十
吉良と晃一は、三人がけの長い机にセットされている椅子に座っている。
左側の吉良はちょうど窓際だ。自分の前にある机の膝辺りについている棚スペースから、古文の教科書を出して、佐藤晃一に広げて見せる。
椅子は三人がけではなく、ひとりで利用するタイプだ。吉良と佐藤晃一が腰かけている間には、人ひとりが座れるスペースが空いてある。
椅子は生憎ふたり分しかないが、他から持ってくれば、三人が一つの机で授業を聞けるのだ。
◆◆◆
現在の日本は、黄砂などの空気汚染、コロナやインフルエンザなどのウイルスで病気になったり、体調を崩したりする。
集団感染の対策、メリットとデメリットを照らし合わせて、学校でみんなと授業を受ける。
学校や会社、生活スペースでわずらわしい人間関係が悪化して、イジメで自殺するものが後を絶たない。
便利になった世の中。ネットで買い物ができる。LINEで家族や友人と交流できる。知りたい情報も嘘の情報も、悪質な情報もわんさか溢れている。
学校や塾の授業も、オンライン授業が増えている。
ネットを見ながら自分ひとりで、一日五時間〜八時間の授業を聞き、まめに勉強する。テストで高得点を取り続ける。年に数回だけ指定された場所で講義を受ければ、卒業証明書もしっかりもらえる。
わざわざ自分の足で歩き、黄砂などの汚染された空気を吸いながら、強すぎる紫外線を浴びながら、学校行く。
暑い中寒い中を雨や雪の中を、お金を払って、お世辞にも快適とは言えない電車に乗り、会社に行く。無駄な労力と時間が費やされる。
年々、学校に登校する生徒が減っている。昔は当たり前だったことが、時代が変われば、考え方も変わる。今の時代に、吉良や晃一が学校に通うことは珍しいことなのだ。
「吉良、友達さ、俺しかいないのはなんで?」