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生徒心得(Ⅲ).嵐の翌日②



体育館付近に到着し、

自動販売機の裏手から正面へ回ろうとしたところ、

チラッと誰かの足元が見えた。



あ、先客がいるのか。

真後ろに並んじゃうと、

急かしてるみたいになるよね。


ちょっと離れとこ。


Uターンで自動販売機を背にした。



………その時。



「うわっ!!!!!?」『ピッ』


背後から聞こえてくる、

驚いたような大きな声。

と、同時に鳴る高めの電子音。



「!?」


その大きな声にびっくりして、

私は思わず振り返る。



「あ」



そこには、

目をまんまるにひらいて、

こっちを見ている真澄くんがいた。



「真澄くんだったんだ。

……ごめん、もしかして驚かせた?」



「い…いや、ちゃうんです!

ちょうど栞さんのこと考えとったからびっくりし………いや何言うてん俺!

えっと、そやなくて……!!」



うーん。

頑張ったけど、早すぎて聞き取れなかった。




「ところで………いいの?」


「へ?」



私は、電子音の発信元である、

自動販売機を指さす。



「飲み物、買ったんだよね?」


「そ、そや。俺、勢いで押してもて……


………え」



購入品を取り出した後、真澄くんは、

自分の手元を見つめたまま動かなくなってしまった。



「?」



彼の手元の缶を覗き込むと……



ドーンと楷書体で


[青汁]


と書かれていた。

抜群のインパクト。



「あお………じる……………」


「……そ…っスね」


「一応聞くけど………飲みたかったの?」


「いや、そんなこと……

や……そう………っすね」



絶対嘘じゃん。



彼は、この世に絶望したような顔で、

手元の緑の缶を見つめている。



「…ふっ」

私は、思わず吹き出してしまった。



「………ふふ」

あ、やばい。抑えなきゃいけないのに。



「ぷっ、あはははっ!」

……だめだ、ツボに入って、もう止められない。



私は、また真澄くんを置いてきぼりにして、

ひとしきり笑ってしまった。



人の不幸を笑うなんて…

そろそろ怒られるかもしれない。



「っはーー………ごめん。ふふ」


「や、ぜんぜん…」



よかった。


真澄くん、怒ってはないみたい。

下向いてて表情は見えないけど。



「ごめんね、私が驚かせちゃったからだよね?

私さ、真澄くんが飲みたかったやつ買うよ。

だから、交換しよう?」


「いや!大丈夫です!!

とゆか、栞さんのせいちゃいますし!」


「でも悪いよ。何がいい?」


「いや、ほんまに!


……………あ」


「ん?」


「そ、それやったら…その………

嫌やなければなんですけど……」


「うん?」


「飲み物は、ほんま、どうでもええんで…」


「うん」




「………っ連絡先、教えてくれませんか…!?」


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