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川村猫衛門はオークと風神雷神を一太刀で斬り倒す

「川村よ。お前は自身が強いのではない。単に剣に恵まれただけということを忘れるな」


川村猫衛門かわむらねこえもんの脳裏にジャドウ=グレイの声が木霊した。


定食屋で親友のヨハネス=シュークリームと一緒に大好物のカレーライスを食べていた川村はスターの手により有無を言わさず異世界へと転移させられた。


せっかくの食事を中断されたのは不満だが、何かわけがあるに違いないと思考を切り替え歩き出す。


川村はサラサラとした黒髪をポニーテールに結んでいる。雪のように白い肌。小柄で華奢な体躯。


大きな黒い瞳に両側頭部からは猫の耳が生え、腰からは白く長い尾が伸びている。


川村は白猫の血をひいている。小柄な体躯ながら俊敏さに関してはスター流でもトップクラスで抜刀からの斬撃は上位陣でも目視できぬほどの速度を誇る。


黒い袴に草履を履いたいかにも少年剣士といった風体の川村は研ぎ澄まされた聴覚で早速異世界人の危機を感知した。駆け付けると女性が豚の化け物に襲われそうになっている。


川村はすぐさま腰に携帯している刀の鞘に触れるや否や抜刀し、オークの首を斬り落とした。


斬られたオークが死ぬ瞬間を感じることができないほどの早業だ。


女性を逃がしてから残りのオークと対峙する。


刀を突きつけ眉間にしわを寄せてできる限り怖い顔で。


「お主らが弱き者に乱暴を働くのを見過ごせぬ!」

「テメェ何者だ!」

「拙者はスター流の川村猫衛門でござる」

「川村、知らねぇな。野郎どもやっちまえ!」


リーダーの掛け声に襲いかかるオーク達に川村は可愛らしい顔でニッと笑った。


小さな牙が覗く。


神速の刃。


得意技を繰り出すまでもなく単なる斬撃だけでオークの一団を壊滅させた。


チャキンと刀を鞘に収め長く息を吐きだす。


川村の剣は斬心刀ざんしんとうと呼ばれる宇宙最高の刃である。人の心さえも容易に切断することからその名が付けられたがあまりの切れ味に扱えるものがいなかった。


それを川村が継いだのだ。スター流に入ることは不老長寿になる運命を受け入れると同意であり、彼は仲間の元で数百年に渡る修行を積んだ。


静かに孤独に果てしなく磨き続けた剣技だが、メンバーのひとりであるジャドウには今だ敵わない。


技術的な点では遥かに上回っているはずなのに不思議とジャドウと手合わせすると彼の気迫に飲まれてしまい敗北を喫するのだ。


練習試合で雑巾のように汚れて地に伏す川村にジャドウはいつも吐き捨てる。


「猫又よ。お前が強いのではない。剣が優れているだけだ。刃を失えば何もできぬ」


それは川村が最も懸念していることだった。


あまりにも強力過ぎる斬心刀の力に頼りすぎ、振り回されていると指摘しているのだ。


もしも斬心刀がなければ自分の実力は格段に落ちる。


気づいてはいるが心の中で認めることができない。ジャドウを見返したい。


ぽわぽわとした柔和な表情の裏に激しい闘志を秘めていた。


広い野原に出た。と、不意に空が黒雲に包まれ突風が吹き荒れた。


突然の気象の変化に警戒していると、雷が轟き、背面に円を描くように太鼓を装備した赤い巨漢の鬼の姿をした雷神と緑の体躯に袋を持った風神が川村猫衛門の前に現れ、白髭を蓄えた口を開けた。


「異世界の者よ。ワシらが相手だ」

「……望むところでござる」


川村は冷たい汗を浮かべ背骨を伸ばす。


二対一の不利な戦闘だがこれを乗り越えねばジャドウには永久に勝てないだろう。


「川村猫衛門、参る!」

「来い!」


雷神が太鼓を鳴らして雷を落とすが川村はすばしこく回避して徐々に接近すると斬心刀を引き抜き技名を口にした。


斬心刀ざんしんとう華麗米かれいらいすり!」


華麗米斬りは米の字に相手に斬撃を浴びせる川村が最も多用する技だ。


赤い身体をした雷神は地面や木々と一緒に八つ裂きにされてしまう。肉片が飛び散る様を見て恐怖した風神は袋から台風を発生させるが、川村は風ごと横一文字に風神を切断した。


刀を納めて嘆息し、空間を両断して元の世界に繋がる空間を出現させるとぴょんと中へと入っていき、食堂へと帰還した。


【川村猫衛門 帰還】

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