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生徒心得(I).幼馴染と転校生と⑥



「………」


「……………???」



お互いに無言の時が流れる。



えっと……。

これ、どういう状況…??


多分、呼び止められたんだと思うんだけど…。



何も話さないし、

ついでに肩も離してくれない見知らぬ男の子。

私は驚きと若干の恐怖から、言葉を出せずにいた。



…でも。とりあえず、

私に危害を加える気はなさそうだな?



「…………あの… な、なにか…?」


心を少し落ち着けてから、

恐る恐るコミュニケーションを図ってみる。



すると目の前の男の子は、

ビクッと自身の肩を上下させ、

なぜか驚いたように、私の肩を掴む自分の手を見た。



…と同時に、

その手をバッと自分の頭の上にあげて……

降ろして………

そのまま俯いてしまった。



うーん。

コミュニケーション・エラー発生。

というか、なんか忙しない人だな。



「…あの?

もし用事がないなら、急いでて…

「名前っ!」


「っえ!?」



突然、私の言葉を遮り、大きな声を出す少年。

今度は私がビクッとした。



…ナマエって言った?

…なんの?



キョトンとしていると、

彼は、3回も深呼吸を繰り返したのち、

勢いよく顔をあげた。



わ、綺麗……。


私を射抜くようなまっすぐな瞳と、視線が合う。



「い、いきなりすんません…

あ、あの…その…


な、名前、教えてくれん……っですか!?」



………ああ、なるほど。 



聞き慣れない、独特なイントネーション。


確かにこれなら、

すれ違っただけでも、一言聞いていたなら、

すぐ関西弁だってわかるかも。



私は、彼の問いかけに答えもせず、

そんなことをぼんやりと、どこか冷静に考えていた。



「あ、あの……?」



ハッと気がつく。

赤ら顔の彼が、焦っているような険しい顔で、私を見ている。



「あっ…ご、ごめん。

えっと…名前って……

あの、私の名前、ってことかな?」



目の前の彼は、

勢いよくウンウンと頷く。



「田中です。田中栞。」


「…た、たなか、しおりさん……」



「うん。多分、君が転校生くん…だよね?


君と同じクラスに、私の幼馴染がいるの。

仲良くしてあげてね。


…っとごめん、

そろそろお昼買いに行かなきゃ」



…残り時間が気になって、

少し一方的になってしまった。



棒立ちの男の子の様子は気になるけど、

凛がどんな顔しているかも相当気になる。

…だって、絶対怒ってるもん。



男の子に背中を向け、購買方面へ一歩踏み出した。



「あ!たな……えっと……

…っし、栞さん!俺、真澄です!」



背後から、上擦った声が聞こえる。



真澄 純(ますみ じゅん)

覚えとってください!」



その一生懸命な声に驚きつつ、

ちょっとおかしくって、

自然にふふっと笑みが溢れる。



そのまま振り向くと、

彼の目が少し見開いたような気がした。



「了解。またね、真澄くん」



今度こそ私は、目的地へ向かった。



…今更ながら、

なんで初対面の私の名前なんて、

知りたかったんだろう?



どこかで会った覚えは……

例えば、昔の知り合いとか……


うーん。ないな。まあいいか。



とにもかくにも、昼食の購入に無事成功し、

出来る限り急いで教室に戻った…が。


案の定、全て食べ終えてしまっていた凛に、

「遅い」と怒られてしまった。



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