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生徒心得(Ⅲ).嵐の翌日③



「へ?」



彼の予想外の提案に、

すっとんきょうな声が出てしまった。



「す、すんません!

嫌やったら、全然、大丈夫なんで!!」


「別に、嫌では……ないけど………」



そんなことでいいの?とか、

この先、私に連絡する用なんてできるの?とか。

色々と疑問は浮かんだ。



……でも、その疑問を口には出せなかった。



だって……

私の言葉の続きを心配そうに待っている彼の姿が、

まるで、マテをくらっているワンちゃんみたいに見えたから……。



「わかった。いいよ。

あ。でも、どうやって伝えよう。

ここじゃ携帯出せないし、書くもの持ってないし…」



ふと、

流星から聞いてもらえばいいのでは、

と閃いたけど……。



うーん。やめといた方が良いだろな。

昨日のあの様子じゃ、

流星が真澄くんに失礼な態度をとりそうだ。



「あの……俺、覚えられます。

絶対、忘れません!」


「えっ。……そう?」



真澄くんの真剣な瞳に負けて、

私は、 LINK(メッセージアプリ)のID『0215shiori』を伝えた。



誕生日と名前の軽率な組み合わせ。

私にとっては簡単で覚えやすいけど、他人にとっては違うはず。



ま、忘れてしまっても大した支障はないか。



「わ!もうこんな時間」



気づけば、昼休みの残り時間が少なくなっていた。

私は慌てて、自分の目当てのミルクティーを買う。



「飲み物、本当にいいの?」


「はい!!!!」



あまりの元気良さに、

お言葉に甘えることにした。



「じゃあ私、戻るね……あ。」


「?」


「…ふふ。

もし飲めたら、いつか教えてね。ソレの感想」



彼の手の、緑の缶を指差した。



「うっ……ハイ」


右手で頬をかきながら、

気まずそうに返事をする真澄くん。



これは………。

飲む気……なかったな?



その姿も面白くて、また笑ってしまった。



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