引き出しを休むことなく開けたり閉めたりしていた。

彼らの出す音のひとつひとつがはっきりと聞こえる。耳の痛いような静寂は消え去っていた。

俺は恐怖に深く息を吸い込み、慌てて校庭に面した引き戸から外に飛び出した。

外は先ほどのような焦げつくような暑さが消え去り、薄寒く空気が湿っていた。

俺のすぐ真横にガンッと勢いよく何かが落ちて来た。人である。

そいつはパックリと割れた頭をグシャグシャにひしゃげた腕で支え、校舎の裏に回っていった。

校庭では砂地の地面を割って大量の腕がそこから出ようとしているかのようにもがいている。腕の動きに合わせ、地面が隆起してバキバキと音を立てる。

俺はへなへなとその場に座り込んだ。すぐ真横にまたガンッという衝撃が走る。

夢なら覚めてほしい。現実ならここから出してほしい。

しかし再び寝るために保健室に戻る勇気はない。

俺の目に数十メートル先の校門が飛び込んできた。ここから出れば、この悪夢から逃れられるんじゃないのか。

俺の真横にまたガンッという衝撃が走る。

入学したての頃に少しだけ聞いたことがある。この学校は有名なお化け屋敷だと。

それならばいっそここから出てしまえば解放されるのではないだろうか。

俺は立ち上がり、校門を目指して一歩足を前に出した。

そのとき俺の頭の上にガンッという強い衝撃が走った。


気がつくと俺はベッドの上に寝ていた。保健室のベッドではなかった。

俺は点滴を繋がれていて、酸素マスクまでつけさせられていた。

横には母親が座っていて、俺が目を開けていることに気がつくと慌ててナースコールを押していた。

曰くしばらく意識を失っていたらしい。

あの後戻ってきた保健室の先生が寝ている俺に気がついて声をかけたが、まったく呼びかけに応じなかったため慌てて救急車を呼んだとのことだった。

外はすでに薄暗く、時計は19:00を回っていた。

結局その日は病院に泊まることになった。しばしとはいえ意識を失っていたのだから、そんなすぐに帰すわけにはいかないのだろう。

俺は病院のベッドに横になりながら、あのとき校門から外に出ていたら一体どうなっていたんだろうと考えていた。

気分転換になったので勉強頑張ります。

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