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職業は暗殺者  作者: 百円玉
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第一話

最近、塔が建った


 皆の考えているような、海岸沿いに建っていそうなポートタワーのようなありふれたものじゃない。


 灰色で無機質な天まで突き抜けるような、天を支えているかのような複数の塔。いつの間にか風景に溶け込んでいた塔。


でも皆何もないかのように過ごす、何も見えていないかのように。


 「はぁ。。1時間後には学校にいるのか。。」


 思わず愚痴をこぼす。学校に行くのは本当に憂鬱だ。


 今は高校2年の6月、雨のせいでなおさら行きたくない。


 本当に学校には行きたくないが、勉強はできないわけでは無いし、運動も苦手でもないし、むしろ得意だ。


 別にいじめられているわけでもない。


 ただ友達がいない。


思い返せば今まで友達という友達はできたことが無かった。というか友達って何だろうか。何を一緒にしたら「友達」なんだろう。


恐らく自分の人生の経験値は小学二年生以下だろうな、と考えて虚しくなった。


パンにブドウジャムを塗っただけの朝食を一人で食べ、制服を着こんで学校に向かう。憂鬱な学校へ。


教室のドアを開ける。


皆、各々のグループで固まってしゃべっている中、自分の机へ。


友達はいない、けど他人が気にならないタチではない。


自分にもいたら、と思ったことはある。


あるが、友達と話している自分が想像できない、何を話せばいいのか分からない。


4月、話しかけてくれるのを待っていたが、自分の事をまるで見えていないかのように、皆グループを作って、いつものように輪から外れたことを思い出す。


虐められたことが人生で一回もないのは奇跡かな、というのはずっと思っている。


空気と一体化するようにして授業を受ける。


相当な頻度で急に生徒に問題を当てる先生からも名指しで当てられたことはない。


先生から自分は見えているのだろうか。本当に空気になってしまったのではないか、と錯覚することもある。


いつものように授業を受け、休み時間は寝たふりをして、誰にも話しかけられず、ちょっかいすらかけられず6時間目までやり過ごす。


ここまですべていつも通り。


でも今日は昨日とは違う、あの塔に行ってみるのだ。


ちょっと違うかもしれない、行かなければいけない気がした、誰も話題にすら出さないあの妙に惹かれる塔へ。


母親に、あの塔っていつできたの?と聞いたことがある。


「はぁ?意味わかんない」


といいながら仕事に向かっていった。それだけのやり取りでも一週間ぶりくらいの会話かもしれなかった。


自転車を漕ぐ、晴れてよかった。距離にして学校から10kmくらいだろうか。塔の下の方が開けてきた。


「誰が建てたんだろう」


ふと口から漏れる。


近くまで来てみて、大きめの空き地を目一杯使っていたことが分かった。


こんな土台でなんでこの高さの塔が建つんだろうと改めて思う。物理的におかしくないか。下から覗いてもやはり最上端は見えそうにない。


周りには距離を置いて、不自然なくらいにボロく誰も住んでない家が多い。

あとこんなところに止めていいのだろうか、車が数台並んでいる。


しかしなんで皆には見えてないんだろう、と思いつつ裏に回るとドアがある。無機質な白い塔には似合わない木製の簡素なドアだ。ここまで来たからには開けてみたい。


開けてみるか。


 思ったよりも簡単に地獄へのドアは開いた。

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