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生徒心得(Ⅱ).嵐の部活動③



……異質な光景だ。



部員のみんながキャンバスに向き合っている中、

美術室の隅のほうで、

静かにちょこんと座っている、大きな男の子。



「…………。」


そんな彼は、なんだかすごく険しい顔をして、

無言でじっとこちらを見ている。



部員のみんな、

『触らぬ神、知らぬが仏』と言わんばかりに、

誰も彼に話しかけようとしない。



…仕方ない。

見学者をもてなすのも、部長である私の役目か。



「真澄くん、絵の経験あるの?」


「まったくないです!!!」


「そ、そっか…。

何か気になることある?

それとも、何か描いてみる?」


「い、いえ!

その、見てるだけで十分です!!」


「…そう?」



…これ以上、話すこともないので、

自分の作業に戻る…が。



…やっぱり、気になる。



微動だにせず、ただただ無言でこちらを見る険しい瞳に、

いよいよ私は我慢ができなくなった。



半ば強引に、

イーゼルとスケッチブック、鉛筆や筆などの一式を、彼の椅子の前におく。



「えっ?えっ?」と困惑する彼に、申し訳なさを感じたけど、

このままだと私も部員のみんなも耐えられそうにない。



「真澄くん、やっぱりさ、

せっかく見学きてくれたんだから、何か描いてみようよ。


題材はー…そうだな……」



私は、資料を開きながら、

彼の隣に椅子を起き、そこに腰掛ける。



「!?」


彼の身体が跳ね上がった。

そして、ぎこちなくこちらに顔を向ける。

震える姿は子犬のようだ。



そんなに怖がらせてしまったか、と反省しながら、

一緒に資料を見てもらう。



「この、猫なんてどう?」


私は、猫の写真を指さす。

彼は無言でコクンと頷き、鉛筆を手に取った。



よかった。これで自分の作業に集中できる。



「なにか分からないことがあったら呼んでね」



私の言葉に、彼はまたコクンと頷いた。



…なんだかちょっと心配なので、

自分のキャンバス一式を運び、彼の隣で自身の作業を再開した。



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