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生徒心得(Ⅱ).嵐の部活動①



****



放課後。


(田中 栞)は、部活動のため美術室へ向かう。



今は、来月に行われる文化祭、

南条祭(なんじょうさい)』の美術部スペースで展示する作品を手がけている。



テーマが決められているわけではない。

規則に囚われる必要もない。

思うままに筆を走らせる。


この時間が、私は好きだ。



私を除く、美術部員は3名。

3年生はおらず、2年生女子が1名、1年生女子が2名。


みんな物静かで、

真面目に部活に取り組んでくれている。



日々、流星のお世話や、騒がしい凛の制止で

くたびれている私にとって、ここは癒しの場なんだ。




あぁ………今日も平和だなぁ………。




『…ガタッ』



締め切った美術部のドアの向こうで、

一瞬、大きな物音が響いた。



「……?」



部員のみんなが少し手を止め、

音のした方向を見つめる。



……が、数秒経過しても、特に異変は起きない。

各々作業を再開した。



『………ガタッ、ガタタッ!』


「!?」


さっきよりも大きな音が鳴る。



……間違いない。

ドアの向こうに…なにか[いる]。



少し怯えた様子の部員と目が合い、

部長である私は、意を決して立ち上がった。


本当は、怖いの苦手なんだけど……。



ドアに近づいて、

まずは、嵌め込まれたすりガラスから、

廊下側の様子を伺う。



——異様に低い位置で、

大きな黒い影の塊が見えた。



「………な、なに……あれ………」


その影は、

若干ユラユラ、ウゴウゴと蠢いている。



クマ………?

それとも、イノシシ……。

いや………未確認生命体………!?



……怖すぎる。



さっきまでの平和な空気が嘘のよう。

突然のホラー展開に、

心拍数が上がり、じっとりとした汗がにじむ。



ゴクリと息を呑んで、おそるおそる慎重に、

ドアを右側にスライドしていく。



徐々に姿を表した、影の正体は——…



人間だった。


大きな身体を、小さくしゃがませ、

なぜか両手を頭の上に置いている。



「…ん?」



この黒髪……


ついさっき見た覚えがある。



「えっと………ま、真澄…くん…?」



私の声に驚いたようで、

影の塊だったものは飛び上がり、

通常の人間の立ち姿になった。



…やっぱり。


その正体は、昼休みに渡り廊下で話した、

真澄 純くんだった。



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